2月16日2008/02/17 01:33

 建国記念日の話は、ここでグダグダ語る話じゃない…ということでパス。もっと「真面目な」トコロで語らないとね。
 
 本日の話題は、「次世代DVD決着記念」として、NHKが「やってしまった」コトについて語ろう。他人の失敗を研究するのは大事なことだからね。あざ笑うだけじゃ、進歩がない。
 
 まずは軽く次世代DVDの流れを。東芝が撤退準備に着手したってニュースが流れました。「ベルリンに砲弾が落ち始めた」「掲示板に入らなかったので、5頭以上オモリ落としてない限り…」ってな状態ですね。これで安心してBD買える…のかどうかは、まだダビング規格問題があるのでビミョーなんだんけど。
 
 このようにHD DVDが劣勢な中、天下のNHKはなかなかアホウなことをやらかしてくれました。日本が打ち上げた月観測船「かぐや」に取り付けた月面映像を、HD DVDで発売するんだと。4月に。プレーヤー売ってるのか。「やってしまった」のは間違いないね。
 
 コレに関しては、「カネ出して売るとは何事だ」みたいな意見がネット上で出ている。まあ、海外ではダウンロードしやすい形で公開されてるのに、日本じゃ「試供品」めいたもので誤魔化してるからね。「売るつもりだったんだな」と言われても仕方あるまい。
 
 ただ…正直言おう。この判断、単なる「カネ儲け主義」で片付けちゃいけないと思う。いやまあ、下らない判断して大失敗したのは間違いないんだけど、その思考過程を勘違いするのは良くない。日本が太平洋戦争に負けたのは「日本が悪だったから」ではなく、「日本が愚かだったから」であり、日本馬がアスコットで勝てないのは「日本馬が弱いから」ではなく、「あんな競馬場に慣れてないから」だ。この辺を誤解するのは、結局有害なだけではないかと。
 
 まず前提条件として、NHKは「金儲け主義に走る必然性が薄い」組織である。連中の立場考えると、むしろ儲かるのはさほど嬉しくない。理屈は簡単。受信料という「税金みたいなモノ」で食ってる組織だから。下手に儲けすぎると、受信料値下げって話になりかねない。この辺、民間企業と同じ感覚では語れないでしょ。
 
 じゃあ、無料配布すればいい…って意見は、実はピントがズレている。私は詳しく知らないけど、チャンと無料配信したはずである。番組として。まだしてないのなら、そのうちやる。いくら何でも、そこをはき違えるような組織ではない。
 
 いや、そうじゃなくてだな…言いたいことはわかる。これだと「観たいときに観る」ことができないからね。さらに言うなら、何度も観ることを前提で考えた場合、番組内で流れる「解説のたぐい」は余計なモノと見なせるので、専用の編集したものがあると嬉しいのは事実。それはわかる。多分NHKにもわかってる。
 
 それがわかっているんなら、ダウンロードでいいじゃん…と、ネットの住人は吼える。ブッブー。ここに関しては、ネットの住人の方が「わかってない」部分だ。そういう映像をネット「だけ」で流せば、間違いなく文句を言う奴がいる。いわゆるネットリテラシーが低い連中だ。私でさえ、回線速度にはやや不安がある(費用対効果考えた結果である)ので、ハイビジョン映像ダウンロードはちょっと…と尻込みする。正直言って、カネ出してでもブツを売ってくれた方が有り難い。ましてや、「団塊の世代」の方々に至っては。
 
 ブツを販売するとしよう。HD DVDとBD、ドッチにするか?市場シェアを考えたら、日本じゃ9割近いと言われるBD…これまたブッブー。「9割がBD」ってのは、要は「次世代DVD持ってる奴」レベルの話。そんなもの日本全体で考えたら、ロクに普及してない。BDで出したからって、「国民の需要を考えた」品とは言い難い。
 
 このたびめでたく敗北が決定したっぽいHD DVDだけど、1つだけ良い点があった。単なるDVDとのハイブリッドを作りやすかったのだ。よってHD DVDなら1種類出せば「古い機器しか持ってない奴と、新しい機器持ってる奴」どちらにも対応できるけど、BDの場合はBD版とDVD版を両方出す必要がある。極論を言えば、実はBDってのは案外「メーカーの都合優先」の規格だったりするんだな。
 
 とはいえ、実際「勝った」のはBD。BDにも良い点はいっぱいある(代表は最大容量)ので、この規格が悪いってワケではない。ただ…NHKが「五分だと想定した」場合、HD DVDを選んじまった気持ちはわかってあげてもいいのでは。単に時代の進歩…というか、「ドッチが勝ちそうか」ってのを読み違えただけだ(笑)。これはNHKの罪だけど、NHKに「その辺を鋭く判断できる」なんてこと期待する奴がドコにいる?
 
 ブツを売るならHD DVDって理屈はわかった。でも、それだったらダウンロードも平行して…これは別の問題がある。まず、ダウンロード無料だからって、ダウンロードさせる側の経費が安いとは思わない方がいい。私が多少知ってるのはオンラインゲームにかかる経費絡みだけど、かなーり大変らしいぞ。コレは推定だけど、経費「だけ」考えたら、無料ダウンロードは円盤形メディア生産にかかる全経費に匹敵するのでは。
 
 それでもやる価値は…あると思う。けど、NHKという「TVメディア」にそれを期待するのか。コトは「放送と通信のあり方」に関わる問題だってのに。放送とネットの関係については、この先どうなるか何とも言い難い。ネットに将来性があるような気がするのは確かだけど、放送側としては「その流れに全力で抵抗する」必要と覚悟があるのは間違いない。どこまで抵抗できるのかはともかく。
 
 でも、外国じゃあダウンロードできるのに…いやね、外国は外国。放送に対する位置づけがベラボーに異なる米国なんかと一緒に出来るワケがない。なにせ向こうは番組数が多すぎて、日本みたいな重みが感じられないからね。これはこれで欠陥がある(「同じ番組を観てる」コトを期待しにくい)以上、何でも向こうのやり方に従えば…って話にはならない。
 
 誤解を受けないように言っておくと、私は「TVが衰退してネットの時代が来て欲しい」と思っている一派だ。他人と横並びの行動をすることに比較的強い抵抗感があるので、流行っている番組なるものに興味はない。大事なのは私にとって面白いかどうかで、その判断は明らかに一般的ではない。そーゆー人間にとって、TVメディアの哲学である「みんなが観てくれる番組作り」ってのはるで価値を見いだせない。
 
 ただ、それだけに「TVがネットに対抗しようとする理屈」はわかる必要がある。共感するためではない。否定して叩き潰すため。敵に勝つためには、敵のことを知らなければならない。基本中の基本だけど、ここを誤解してる奴は多いよね。
 
 最近流行の「KY」って発言だけど、いわゆる「空気を読む」能力ってのは一定の問題があることを理解してもらいたい。空気ってのは「その場にいる人間」の間に流れるモノなので、「身内のみに通用する理屈」が通りやすくなる。そうやって身内の論理だけ優先して暴走すると、気がつけば米国に宣戦布告して原爆落とされるまで間違いに気がつかない…ってトコロに至っても文句が言えない。NHKは今回「アホウな」決断をやらかした。それを非難するのは簡単だし、大切なことだ。でも、その前に「何で連中はそんな決断をしたのか」について、深く考察してみる必要はあるんでないかな。これは「空気読む」だけじゃサッパリわからんと思うぞ。
 
 まあHD DVDの敗北は間違いない以上、それで売って「皆様にお届けした」ってコトにならないのは間違いない。ネット推進論者だけでなく、各方面から色々言われているんでないかな。それで考えを改めてくれればいいんだけど。なにせ私は次世代DVDドッチも持ってないから(笑)。

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