10月15日2009/10/16 01:10

 なんか調子に乗って、新ブラウザを導入してしまった…しかも4つも。全部「日本語対応が怪しい」シロモノなので、設定とテストが終わるまで少し時間がかかりそうです。詳細はその後のお楽しみってコトで。
 
 本日の話題は、自分向けの覚え書きを兼ねて「戦闘機のデータリンク機能」について。前々からある程度知っていたけれど、詳細を知ることによりいくつかの「謎」が解決したので。なお、わからない人にはわからない話だと思います。ご注意を。
 
 戦闘機のデータリンク機能とは、レーダーを使った索敵技術の1つ。普通戦闘機は搭載されたレーダーを使って各自敵を探しているんだけど、編隊内の各機のレーダーをリンクさせることにより、より効率良く敵を探そうって技術だ。複数のレーダーをうまく連動させることにより、より大きなレーダーと同様の効果が期待できるようになるらしい。
 
 この技術、実を言えば結構古くからある技術の応用である。地上のレーダー基地やAWACS機からのデーターを元に戦闘機(迎撃機)を誘導する…って技術が元になっているようだ。そのため、単にレーダーの動きを連動させるだけではなく、編隊の位置・間隔も自動操縦でコントロールできるのかも。
 
 一般論で言えば、小さいレーダー複数個よりも、デカくて強力なレーダー1つの方がより遠くの敵を広範囲に探せる。米軍や空自などがAWACS機(デカいレーダー積んだ飛行機)を運用している理由がコレだ。この「AWACS機と戦闘機の組み合わせ」は強力であり、「このやり方が1番」だと信じられてきた。
 
 コレに対し、図体だけはデカいけど色々苦しい部分が…って軍事大国ソ連は考えた。自国のAWACSはどうも使えない。そもそも数そろえるのもタイヘンだ。どうにかならないのか…ってんで編み出したのが、このデータリンク方式らしい。MiG-31って戦闘機(迎撃機)にこの機能を付けて、「なんちゃってAWACS」として運用することにしたのだ。
 
 当時のデータリンク方式がどれほど有効だったのか、細かいことはわからない。何だかんだ言って旧ソ連&ロシアの軍事情報は「よくわからん」ものが山ほどあるからなあ。とりあえず、昔の航空機関連の雑誌(数誌ある)では、「なんちゃってAWACS」と、かなり馬鹿にした論調でこれを紹介していた。私はソレは覚えている。
 
 ところがだ。この技術自体は、米軍なども注目していたらしい。確かに、複数のレーダーをリンクさせて…ってのは制御が難しく、その分効率は落ちる。当時のソ連の技術力じゃあ、西側のAWACS機ほどの効率を期待するのは無理でしょ。ただ、デカいレーダーってのは、これはこれで運用するのが難しい。AWACS機なんて「戦場ではノロクサと飛ぶいい標的」だからねえ。「戦闘機用の小さいレーダーを束ねて運用できるようにして、AWACS機搭載のレーダーと似たような効率で動かす」ってのは、結構使えそうな話だ。あくまで一説によればだけど、米軍は湾岸戦争当時にトムキャット使ってデータリンク方式を試し、満足する結果を出したらしい。
 
 しかし、だからといってこの方式が一気に普及したワケじゃない。元々が戦闘機と言うよりは迎撃機向けの技術だし、レーダーを改装してうんたらこーたら…ってのも面倒な話だからねえ。私の知る限りでは、米軍が使っているF-15・F-16・F-18系列の機体で、コレに対応した機体はない。
 
 現在、米軍の戦闘機でデータリンク方式に対応しているのは、F-22ラプターだけである。それはいいんだけど、私の知る限りではF-35ライトニングⅡがデータリンク方式に対応する予定は、とりあえずない。考えてみればもっともな話だ。米軍にしてみれば、「迎撃」なんてものはラプターに任せりゃいいからね。空母艦載機にもこの機能付けないのか?とは思うけど、今更「艦載機の群れをモノともせず、デカいミサイルをブチ込んでくる爆撃機」を米空母に差し向けるような国があるとは…
 
 ラプター以外でこの方式に対応している機体としては、タイフーンがある。実のところ、コレを空自に売ろうとしている英国が「タイフーンはライトニングより上」とヌカしている根拠はコレらしい。ステルス性は確かにライトニングの方が上だ。けど、データリンクに対応してないライトニングより、タイフーンの方が上だと言いたいらしい。実は他にも論拠はあるんだけど、これが重要な理由なのは間違いなさそうだ。
 
 この主張はそれなりに根拠がある。普通に考えたら、ステルス機と普通の機体が「レーダー使った空戦」やったらステルス機が勝つ。当たり前だ。実質「一方的に発見される」のだから。コレに対応するためには、お互いステルス機にするしか方法がない…ワケではない。パッシブな手段で敵を探すって手も考えられる。
 
 レーダーってのは、要は「強力な電波を出し、目標に反射して跳ね返ってきた電波を探知してどうこう」って機器である。つまり、レーダー使っている間は「強力な電波を周囲にバンバンまき散らしている」ワケだ。それを上手く探知できれば、ステルス機だろーが相手を発見できるはずだ。「アクティブとパッシブではパッシブの勝ち」だってのは、潜水艦のソナーが証明している。
 
 ただ、実際問題としてはそううまくはいかない。パッシブな観測の場合、相手のいる方角はわかっても、相手の距離がわかりにくいのだ。「コッチから電波が出ている」ってのはわかっても、「近くにいる奴が弱い電波出しているのか、遠くの奴が強い電波出しているのか」がわからないと距離は掴みにくい。レーダーの場合、元々の電波の強さはわかっている(自分が出しているから)ので、距離もわかるんだけどね。
 
 相手がほとんど動かない、あるいは動いてもものすごく遅いのなら、これはどうとでもなる。地対空ミサイル用のレーダーにブチ込む「相手の電波をたどってゆくミサイル」なんてものはフツーに使われているし。ソ連・ロシアはAWACS機(そりゃあ飛行機にしては遅いけど、地上や海上の目標と比べたら…)相手でもそんなモノを当てるつもりがあったとされている。ただ、運動性が格段に良い戦闘機相手の場合、距離がわからないとタイヘンだろう。AWACSなら「逃げ一択」だろうけど、戦闘機は向かってくる可能性も高い。
 
 それを解決する手段として考えられるのが、いわゆる三角測量。複数の位置から方向を観測できれば、自動的に距離もわかる。数学…というか幾何学の基本ですね。つまり、データリンクされた機体が相手の出す電波をうまく拾えば、それでステルス機だろうと探知できる理屈になる。
 
 この「データリンク方式ならステルス機にある程度対抗できる」って主張は、最初に実戦投入したロシアも持っているらしい。ちょっと前からロシア空軍は「一部の戦闘機は、ちょっとした改装である程度ステルス機に対抗できる」みたいな主張をしていたんだけど、その根拠がコレではないかと。私は「連中の強気はドコから来るのやら。旧ソ連お得意のハッタリか?」などと思っていたんだけど、一応根拠はあったのね。
 
 データリンク方式は、私の知る限りではタイフーン・ラプター・それとMiG-31とフランカー系列のいくつか(型が多くてよくわからん)が対応しているだけ。フランカー系列と言っても、中国がライセンス生産したモノが含まれているかどうかはビミョー。本家ロシアでさえ、「全てのフランカーが対応している」とは思えないからなあ。開発に協力している関係上「最新版フランカーを入手しやすい」インドが使っているものでさえ、対応しているかどうかは不明。言ってみれば「贅沢な装備」だからして。
 
 日本は?現状、対応している機体は持っていないはずだ。高性能だけど型がやや古いイーグルはもちろん、F-2も導入当時にそんな機能付けたって説明はなかった。となると、今騒いでいる「FX導入」で対応機を買うかどうかって話になるんだけど…売ってもらえそうもないラプター、「対応してるから買ってくれ」と売り込んでいるタイフーンはともかく、イーグルとホーネットの新型が対応するのかどうかは不明。トムキャットで試験できたくらいだから、その気になれば対応可能だとは思うんだけど…「空自向けじゃねえか」と噂された「サイレントイーグル」にこの機能付けるって話は聞いてない。そんな予定はないのか、要求されれば付けるけど発表しなかっただけなのか、さっぱりわからん。
 
 データリンク方式は、元々が「なんちゃってAWACS」ってトコロから始まった技術である。そのため、AWACS機を大量に使える米空軍・海軍が急いで導入する必要はなかったと思うし、それはAWACSを買ってきた空自にも言えることだ。とはいえ、将来性含めてどうなのよ!って話になると、相当ややこしい。両方対応しているラプターを買えるなら悩む必要はなかったけど、それがポシャりそうな現状においては「ステルスだけどデータリンクは不要なので付けてません」ライトニングか、「データリンクだけどステルス性は聞くな」タイフーンか、「とりあえずなんちゃってステルスにしてみました」イーグル系列か、「どーせ海軍機だから買わないんでしょ?」ホーネット系列か…って選択だからなあ。
 
 まあ最終的に空自がどんな決断下すのかはわからないけど、航空関連雑誌(一部は空自の意向を反映しているフシがある)が「ラプターという本命を失って、何を買うべきか迷走している」ように感じられるのも、わかる気がする。おまけに政権変わっちゃったし。とりあえず、「タイフーンが強気な理由」の1つにデータリンク方式があるのは間違いなさそうなので、長々と「どんな技術なのか」書いてみました。まあ、空自のことだから、こーゆー技術うんぬんとは別のトコロで何を導入するのか決めちゃう(実はそんなに悪いコトではない)気がするけど。
 
 それはそうと、もう1つ気になるのはシミュレーションゲーム。とりあえず「データリンク対応機がなんちゃってAWACS機になる」ってルールのゲームはあったっけ?「ASIAN FLEET」「AEGEAN FLEET」あたりは本来そーゆールールがあってもおかしくないような…最終評価はデザイナー次第だけど。やっぱり近未来戦のゲームデザインってタイヘンなんですね。