2月26日 ― 2008/02/27 01:37
本日のお題は、「初心者向けゲームのテーマとしてチンギス・ハンは適切か」としよう。コマンドマガジン最新号にトボけたこと書いてあったので。正直、「フン」とハナで笑って終わりにしていたのだけど、行きつけのブログでこれについて語っていたので、私も触れようかなと。
コマンドマガジン最新号の付録ゲームのテーマは「チンギス・ハン」。いやベルリン市街戦もあるけど。この趣味を知っている人間に言わせると、ドマイナーテーマである。理由は後で説明するけど。
しかし、デザイナー殿はそれが気に入らないらしい。ま、言いたいことはわかる。そんでもって、「一般人が知らない、ゲーマーの間でだけ良く知られてる存在をメジャー扱いし、一般人が誰でも知ってる存在をマイナー扱いしてるから、ゲーマーは駄目なんだ」といった趣旨の主張をしておられる。
私の感想?冒頭にあるとおり、「フン」で終わり。いやね、私はコレでも一応、どちらかと言えば「初心者取り込みは考えた方が…」って意見の持ち主。世の中には、私よりカゲキな「初心者の相手なんてする必要なし」論者がいるからね。でも、この意見に対する感想は「フン」でいい。チンギス・ハンのゲームを作る意義は認めるけど、それとこれとは別物。この見解自体は、いいことを含んでいつつも、結論としては的外れだと思うな。
何故そう思うのか。ゲーマーが「自分達の間でだけ知られてる存在をメジャー扱いしている」のは事実。それが初心者への参入障壁の1つになっているのも、認めて良いかもしれない。けど、だからってチンギス・ハンをゲーム化する対象に選ぶ必然性は薄い。いや、むしろ「そんなことやってちゃ駄目なんじゃないの?」とまで言ってしまおう。
よーく考えて欲しい。確かにチンギス・ハンは有名だ。コイツが出てくるゲームなら、初心者も「知らないからやりません」って口実で断ることは出来ないでしょ。でも、単に「ウォーゲームのテーマになりうる、誰でも知ってる有名人」ってことで考えれば、他にも「誰でも知ってる奴」は山ほどいる。なのに、何故あえてチンギス・ハン?
もっと言ってしまおう。この世界には、「我々ウォーゲーマーもメジャー扱いしていて、なおかつ一般人もよーく知ってる」奴がチャンといる。ナポレオンだ。確かに第二次大戦の陸戦モノほどメジャーではない。けど、まさかマイナーテーマ呼ばわりはしないでしょ。加えて、一般人への知名度は申し分ない。それを考えれば、「チンギス・ハンのゲームやる前に、ナポレオニックやりゃあいいじゃん」で終わり。そこをひねってチンギス・ハンだなんて言ってるようだから…(以下略)。
ナポレオンが出てくるゲームは、山のようにある。確かに、どちらかと言えばルールの難しい、ベテラン向けのゲームが多い。でも、初心者向きのモノだってチャンとある。それどころか「初心者からベテランまで楽しめる」なんていう、傑作さえ存在する。代表は「マレンゴ」かなあ。これはいいよ!ルールは簡単だけど、奥が深くて。
それに対し、チンギス・ハンが出てくるゲームは数が少ない。数が少ないと、やはり質も期待しにくいよね。少数ながらも傑作があれば…って話はあるけど、現状そういう話は聞かないなあ。コマンド付録はプレイしたら面白そうではあるけれど、どうなのかねえ。まだプレイしてないんだよな。とはいえ、この段階で「さすがに傑作じゃなさそうだ」って前提でモノ語ったからって、別に悪口言ってるとは思わないんですが。佳作・秀作くらいは期待しても、よほどのことがない限り傑作は期待しないでしょ。けど、「ナポレオンではなくチンギス・ハン」って主張をするのであれば、傑作を相手にする覚悟がいるのも事実。
さらにだ。「チンギス・ハンでは駄目な理由」もチャンとある。簡単に紹介しておこう。まずその1。チンギス・ハンは実はメジャーじゃない。確かに本人はメジャーだ。けど、それだけでメジャーって言われても。部下や敵の連中知ってる奴がどれだけいると?自慢じゃないけど、私はよく知らなかった。私が思うに、「ソイツをテーマにしたゲームをプレイする気になる」ためには、部下や敵もある程度名前が通っている必要がある。「三国志演義」の魏、「銀河英雄伝説」の帝国側は記述細かいでしょ?だからチンギス・ハンはマイナーなんだよ。
その2。チンギス・ハンのゲームを覚えた。で、その次は?そればっかりやってるとそのうち飽きる。かといって、「良く知らない」ゲームをプレイするにはまだ早いでしょ。ゲームで覚えた知識を応用する形で、似たようなテーマの別ゲームを遊ぶ…ってのは良くある話じゃないかな。けど、チンギス・ハンだとそうはいかない。コイツをテーマにしたゲームが少ないから。つまり、ステップアップを考えた場合、「過去の蓄積」が利用しにくいテーマを選ぶのはどうか…ってことになる。
その3。実は私が一番重視してること。チンギス・ハンがテーマのゲームってコトは、「馬に乗った兵隊が弓撃って、突撃する」ゲームになる。モンゴル人ってのはそーゆー戦い方をした連中だし、時代からいってそうなる。戦車・飛行機どころか、マトモな鉄砲がないんだし。これはいい。けど、こーゆー戦いをゲームとしてまとめることが出来るのなら、それはチンギス・ハンをテーマにする必要があるのか。ここが問題になる。
何を言っているのかって?つまりだ。「馬乗った兵隊が弓撃ってくる」ゲームなら、素直に日本を舞台にした方がよほど日本人ウケするし、適切なんじゃ?ってこと。時代が似てる「源平合戦」でもいいし、多少下った「太平記の時代」でもいい。鉄砲のルールを考慮する必要はあるだろうけど、戦国時代に応用できればもっといい。逆に弓の威力を弱めれば、三国志って手も考えられる。日本人限定でモノ考えるのなら、コッチの方がよりメジャーである。
私が「そんなもとやってちゃ駄目なんじゃない?」とまで言うのは、これらが理由だ。何かしら一般人にとってメジャーなものをテーマにしたい。その気持ちはわかる。わかるけど、この業界の「過去の蓄積」と無縁なトコロで勝負しちゃ、意味ないでしょ。なんで第二次世界大戦モノがメジャーになったのか?その辺の流れを無視して独自路線で突っ走っても、この狭い業界よりもさらに狭い範囲でしか影響を及ぼさない可能性がある。それじゃあ、我々が今やっているコトと五十歩百歩だ。そーゆーことをやること自体は問題ないかもしれないけど、他人に推奨するほどのモノか?一般論で考えたら、害の方が大きいと思うんだけどな。
なんで害の方が大きいのか。正直、ゲームってのはものすごーく「向き・不向き」がある。特に、実は「勝ち負けがある」って時点でダメって奴は多い。そう考えると、この業界にいる奴ってのはほぼ自動的に「どっかオカシイ奴選ばれた民」だ。そうじゃない奴を引きずり込もうとするのは、労多くしてお互い実りナシってことになると思う。この趣味と知り合うきっかけを作ってやることは大事だし、そのための工夫をするのは悪くない。でも、だからってヘンに媚びを売るようなマネは止めた方がいいと思うな。
私は結構マイナーテーマのゲームも好きだ。だから、チンギス・ハンをテーマにしたゲームがあるってのは、悪くないと思う。けど、それと初心者勧誘を「強く」関連づけるのは適切ではない。ただそれだけの話だ。むしろ前号の付録である「天下強奪」の方が初心者向きでないかい?テーマがテーマだから。アレは確かに「面白いと思うけど、どうかと思う部分もある」ゲームではあるんだけど。
もっともだ。仮にデザイナー殿にこの意見をぶつけたら、「そうは言っても、大切なのは実際勧誘した数であって…」と主張なさるであろう。これは一理ある。その点、私は偉そうなことを言う資格はない。認めよう。ここについてグダグダ語るのは正直色々辛いモノがある(色々あったんだよ私にも)ので、素直に白旗あげた方がいい。ただ、これは「その道を進むのはヤメロ」と言わないってだけの話。私は別の道を行くし、別の誰かが「チンギス・ハンの次はアレキサンダーかカエサルか…」などと考えるようなら、「止めた方がいいと思うよ」とそっと忠告する。無理強いはしないけど。
まあ、実際はデザイナー殿も「わかってはいるけど、つい筆が滑った」んではないかな。そーゆートコロに目くじら立ててどうこうってのは、本来大人気ない。だからこそ最初は「フン」だけで片付けていたんだけど。ただまあ、今回はあえてドーンと突っ込んでみました。だって、ネタがなかったんだもの(苦笑)。
最近のコメント