10月22日2012/10/23 01:18

 本当は他に色々ネタが挟まるはずだったのだけど、諸般の事情により「猿遊会回顧」に。ま、緊急性?は一番高いので。
 
 猿遊会とは?実を言うと、細かい定義はよくわからん(苦笑)。とある人望あるゲーマー(としか表現しにくい…)主催の、オープンコンベンションと呼べばいいのだろうか。とりあえず、多彩な顔ぶれが集まるゲーム会ではある。
 
 今年、私は「サードワールドウォー」に参加。80年代後半に出た、「近未来に発生するかも知れない第三次世界大戦」を扱ったゲーム。今じゃ近過去になってしまったけれど。かなりタイヘンなゲームだけれども、ルールは案外複雑じゃない(比較論である)ので、今でも「プレイしたい」と考える人間はいる。冷戦終了直前くらいに出た関係上、出てくる兵器が案外古さを感じさせないのがナイス。
 
 私の担当はワルシャワ条約機構軍(以下WP軍)・南西方面。主要目標はイスタンブール。ココを奪取して黒海艦隊を地中海に出撃させるのだ!って狙いだね。なんか派手な任務に見えるけれど、内実は単なる脇役。だって、主役たる西独侵攻(中央戦線)はド派手だからねえ。
 
 この陣営・方面担当を希望したのは、少しばかり理由がある。私がこのゲームを他人とプレイしたことは1度しかなく、その時はNATO軍南西方面担当だった。その時喰らった作戦がどれぐらい有効なモノなのか、試してみたかったのだ。私がNATOで対戦相手がその作戦使ってくれる…ってのがベストではあるけれど、相手の作戦を強要するのはちょっと…だったら、自分がWP軍を担当するしかない。
 
 その作戦とは?実は単純なもので、「第1ターンからユーゴスラビア侵攻」である。中央だけを扱ったゲームでもユーゴはちょっとだけ入っていて、ココを通過してどうこう…って作戦が成立する。更に、南西方面だけを扱ったゲーム(ユーゴの大半が入っている)では、「中央戦線の都合により」第1ターンから強制的に侵攻義務が生じることがある。話だけ聞けば、別に特別な作戦ではない。
 
 とはいえ、ユーゴ侵攻を「WP軍全体の都合で考えて」選択できる統合シナリオにおいて、最初からユーゴ侵攻って手は意外だった。WP担当者の宣戦布告を聞いた時、当時私を含むNATO担当者(数人いた)の目が点になった記憶がある。もう20年くらい昔の話なので、記憶違いはありそうだけど。
 
 この時、WP軍は気持ちよくユーゴ軍を蹴散らしていた。そりゃそーだ。ユーゴ軍はかな~り弱いし、セットアップは固定されていて、西独で許されている「事前前進」もない。おまけに、「コレをやるってことは、圧力が弱まるんじゃ…」と期待したトルコ方面でも、それなりに前進してくる。コレも当たり前なんだけど。想定外の展開にNATO担当、特に私が若干パニックを起こした感じはあった。
 
 ユーゴを「通過」したWP軍は、そのまま伊に突っ込んでいったらしい。あの辺は中央戦線担当だったので、何が起きたのかはよくわかってない。ただ、ルーマニア軍主力を含むWP軍の猛攻は想定外だったらしく、「ユーゴがもっと抵抗してくれれば…」などという無茶な愚痴(出来るかそんなコト)が飛んできたのは覚えている。ちなみにこの時はペルシアンガルフとの統合ゲームで、そこからやって来たB-52(滅茶苦茶強い)を口八丁で私が強奪したにもかかわらず、担当戦域で大嵐(航空機飛べず…)を出すといった間抜けを演じたりもしたけれど、時間切れで途中終了。あのまま進めていればどうなったのかは、気になった。
 
 実はもう1つ、この作戦を採用したくなった理由がある。今回「やりましょう」と提唱されたもりつち殿のブログに掲載されたソロプレイのリプレイに、「イスタンブールを早期に陥落させたのが大きかった」と掲載されたのだ。このリプレイを今回の参加者がチェックしている可能性は高い。「なるほど。じゃあ、シッカリ守らないと。」と考えてくる可能性は、大いにあった。
 
 南西戦線単独なら、それでも「目標:イスタンブール」しかない。得点源が他にあんまりないので。それに、強引にゴリ押しすれば何とかなりそうだ。しかし、今回は統合ゲーム。ということは、他の戦線(多分中央)からシャレにならない増援が投入され、どうにもならなくなる可能性があったのだ。地上部隊は展開が難しいのでともかく、航空機がヤバい。過去私がB-52を強奪したように、何かしら凶悪な航空機が追加投入される可能性は高かった。
 
 あくまで私の印象&経験によればだけど、凶悪な航空機が投入されると、イスタンブールを抜くのは難しくなる。最悪、どーしよーもなくなるのでは…って心配はあった。そんなもの、攻撃テクニックで何とかするのが基本だろ!って言われそうだけど、あんな狭い戦線では工夫もへったくれもない。正直、全力攻撃しても苦しいです…って状態が予想されたし、そうなってから慌てるのはイヤだった。ならば、他の手を考えるしかない。
 
 理屈から言えば、イスタンブール方面に凶悪な航空機を引きつけているんだから、他方面の攻撃が楽になるはずである。けれど…なんつーか、自分の手で操れる範囲内でそーゆー場所を創り出したい、ってのが人情じゃないか?そう考えると、ユーゴ経由の伊侵攻は魅力的である。コレが上手くいけば、「イタリア防衛に使われるはずの航空戦力を、トルコ方面に引きつけたから…」と主張できるじゃないか(笑)。
 
 最後にもう1つ。この作戦を採用すると、ルーマニア軍は多分敵の航空機があんまりいない地域に投入される。よって、「空爆で一部ユニットが吹っ飛ばされて裏切るんじゃねーだろな」と怯えなくて済みそうなのだ。いや、これ冗談じゃない。昔々の対戦では「ルーマニアは裏切りの可能性アリ」だったので、「イスタンブール攻撃に使われて傷ついた部隊を、B-52の空爆で吹っ飛ばしてしまえ」って計画があったのだ。
 
 そんなワケで上級司令部に「第1ターンからのオーストリア・ユーゴ侵攻」を意見具申してみたところ、「大丈夫なのか?」というエクスキューズ付きながら許可が出た。多少迷ったけれど、昔の対戦相手を信じてユーゴに宣戦布告。中央の半端部隊とルーマニア軍主力でユーゴを攻め、そのまま伊方面に突っ込む。当座の目標はベネチア。
 
 トルコの攻め方は、過去に喰らった手を、覚えている範囲で臆面もなく真似た。実は色々問題があったことが判明したけれど、それはそれでいい。今回は知らなかったのだから仕方ない。次回以降(あるのか?)にその知識を活かせばいい。そのせいもあってイスタンブールはやたら固くなる。オマケにやっぱり「シャレにならない航空機増援」が投入される。米軍自慢のA-10攻撃機(対地支援力は最強)がやって来たのだ。実はトルコ・ギリシア空軍は結構強いので、正直歯が立ちそうもない。航空支援はアテにならないこともあるので、死んでも実害の少ないソビエト兵(同盟国で攻撃すると戦争脱落の危険がある)で攻撃してみたところ、いきなり半分が溶けて無くなってしまった…とはいえ、反撃されるほどではない。以後バルカン方面はにらみ合いに終始した。ある意味、NATO軍大勝利である。
 
 しか~し!伊方面は結構快調に進撃していた。序盤は私が担当してなかった(中央担当の方は忙しいので、後に引き継いだけど)ってのが大きいと思うけれど(苦笑)。なにせこの方面はNATOの航空機が弱い。数が少ないのだ。この方面の空を担当するのは伊空軍とユーゴ空軍だからなあ。そこを活かしてWP軍側が多方面から航空機を突っ込み、航空優勢を創り出す始末。結果、第4ターンに当座の目標であるベネチアを陥落させる。この時点でイタリア内にはロクに部隊が残ってない。仕方なしにアルプス方面の守備隊を引き抜いたが、これらは戦力的には弱い。山岳ならともかく、平野では屁の突っ張りにしかならない。真面目にイタリア全土占領が視野に入る。大戦果だ。
 
 もっとも、この大戦果にはカラクリがある。NATO軍中央戦線は序盤から大劣勢であり、この方面に部隊を回す余裕がなかったのだ。それどころか、伊軍を空輸して戦線を支えなければ…でもこの方面もヤバい…ってな感じ。あげく第4ターンに戦線が大崩壊をおこし、「何故マップ上にパリがない!」って有様。流石にこの時点でゲームエンドとした。
 
 一応勝利得点を計算してみたところ、トルコ方面の善戦が効いて「WP軍実質的勝利」止まり。でも、「実質的にNATO投了」もやむなしでしょ。ライン川戦線が大崩壊だもの。このゲーム、WP軍の優勢が続くと「止めようが無くなる」って話は聞いたことあるけれど、ココまで行けるのね。逆に劣勢に陥るとボロ負けすることも多いって話があるので、バランスが悪いってワケではないんだろうけど。
 
 私としては、とりあえず「第1ターンからのユーゴ侵攻」が「チャンと成立する手」と証明できて嬉しい。昔あの作戦にヤラれたのは、我々がヘボ過ぎて「どんな作戦でも成立させちゃう」レベルだったから…ってワケじゃなかったようだ。NATO側もユーゴ・イタリア方面にも航空機を突っ込めば対応できそうだけど、バルカン方面に加えてコッチにも航空機を回すと、中央にモロ響きそう。事前に緻密に想定していたならばともかく、ある意味「想定外の展開」だったので、その辺のバランス配分が難しかったのだろう。その昔々のプレイで、中央担当がボヤきまくっていた気持ちが、今になってやっとわかった気がする。当時はコチラも当事者としてテンパっていたので、そこまでわからなかった。でも、ユーゴの抵抗力に期待するのは、やり過ぎだ(笑)。
 
 ビッグゲームは何人かに分担してプレイされることが多く、しかも途中で終了してしまうことも多いので、どうしても「目の前の敵をやっつける」ことに終止しがちになる。いわゆる「作戦研究」が進んでいるモノなんて、数えるほどしかないと思うな。「サードワールドウォー」もかなりタフなゲームなので、「各戦線にどれだけ部隊をバラまけばいいのか」はあんまり考えられていないと思う。普通は検証しているヒマがない。そんな中で、過去の対戦相手がどーやって「イスタンブール軽視・イタリア重視」って作戦を編み出したのかはよくわからないけれど、喰らった私に強烈な印象が残ったのは間違いなく、今回他の方に「伝授」できたのはちょっと嬉しい。ま、だいぶ劣化してはいるんだろうけれど。
 
 今回は事実上このゲームにかかり切り…というわけではない。無茶苦茶忙しい中央と比べるとヒマなので、他の対戦なんぞも比較的ゆっくり眺めることが出来た。多少申し訳ない気持ちがあるけれど、まあある程度は仕方ないとしておこう。相変わらず楽しい週末でした。ただ、終わった後ドッと疲れが出たのは事実。負担はあんまりかかってないはずだから、自分でも知らないうちに緊張していたんだと思われる。「欧州を真っ赤に染める」のはタイヘンなのだ(笑)。
 
 最後に、このプレイに参加した各位、及び猿遊会主催者のgameape殿、更に全参加者の方々に、特別な感謝を捧げます。皆様あってのゲーム界だし、ゲーム界あっての私です。これからもシミュレーションゲームって世界で共に戦い続けましょう。