10月12日2006/10/13 00:49

 本日は劇辛でいきます。私にとっては、それだけの価値があるネタなんでね。さて、気合い入れますか!
 
 本屋で見かけた「世界に挑んだ日本馬109頭」って本。ネタが海外競馬だけに、当然手に取りましたよ。そんでもって、即時に買いました。徹底的に叩くんなら、せめて買わなきゃね。
 
 実のことを言えば、まだ完全には読み切ってない。けど、明確に断言できることがある。原稿書いた奴は、実際に対象の馬の遠征に帯同してない。いや、いくつかは帯同してる。そりゃわかる。けど、その割合は…
 
 しかもだ。かなーり期待された、有名な馬の遠征にすら「ヌケ」が多い。個別のライター批判はやりたくないので、あえてどの馬がそうなのかは伏せるけど…曲がりなりにも海外競馬をネタにした本を出そうってのに、その程度の経験しかないライターしか集められなかったのか…
 
 そりゃあね、海外は遠い。「全部行った」なんて馬鹿は、どこにもいやしない。どうしても「遠征に行ったわけでもないのに、原稿書く」馬の割合が増えるのはわかる。わかるけど、程度問題ってモノがあると思うね。せめて歴史的に重要な節目となる、事前にそこそこ注目されてた馬の遠征ぐらいはカバーして欲しかったんだけど。
 
 そのおかげで、言っては何だけど魂が入ってない。まるで。正直スッカスカの本である。まあ、「遠征に出掛けた馬が、国内でどういうポジションにあったのか」はチャンと書いてある(他に何を書けと?)から、人によってはそう感じないと思うけどね。でも、私相手には通用しない。しちゃイケナイ。
 
 あえて具体例を1つだけ挙げよう。エアジハードがいいな。香港まで出掛けて無念の出走回避。伊藤正徳調教師の無念っぷりを描いている。その点は良く取材したなと思うけど、なんかライター自身の無念が伝わってこない…正直、現地にいたのかどうか極めて疑わしいね。
 
 私が出走回避を知った瞬間のとまどいは、今でも鮮明に覚えている。「出走回避」以外の情報全く無し。何が起きたのか、どれぐらい「悪い」のか、全くわからない。情報あったとしても読解力ゼロ。ましてや98年の話、ホクトベガの悲劇はまだ記憶に新しい。無事に帰国できる状態なのか、真剣に心配した。あれは残念無念だけで語りきれるものじゃなかったね。はっきり言って、あの気持ちを味わってない奴に、エアジハードの香港遠征を語って欲しくない。
 
 「講釈師 見てきたように 嘘を言い」って川柳があるように、見てもいないことを見たかのように語るのが「技」だってのは認めよう。けど、それが基本になったら、マスコミはお終いでしょ。日本にいながらTV映像見てればそれでいいんなら、私がいちいち遠征してる意味はどこに?「現場にいてこそわかるものがある」なんて、私がイチイチ言わなきゃいけないことなのか。だとしたら何かが間違っている。
 
 コレは単に「出版社・編集者の怠惰」で片付けるワケにはいかない。世間の注目を集めたディープインパクト遠征景気を当て込んで、今までの日本馬海外遠征の歴史を振り返る…ってのは、企画としては悪くない。なのに、出た本がコレ。似たような企画でこの本を叩き潰そうとしたところさえない。いやあ、奥ゆかしいね競馬マスコミは。他人様の企画を真似るのはイヤだってか?
 
 私が思うに、このネタで本を作ろうと思ったら、結局どこもこんな本しか作れないんじゃないかと。「実際観た」経験を重んじようと思ったら、文章力も国内取材力もないトーシロに頼るしかない。それを嫌うと、こんな本になる。企画そのものは良いんだけど、それを形にできる力量がない。おそらく、日本の競馬マスコミ全てが。その意味では、競馬同人作家であった私も同罪だね。
 
 私が海外競馬遠征を見始めてから、10年以上経った。決して短くない時間だとは思う。けど、その間競馬マスコミは何やってたんだろうね。フジヤマケンザンの偉業がベタ記事扱いされたらしいと腹立てた時から、何が変わったと?確かにディープインパクト遠征には山のような取材陣がついて行った。そいつは認めるけど、ワーっと騒いで後に何も残らないようじゃ、あの頃と何が違うというのだ。正直、無力感を感じて悔しいよ。
 
 自国の馬について行って海外競馬観戦なんてコトは、日本人ぐらいしかやらないという説がある。それだけ日本人がアホだってことではあるけど、見方を変えれば日本は「海外競馬観戦の先進国」ってことでもある。少なくとも私はそう思う。なのに、そんな国の遠征史をつづろうと思ったら、こんなものしか作れない…何でそうなるんだよ。
 
 結局のトコロ、日本人の海外競馬観戦なんて「こんなもの」なんだろう。騒ぐだけ騒いで、後に何も残らない。だから、ちょっと気取って遠征史を振り返ろうと思ったら、なんかチャチで魂入ってないシロモノが出来上がった。けど、ディープインパクト遠征景気を当て込んで一儲けするための道具なんだから、これでいいよね…ってことなんでしょ。
 
 もちろん私は、そんなものを認めるわけにはいかない。これでも海外競馬観戦が「後に何かが残るモノ」であることを伝えようとしてきたつもりだ。無力だけどな。だから、この本の企画がいいトコロを突いているにもかかわらず、総じて言えばソコまで悪い本だとは思わないにもかかわらず、声を大にして言わなければならない。「魂が入ってない」と。
 
 もっとも、だからって「じゃあお前が書け」って言われても困るんだけどね。文章力ないし、国内じゃ取材できないし…しょせんトーシロなんだから、仕方ないだろぉ!オレだって「だらしねえ」とか思ってんだ!!(逆ギレ)