9月3日 ― 2009/09/04 00:00
本日のお題は、「紙の何が駄目なのか?」としよう。活字中毒患者としては、やはり「これからどーなるのか」は気になる話なので。色は迷ったけど、やはりコレが相応しいかと。
紙媒体が駄目なのかそうでないのか。これには色々意見はあると思うけど、とりあえずはこちらのリンクを参照していただければ。「現場」からの生々しい意見として、「もう駄目」ってことが前提になっているようだ。私も「これじゃあ駄目だな」と思う。
しかしながら、それだけで終わってしまっては意味がない。紙媒体が駄目になったら困る身としては、多少なりとも「何が駄目なのか」「どーすればいいのか」を考えずにはいられない。もちろん、「これからどーする」も重要でしょ。私ごときが考えて結論が出る話じゃないけれど、せめて危機感をある程度共有してもらうべく、色々考えてみた。
紙媒体が「駄目だ」と言われるようになる理由ってのは、いくつも考え得る。たとえば、「紙もしくはインクの原価上昇」とか。森林資源がどーだの、石油製品がこーだのって話になれば「紙媒体なんて贅沢品だ!」って時代が到来しかねないのは事実。ただ、これは今のところ「やや遠い将来に不安はあるけど、目先の問題になるレベルじゃない」のは間違いない。どう考えても別の理由だ。
「マンガ含めて本読まない層が増えた」というのは、重要な指摘だと思う。ただ、正直それが「主要因」かどうかは疑問だ。何故か?本を読まない人間なんて、昔からいたから。「TVと新聞さえあればいい」って層は昔からいたからなあ。これについては、もっと突っ込んだ調査をしないと軽々しく結論は出せないような。少なくとも、「活字好き」「マンガ好き」が大幅に減った印象はないし、コミケの順調な拡大傾向はこの予想に反する動きでもある。
「Webサイトにリソースを食われた」ってのは、これまた「重要な指摘ではあるけれど、主要因であるかどうかはまだわからない」ものじゃないかな。少なくとも、Webは現状「タダが当たり前」って世界であり、直接ユーザーのサイフというリソースを食っているワケではない。もちろん「時間」というリソースを食っているのは確実だけど、これは必ずしも「紙媒体に割いていた時間を、ネット閲覧に割いている」とは限らない。食っているのが「別のことに費やしていた時間」かもしれないから。モノにもよるけど、「紙媒体とネットで全く同じモノが同じ値段で読めるなら、紙を選ぶ」って意見も根強いし。
正直言って、直接の要因としては「紙媒体への広告費が減ったから」だと思う。これが激減しているのは、色んな形で公表されているし。「雑誌の命運なんてモノは、読者の数や熱意ではなく、広告主の意向で決まる」なんてのは、その昔々ファンファーレって雑誌が消えた時に私が指摘したことである。それ以前もそれ以降も、好きな雑誌が消えるたびに「それでいいのか」と思ってはいたんだけど、だからって「広告依存システム」に代わるモノがあったとは思えないのも事実だな。
何故広告費が減ったのか?これは色々言われている。一番大きいのは、「ネットを使えば広告費が節約できるから」かなあ。現状、私の印象では「ネットオンリーでは、広告活動は難しい」と思うんだけど、メディアミックスを使えばかなり節約できそうに感じるのは事実。逆に言えば、今までは「広告主が効率悪い広告費を出し続け、それを前提に紙媒体が刷られていた」という考え方も出来る。ネットの発達に伴い色んなモノが「過去の、効率悪いモノ」に成り下がるのはむしろ必然だろうから、別に今までが「効率の悪い、駄目なモノ」ってワケではないんだろうけど。
いわゆる「衰退期」になると、実は「良い物が残る」ワケではない…ってのが、私の意見。こんな時に「生き残りやすいかどうか」は内容でなく、単純に「いい広告先を掴んでいるかどうか」とか、「親会社の体力とやる気」とかに左右され、読者の視点はカケラ程度にしか尊重されない…んだと、私は思い込んでいる。これが正しいかどうかは、正直わからない。私はそう思っているけど、単なる思い込みかも…って意識はある。
出版物に関しては、「果ては零細にまで落ち込む」覚悟を決めさえすれば、一定の内容を保ったまま続けてゆくことが可能だとは思う。そうでなければ、シミュレーションゲーム雑誌などというシロモノが未だ健在な理由を説明できない。どっかで赤字補填されているのかもしれないけれど、この業界ほど落ちぶれた世界もそうはないと考えれば、採算ラインには乗ってもおかしくない。
ただ、現実問題として「そんな覚悟をもてるのか」と聞かれれば、素直に無理だと言わざるを得ない。誰だって生活の方が大事だから。おそらくは「組織防衛の論理」が優先され、「今までの理念」はどっかに捨てられる。世の中ってのはそんなものだと思う。理念だけでメシは食えない。
これが単に「紙がなければ、ネット使えばいいじゃない」って話になるのなら、問題は生じない…とは、正直思えない。少なくとも私には。私は要は「元凶は広告依存の経営方式」だと思っている。ネット化すれば、その依存率は更に高まる。少なくとも現状はそうだ。だって、ネット上のモノは「タダ」が当たり前だから。いわゆる「発言力」なんてものは、「どれだけ金を出しているのか」に大きく依存する。全てとは言わないけど。こうなれば、読者の発言力は低下し、広告主の意見が拡大する。こんな状態でも良い物は作れると思うけど、今より割合は減ると考えた方が良いだろうな。
ネットでも金取れば…ってのは、私に言わせると難しいと思う。理由は「課金の手間」だ。モノがそこに存在している場合、「モノを管理している人間が課金も管理する」ことが可能だ。でも、データだとこうはいかない。その結果、「金を払うのにいらん手間がかかる」ことになる。これを解決するのは容易じゃないと思うね。もっとも、これは「何だかんだ言ってモーレツな現金至上主義者」である私ならではの意見かも知れないけれど。
広告費が減っているという現実があり、仮にこの流れが「不況に伴う一過性のモノ」でないとしたら、紙媒体業界に出来ることは「いかに上手に衰退してゆくか」しかないと思う。紙媒体のビジネスモデルが「読者からの支援だけでは食ってゆけない」ものである以上、どーしたってそうなる。そんでもって、「上手く衰退できる」奴なんて誰もいないと思う。競馬ブームが去った後、競馬雑誌がどのように衰えていったのかを注目してきた私の意見に過ぎないけどね。
もっとも、紙媒体が変な形で滅びるのは、広告主にとってもマイナスは大きいと思う。ネットへの移行に関しても、「紙媒体の文化を可能な限り守る」って圧力がある程度働くんじゃないかなあ。最低最悪でも、この世には同人誌という「採算性とか広告主の意向とかと無関係に作られている本」があるので、これを母体にまた最初から「紙媒体業界」を再構築するだけの話だ。その意味では、「お先真っ暗」だとは思わない。ただ…「どのように業界がへこむのか」って、本質的には読者とかクリエイターとか編集とかの問題じゃないと思うだけに、どーなるのかは何とも言い難い。
とまあ暗い予想をお届けしたわけだけど、この予想は「むしろ外れる可能性の方が高い」ので、あまり気にしないでもらいたい。だって私の予想だから(苦笑)。それに、「読者が出来ること」はゼロではないはずだ。ネットなどを活用できる今なら、昔より強固かつ効率的に「読者の意向」を雑誌の作り手や広告主に届けることが可能って気もする。その結果、「上手にヘコんでゆく」ことが可能になるかもね。ま、色々警戒は必要だけど。
なお、「そーゆーお前は何しているんだ」って部分に関しては…いやほら、雑誌は熱心に買っているし、気に入った作品は単行本買っているし、流石に現時点で「立ち読みは止めるべきだ」とはならないんですが。立ち読みを全部購入に変えたら、破産ですよ私は(苦笑)
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