3月12日2009/03/13 00:14

 久々の献辞。柿崎唯殿へ。私に「ゲーム雑誌の原稿を書いてみよう」と考えたキッカケを与えていただいただけではありません。「ある悲惨なる戦い」の研究部分は大いに参考になりましたし、東部戦線の戦い方は「East Front」の連続ブリッツ戦略とその対抗策を一部参照しました。コマンド誌84号において、私と柿崎殿の記事が共に掲載されたことは大いなる喜びです。本来でしたら私の連載に掲載する献辞ですが、流石に恥ずかしかったので、こちらで感謝を捧げさせていただきます。これからも「私の目標とするライター」であり続けていただければ、これに勝る喜びはありません。
 
 昨日、「ヒトラー電撃戦」の連載最終回のチェックを終え、その旨編集部に伝えた。とりあえず、私の作業はこれで基本的に終了。色んな意味で感慨深いですね。
 
 思えば色々あった。第2回はまとめ方に難渋し、何度もリテークが飛び交った。第3回は原型を完成した時点で分量を確認したところ、予定を遙かにオーバー。青くなって編集部に「分量増えちゃいました。どうしましょう…」と相談する羽目に。第4回(今回提出)は、研究を進めた結果、一部で当初予定していた内容が完全に瓦解。最終的には全部編集部からオーケーをもらえたわけだけど、正直「よくOKが出たなあ」って気持ちも強い。
 
 内容面に関して言えば…色々未熟な点はあるだろうけど、自分なりに書きたかったことは書けたと思う。一口に作戦研究と言っても色々あるけど、私が目指したのは「基本原則を提示することにより、つまらないミスでゲームが壊れることを防いてもらう」ことに重点を置いたものだ。そのため、実は「ベスト戦略を見つけ出す」ことより、「安易な必勝法を消す」ことにやや重点を置いた。これにより、独軍プレイヤーに「色々試してやる」と、連合軍プレイヤーに「何をしてこようとも、最終的に勝つのはこちら」と感じてもらえれば、私としては最高なんだけど…
 
 世間的な評価がどうなっているのかについては、未だよくわかってない。2chは怖くて見てないから(苦笑)。想像するにあまり評判にはなっていないんだと思うけど、それは仕方ない。派手に騒がれたいのなら、もっと別のゲームを題材にすべきでしょ。私が目指したのは「地味だけど実用的」って路線である。連休を使ったゲーム合宿でプレイするため、久々にこのゲームを引っ張り出したプレイヤーが、参考のため私の記事を読み、プレイ後に「なるほどね」と感じてくれる…というのが、私の狙いなのだ。それが成功したのかどうかは、かなり後にならないとわからないような。
 
 こういう基本構想は、実はあっさり決まった。色んな意味でイロモノ感が漂う(正直言おう、私もルールブック読んだ直後にそう思った)けど、実際プレイしてみるとキチンと機能している。しかも、単なる「歴史の流れ追体験」に留まらず、色々できる(できちゃう)けど、ツボはキチンと押さえてあるようだ…ってのが、このゲーム。よって、ある程度「何をしたらいいのかわからず、狼狽えてしまう」って状態を解消できるようなモノを書けば、後はプレイヤーの判断にゆだねればいい。私はそう思っていたので、後は「そのためにはどんなモノを書けばいいのか」って部分に集中できた。
 
 私の経験から言って、モノを書く際難しいのは「何が言いたいのか」って部分だと思う。テーマを選ぶまでは簡単かもしれないけれど、そのテーマのどの部分を書けば「自分なりの原稿」になるのか、そこを決めるのがタイヘンなのでは。その点、今回はテーマを選んだ時点で「何を主張すべきなのか」はあっさり決まったので、相対的に「楽な」作業だったような気もする。先輩ライター各位が様々なゲームから「書くべきコト」をうまく選び取っているサマを見ると、「私なんてまだまだ」だと実感しますね。
 
 編集部が私の基本構想を丸呑みしてくれたのも、正直大きかった。連載第1回は「ポーランド戦」と「ソ・フィン戦争」という、しょーもない戦場の話だ。私は「ここでの戦い方がキチンとわかれば、後はその応用だ」と主張したし、実際心底そう思っているけど、フツーはこれだけで連載1回分書かせてくれない。ある意味誌面を贅沢に使わせてもらった。そのおかげで、「基礎はキッチリ語ってある」という安心感が出て、後の原稿がかなり書きやすくなった。また、第3回で「独ソ戦と大陸反攻を同時に掲載する」という荒技を認めてくれたのも、自分の中では大きかった。連動性を強く打ち出したかったのでそうしたのだけど、おかげで分量は予定オーバー。仕方ないこととはいえ、「分けて書いて下さい」と言われちゃうかも…と、怖々打診したことを思い出す。
 
 こうやって考えてみると、私の原稿は「テーマとなったゲームの出来」と「編集部の度量」の2つが大きくアシストしてくれたおかげで、無事書き上げられたような。こういう支援は簡単に得られるモノじゃないと思うので、実感として「これでオレも一人前のライター」なんて感想は出てこないかな。「4~5頁の短期集中連載4回」という、今から考えるとそれなりの大仕事(文字数だけで考えたらそうなる)をこなしたわけではあるけれど。
 
 私のように「原稿書いてみようか」という方には、まず「その題材に対して、何が言いたいのか」明確に見えているモノを題材としてオススメしたい。新人である以上、原稿の基本構想段階では〆切がない。よって、まずは「このテーマについてなら、言いたいことがズバッと決まっている」ってなモノを見つけるまで、タップリ時間をかけると良いのでは。「多彩なテーマから言いたいコトを見つけ出す」とか、「定期的にそんなテーマを見つける」なんて高度なコトは、もっと後になってから身につけても間に合うと思われるし。
 
 次に、そのテーマについて、とにかくたくさん、書けるだけ書くことを考える。「まずは短いモノから」とは考えない方が良い。そりゃあ冗長なものより、簡潔な方が良いのは間違いない。でも、まずは「語りたいことをキッチリ書ききる」ことを優先させた方が、少なくとも気が楽だと思う。書くべきコトがキッチリ書けていれば、編集部が「わかってくれる」可能性は低くないのでは。それがプロってモノでしょ。
 
 これらはあくまで私の経験だけに基づいたものであり、必ずしも万人に当てはまらないと思う。とはいえ、商業誌に掲載される原稿を完成させることはタイヘンであり、フツーはそのキッカケすら見いだせない以上、とりあえず参考にはなるのでは。つーか、参考ぐらいにはなってもらわないと困る。私が「とりあえず、こうすれば商業誌の原稿が書けるようだ」って報告をすることにより、「じゃあ、オレもチャレンジしてみるか」って人間を増やす手助けになる…ってのがあるんだから。
 
 もちろん、私も「これで私の仕事は終わり」などと悠長に構えているワケにはいかない。そんなことしててら、またジェットストリームアタックを喰らいかねないワケで。「商業誌に原稿を掲載してもらう」という第一目標を達成した以上、第二段階の「継続して書く」「面白いモノを書く」といった領域にたどり着くよう、努力だけはしなくては。そうなれるのかどうかはまた別にしてもだ。ガイアを踏み台にして飛び越えただけじゃ駄目なんだよ、ちゃんとマッシュを斬らないと(笑)。