4月13日2007/04/14 04:44

 PC系というより、IT系の話題。音楽配信ビジネスについて思うところを書いてみたいかなと。まあ、ビッグニュースもあったことだし。
 
 音楽配信ビジネス最大手のAppleが、いわゆるコピーフリーの楽曲を扱うことにしたそうな。この辺の経緯はIT系のサイトを参照して欲しい。多少お値段上がるけど音質は良くするそうなので、消費者にとっては歓迎ってコトになるかな。
 
 実のところ、私は音楽配信は全く利用してない。PCでの音楽再生にはiTunes使っている(確かに使い勝手がいい)けど、ダウンロードは利用してない。理由は特にないんだけどね。強いて言うなら、一般性なんてカケラもないモノばかり聴いてるからかなあ。
 
 さらに加えて、私は音楽をPCでしか聴かない。iPodに代表される「携帯再生機」持ってないし、携帯で音楽は聴かない。よって、コピーフリーの恩恵なんてまるでない。音質についてはウルサイ方に分類されそうだけど、まあ限界は低い。正直言って、このニュースは「直接的にはどーでもいい」ってことになる。
 
 それでも、やはりこのニュースは歓迎したいってことになるかな。いわゆる「コピーガード」は好きになれないので。話が「違法コピーを防ぐ」うんぬんに留まっているのならこの際いい。それとは別の部分でやたら使い勝手が悪くなるのだ。ましてや音質が悪くなるなんて話まである。カネ払うのは仕方ないとしても、それ以外の負担を要求されるのはかなり納得がいかない。
 
 その意味では、これでやっと正常化へと向かい始めたって気がするのは確か。いやあ、めでたいめでたい…と言いたいところだけど、まだ問題はあるんだよね。実はこのニュース、今のところ日本じゃほぼ無関係なんだもの。
 
 Appleは「コピーフリーにしないのはウチの都合じゃねえ、レコード会社側の都合だ」と主張している。実際には恩恵受けてるハズだけど。このため、Appleが何をどう主張しようと、レコード会社側の承諾がないとコピーフリーって話にはならない。「コピーフリーOK」って言い出したのはあくまで米国の会社(大手で世界的に影響力あるけど)なので、今のところ日本の楽曲は無関係なのだ。
 
 日本でもそのうち…と言いたいところではあるけど、その辺どうなるのかはよくわからん。日本には凶悪な「抵抗勢力」が存在するからだ。それは何かって?携帯電話会社である。音楽配信ビジネスって枠組みで考えた場合、思いっきりライバル関係になるからねえ。
 
 そりゃあね、今のところ直接的にはバッティングしない。携帯電話用のサービスは携帯電話を介してしか受けられないから。「PCの世界で何が起きようと、携帯には携帯の理屈がある」で済む話だ。けど、この図式はかなり危ういものである。iPodの機能が付いた携帯端末iPhoneってものの登場がわかっているだけに。
 
 iPhoneに代表される「スマートフォン」(高度な機能付きの携帯端末)ってのは、実のところ日本の携帯電話キャリアにとっては都合が悪い存在である。ビジネスモデルを粉砕される可能性があるからだ。何でそうなるのかって?これは、携帯電話の理屈をPCにあてはめて考えるとわかりやすい。
 
 今の携帯電話キャリアは、自社の端末で使えるソフトに関しては独占供給してるようなものだ。Windowsを買ったら、自動的にブラウザはIE、メールはOutlook、ワープロはWordで表計算はExcel…ってなものである。これがいかにオイシイのか、わかる人にはわかるでしょ。スマートフォンはなまじ高機能なだけに、この図式を崩壊させかねない。
 
 もう1つ見逃せないのが、買い換え需要を激減させかねないことである。今の携帯電話はソフト=本体である。新しく導入されたサービスの大半は、新しい端末買わないと利用できない。けど、スマートフォンの場合はソフトウェアアップデートだけで対応できる局面が増えるはず。これまた携帯キャリアにはあんまり都合良くない。買い換え頻度が減れば、「本体価格安くして通信料金を上げる」って今の図式に重大な疑問が付くからねえ。
 
 他の点についてはさておき、音楽配信に関しては携帯キャリアは極めてマズい位置にある。携帯に特化して物事を考えてきたので、比べられると勝てないのだ。だってそうでしょ。いわゆる「着うた」は、携帯電話でしか利用できない。ということは、何をどう頑張っても音質には限界ありまくり。iPodの音と直接比べる分には互角と仮定しても、ちょっとカネかけたスピーカー付けたPCで再生できるかどうかで思いっきり差が付く。ましてやCDに焼いてド高級オーディオで再生された日には…
 
 そりゃあね、大抵の人間にとっては「高級オーディオで再生できるかどうか」より、「携帯電話で再生できるか」の方が重要だ。けど、「何でも再生できる」と「携帯電話だけ」って比較をされたらアウトである。いくら「最近の若者は耳が腐ってる」とはいえ、それぐらいの分別はあると思うぞ。
 
 つーわけで、携帯キャリアは既得権益を守るため、色々働きかけることになる。着うた市場が大打撃を受けるのはレコード会社側も困るから、「コピーフリーは良くない」って意見を受け入れる意味はあることだし。将来を考えれば間違った結論だとは思うけど、その辺冷静な判断が下せるようなら、意味不明なコピーガードを採用することはなかったはず。連中の考えるコトなんて、しょせんそんなものよ。
 
 とはいえ、一応希望はある。「音楽は携帯で聴けばいい」って考えは、レコード会社にとって好ましくない。レコードの売り上げが減るから…ではない。「音質なんてどーでもいい」って概念を認めるのと同義語だからだ。ビジネス面を無視しても、これは認めたくないでしょ。自らの存在意義に関わるからねえ。それゆえに、携帯市場は無視できないけど、最優先にはしたくないでしょ。
 
 私にとっては、音楽配信ビジネスそのものはどーでもいい。利用してないんだから。私の敵は「音楽は携帯で聴けばいい」という、音質軽視の考え方である。今でさえバカ高い高級オーディオの需要が減ってしまったら、さらに値段が上がるではないか。「良い音が聞きたい」って概念は、広まってくれた方がずっと有り難い。そういう観点で考えた場合、「コピーフリー」の方が都合がいいのでは。少なくとも私はそう思う。