4月23日 ― 2009/04/24 00:53
本日の話題は、「北朝鮮が飛ばしたアレ」について。とりあえず日本政府は「ミサイルだ」と断定したようだけど、ここでは話の都合上「アレ」としておく。
報道などで知っている人も多いと思うけど、ミサイルと衛星打ち上げロケットの間に、技術的な違いってのはあまりない。要は「先端に何を詰め込むか」って問題である。だから、技術面だけ考えた場合、アレがミサイルかロケットか…って議論に意味はない。それは軍事・政治の問題だ。
ただまあ、一般にはミサイルよりロケットの方が高度な技術を必要とする。宇宙は「遠い」からねえ。北朝鮮から米本土まで届くミサイルを製造するより、人工衛星打ち上げの方がタイヘンだ。これが話をややこしくする。技術的に考えたら、ミサイル開発の方がよっぽど楽だし、そもそも「ミサイル技術が未発達の国にロケットなんて打ち上げられるワケがない」のだ。
しかしまあ、世の中には「周りの国」ってものがありまして、「ミサイル発射実験やらかした」なんてコトになれば、大騒ぎになる。そーゆー非難を回避するため、「いや、コレは人工衛星ですから」って理由で「発射実験」やらかすわけだ。まあ、良くある話だよね。
それを考えると、北朝鮮が打ち上げたアレは、実際は「人工衛星」のつもりだった可能性は高い。本音ベースで考えれば、ミサイルだろうがロケットだろうが「米国にとっては脅威」だからして、いちいちミサイルなんぞで威嚇する理由は少ない。中国やらロシアやらといった、「状況次第では味方になってくれる国」の意見ってモノを考えれば、衛星を打ち上げられるのならそれに越したことはないのだから。
とはいえ、アレがロケットだとしたら、結果はどう考えても「大失敗」である。にもかかわらず、アノ国は「成功だ!」などと主張しているからなあ。「失敗しました、すいません」とでも言っておけば、もっと話はややこしくなったハズなのに。まあ、言ってみれば「そーゆー国」なんだから仕方ないとは思うけど。
ちなみに、「いずれロケットを打ち上げるためにミサイルを実験する」という、技術的にはマトモ?なコトをやった国ってのは、あんまりない。ナチス時代のドイツはコレに近い気がする(フォン・ブラウン博士はそのつもりだったと思われる)けど、言うまでもなくロケット打ち上げにまでこぎ着けなかったからなあ。
ソ連・ロシアは?この国は、実はロケット打ち上げに関してあんまり積極的じゃなかったらしい。ロケット開発の中心人物コロリョフ博士は、「そんなもの打ち上げる必要があるのか」っていう軍人の圧力をかわすのに必死だったらしいし。この国が宇宙開発に必死になったのは、実際スプートニク1号を打ち上げて世界中(特に米国)が大騒ぎしてからだって話が残っている。
これに対し米国は、実はミサイルに関して関心が低かった。この国は当時(今もだけど)圧倒的な空軍力を持っていたので、「原爆落としたければB29飛ばせばいい」と思っていたようだ。ICBM開発絡みですったもんだやらかしたあげく、スプートニク打ち上げられてやっと本腰入れたらしい。
世界で3番目に人工衛星を打ち上げたのは、フランス。この国はまあ、「ミサイルの技術をロケットに転用した」国かな。5番目の中国・6番目の英国もこれに該当するだろう。英国の打ち上げが案外遅いのは、本土の緯度が高い(少し打ち上げに不利になる)ことと無関係ではないと思う。なお、今現在英仏は「欧州連合」としてロケット打ち上げている。「マトモな」開発パターンの国って、ある意味この3国ぐらいなのでは。
4番目に人工衛星打ち上げた国は、日本。この国は「純粋に」ロケットのためにロケットを開発させられた国と言える。敵国にブチ込む戦略弾道ミサイルを(少なくとも表立って)開発するワケにはいかない事情があったわけで。そのため、「ペンシルロケット」(本当に鉛筆大)なるモノを使って実験していたくらいだ。ある意味アホらしい努力ではあるけれど、おかげで日本の宇宙開発に表だってケチをつける国は存在しない。これはスゴいコトだと思う。
こっから後の国になると、ある種の「きな臭さ」が漂う。ミサイル開発したいけど、それだと文句言われそうだから「ロケット開発しました」って事情では…って話があるからねえ。なにせインドにイスラエルにイランだもの。正直、「本当はドコにブチ込みたかったのか」がわかるような国で…ついでに言えば、その時先端に「何を」詰めたがっているのかも、わかっちゃうような。
実を言えば、弾道ミサイルってのは「あんまり命中精度が良くない」兵器である。フツーの爆薬詰め込んで発射したのでは、目標を破壊できるかどうか怪しいのだ。そのため、イヤガラセ目的でかなりアバウトにブチ込む(恐怖爆撃って戦術)か、あるいは破壊力のデカい弾頭(ABC兵器って奴ですな)を使って広範囲に吹っ飛ばすか…って使い方をするしかない。ぶっちゃけた話、「核を持たない国が開発するのは、かなり贅沢」なのだ。
そう考えると、「核を持つ気もないのにロケット開発しました」って国は、結局日本しかないような…逆に言えば、日本が「これはロケットだ!」ってモノを開発したからこそ、核を持ちたがっている国が「ロケット開発って名目なら、ミサイル開発していいんだ」って考えるようになったのかもしれない。うーむ…日本が悪いってワケじゃないんだろうけど、ちょっとフクザツな気分になる話かな。
なお、今年中に韓国が(全部独自技術っってワケじゃないようだけど)ロケットを打ち上げる予定で、そうなると「核を持つ気もないのにロケット打ち上げた国」の仲間入りをすることになる…んだよね?韓国が「実は核兵器持っている」「実は本気で開発に取り組んでいる」って話は聞かないからなあ…とりあえず日本としては、こういう国が増えることは歓迎すべきではないかな。もっとも、ビジネス面では「商売敵が増えた」ような気もするんだけど。
北朝鮮のアレがロケットかミサイルかって議論は、実は私はあんまり興味ない。ロケットだからって脅威には変わりないから。ただまあ、アレを「成功だ!」と主張する気持ちは正直理解できない。冷戦時代のソ連でさえ、あそこまでミエミエの大嘘はついてなかったような…そんな根性じゃあ、ミサイルだろうがロケットだろうが上手くいかなくて当然じゃないかね。失敗は失敗と認めようよ。アレを成功呼ばわりするようじゃ、「ロケットだ」って主張する意味ないじゃん。
つーわけで本日の教訓は、「失敗は素直に認めよう」でしたとさ。ロケットやらミサイルやらの話題のくせに、教訓がコレってのはどーゆーことかね?まあ、そーゆーコトのわかってない国のやったことだからして、仕方ないのかも知れないけど…
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