4月10日2009/04/11 03:38

 本日の話題は、現用戦闘機の話。どうやらF-22ラプターの製造が終了しそうってトコロと、ロシアの新型戦闘機の話を絡めてお届けします。
 
 航空関連雑誌を丹念に読んでいる人間にとっては、ラプターの生産終了はさほど驚くニュースじゃない。ちょっと前から「オバマ政権が誕生した場合、どんな影響が出そうか」って話の中で、「ラプターは生産縮小の可能性が高い」って話があったから。その理由としては、民主党政権だから…ってだけじゃなく、生産工場のある州の選出議員がどうこうって話も絡んでいるようだ。
 
 とはいえ、防衛省にとって「予想はしてたけど、あまり聞きたくなかった」ニュースであることは間違いなさそう。「ファントム代替機はラプターであって欲しい」ってのが本音だったと思われるし。「日本の国防方針に変化はない」などという談話が発表されていたけれど、ただの強がりに過ぎないような。
 
 日本にラプターが必要かどうかは、何とも言い難い。私は「F-35ライトニングⅡでいいじゃん」とは思うけど、英国は「空戦性能だけ考えたら、ユーロファイター・タイフーンの方が上だ!」などと主張している。英国は両方の開発に関係していて、どちらも運用する予定なので、あながちハッタリとも思えないんだよな。
 
 更に言うなら、ライトニングⅡの開発がどうなるのかも、予断を許さない。何だかんだ言って「駄作機できちゃいました!」って可能性もあるからねえ。その昔と違って「とりあえず作ってみたら駄作でした」ってコトが許される時代じゃないので、可能性が低いことは間違いない。でも、「空軍機と空母艦載機を兼ねる機体として開発された」モノって、駄作が多いんだよな。ラプターがある米軍なら「駄作とわかった時点で、ラプター生産再開」ってワザが使えると思うけど、空自はソコまで待てるのか?
 
 その一方で、ロシアが開発中の新型戦闘機「PAK-FA」が、今年中に発表される見通しである。おそらく、夏のモスクワ航空ショーで「試作機かモックアップ(要は模型)が一般公開」されるんじゃないかと。共同開発と称してインドから開発費の一部を引っ張ってきているので、冷戦時代よろしく「大嘘」は言えないはず。かなりマズいことでも生じない限り、夏には新型戦闘機公開となるのでは。
 
 このPAK-FA、色々ワケわからん情報が飛び交っている。冷戦が終わって久しいとはいえ、ロシア軍人の秘密主義が完全に直ったワケではないらしい。まあ、だからこそ「赤軍航空機ウオッチング」は楽しかったんだけど。ただ、現状有力視されているのは「外見はラプターをパクりました」って感じの機体になるんじゃねえかって説だ。
 
 外見も重要だけど、肝心の性能はどうか?わかるかそんなもの。まあ、どうせ「世界最大の流体力学研究所」TsAGIが基本設計したんだろうから、飛行性能はそれなりに高いとは思う。エンジンもSu-27フランカーの時点で「ほんの少しなら、真後ろに飛べます」ってレベルの性能(普通は空気の取り込み量不足で出力低下して墜落する)を達成しているので、ラプター並かもしれない。けど、ある意味肝心の「ステルス性」については、航空雑誌眺めているレベルじゃさっぱりだ。
 
 耳が腐る情報としては、「プラズマを使ったレーダー欺瞞機能がある」なんて話があるけれど、この手の情報が正しかったためしはほとんどない。冷戦時代、東側戦闘機の情報ってのは「過大評価した方が得な奴」「過小評価した方が得な奴」が、それぞれ好き勝手怪しい情報流しまくるのが当たり前だったわけで。たまに東側の方が本当に西側より優れたモノを開発して驚かされるけど、この機能については「眉唾」ってのが私の評価かな。
 
 私の推測としては、おそらくラプターよりはステルス性が低いはず。強化プラスチックとかカーボンファイバー(炭素繊維)といった「非金属複合素材」に関しては西側の方が技術的に勝っていると思われるので、その分「見つけやすい」気はする。ただ、それが「重大な違い」なのか、「厳密に比べると差が見つかるレベル」なのかはわからない。この手の情報は実戦配備された後でも「素人にはよくわからん」のが普通(ラプターのステルス性もよくわかってないレベルなのだ)なので、アレコレ言っても仕方ない気はするけど。
 
 ただまあ、空自関係者が色んな意味で「気にしている」のは間違いない。おそらくは「ロシアと本気の戦争」って可能性は低そうだけど、連中は何かにつけて日本領空付近に無断で飛行機飛ばしてくる存在だからして。
 
 ついでに言えば、中国にもステルス機開発の話がある。ただ…本当に開発できるのかは、ハッキリ言って眉唾。ステルスに関する技術については何とかできたとしても、マトモに飛ぶのかどうかが問題だ。いや、これは決して笑い話でも中国をケナしているわけでもない。マトモに飛ぶ戦闘機を開発するのはタイヘンなんだよ。英国でさえ「単独開発は諦めました」って状態で、我が国も「F-2は日本独自の複合素材翼が強度不足でした」って有様だ。最近開発した機体が「MIG-17を改良しました」「イスラエル(航空機開発能力はそこそこ高いけど、米ロにはとても及ばない)に協力してもらいました」って程度では、ちょっと背伸びしすぎでは…。ただまあ、カネ出してロシアから買うって可能性はあるね。
 
 私は一応これらを踏まえた上で、それでも「無理してラプター買わなくても」とは思うけど、空自が「ラプター以外は単なる当て馬」と考えていたとしても、「その気持ちはわかる」かな。ただまあ、生産中止になりそうな現状において、輸出やライセンス生産を許可してもらえるとはとても思えない。どうするつもりなのか、実に興味深いですね。
 
 ちなみにだ。ラプターとPAK-FAが空戦を行った場合、どうなるのかは全くわからん。「お互い発見できない」という、シャレじゃ済まない状態に陥る可能性も否定できない。するってえと、結局ラプターを買えたとしても、「気がついたら函館空港に着陸してました」って悪夢(MIG-25亡命事件)を再現される危険性があるわけだ。「気にいらねえ奴には先制攻撃」って米国はともかく、空自がこれでいいのかどうかは…どーすんでしょうね、ホントに。

コメント

_ o-tsuka ― 2009/04/11 11:48

中国を侮る無かれ。

J-10とラビは、F-2とF-16ほどは似ていません。

J-10の基礎設計は天安門以前の80年代半ばで、
元々はF404搭載を前提にしていたそうです。
イスラエルとの軍事協力はずっと後です。

FC-1も、もはやMiG-21改とは言えないでしょう。
パキスタンの協力は資金面がほとんどでしょうし。

さらにSu-27をコピーしたJ-11を生産しています。

同時期に3種類の新型戦闘機を量産できる国は、
もはや中国を置いて他にありませんよ。

エンジンの自国開発には苦労しているようですが、
自国設計のターボファンエンジンを量産したことがない
日本よりは先を行っているのでは?

_ F男 ― 2009/04/11 23:57

中国の技術力は侮りがたいと思いますけど、「空力設計」と「エンジン技術」の2点に関しては、「流石に米ロには大きく劣る」と思っております。「フランスと同格」では、キチンと飛ぶ「ラプター対抗機」を設計するのは無茶がありますからねえ。

ただまあ、フランカーのコピーであるJ-11を製造できているワケなので、「エンジンはフランカー互換、ステルス性能あり」ってレベルでいいなら、何とかなるかも知れませんね。もっとも、それでも「空力設計」となると…ぱっと見だけ似ていればOKって世界じゃないからなあ。中国が持っている風洞の性能知らないので、確かなことは言いにくいのは確かですが。

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