4月17日2008/04/18 00:06

 色々未消化のネタが多くて困る。何をどのタイミングで採り上げるべきなのか、悩ましいなあ。本日はそんな中から、一番「まとまりが良い」ものを。題して、「せんとくんのデザインについて-ただし、フツーじゃない視点から」。
 
 せんとくんとは?奈良平城京遷都1300年記念祭のマスコットキャラだそうな。この度めでたくこの名称に決まった。具体的にどんな奴なのかは、検索してみて下さい。大まかに言葉で説明すると、「幼少時のお釈迦様に鹿の角つけた奴」となるかな。
 
 このキャラクター、「かわいくない」という批判が出ているようだ。「デザインやり直せ」って署名運動まであるらしい。そこでまあ、私なりの見解を述べてみようかなと思いまして。今まで放置していたのは、呼び名未定だったから。テキスト中心のこのブログでは、呼び名がないと扱いにくい。
 
 とはいえ、単純に「私はカワイイと思う」「やっぱり駄目じゃないかなあ」なんてのは面白くない。そーゆー「マトモな」見解は他に任せる。そこで、「生物学と心理学から見た、せんとくんの分析」をお届けしよう。こーゆーカタいネタで馬鹿話を展開するのが、オツってものではないかな(苦笑)。
 
 実は、我々が「可愛い」と思う対象というのは、基本部分はすごく単純である。「赤ん坊のデザインに近いもの」がカワイイと呼ばれるのだ。人間っていう生物が持つ「親としての本能」が刺激された結果が「カワイイ」ってことだね。なおこれは生まれつきインプットされているモノなので、子供であっても「カワイイ」って感情は当然ある。
 
 ここでいう「赤ん坊のデザイン」とは、何も生まれたての人間だけを指すわけではない。子犬・子猫が大人の犬猫より「カワイイ」って気持ちを強く刺激することを考えればわかると思うけど、要は「幼い存在に共通するデザイン」が「可愛い」って感情を強く刺激するのだ。具体的には「大きめの頭」「目から下は小さめ」「腕や脚は短く、手や足は大きめ」ってなデザインが「カワイイ」のキーワードになる。
 
 「カワイイ」を狙ったキャラが、「デザインがドンドン幼児化してゆく」ことを私に教えてくれたのは、生物学エッセイの第一人者スティーブン・ジェイ・グールド。数年前にお亡くなりになられたのは世界的損失ですよ…日本だと浦安に生息している有名なネズミが、最初に登場してから代を経るごとに子供っぽい、「可愛さ」を強調したデザインになっていった(ついでに性格描写もそういう方向になっていった)という指摘をしたエッセイがあるからね。タイトル及び収録された本がどれなのか、思い出せないけど…
 
 さて、話をせんとくんに戻そう。このキャラ、基本的には「人間の子供」である。大きめの頭・目から下の顔パーツ(特に代表はアゴ)は小さく、腕・脚は短い…といった、「可愛い」を刺激しやすいデザインをしている。よって、「キモい」「つまらん」などといった、「カワイイ」と直接無関係な方向の非難はともかく、「カワイくない」という意見は出にくいはずだ。しかしながら、実際こう言っている人間がいるらしい。何故だ?
 
 その答えは実に簡単。角である。あの角が「カワイイ」を刺激しないアイテムになってしまっている。そもそも、「角の生えた人間」と言えば、東洋では鬼だし西洋じゃ悪魔だ。その昔々、人間のご先祖様が狩猟生活を基本としていた頃、角の生えた動物を捕まえようとして痛い目にあった記憶が、本能のどっかにあるからだろう。角の生えた存在というのは、どちらかと言えば人間に「畏怖」の感情を与えるようなのだ。最もこれは「強そうだ」→「カッコイイ」って発想に結びつくので、角があるから駄目ってワケじゃないんだけど。
 
 特に、せんとくんの角は「大人びた」デザインをしている。かなり細いので「長い」って感覚が強くなるし、かなり枝分かれしている。まさに「大人の鹿」に生えている角。「生物学的に幼い存在」の頭部にあるものとしては、立派すぎる。このアンバランスさが「カワイくない」という意見が出てくる理由だと見たね。
 
 つまり、せんとくんは科学的に見て「駄目な」デザインだ…ってのは、正しくもあり正しくもない。あくまで生物学と深層心理学から見た場合、確かにせんとくんのデザインには「可愛いって言葉ではくくれない」部分がある。少なくとも私はそう思う。けど、だからってあのデザインが「駄目」とは限らない。この手のアンバランスはあってもいいし、むしろ「可愛い」だけじゃ駄目って言い方も出来る。その辺スッパリ割り切れないのがデザインの難しさであり、面白さでもあるからね。
 
 最近ブレイク気味の「ひこにゃん」を見ると良い。私は「いつか叩き殺す!」と思っているけど、これはデザインとは無関係。そもそも、どんな形状をしていようとも、彦根城を宣伝するキャラってだけで「殺害目標」だ(笑)。あいつは一応「井伊直政の化身」なので、兜をかぶり、その兜にツノがついている。私がやった分析に従えば、これも「アンバランスなパーツがある」ことになる。けど、だからって「カワイくない」とは言われてないでしょ?私がやったのはあくまで「基本原則の紹介」であって、「実際どうなのか」とは百万光年の開きがある。だいたいだなあ、ツノがあったら駄目なんて言ったら…(以下略)
 
 他にも、せんとくんは意味不明な方向からツッコミを入れられそうな存在である。あの角を見ると「どうもオスっぽい」のは、仏教の教えから見てどうなんだ?とか、幼少時の姿ってことはやっぱりお釈迦様(いわゆる仏様の中で幼少時の話が出るのは、実在の人物だったお釈迦様ぐらいだと思う…)なのか?といった「仏教から見た話」も山ほど出来そうだし、「あの角の生え方は…」といった、より詳しい生物デザイン上の話も出来そうだ。惜しむらくは、私にはそれをネタにする力がないってコトかな。くそう、私がやらなきゃ誰もやりゃしないネタだってのに…
 
 なお、ある意味肝心の「私はアレをどう思うか」だけど…うーん、私は枝分かれの多いウシ型の角より、シンプルかつ強そうなウシ系の角の方が好みなんだよな。けど、それつけたらかわいい系の本体とモロにアンバランスになるし…それにだ。ああいう「産まれてすぐに天上天下唯我独尊などとヌカしそうな」生意気なガキは蹴飛ばしたくなるのが人情ってモノじゃない?やはり年下はバカでポンコツに限りますよ(何の話だ?)