6月16日2008/06/17 01:25

 昨日はゲームの日。プレイしたゲーム自体は「面白かったけど、ネタとしてはやや弱い」のでパス。つーわけで、ここで扱うのはその後メシ食ってる時に出た話題、「最近のゲーム雑誌論」かな。
 
 まず「私の立場の説明」から。私は、現状維持でOKって意識が強い。理由はちゃんとある。下手にいじくって「ヒドいダイス目を出してしまう」より、現状維持の方が遙かにマシだから。ゲームにおいては「まず実行して痛い目に遭わないと学習しない」私だけど、ゲーム雑誌がこれをやるのは困る。
 
 何でそんな意識を持っているのかと言えば、やはり「ゲーム雑誌がなかった、暗黒時代のトラウマ」だろうねえ。実は私、この業界から「足を洗っていた」時期がない。誰も相手してくれない時期でさえ、「秘密結社サクセンQ下っ端戦闘員」として、いつの日かやってくるであろう(と勝手に信じていた)ブーム再来を信じていた。
 
 とはいえ、具体的な行動と言えば、たまーに古いゲーム引っ張り出して作戦研究…と言っても大半はソロプレイではなく、マップ眺めているだけ。後は同人版のゲームジャーナル(あまり人気のない号ばかり持っている。人気の号は売り切れが早くて…)を買ったり、コマンドマガジンを買ったり。対戦相手に恵まれている現在とは比べものにならないほど貧弱な活動ではあるね。
 
 こんな時期が長かった関係上、やはり雑誌は「心の拠り所」なんですよ。だって、他に自分が「ゲーマーである」って証明が得られなかったから。よって私はゲーム雑誌に対する依存度が高い。よく「無くなっても困らない」と公言する人がいるけど、私はそれじゃイヤなのだ。どんなにつまらなくても、どんなに高くても、ゲーム雑誌が無くなるよりずっといい。
 
 とまあ、そんな「甘い読者」の私から見ても、最近のゲーム雑誌は「値段の割に内容が薄い」気がするのは確かかな。正直、「私が読みたい」記事が少ないように感じてしまう。この点については、より辛い意見を吐く人のブログでも参照して下さい。
 
 ただ…問題は「じゃあどうすればいいか?」って部分かな。良く聞く意見「発行ペースを落とす」ってのは、私は反対だなあ。自分の「雑誌依存症」をさておいても。正直、それで質が向上するってのは、幻想だと思う。内容今のままで単に発行ペースが落ちただけでは、意味が薄いでしょ。それどころか、総売上が落ちる分経費も削られ、結果として内容が悪化する可能性まである。
 
 こんなこと書くと、「発行ペース落として質重視で…」って路線の雑誌から文句が来そうなので、先手を打っておこう。この世界には確かに「質重視の不定期雑誌」なるものが存在する。その理念は私も認めるけれど、明白に限界はあるよね。この雑誌が「目指しているモノ」を実現するためには、あの質で定期刊行物(最低でも季刊)にしないとイケナイと思う。それができて、初めて「この雑誌が作り出そうとしているようなゲーマー」が本当の意味で育成されるんだと思うな。
 
 「新しいライター」を導入するってのは、いいアイデアだと思う。けど、これまた難しいだろうねえ。あえて皮肉なことを言おう。「ゲーマーの中にも文才がある奴や、意欲のある奴はいる。けど、文才のあるゲーマーは意欲が無く、意欲のあるゲーマーは文才が無く、文才と意欲がある奴はゲーマーじゃない」ってのが現実って気がする。
 
 ただ、これはゲーマー全体を卑下しているワケではない。他の趣味にハマっている人間と比べた場合、ゲーマーは平均的に文才があって意欲がある奴が多いと思う。ブログ書いてる人間なんかを見る限りでは。けど、層が薄すぎる。商業誌のように「縁もゆかりもない人間に読んでもらうことを前提とした場所で、定期的に記事を書く」ことを考えた場合、何かしら足りない人間しかいない。「ある程度突き抜けた奴」が登場するかどうかは確率論的に考えることが可能だから、やはり層が厚い世界の方が有利だからね。
 
 それにだねえ。ある意味品のない話だけど、意欲ってのはつまるところカネで何とかなる。というか、愛だけじゃメシは食えないからねえ。キリストでさえ「パン抜きで何とかなる」とまでは言ってない。でも、この業界層が狭いからカネが出ない。少なくとも、ゲームライターって肩書きだけで生活できる奴はいない。よって、「その程度の」意欲しか引き出せない。それじゃあ才能は他の方面に使われちゃうよね。
 
 そうやって考えてゆくと、むしろゲーム雑誌は「よくあれだけの質を維持できているなあ」って気がする。「昔は良かった」みたいな声もあるけど、日本ゲーム界の「実力」なんてこんなものでは?むしろ良かった時代の方が異常ではないかと。そんな「あぶく銭」みたいなものを懐かしんでも、不毛なだけでは。
 
 なんか夢のない話になってしまったけど、これが「私の考える、冷徹なる真実」って気がして仕方ないんだよね。マイナーな趣味なんて、結局こんなレベルだって。それがイヤだって言うのなら…ゲーム同人誌でも作ってみれば?あの「独特の辛さ」を知ってしまったら、今のゲーム雑誌に文句は言えなくなるような気がするので(苦笑)。

コメント

_ 柿崎 唯 ― 2008/06/17 13:04

F男様、

始めまして、
ゲーム雑誌についてのお話を興味深く拝見させて頂きました。
まあ、この手の話は日本全国のゲームサークルで語られているのでしょうね。

現在のゲーム雑誌について、その内容が薄いというのは、確かにその通りだと思います。
ただ、では昔のゲーム雑誌の質が高かったかと言われると、そうではなかったでしょう。読み返してみると分かるのですが、昔のタクティクスにしろ、シミュレーターにしろ、再読に耐える記事は、無いわけではありませんが、そう多くはありません。間違ったルールでのリプレイとか、ジェネラルの記事の剽窃みたいなのが平気で載っていたわけですから。
歴史記事についても、失礼ながらあまりレベルが高かったとは思えません。

最大の問題は値段でしょう。
現在の雑誌、CMJもGJもそれぞれ4000円程します。昔のタクティクスやシミュレーターは1000円程度だった訳です。
次に読者層の変化があります。昔は皆グリーンでしたが現在はロートル主流です。
有体にいえば、昔は無知で無教養で貧乏でしかしながら情熱だけは有り余っている新兵が800円のタクティクスに熱狂していました。現在は知ったかぶりで半端に知識を蓄えそこそこに金を持ちシニカルな熱意を抱いた古参兵が4000円のCMJをささやかな期待と変な義務感で買っているというところでしょう。

現在のゲーム雑誌では、間違いリプレイや剽窃は少なくなった、皆無ではないが、ので、その点では多少はマシでしょう。歴史記事についても全体に水準は上がっていると思います。
昔は「マレーの銀輪部隊」で記事になりましたが、現在では東部戦線の自転車利用率でも書かねば読者は満足しないでしょう。そういう意味では全体にマシになっていると思います。
しかし、歴史記事の水準が上がったのはゲーム雑誌だけではないわけで、世間的には1000円の歴史群像と比較されるのです。
リプレイ記事にしても、現在のものはルールチェックなどマシになりましたが、肝心の内容は向上している、とは言い難いところがあります。何より昔のリプレイ記事に見られた熱気やゲームに対する愛情が薄れていると思います。
ゲームが付いているにしてもこれで4000円ですから昔のゲーム雑誌に比べて満足度が低下しているのでしょう。

では、ゲーム雑誌の質を高めるにはどうすべきか、という話になります。
これはなかなかに難しい話です。

よく言われるのが、発行頻度を下げてはどうかという話です。
これに付いてはF男様が指摘されたようにダメでしょう。
まずもって現状のCMJにしろGJにしろ、現在の値段と発行頻度でなんとか商業誌の体裁を保っているというのが実情です。買う方からすると、2誌合わせて年間10冊、計40000円というのは多いのですが。
これ以上発行数を減らすと専従のスタッフを置けなくなりますから、原稿のチェックその他が甘くなりむしろ質が低下する可能性が高いでしょう。
また、書く方の意見として言わせて頂くと、書き上げた原稿が何時載るのか分からないというのは士気にかかわります。私の例ですと、某GJの北アフリカ物は書いたのは1年半前です。これが季刊のペースです。以前、某誌に記事を書いた友人が掲載は3つ先と言われて怒っていました。まあ、慣れるとそうでもないのですが、それでも不定期刊行で何時出るか分からない雑誌のために記事を書けと言われると苦しいですね。

次に聞くのがゲームなしで値段を下げて、というのですが、これはダブルチャージがすでに失敗しています。
値段を三分の一にして同じ売上を得るためには3倍売らなければならないのですが、そうはならなかったようです。
また、ゲーム付きであればそのゲーム関係の歴史記事やリプレイで紙面を埋めることができますが、ゲーム無しでは核がなく記事が集まらないようです。

CMJとGJを合併させたら、あるいはどちらかが撤退して一つになったら、残ったのは質が向上するのではないか、という意見も時々聞きます。
これはなんとも言えません。
5つや6つあれば、数を減らすのが妥当と思いますが、日本国内で2つです。また、海外には他にいくつかあります。
ゲーム雑誌が2つあって互いに補完してゲーム業界全体を広げているという面も少なくないと考えます。過去において、ゲーム雑誌が1つしか無かった時期があるわけですが、その時期の雑誌の質が高かったかと言えばそういうわけでも無かったと思います。
CMJとGJを合併させてそれで雑誌の質が向上するか、売り上げが伸びるか、・・・私には疑問です。

最後に経済的な問題です。
F男様が指摘されたのは基本的に正しいと思います。ですが同時に現状では解決困難です。
現在の、だけでなく過去からずっとウォーゲーム雑誌の原稿料は安いのです。
手間暇を考えるとウォーゲーム雑誌に記事を書くよりコンビニでバイトした方が率は良いと思います。

ご指摘のように、質の高い原稿を定期的に供給するとなると専従にならざるを得ません。職業ライターとなると自身の生活を支えるためにもある程度の原稿料が必要になります。
ウォーゲーム雑誌はこれを提供できません。
少し前に、ゲーム雑誌のライターを探して周囲に声をかけたのですが、最大のネックとなったのがこれでした。ある程度の年齢になりますといろいろと社会経験もあります。本業の方で書いたことのある人も少なくありません。で、一般商業誌の相場を知ってたりします。彼らも自分がゲーム雑誌の世界では新人であると理解してはいます。で、最低の値段でも良いと言うのですが、現実の値段を聞くと、・・・「同人誌?」、ってことになりました。

現在、ウォーゲーム雑誌の誌面を埋めているのは、私のように趣味で書いている人間が過半でしょう。趣味で書いていて原稿料を当てにしていない訳ですから、本業その他の関係で供給は不定期になりがちです。
結果として雑誌の質が安定しないという話になります。

雑誌がそう売れないから広告もつかず、ライターにも原稿料を払えない、だから雑誌の質が安定せず、結果として雑誌が売れないという悪循環です。

結論としては地道にやるしかない、と思います。
と、言うことで、F男様、皆様、原稿を書いて雑誌に送りましょう。
結構な確率で載ります。掲載は少なくとも半年後ですが。
みんなで支えるしかない世界なのです、多分。

_ F男 ― 2008/06/17 23:36

柿崎様、いつも貴殿の文章は楽しみに読ませていただいております。
この度、私の下らない文章にコメントなど付けていただき、大変恐縮しております。
このコメントに対する私の意見・感想などにつきましては、ブログ本編の方で述べさせていただきたく存じます。
このようなブログに訪問していただき、有り難うございました。大いに励みとさせていただきます。

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_ 出戻りゲーマー分隊 - 2008/06/24 09:46

はじまりはココ。
(F男の誰も付いていけない話 様)

思いっきり要約すると、

●ゲーム雑誌が駄目駄目だけど、冬の時代よりは現状維持でもいいんじゃない?

●でもでも、駄目駄目なものは駄目駄目だよね。じゃあどうすれば……。

  (1)プランA 刊行サイクルを伸ばす。
  (2)プランB 新しい才能を発掘する。

というところでしょうか。これについては6/16に柿崎氏が適切にコメントし、6/17には中嶋氏、6/18には天津老師氏がそれぞれ意見を述べている。コンボ(笑)。トドメは柿崎氏の6/19のコメント。長年この業界に関わってきた氏だからこそ書ける、的を射たもの...