5月8日 ― 2008/05/09 02:28
おお、何たることだ!「ヒトラー電撃戦」のルールを勘違いしていました。さり気なく赤軍の強襲上陸は禁じてあるではないか!いけませんねえ。せっかく「上手い手」見つけたと思ったのに…
というわけで、その罰として?「赤軍のフィンランド攻め(以下ソ・フィン戦)」について、クドいほど語ってみよう。何?「こんな戦場に作戦もクソもない」だあ?それは確かに。けど、「ココをどう攻めるか」をキッチリ抑えておけば、他の戦線に応用が利くはず。つーわけで、クドクド語ります。
この戦場は「作戦もクソもない」場所である。相手のフィンランド軍(以下フ軍)は最初中立であり、従ってこちらが手を出すまで何もしない。セットアップは完全固定。よって、攻めるなら真正面から殴ってどうこう…ってだけ。この上もなく単純な戦場だ。それは大いに認める。しかしだ。このゲームでは、こんな単純な戦場1つにも「色々考える必要がある」のだ。今回は、「私ならどう攻める」ではなく、「どう攻めるか決断するための材料」を紹介していきたい。
まずはソ・フィン戦の意義。直接的利点は3つ。まず、フ軍が消えれば、枢軸軍はその分弱くなる。当たり前の話だ。次に、カレリアを赤軍が抑えておくことにより、レニングラードがより安全になる。赤軍はここ獲られたら負けってワケではないけど、ここと南方都市群を同時に失うのは相当痛い。少なくとも「簡単に失わない」ようにしておく価値はある。最後に、カレリア占領は赤軍の混成軍ユニットを使うための条件だ。
最後の利点は、細かい解説が必要だろう。混成軍ユニットは、戦車と歩兵により構成されるにもかかわらず、移動・戦闘に関してはフツーの戦車と同等。おまけに「戦力3の戦車ユニット」は混成軍しか存在しない。さらに、使用できるユニットが増えるコトは、戦場に投入できる戦力が増えるコトになる。私のプレイ経験から言えば、「必ず必要」とまでは言わないけど、できれば欲しい。もっとも、早い段階から使えるワケではない(いずれにせよ42年から)ので、焦ってカレリアを占領する必要が薄いことも事実。一応私の見解としては、熾烈なる独ソ戦の最中にカレリア攻めの戦力と補給を捻出する手間を考えたら、ヒマなウチに占領しておく方が勝ると思われる。
欠点は、何と言っても「戦力と補給を失う」に尽きる。どちらも不足しがちな赤軍にとって、フィンランドと正面から渡り合うのは楽ではない。もっとも、多少手慣れてきた赤軍が適切に増援カードを回せば、ある程度の技術革新をした上で「独ソ戦の前に補給量が上限になる」と思われる。こんな備蓄は独ソ戦開始と同時にあっさり吹き飛ぶ(供給以上に消費したくなるので)はずだけど、「とりあえず補給は余っている」と考えることは出来る。むしろ問題は戦力の消費だろう。これは「42年になれば楽になるはず」と考えて割り切るか、あるいは「初期が大事」と考えてフィンランド攻めを諦めるかのどちらかだ。
そもそも、ソ・フィン戦にはどれくらいの補給が必要なのか?これは、コマンドのリプレイに「補給8ポイントと1戦力」という、参考データが掲載されている。しかーし!これは残念ながらさほど役に立たないデータだ。私の見積もりでは、補給消費がこんなに少ないワケがない。これはおそらく…というより、間違いなく「部隊をソコに持って行くための補給量」を計算に入れてない。このゲームは部隊を移動させるだけで補給が必要だ。戦略移動なんて、涙が出るほど(通常移動の倍。戦闘できないのに)補給を食う。このことはシッカリ意識しておきたいね。言うまでもなく、進撃した部隊を「必要な場所」に再展開するためにも補給は必要だ。
そこでまあ、あえて大雑把な試算をしてみよう。カレリアを攻撃できるのは、レニングラードとペテロザヴォツクの2ゾーン。レニングラードには1部隊(2戦力)配置されているから、スタック制限一杯の部隊を戦略移動で展開すると10補給pt 必要。さらに最初の攻撃に6pt必要で、戦闘比は、フィンランド軍が補充を受けていると仮定して基本が3:1。「フィンランド軍の防御」1シフトを戦車で打ち消し、地形(湿地)で2:1。CRTを見ればわかるけど、これはちょっと「ダイスを振るのに勇気のいる」コラムである。相手が後退してくれる確率は1/2でしかなく、失敗すれば再攻撃のためのコストがかかるのだから。
深く考えず、単に「いずれ補給が余るんだから、戦ってみるか」ってだけで作戦立案すると、こうなってしまう。これはどう考えてもよろしくない。いくら「赤軍の補給は最終的には余りがち」と言っても、この補給消費量はちょっと許容しがたい。よって、攻撃などせずに…ってのも一案だ。けど、その前にできることがないか、もう少し細かく考えてみよう。
考慮するべきポイントは3点。そのうち1つは「なるべく戦術移動で部隊を送り込む」だ。ぱっと見カレリア周辺にいる部隊はレニングラードの歩兵だけで、「そんな部隊いるのか?」と考えがち。しかしだ。どうせ攻撃するには部隊を活性化する必要がある。よって、「戦略移動して敵に隣接させてから攻撃のため活性化」するより、「戦術移動2回で敵を攻撃」する方が補給ptの消費が少ない。そう考えると、歩兵で4ゾーン・装甲だと8ゾーン先までの範囲にいる部隊は「戦略移動ではなく、戦術移動で部隊を呼べる」のだ。この考え方は、独軍をプレイする際には特に重要なので注意。そうでないと、ポーランド~フランス~バルカン半島~バルバロッサという「転進」の際に補給を無駄遣いしてしまうから。
これを考慮した上でマップを見渡すと…実は、ミンスク・ヴィテブスク・モジャイスクにセットアップされた歩兵及びキエフ・クイビシェフの装甲は、戦術移動で攻撃準備が出来る。42年になるまではこれ以上部隊を呼んでも無駄なので、「攻撃準備」にかかる補給は5pt以下って計算が成り立つ。
これだけでは「補給の節約」に過ぎない。攻撃の成功率を上げるには?打てる手は2つ。「飛行機を使う」か、「1~3ターンの、フ軍に増援が来る前に攻める」かだ。つまり、飛行機使って早いうちから攻めろということだ。でも、これは口で言うほど楽ではない。赤軍は初期に航空機をまるで持っていないので、増援カードで技術革新して航空機を生産する必要がある。しかし、航空機が生産可能になる増援カードは、補給がロクに入ってこないのだ。ってことは、早いうちからの攻撃が難しくなる…
そうやって考えてゆくと、選択肢はおおむね2つに限定される。第1案は「第2ターンから攻める」もの。第1ターンに補給3ptを使い、ヴィテブスク(歩兵)→レニングラード、キエフ(装甲)→ノヴゴロド、クイビシェフ(装甲)→カリーニンと移動させる。第2ターンに増援カード限定7をオープンし、飛行機と補給3ptを使って戦車を含む3ユニットを活性化、最終戦闘比3:1で攻撃する。失敗の可能性もあるけど、第3ターンは増援カード限定2(補給量が多く、使った空軍を再使用できる)をオープンし、追撃すればカレリアは占領可能だ。
第2案は、「第3ターンから攻める」もの。第2ターンには増援に補給量が多めのカード(技術革新する限定1がオススメ)をオープンし、とにかく攻撃位置に6部隊かき集める。第3ターンに増援カード限定7をオープンし、空軍使って攻撃する。最終戦闘比は5:1になるので、相手はまず後退するだろう。
この2つの作戦案のどちらが良いのか?第1案は補給消費量が少ない(運が良ければ6pt、最大でも9pt)けど、一撃でカレリアを占領できない可能性があるので、自軍の損害が増えるかもしれない。それと、技術革新と無関係な増援カードを早期にオープンするって欠陥もある。「補給6」のユニットは最優先で生産したいのに。ただ、それでも第1案がオススメかなあ。理由は単純。第1案の方がフィンランド全土を占領しやすいから。理屈はこうだ。第1案の攻撃では、第2ターンに最悪でも相手に1打撃を与える。相手がカレリアに居座れば第3ターンに4:1攻撃が行われ、ここでも最悪1打撃与える。残りは1戦力。第4ターンに増援が来るけど、コウヴォラの要塞にいるのは2戦力。これは春以降に空軍付き攻撃をぶちかませば、まあ楽勝である。仮に相手が退却もしくは移動で下がったとしても、3ターンにコウヴォラに3:1攻撃を行える(そのためにいちいちキエフから装甲を運んでいる)ので、結果は似たり寄ったり。いずれ独軍の強襲上陸でフィンランド軍が再生するとしても、再生スピードの遅さ(半年に1戦力)を考えれば、潰しておいて損は少なそうだ。そのための補給は馬鹿にならないけど。
ただまあ、第1案はやや損害が大きい。わずかな優位を活かして相手をすりつぶす前提なので、どうしてもそうなる。独ソ戦開始前に貴重な戦力は失いたくない…って考えは大切だ。そこで第2案を採用して確実にカレリアだけ占領し、後はカレリアに4戦力ほど置いて守りに徹するのも悪くない。どーせ独軍が強襲上陸してくれば、これぐらいの戦力がここで守備する必要に迫られるんだし。要はカレリアを奪ってここで守っていれば、目的の大半は果たせる。そういう割り切りもアリでしょ。補給消費が気になるなら、戦力削って4:1で攻めればいい。この比率なら、相手は絶対一撃で後退するはず。
それと…第1案にはもう1つ欠陥がある。ソ・フィン戦に文字通り全力投球するので、他のことが何も出来ないのだ。独がケンカ売ってくる可能性は考えなくていい(仏が片付く前にバルバロッサやってくれるのなら、ミンスクとキエフをタダでくれてやってオツリが来る)けど、赤軍側から独になだれ込む作戦は採用しにくいかも。これをどう考えるかは、現時点では何とも…
とまあ、色々語ってきたわけだけど、これがこのゲームにおける「単純極まりない戦闘」である。部隊の捻出・戦闘比と補給消費のバランス調整・生産計画と盤上の作戦の連動って要素がどうしたってつきまとうので、これぐらい考えることがあるんだよ。ま、慣れれば感覚的に処理できると思うけど。今回私が「いったい何を言っているのか」理解できるようになれば、チャンとした作戦を立てられるんじゃないかな。「バルバロッサ以前なんて、単なる前哨戦」と言えるようになるためには、少なくともその領域には達さないと。
しかし…ソ・フィン戦争だけでこの分量では、「バルバロッサ」だの「ノルマンジー」だの、果ては「対仏戦最中の赤軍西進」だのといった「重要かつ壮大な作戦」の研究はどうなるんだ…今でも「ユニット切らずにマップだけ見てうんうん唸っている」段階から脱却できない(考えることが多すぎる)からなあ…やっぱ戦略級ゲームはいいね!アホな作戦考える余地がいっぱいあって。次回以降もおそらく阿呆な作戦案を語りますので、見捨てないで(苦笑)。
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