5月12日2009/05/13 02:20

 話のマクラとして、オープニングに小ネタを。某IT情報系サイト(米国版の翻訳)に、「さようなら○○、今までたくさん魚をありがとう!」(○○には具体的名称が入る)って表題+イルカの写真があり、コレ見て吹いた。多分、コレを読んだ日本人の99%は「何故こんな表題+イルカなのか?」わからなかったと思う。「銀河ヒッチハイクガイド」は英語圏以外じゃあんまり知られていないし。英語圏ではこういうトコロに説明抜きで登場するほどメジャーなんだなと、改めて感心しました。
 
 本日の話題は、「国立メディア芸術総合センター(仮称)」について。民主党の鳩山幹事長から「国営マンガ喫茶」などと叩かれているようだけど、一応私なりの意見を述べておこうかなと思って。
 
 このメディア芸術総合センターとやら、要は国営の美術館である。ただし、収蔵品「映画、マンガ、アニメ、ゲーム等、メディアアート等」だとか。これらを一元的に扱う美術館を、国が作って運営は外部委託するんだとか。ちなみに、建設予定地はお台場。
 
 こういった「ハコモノ行政」については、色々言いたいコトはある。その意味では、「下らない」の一言で片付けてもいいような。ただまあ、あえて言うなら、私はこの構想自体は悪くないような気がする。
 
 実は私、美術館や博物館は嫌いじゃない。人だらけの「○○展」みたいなものは好きじゃないけど、ゆっくりじっくり見られる常設展示は好きでねえ。ルーブルもじっくり見てきた(流石に一部省略した)し、大英博物館やナショナルギャラリーも「また行きたい」と思っている。
 
 そんな私の趣味から言えば、日本ってのは博物館・美術館のたぐいが「弱い」気がする。東京だと上野に立派な美術館・博物館があるのは知っているけど、あそこの収蔵品がルーブルやらナショナルギャラリーに「勝てる」とは…いやまあ、「世界に冠たる」歴史を持つ英仏にかなわなくても当然だし、上野は上野で結構いい品揃っているとは思うけどさあ。
 
 そう考えると、何を扱うにせよ、美術館が強化されるのは歓迎したい。「そんなもの芸術じゃねえ!」と思う人間が多いかもしれないけれど、それはそれで悪いコトじゃないのでは。いわゆる「現代芸術」もそう言われているんだし。
 
 ついでに言うと、私は結構「現代芸術」好きです。ややこしい理屈はわからないけど、アタマ空っぽにしてボケ~と見ていると、「これはこれでなかなかオツですな」って気分になる。おそらく日本人ってのは、「美術品とはこういうモノだ」って思い込みが強く、それに外れた品に対する拒絶反応が強いんだろうな。私に言わせれば、もったいない話だ。
 
 マンガ・アニメを扱った美術館というか博物館というか…ってモノは、すでにいくつかある。でも、その大半はクリエイター(個人中心だけど、集団って場合もある)もしくは会社単位のものであり、全体像を追いにくい気がする。権利関係なんかを考えると、どうしてもそうなっちゃうわけで。その点、国の施設ならば権利関係はクリアしやすいはず。そのためにいくらカネかけるのかは別にして、こういうモノを国で造る意義はチャンとあるとは思う。
 
 とはいえ、国の予算ってのは有限であって、優先順位を考えた場合…と言うのなら、もっと現代芸術を充実させろ文化庁。ある意味ではマンガ・アニメより支持者が少なそうだけど、それは「みんな実物に触れたことない」からじゃねえのか。ああいうモノは目の前でじっくり眺めないと、良さがわからないと思うんだけどなあ。今の日本で現代芸術系の作品探すのって、それなりに大変だと思うぞ。その現状を変えようとは思わないのかね?もっとも、日本における現代芸術の地位を考えれば、アニメ・マンガより優先順位が低いのもわかるような。せめて、コレが潮目を替えるキッカケになって欲しいけど…
 
 ちなみに、「建設予定地がお台場」って部分にも批判があるようだ。アクセス悪いとか、秋葉原・池袋・杉並の方が相応しいのでは…って話だ。これについては…まあ、アクセスの悪さは否定しない。でも、別にお台場でもいいじゃん。私に言わせれば「堂々と上野の森に造るべき」なんだけど、「美術館とは高尚なモノだ」と思っている層(私は大いなる誤解だと思うけど)の反発を考えれば、上野って訳にはいきそうもない。だったらドコでもいいような。
 
 ついでに言えば、お台場と言えばコミケ。地方からコミケ目当てに上京してくる奴なんてかなりいるんだから、そのうちの一部でも「ついでに見ていくか」と来場すれば、集客に問題があるとは…更に言うなら、東京ビッグサイトでは「コミケ以外のヲタク向けイベント」もたくさんやっているんだから、東京近郊在住のコアなヲタクは「コミケの時は忙しいけど、別のイベントのついでなら」で見に行く可能性はある。これはこれで納得できる立地だと思うけど、どうかね。
 
 どうせ国が選んだモノなんて…って批判も、ある意味的外れじゃないかな。国立の博物館・美術館に「完璧」を期待する方が間違いだと思うので。隙となるようなモノについては、民間なり何なりが埋めればいい。面白みって意味ではおそらく「米澤嘉博記念図書館」(今年の夏に開館予定)の方が上って気がするけど、それは当然…というか、そうでなければ米澤コレクションの意味がない。あまりに隙が大きいようなら、入場者って立場から思いっきりケナして、キュレーター(って言うのか?)を入れ替えさせればいいだけの話だ。
 
 マンガ・アニメ・ゲーム関連で動いているカネがどれだけデカいかを考えた場合、これらを収蔵した国立の施設があるのは、そう的外れじゃないと思う。それと「だからって大金使って立派すぎるハコモノ造るのはいかがなものかと」とか、「文化庁の手先ごときにマトモな収蔵品集められるのか」ってな部分は、また少し話が違うと思われる。なんか今の総理が退任した瞬間消えて無くなりそうな話ではあるけれど、この話をきっかけに、「既成概念」に凝り固まった(としか思えない)文化庁の連中の意識が、少しでも変化してくれれば…と、淡い期待をかけてみたいかな。
 
 なお、ここで言う「ゲーム」って、電源不要ゲームは含まれるんだろーか。一部のアニメゲームなどは、「ファミコン以前にはこんなモノもあった」って紹介のためにも、収蔵される価値があるような気がするんだけど。今からでも遅くはなさそうだから、日本のアナログゲーマーは何かすべきじゃなかろーか。下手すると「日本にテーブルトークRPGは全く根付かなかった」(どう考えても大嘘である)などと紹介されかねないわけで。この色の話題について行ける方、他人事じゃないですよホントに。