4月6日2007/04/07 03:09

 今週は忙しかった…色んな意味で辛かった。ま、これぐらい良くある話としておこう。来週からはもう少しマトモになるんじゃないかな。
 
 本日の話題は、「名作のリニューアル」といこう。2点ほど「気になる」作品を見かけたので、何となく語りたくなった。
 
 気になる作品その1。村上春樹訳「ロング・グッバイ」。まだ通読してないので、本来なら色々語るのは反則気味ではあるんだけど…その前に、通読すべきかどうかから悩んでいるからなあ。
 
 何で悩んでいるのか?そりゃもう、手元に「以前の定本」である清水俊二訳の「長いお別れ」があるからだ。ざっと読んだ限りでは「清水訳の勝ち」としか思えないのに、新訳を通読する価値はあるのか?この辺ちょっと悩ましい。
 
 作品については、自分で調べてみてください。いわゆる「ハードボイルド」って分野のバイブルの1つであり、情報は山のようにあるはず。私も好きな作品です。私がライムを好むようになったキッカケは、間違いなくこの作品でしょ。作品に出てくるギムレット(ライム+ジンをシェイク。ちなみにステアーだとジンライム)じゃなくてライムサワーってところが「しょせん日本人」なんだけどさ。
 
 何で新訳を出したのかについては、訳者自ら後書きで語ってます。清水訳は原文からの省略が多いこと、それと「さすがに古くなった」ってのが主な理由かな。ま、言わんとすることはわかる。多いに賛同できると言ってもいいくらいだ。
 
 ただ…拾い読みの段階では、なんか落ち着かなかった。主な理由は「清水訳に慣れ親しみすぎてる」だとは思うけど。なにせ好きなシーン、好きな台詞は今でも時々拾い読みしてるからねえ。特に好きなのは…いや、コレを語るとネタバレになる。
 
 強いて言うなら、ちょっとばかり大人しいかな…って気がする。普通なら気にならない程度だとは思うけど、作品が作品だけに…「タフでなければ、生きてゆけない。やさしくなければ、生きてる資格がない」(同じ作者の「プレイバック」より)はずなのに、なんかタフじゃなくても生きてゆけるような…そりゃマズいでしょ。
 
 省略が多い。訳語が古い。そういった欠点があるとしても、清水訳は偉大だ。そんなことはわかりきっていたけど、改めて比較すると際だつような気がしますね。まあこれは私個人が拾い読みしての感想なので、別の意見も大いにあるんだろうけど。そんなものに真っ向勝負を挑んだ村上春樹氏の度胸は買うけど、私はそれ以上の評価はできないような…ま、作品評価ってのは非情なものよ。
 
 これとは別に気になったのは、「銀河英雄伝説」の文庫。創元社から最近出た。何故。徳間の作品のはずなのに。徳間書店の経営が何かとヤバいってのは知ってたけど、こんなものを他の出版社から出すとは…何がどうなった結果なのかは知らないけど、スゴいと思うな。
 
 「長いお別れ」も「銀英伝」も、良い作品である。それだけに、「新訳」だの「出版元変更」といった多少奇妙な扱いを受けているのを見ると、「なんだかなあ」って思いますな。どんなに良い作品と言えども、世間から忘れられないように何かしら仕掛けるべきであり、ちゃんと活用してこその「著作権」だって気がするのは確かなんだけど…仕掛け方が間違ってるとまでは言わないけど、なんかヘンだと思うのは私だけ?
 
 この問題は、踏み込むと「著作権延長問題」だの「メディアミックスによる話題作り」だの「海賊版・同人誌をどう評価すべきか」だのといった問題が絡んでくる。「正しい作品の活用とは」なんて、商業的にも法律的にも頭の痛い問題じゃないかな。もちろん、「作り手と受け手」って問題に限定して考えても。アタマを空っぽにして「面白ければそれで良し」って態度を押し通すのも悪くないけど、たまには小難しいことを考えてみてもいいのでは。
 
 しかし…本来ならば、「ネタになりそう」だけで両方とも手にとって無意味に比較し、もっとワケわからん説をがなり立てるのが私である。けど、今はその元気がない。仕事のこともあるし、「新雑誌お試しキャンペーン」がまだ継続中だってのもあるかな。つーわけで、本日は珍しくオチなし。なんかキレが悪いぜ…