9月29日2009/09/29 22:29

 本日の話題は、タイで開発されたギャルゲー体験版のレビューとする。諸般の事情からやっとこさ「ある程度」プレイできたので。ネタがネタだけに探せばレビューがどっかに転がっていそうだけど、あえて私なりのものもお届けしようかなと。なお、私はギャルゲー(エロゲー含む)に特別詳しいワケではないので、誤解その他はあるかも知れない。そこはご了承下さいませ。
 
 何故タイのギャルゲーなんぞ?一応話題になり、日本語の体験版があったから。日本のヲタクが話題にした結果、「日本語版公式サイト」(リンクあります)だの「日本語体験版」(公式サイトからダウンロードできます)だのが公開されたのだ。なんかスゴい。向こうの連中にしてみれば「ギャルゲー先進国」から注目されたってのは、感激なんだろうな。なお、日本語は「日本の有志の協力」で何とかしたらしい。
 
 ゲーム内容は「18禁表現ナシの、フツーのギャルゲー」である。申し訳程度の選択肢が出てくる「電脳紙芝居」だ。いわゆるゲーム性はカケラもない。そんなモノが必要かどうかは小一時間ほど議論する余地があるけど。とりあえず、システム面において「他と違ったこと」は確認できなかった。平凡と言えば平凡だけど、この手のゲームが「他と違う」必要があるとは思えないので、これでいいような気がする。
 
 絵柄はいわゆる「アニメ絵」。髪の色が赤かったりピンクだったり…といった、「日本のアニメ絵にありがちな表現」を使用している。何に影響を受け、何を目指したのかはすぐわかる。いわゆる「ツインテール」がいないけど、代用品として三つ編みロリっ娘がいる(苦笑)。逆に言えば、他は「日本のモノとドコが違うのか」見分けが困難だ。あと、デフォルメキャラまで出てくる。
 
 欠点としては、動作が重い。私のFloral Pegasus号は「ギャルゲーレベルなら問題なく動く」スペックを備えているはずだけど、なんか動作は重かった。サイトにある動作・推奨環境は楽々満たしているし、絵の質(萌えるかどうかじゃなく、3D使っているかとか、大きさがどうとか、アニメーションの分量とかの話)から見て「重いはずがない」ので、多分「爆速マシンで動かしてもやっぱり遅い」のではないかと。おそらくはプログラム(より正確にはスクリプト)の質がネックになっているのでは。この点は日本の技術力と比べれば劣っているんだろうな。もし日本語製品版を出そうとする(そーゆー願望はあるらしい)のなら、ココを作り直すのか、あるいはあえてこのままにするか悩みどころかも。
 
 もっとも、コレは単に「比較対象」の問題かも知れない。PCでプレイするモノと考えると「遅い」けど、プレステ(PS2ではない)でこの手のゲームをプレイした時って、シークタイムがこれぐらいあったような気が。予算・経験・職人の質と量が「どう考えても勝っている」日本と比べる方が間違いなのかも知れない。とはいえ、日本人なら「日本基準が当たり前」なので、気にはなりそうだ。
 
 細かいトコロでは、音楽は「まあこんなモノか」程度。駄目とは思わないけど、このゲームのサントラ集は買わないかな。音質はフツーなので、単純に「曲作った奴の技量」の問題だと思われる。もっとも、コレは某メーカーのエロゲーを「アホみたいに高いイージーリスニングのCD」として購入するような輩の感想であり、一定水準にあると判断して良いのでは。
 
 シナリオ面は…体験版だけで語れるワケじゃないけど、「特別良いとも悪いとも思わない」って感じか。私の「ツボ」はかな~り特殊なので、ソレにハマったらむしろ気色悪い。とりあえず「破綻している」とか、「ついて行けない」ってなことはないと思われる。詳しいコトが気になる奇特な方は、ご自身でプレイしてみて下さい。
 
 面白いなと思ったのは、主人公(男)の設定。大学生なのだ。話の都合上そうする必要があったのかもしれない(体験版なので詳細は不明)のかもしれないけれど、日本だと高校生が主流だからなあ。文化的な違いなのか?他にも「雨期の話が出てくる」「バスがやたら遅れる」「バスが黒煙発して動いている」なんてトコロで「日本とは違う」と実感できる。なお、絵から判断する限りでは、タイは「自動車左側通行」らしい。「家の中にミョーな彫刻などが置いてある」のは文化的問題か、話の都合上なのか、何かのギャグなのかは不明だ。
 
 危うくスルーしそうになったけど、よく考えると面白い要素として「使用人が出てこない」ってのがある。私の知る限りでは、タイには「ハウスメイド」がいてもおかしくない。「いる」「見かける」って情報は聞いたことがある。少なくとも日本よりずっと一般的なはずでしょ。文化面を考えればいてもおかしくないのに出てこないのは、話の都合で何かあるのか?深読みしすぎかも知れないけど。
 
 分類不能だけど「面白いな」と思った点が2つ。まず1つ目は、何度か主人公の顔が出てくること。日本のこの手のゲームの場合、特殊な作品を除き、主人公は「プレイヤー自身の分身」という扱いになる関係上、絵が全く出てこないか出てきても詳細に描かないモノが多い。主人公の絵が出てくる場合、最初から「主人公のキャラが話の上で重要なんだな」とわかるようにしてあるようだ。ところが、このゲームでは、少なくとも最初は「この主人公にキャラが必要か?」と悩むような内容。細かくは全部プレイしないとわからないけど、「この辺に抵抗がないのかな?」と思う。絶対的な頻度としてはやはり少ないんだけど、日本製だともっと徹底させるような気がする。日本側のこだわりこそが奇妙なのかもしれないけれど、「主人公の個性を弱めて感情移入しやすいようにする」って手法はゲームやラノベなどで一般的に使用されているので、ちょっと興味深かった。
 
 もう1つは、ヒロイン(エロゲーだったら間違いなく攻略対象の1人)の後ろ姿が出てくること。日本のゲームでもゼロとは限らないけど、印象に残るほど頻繁に出てくるのは珍しいと思う。日本のゲームだったら正面姿で処理するのでは…って場面で使われているからなあ。これはおそらく、日本の作品が「日本マンガの技法」に従っているからではないかと。どちらが良い・悪いって話ではないけど、ちょっと感心した。
 
 正直、私はこの手のゲームはあまりプレイしない。せめて「ゲーム性に見るべきモノがある」「音楽が良い」のどちらかを満たさないと。エロもないし(苦笑)。とはいえ、「ヲタク文化研究家」としては気になる部分が多いので、日本語の製品版が出たらつい買っちゃうかも。特に、「主人公が大学生なのは、話の都合上か文化的差違によるモノか」はちょっと気になる。体験版の範囲では、ドチラも考えられる内容だったからなあ。
 
 タイのヲタク文化を研究したところで、何の役にも立たないとは思う。けど、それはあくまで現状の話。将来「日本と違った独特の味がある」ギャルゲーをドンドン輸出してくるかもしれない。それを考えれば、「まだまだだな」って段階から観察しておく意義はあるんでないかと。とりあえず、このレベルの製品を作り上げた努力というか根性というか…には、賞賛を送っておきたい。
 
 なお、評価が若干辛めなのは、つい最近「ものすごく高いイージーリスニングCD(笑)」を導入してしまった関係だと思う。酷だとわかってはいても、つい比べちゃうからなあ…やっぱりサウンドは重要だと思うんですよ!