5月5日2008/05/06 03:31

 5/3・4の2日間は「ヒトラー電撃戦」プレイ。諸般の事情により「通しで1プレイ」ではなく「2日で2プレイ」になったけど。なお、私は赤軍担当。一番ヒマなはずなのに、何故か「一番ゲームを堪能したで賞」なるものを受賞してしまった。何故かって?いやそれは…(笑)。
 
 つーわけで、本日は「ヒトラー電撃戦」解説・作戦研究を、プレイ時の経験を踏まえてお届けします。ちなみに、ノリが良いので予定変更して「語れる範囲は何でも語る」ことに。分量膨大(今回は特にスゴイ)・説明省略(ルールブック一読以上が前提)なので、この色の話題に付いていけない人は読まないように!なお、GW明けにまたもルール大改訂がありそう(特に海軍絡み)なので、あくまで「我々がプレイした時のルール解釈(少なくとも海軍ルールは英文版を採用)に従った」ものです。ご注意下さい。
 
 まずはゲーム自体の感想から。このテーマのゲームとしては悪くないです。どうしてもプレイ時間がかかるけど、2日間あれば何とか通しでプレイ可能でしょう。自由度が高い割には史実通りの戦略に落ち着きやすいトコロに好感が持てます。ただまあ、「何度かプレイして痛い目に遭わないと、理解できない約束事」が多いのは事実。今回は主にそーゆー「バルバロッサ以前の奇手奇策と、その対策の紹介」に焦点を当ててお届けしたいかなと。
 
 まずはポーランド戦。「完全に放置する」ってプランもあり得ることは事実(さすがに研究は進んでない)だけど、普通に考えるなら消し去るべき。さらに、補給ptの関係から「潰すつもりなら最初に一撃で消すのが吉」でしょ。
 
 ポーランドのセットアップはフリーなので、配置を悩む余地がある。我々の結論としては、「ワルシャワに3つ積み、後は適宜散らすのが良いのでは」となった。どう配置しても一撃で消されるのは間違いないんだけど、こう配置すると「独軍に損害が出る確率をゼロに出来ない」のだ。さらに、独軍は「補給を節約した攻め」をするわけにいかない。ユニットを散らすセットアップの場合、「他の作戦に使用するため、あえて損失が出る可能性を我慢して攻める」ことも可能だけど、ワルシャワに積まれると「手抜き=ワルシャワ攻略失敗の可能性が残る」となってしまう。失敗した場合、許容できない補給の無駄遣いになってしまう。なお、ポーランド軍のこの配置をどう攻めるのかは、各自悩んでみて下さい。さほど難しくはないと思うので。コツは、「補給を節約できるように部隊をうまく統合しておく」こと。なお、「補給ptを全部使い果たすと、全軍補給切れ」なので注意。
 
 ポーランド降伏後の課題は、独軍の対仏戦…ではない!その前に「ルール防衛」って問題がある。ここは1戦力しかセットアップされていないので、連合軍がベルギーを敵に回してでも占領してくる可能性がある。ポーランド戦と平行して、補給抽出して部隊を送る必要があるのだ。
 
 先日のプレイでは2戦力で防衛していたけど、今から考えると「やや疑問手」である。理屈はこうだ。西側連合軍が全力でルールを攻撃した場合、ランスの歩兵+戦車&ナンシーの歩兵の計6戦力で攻撃が可能。戦闘比は戦車攻撃の1シフトを独軍防御で打ち消して、3:1。CRTを一見すると「1/3で失敗」のように見えるけど、それは間違い。このゲームは仏軍であっても電撃戦を宣言できるので、通常攻撃と併せて二度攻撃されて絶対陥落する。仏軍の損失は最大でも戦車1戦力。
 
 これを防ごうと思ったら…もう1戦力送り込むのが一番かなあ。実は可能なので。それでもルール陥落の可能性をゼロには出来ないんだけど、失敗の可能性がある時にはさすがに作戦自体を見送ってくる可能性が高い。あるいは空軍を1つ防御支援に使うか。もっとも、この作戦は連合軍の貴重な補給を3ptも使用する。これは他の作戦に深刻な悪化が出る数字であり、なおかつベルギーを敵に回すってマイナスもあるので、「それでもやるならやれば?」って態度に出る価値はあるかも。この辺の得失は私も読み切れてない。
 
 ポーランドは陥落。ルールは守った。さて次は…「対仏戦」及び「ノルウェイ戦」だ。この2つを「いつどういう形で実行するか」は、大いに悩みどころである。まずはノルウェイについて。ここは独軍にしてみれば「いつか行かなくてはイケナイ土地」である。独軍の国家戦略ptが無防備に放置されているのだから。それに、大戦後半になって西側に占領されると、ストックホルム経由で米軍がバルト海沿岸に上陸作戦を仕掛けてくる危険もある。ただ、実は「いずれにせよトロンヘイムに先手を打つのは連合軍」である。独軍はどう頑張っても、一発ではトロンヘイムに届かないので。よって、連合軍が上陸してくるか、余裕が出来るまでは放置しておくって考えが成り立つ。
 
 もっとも、連合軍は早期にトロンヘイム上陸作戦を行ってくると推測される。早ければ早いほど効果的なイヤガラセなので。このため、対仏戦に先だって上陸作戦なりスェーデン通過作戦の準備をしておく必要がありそう。この辺は「連合軍が何を優先してくるか」によると思われる。
 
 対仏戦をいつどんな形で始めるのか。これは悩ましいどころの騒ぎではない。この辺から「生産内容も含めた、戦争全体のグランドデザイン」が大きく関与してくるのだ。Uボートを多めに生産して連合軍経済を疲弊させるのか、それとも陸軍部隊を素早く増産するのかによって事情が変わってくる。それこそ「最後は好みの差としか言いようがない」のでは。
 
 とりあえず着目すべきは、「天候状態」でしょ。泥濘季及び冬季は電撃戦が出来ない。冬季に至っては空軍も飛ばない。これは戦術上重要な意味を持つ。対仏戦開始後3ターンまでは仏軍相手の攻撃に+1シフトであり、できれば電撃戦と組み合わせたい。よって、コマンドリプレイにある「第4ターンからの侵攻」はちょっと効率が悪い。奇襲期間中に1度も電撃戦が出来ないから。「フランス戦の運びに瑕疵があったのだ」との感想もわかる気がする。かといって、電撃戦を効率良く使える7ターンまで待つのがベストとは言い切れない。バルバロッサへの準備を考えれば、対仏戦は1ターンでも早く終えたいので。
 
 対仏戦絡みの心配事項として、「連合軍のベルギー侵入」がある。ルール逆襲は第1ターン以降心配無用(じゃなかったら独軍のミス)だろうけど、防御ラインを1ゾーン押し上げるため、連合軍がアルデンヌに侵攻してくる可能性がある。これの得失は複雑だね。独軍にしてみればベルギー軍を攻撃に加えられるって利点があるけど、どうせ攻撃補給は独軍の支払い。おまけにコイツらは国外に出ないので、ブリュッセルからカレーやランスを攻撃したはいいけど、戦闘後前進できる部隊が1部隊しかないので反撃されて痛い目に遭った…なんてコトも考えられる。もちろん、連合軍の補給が潤沢ならブリュッセル攻略も可能だ。
 
 これに対する私の意見は、「ルールまたはザール逆襲ってオマケが付かないのなら、やる価値ナシ」かな。アルデンヌ前進やブリュッセル攻撃のための補給ptがあるのなら、仏国内に前進してきた独軍への反撃に使った方が効率が良さそうだ。よほど補給が潤沢なら話は別だけど、Uボートによる通商破壊を考えれば、普通連合軍にそんな余裕はない。あったとしても、将来(アフリカ作戦やレンドリースなど)のため温存しておきたいくらいだ。ただ、コレはあくまで私の意見…というより感想に過ぎないので、研究する価値はある。
 
 対仏戦が終了すると、独軍に「頼もしい味方」伊軍が味方になる。私の知る限り、このゲームの伊軍は「この手の戦略ゲームで一番頼もしい伊軍」だろう。なにせ2ターンに1回、補給ptを4ptも「供給」してくれるのだ!ベルリンとローマに山と積まれた補給をまとめて東部戦線に使われた時には、赤軍担当として「いつか伊半島を赤化してやる!」って復讐心がメラメラと…(笑)。おまけに41年までは絶対降伏せず、仮に降伏しても43年までは「大軍を伊半島に拘束してないと」再起してきやがる。これはつまり、「伊の再起が無くなる44年まで、ノルマンジーはお預け」ってことじゃないかな。ジョンブルが苦手って弱点があるのは事実だけど、何故かヤンキー相手にはまるで関係なし。最初のプレイが終了した理由が「伊があまりにも早期に降伏しちゃったから、独軍が投了した」なのもよくわかる。それぐらい頼もしいのだ!コマンドには「仏軍で伊軍を叩く」って作戦が紹介されていて、私も一応「なるほど」と思ったけど、結論は「そんな馬鹿なことをしてはイケナイ」だ!ミラノの一時的喪失よりオイシイ特典を独軍に与えるだけだ。
 
 とはいえ、副産物として悩ましきアフリカ戦が開始される。これをどうするのかは、大いに悩みどころだね。伊軍だけでは守りきれない。やはりある程度独軍を送って防御の手助けをしてあげた方が良い…どころか、「バルバロッサ放置して進撃し続ける」のも1つの手である!2度目のプレイではバルバロッサ放置して枢軸軍がアフリカを進撃し、スエズを越えてバスラに迫る有様。時間稼ぎのため赤軍がバクー経由でバクダッドに駆けつけて、やっと進撃が停止したぐらいだ。状況次第ではあるけど、戦略として充分成立します。
 
 バルバロッサ前に「やるべきこと」の1つ、バルカン半島作戦。ユーゴスラビアは「ダイス判定で宥和する」ルールがあるのは事実だけど、独軍担当は「使う価値ナシ」と断言しておられた。理由は1つ。このタイミング(14ターン)にユーゴを片付けたのでは、バルバロッサを「史実通り、少し遅いタイミングで」始めることになるから。この時間は極めてもったいない。「どうせ成功しない」と割り切って、バルバロッサ前に滅ぼしておくのが吉だそうな。ついでにギリシアは独軍が侵入可能になった瞬間に滅ぼす。この辺から西側連合軍がチョッカイを出されると、色々対処に困りそうなので。
 
 バルバロッサを受けて立つ、赤軍側の事情も説明しておこう。まず触れるべきは「赤軍側からの対独戦」をやるべきか?これは…私はその勇気が出なかった(苦笑)。理屈はこうだ。赤軍は、「軍の近代化」を推し進める必要がある。しかし、これをやっていると補給と部隊配備に不安が…最初に増援カードを投入する瞬間から「軍の近代化を捨てて突っ込む覚悟」を決めておく必要があるのでは。それに、赤軍が独またはルーマニアに突っ込んだ瞬間から、独の増援カードが総力戦に移行する。トドメに、赤軍から突っ込んだところで「バルバロッサの奇襲効果」が消えるわけではない。「突っ込むべきでは?」と考えるたびに、「タンネンベルグの二の舞」って言葉が…
 
 それでは、赤軍はバルバロッサまで大人しくしているべきか?いやいや、ソ・フィン戦争があるじゃありませんか。これには「上手い手」が発見されました。開発者(あくまで私の身近では、だけど)として、独軍の対策も含めて細かく説明しちゃいましょう。タリンからの上陸作戦だ。赤軍は海軍持ってないけど、ルールには上陸作戦やっちゃイケナイとは一言も書いてない。プランその1はヘルシンキ直撃。フィンランド軍はここに1部隊もいないので、上陸されただけで陥落する。
 
 ヘルシンキが陥ちたらどうなるのかは、実はルール不備でよくわからない。どう考えてもフィンランドの首都なんだけど、ゾーンの地形が赤くないのだ。これは「マップのミス」なのか、それとも「フィンランドに首都はなく、全土を占領されるまで降伏しない」のか、ハッキリしないのだ。我々はとりあえず「マップのミス」として解釈したけど。ただ、首都じゃなくてもこの作戦を実施する価値はある。退路を断たれた上に要塞線も利用できなくなるので、前線のフィンランド軍を楽に叩き潰せるから。
 
 ただ、この手は独軍に対応策がある。空軍の迎撃はルール上攻撃じゃないので、やったからって「バルバロッサ作戦開始・赤軍総力戦移行」なんて事態にはならない。バルト海沿いの独空軍で迎撃してやればいいのだ。そこで編み出されたのが、プランその2。赤軍装甲部隊をコウヴォラに上陸させ、ヘルシンキに「戦闘後前進」させる。コウヴォラはフィンランド湾にしか隣接していないので、独空軍は事実上迎撃不能である!
 
 この作戦を防ぐには?もしヘルシンキがフィンランドの首都なら、打つ手はない。ただ、もし「ヘルシンキが落ちても徹底抗戦する」のなら、一応手はある。フィンランド湾とバルト海に独海軍(Uボートは不可)を浮かべ、制海権を獲るのだ。これでも作戦実施は防げられない(赤軍がフィンランド湾に空軍を出せば、制海権は打ち消せるので)けど、ヘルシンキの赤軍戦車部隊が補給切れになってしまう。退路もないので、「フィンランド領内では補給切れにならない」フィンランド軍で踏み潰すのは容易だ。こうやって高コストな作戦にしてしまえば、赤軍は実行をためらう…けどさあ。さすがに独軍が払うコストも結構馬鹿にならないような。赤軍が「じゃあ普通に攻めるか」って言ったら無意味なのに。
 
 ただ、「フィンランド湾に独艦隊を浮かべ、イヤガラセをする」のは悪くない。デフォルトで1艦隊持っているので、「無駄な生産を強いられる」ことにはならない。艦隊出撃のコストは1補給pt。序盤の赤色空軍は貴重なので、「制海権を獲るために空軍を出す」のはかなり手痛い。作戦自体は防げない(この程度のコストなら、それでも実行してくる)けど、取引としては相当効率が良い。この作戦を知らないと「何でそんなことを?」って動きだけど、実は深い意味があるんだよ。
 
 赤軍の防衛準備についても語っておきましょ。前線配備するのか、後方に逃がしておくのが勝るのかは、正直何とも言えない。私の経験を言えば、まず1戦目は前線配備を採用した。苦労しながらも何とか「史実程度の損失」(レニングラードは陥ちたけど、南方が無事)で済んだのは確か(実はモスクワ占領されたけど、即時奪回できたので被害無し)だけど、これはバルバロッサ開始スケジュールがやや遅かったから。第2戦は「独軍担当が手慣れた分、バルバロッサ開始が早そうだ」ってこともあり、後方配置を選択。多分、防御を考えたらコッチが正解だったと思う。しかーし!「それならやーめた!」とバルバロッサ放棄してアフリカに注力されてしまった…こうなると後方配備はマイナスだ。攻撃準備だけで時間と補給を食ったおかげもあって、東部戦線いきなり膠着。開戦時のラインでニラメッコしているんだから、赤軍としては「悪くはない」って考えもあるけどさあ…しかもだ。独軍は攻撃してこない(してくれない)ので、「バルバロッサ奇襲修正」が温存されたまま。うかつな攻撃して消耗したところに満を持して攻撃されたら、それこそ「タンネンベルグの再来」確定。前線の将兵は油断しっぱなしだ。おまけに上層部は「総力戦移行?そんな必要ない」と、これまた油断してる…これでどーしろと!つーわけで、私の経験は「バルバロッサ対策」にはあまり役立たないかと。赤軍担当だったのに、何やってんだか…
 
 ここまでクリアした末に、やっと待望のバルバロッサだ。これだけでもやるべきことがいっぱいあり、ケアするべき奇手奇策が山のようにある。「単なる下準備」で片付けるのはもったいない。バルバロッサ開始以降こそが本番って気がするのは確かだけど、そのための準備は両軍とも大変であり、面白いんじゃないかな。今回は一応「バルバロッサ開始前」を中心に語ったので、「アフリカの攻め方・守り方」とか、「バルバロッサが始まったら」については詳しく触れることができてない。ま、この分野については「私の研究不足」だって話があるけど。
 
 とにかくこのゲーム、テーマがテーマだけに「研究して楽しい」ことは間違いない。タクテクスに何度か掲載された「『第三帝国』研究記事」を読んで唸った頃を思い出します。「プレイする時間なんて無い」ことは認めるけど、それでも色々研究して怪しげな作戦生み出して、「いつか世界に息を呑ませてやる」とほくそ笑んで欲しいですね。私も一生懸命研究しますので。今度赤軍担当でプレイする時には、第1次大戦よろしく早期に独・ルーマニアに侵攻しちゃおうかな。「世界に息を呑ます」のは、我が赤軍じゃ!