7月24日2008/07/24 22:40

 本日のネタは、関西遠征時にちょろっと話が出たネタとして「萌えを取り入れたゲーム」を採り上げよう。アホバカな話題ではあるけど、私の中ではかなーり分析が進んでいたりするので。
 
 萌えを取り入れたゲームとは…典型例の1つとしては、「ユニットをネーチャンの絵に置き換えた」ものかな。「ロシアンキャンペーン」「East Front」「Victory at Sea」…などなど、元となるゲームはこの際何でもいい。ルールも基本的には変えない。ただ、ユニットがネーチャンのイラスト。ルールブックの文体がネーチャンの説明。まあ、補足説明やQ&Aは充実させるかもしれないけど。果たして、今のゲーム界にこーゆーものは必要なのか?ってことだね。
 
 まず言っておこう。上記の例は、イメージしやすそうなので出してみたけど、基本的には「駄目な例」である。こんなモノが出たら、比較的ゲーマーの中で萌え適性が強いと推定される私ですら、激怒しかねない。何故か?まずはその「理由」を語ろう。
 
 現在、シミュレーションゲーマーの「主流」は、この手の萌えを理解しない層だと推定される。本来こういう人間に向けて販売されるはずの商品に「萌え」を追加するのは、明白にマイナスだ。本来買ってくれるはずの人間が買い控える可能性が出てくるし、買ったとしても文句を言ってくる。
 
 ただ、私の怪しげな分析によると、実は「萌えを理解するゲーマー」は結構いる。主流ではないにせよ。「いちいち表に出さない」だけで、飲み会などでつつけばこの手の話題について来るゲーマーは案外多いのだ。こういうゲーマーの中でも「本当にこんなの出して大丈夫?」なんて疑問は出てくると思うけど、まあこの場では「アリと認める」「本来買わないつもりなのに、つい買ってしまった」なんて行動を取ると仮定しよう。
 
 問題は、ゲームのことを理解しない一般人である。こういう連中に対する訴求力は、萌えテイストがあった方が飛躍的に高い。元々がゼロ同然だから…って理由に過ぎないけど。世の中には「○○さん(例となったユニットの絵を描いた人)の作品は、この際どんなモノでも買わなきゃ気が済まない」ってなコレクター気質を持った奴が一応いると推定されるので、こうした連中が買う。この点に限って言えば、萌えの効果は絶大である。
 
 さて、例の対象となった「ゲーム」を見直してみよう。萌えイラストがあろうがなかろうが、本質は「立派なシミュレーションゲーム」である。つまり、主流・非主流を問わず「ゲーマー」に売らないとあまり意味がない。イラスト目当てに購入した馬鹿(そもそも多くない)の大多数は、買ってもプレイしないでしょ。それじゃあ意味が薄い。本格的なシミュレーションゲームにただ「萌えの要素」をブチ込むのは、大いに間違った行動ではなかろうか。
 
 ただ…一般人、つまり「ゲーマーじゃない奴」への訴求力に限って言えば、かなりの効果が期待できるのは事実だ。つまり、「初心者獲得の手段だと割り切って考えた場合、萌えに走るのは一定の効果が期待できる」のでは。よって私は、「萌え要素をブチ込んだ、準シミュレーションゲーム」なら、出す意味があるのではと思っている。
 
 準シミュレーションゲームとは?まあ、明確な定義があるワケじゃない。我々現在のゲーマーが好むようなモノに比べれば「ルール簡単・ゲーム展開単純・何をシミュレートしてるのかサッパリわからん」かもしれないけど、ルールや「作戦の基本」といった部分にシミュレーションゲームっぽい要素が入っているモノ…ってなるかな。
 
 実を言えば、昔はこういうモノがあった。ツクダのアニメゲームは、基本的にはこのジャンルに入れてもいいだろう。日本で最も売れたシミュレーションゲームって噂のある「連合艦隊」に代表されるバンダイのゲームも、コレに含まれるモノが多いのでは。そもそも、私は「超人ロック」(エポック)がなければ、ゲーマーなんてやってない。これも当然含めて良いでしょ。こういったものをとっかかりにしてゲーマーになりました…って連中は、かなりの数になるはず。
 
 しかしだ。今現在、こういうゲームは事実上絶滅している。需要が無くなったから…ではない。いわゆる「萌え」+「ゲームという知的遊戯」を組み合わせた商品ってのは今もって山ほど存在していて、なおかつ「ゲーム要素を強めた、本格的なモノ」へのステップアップ役を果たしている。ただ、昔はその対象が「シミュレーションゲーム」だったのに対して、今現在その地位には「マジック・ザ・ギャザリング」(以下「マジック」)が君臨しているだけの話。トレーディングカードゲーム(以下「トレカゲーム」)業界が今もって一定の勢力を持っていることを考えれば、準シミュレーションゲームを開発する意味は今でもあると思われる。
 
 正直言って、本気で「この業界に初心者を呼び込もう!」などと考えるのなら、まずここから手を付けるべき…ってのが、私の意見だ。人間、「自分がよくわからないもの」に対する敵対心はモーレツに強いのが普通である。私は「よくわかんないからこそ面白い」などと考えることが多めだけど、それでも限界は低い。
 
 こうした敵対心は、事実上取り払えない。よって、「良く知ってる何か」をダシにして未知のモノに挑戦させ…って手法を採るしかない。問題は、この「良く知ってる」とはどの程度のことを言うか、である。ハッキリ言おう。単に名前を知ってる…ってだけじゃ駄目。飲み屋で1時間語れるクラスのものでないと。現時点で「初心者です」なんて人間がそれだけのネタをいくつ持っているって?「萌え」以外に何があるのか、私の方こそ紹介してもらいたいくらいだ。
 
 ただ…理論面についてはともかく、実際問題としては「相当厳しい」と言わざるを得ない。まず、「ゲームという商品」として考えた場合、トレカゲームはシミュレーションゲームより優秀だと認めざるを得ない。シミュレーションゲームの場合、プレイしたければ「あまり安くない」ゲームを1つ買うしかない。また、かなりハマっている人間であっても「2つ買う」なんて行動は基本的には取らない。2つ買うのは、相当特殊な動機がある場合に限られる。しかし、トレカゲームは比較的安い「基本セット」があれば、プレイはできる。つまり、気軽に始めてもらえるわけだ。更に、ハマった奴は「必要なカードのコンプリート」を求めて大枚を叩く。このように「熱意という名の需要に見合った金額の商品を提供できる」ってメリットは、商品として考えたらかなり優秀だ。
 
 商品として優秀なライバルが存在しているってことは、いわゆる「版権獲得」において不利な立場にならざるを得ない。版権問題は語り出すと止まらないので詳細は割愛するけど、版元が考えるところの「メディアミックス」(アニメ・漫画・ゲームなど複数のジャンルに展開すること)に入れてもらえない可能性が高まるんだな。商業ベースでの展開を考えたら、これはかなり痛い。結果として、今現在「萌え要素を取り入れた準シミュレーションゲーム」なるものを見つけようと思ったら、版権問題を誤魔化せる同人誌即売会に足を運ぶしかない。
 
 それに…「萌え要素のある準シミュレーションゲーム」を作ろうと考えた場合、これは言ってみれば「現在のシミュレーションゲームのライバルにもなり得る存在」を作ることになる。家庭ZOCを無理矢理突破して月1回プレイ相手を探している…ってな業界において、好敵手の1人が「新たにこういうモノも始めたので、スケジュール合わせるのが難しくなりました」なんてのは、立派な実害レベルだ。いわゆる「主流派」の、萌えを理解しない方々に「露骨な敵意」を浴びせられても、文句は言えない。まあ、それぐらいを承知の上でなおかつ…って気合いがないと、そもそも成り立つわけがないと思うけど。
 
 作る話題が出たので、「実際こういうモノを作る」話も考えてみよう。具体的に誰がデザインするって?軽いモノだからデザイナー予備軍が…ってな発想では、うまくいかない。こういうものは、むしろ「ゲームとしての本質部分」をキチンと理解できている人間が作らない限り、絶対面白くならない。より問題になるのは、デザインの基本部分についてではなく、デベロップ部分だ。準が付くとはいえシミュレーションゲームテイストなモノなら、ゲームデベロッパーとして優秀な人間がデベロップしないと良いモノに仕上がらない。これを要約すると、「シミュレーションゲーム業界から優秀なデザイナーとデベロッパーを引き抜く形で仕事させる必要がある」ってことになる。コレのドコがゲーマーのためになるって?そんなヒマがあるんなら、フツーのシミュレーションゲームをデザインしてくれた方がずっと有り難いでしょ。
 
 実際問題としてこれだけの「障害」がある以上、あえてこの分野にチャレンジするのは「無謀」だろう。多分、育つ前に潰れる。実を言えば、この方面への「色気」とでもいうモノは、CMJ・GJ共にゼロではないと推定可能だ。この辺は両誌を注意深く読んでいれば感じ取ることが出来る。しかし、実行しようとは思ってないでしょ。特にCMJの場合、「育て方によっては」この分野を担える可能性を持った雑誌(RPGなんちゃら。タイトル忘れた)が事実上廃刊に追い込まれているからねえ…
 
 可能性だけで言ったら、むしろサンセットゲームズに期待すべきなのかもね。これは単純に販路の問題。「シミュレーションゲーマーじゃない奴」が購入可能な販路に対して商品を供給しようとしているので。もっとも、この会社にそのつもりがあるのなら、とっくの昔に「超人ロック」が再版されてるはず…と考えると、やはり難しいのかな。
 
 つまりはまあ、結論だけ言えば「シミュレーションゲームに萌えの導入はうまくいかない」となる。ある意味わかりきった結論だけど、「総論部分ではなく、各論部分で駄目」というのは、フツーの否定論とはひと味違うんじゃないかなあ。
 
 なお、普段の私なら「問題が各論部分なら、根性と気合いで克服可能」という結論を出す。しかし…今回に限ってはねえ。そもそも私個人がどうこうって話じゃないし、私が何かしたからどうなるってレベルの話でもないし。コトはゲーム界内部の問題じゃないからねえ。より一般的な世界にケンカ売って何とかなるとは、とてもとても…ただ、「初心者勧誘」ってのはそういう一般的な世界に飛び出してどうこうって話であり、ゲーム界内部に留まって話をしている限り、永遠にダメダメだとは言っておこうかな。昔のゲーム界にはその活力があったと思うんだけど、あれは幻だったんだろうなあ…(遠い目)。

コメント

_ へなちょこ ― 2008/07/25 00:02

ども。面白そうなテーマですな。
大概のゲームのユニットは、絵を描くには小さいので、カードドリブンゲームならば、絵を描くのには丁度良い塩梅ですね。
既存のゲームのカードに対応する形で、萌えキットの電子データを作成し、無償DLで配布するのはどう?
ナポウォーの日本語文みたいなイメージで。
これならば、純粋にカードの絵を作成する労力だけなので、デザイナーの労力は必要ないでしょ。
絵師をどうするか? んなものは、ゲーマーまたはゲーマーの嫁さんその他の有志でOK。
〆切なし。暇なもとい、時間のある時に書いてね。書いたら発売元のHPからDL出来るようにするお。 って感じでどうかな。DLした誰かが、 ゲーム本体を購入してくれればラッキー。 
課題はありますがね。 ターゲットは販売元のHP知らないし、クオリティもどの程度のものが出来上がるのか判らないですし。
>「シミュレーションゲームに萌えの導入はうまくいかない」
やりかた次第では上手くいくかも知れないけど、ハードルが高そう。 手段が目的に変わりそうですね。

_ takoba39714 ― 2008/07/25 00:17

今回のお題はいちいち説得力があり、参りました。
ちなみに私は萌えを容認できない組です。
ゲームじゃなくって、最近ミリタリー+萌えのなんちゃらっていう本が、ブームなんだかたくさん出ていますが、私あれ生理的に受け付けません。
東京都知事が脚本をかいた特攻隊の映画のBGMがB’Zだったことにも、激しく憤りを感じます。
戦争をゲーム(遊び)の題材にしているくせに、なにを言うかといわれたら、返す言葉がないのですが、明らかに一線がそこに引かれている気がするのです。
うまく説明できないんですけどね。

_ リトバススキー ― 2008/07/25 14:17

萌え側重視の人たちが、萌えにくっつけた余分なモノに付いてくるのかという問題もあると思います。一過性でふくらんでしまう事が、ジャンル的には不健全な結果を招くこともありますし(ex.モンスターメーカー)。

_ F男 ― 2008/07/25 23:26

>へなちょこ殿
うーん…「絵だけ萌え」じゃあ弱いんですよ。それだけでいいのなら、コミケで売ってそうなレベルだし。そういうものがあることは否定しませんが、インパクトは弱いのではと。
>takoba39714殿
あの手の萌えを理解できないのは、わかります。私もつい「わかってねえなあ」とか言ってしまいそうになりますし(苦笑)
>リトバススキー殿
萌えで引き込んで…という場合、10人…いや、100人に1人が「わかってくれる」なら、良しとしなくてはいけないでしょうね。それだけでも「従来のやり方」より多くの新兵獲得効果があると思います。
一過性でふくらみすぎて…というのは、難しい問題ですね。うまくコントロールしたいトコロなんですが、それが簡単とは思えませんからねえ…
ただ、失敗を恐れて何もしないより、可能ならば何かしらやってみるって姿勢は重要だと思っております。

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