10月20日2009/10/21 02:28

 諸般の事情により、今回はものすごーく軽いネタで。「2=1」。ネット上で見かけたアホネタの説明と簡単な解説を。
 
 とりあえずはこちらのリンクを参照して下さい。アホな数式が掲載されていて、「2=1」だと「証明」している。一応ここでも数式は書いておこう。なお、「aの二乗」はa`2と表記します。
 
a = b
a`2 = ab
a`2-b`2 = ab-b`2
(a+b)(a-b) = b(a-b)  
a+b = b 
2b = b
2 = 1
 
 一見すると、なんか2=1を証明しているように見える。でも、実際は2=1ではあり得ない。これを認めると「全ての数は1に等しい」ことが証明でき、ついでに「あらゆる命題は真であり偽でもある」という、ワケわからん状態を認めることになる。つまり、この数式はどこかに間違いもしくはインチキがある。それはすぐわかると思う。でも、それがどこなのかはちょっとわかりにくい。
 
 実はこの数式、結構有名なモノだと思う。私は以前見た記憶があるからね。種明かしをすると、この数式は数学における禁止事項、すなわち「ゼロで割る」をやらかしている。どんな数であれ、ゼロを掛けてゼロで割ればイコールになるから、2=1を証明できるわけ。ただまあ、単純にゼロを掛けてゼロで割るとバレるので、うまく誤魔化してあるわけだ。
 
 ドコで「ゼロで割って」いるのかって?4つ目の式から5つ目の式に移行する時、すなわち両辺を「a-b」で割っている時にやらかしている。a=bだから、a-b=ゼロ。この式は実は3つ目の時点で「要は0=0」になっているので、それをゼロで割って…ってな操作をやらかせば2=1が証明できちゃう。
 
 タネを明かされれば「なーんだ」で終わりだけど、ぱっと見ただけでは問題なさそうに見える、良くできた「アホな式」だ。高校程度で数学に挫折した奴(私もそうです)程度なら、かなり長い時間「ドコがオカシイのか」悩ませることが可能じゃないかなあ。私がこの式を覚えているのは、かな~り時間をかけて「ドコがオカシイのか」検討した記憶が残っているからだ(苦笑)。
 
 ただ…面白いことに、「数学的に2=1と証明されることはあり得ない」と断言することはできない。それは未来永劫無理だっていう証明があるから。「おそらく、2=1って証明はできないんじゃないかなあ」と言うことは出来ても、「あり得ないことだから安心しろ」とは言えないのだ。ゲーデルの不確定性原理ってものがあり、それにより「どう頑張っても、そういう証明は出来ない」ことがわかっているので。
 
 ちなみに、私は「数学的に間違っていないやり方で、1=2を証明できてしまうんでないか」という妄想を抱いていたりする。ただこれは、カントールって数学者が切り開いた「無限の取り扱い方」に関する部分であり、要は「選択公理」(ウィキペディアのリンクはこちら)はオカシイんじゃ…って世界の話。「選択公理はオカシイ!」って主張している奴は、数学者の中でも(少数派ではあるんだけど)いるので、これは妄想ではないかもしれない。ただまあ、おそらくは「選択公理を認める多数派の数学者の中では、とっくに解決済み」の話だとは思うけど。
 
 1=2の証明というものは、基本的には「怪しげなトリックを使った、アホネタ」である。でも、この先「そんな証明が出来てしまう」可能性はある。これを完全に否定することは誰にも出来ないからね。とはいえ、我々が日常的に使っている計算式が完全崩壊するって話ではないと推定される(あくまで推定。断言は出来ないんだってばさ)ので、仮に1=2が証明されちゃったとしても、相変わらず数学嫌いが数学に悩まされることに変化はないと思う。
 
 でも…数学に苦しめられた身としては、たとえ「数学のごくごく一部にだけ関係がある話であり、世の大半には微塵も影響を及ぼさない」ものであったとしても、「1=2が証明されてしまい、発狂する数学者」なるものを見てみたい気がするな。数学が数学嫌いにどう思われているのかを考えれば、期待するだけならバチは当たらないと思うぞ。