1月31日2008/02/01 00:50

 1月最後の日。明日は大量のカレンダーをめくる必要がある。めくり忘れないよう、かなーり要注意だ。ホントに山のような数だし。
 
 本日のお題は、「PCウイルス作者、著作権法違反で逮捕」について。まあ深く語れるワケではないんだけど、一応語っておこうかなと。これはこれでヤバい話だったりするからねえ。
 
 PC・ネットの世界は日進月歩。にもかかわらず法律の世界は「相変わらず」なので、法整備は全く追いついてない。まあ、仕方ないことではあるんだけど。「PCウイルス作者に対する刑事罰」ってのは、その代表だ。
 
 PCウイルスがはた迷惑な存在だ、ってことは間違いない。そんなものを作った奴には何らかの刑事罰を…と考えるのは自然なことだろう。でも、実を言えば今のところ、PCウイルスの作者を「逮捕」できるかどうかは、何とも言い難い。何故か?そりゃもう、法律が追いついてないから。
 
 まあ世の中にコンピュータってものが登場してからずいぶんと経つので、一応「電子計算機損壊等業務妨害罪」ってものがある。まあ、要は「コンピュータを不正動作させた奴は逮捕するよ」って法律ではあるんだけど…実はこの法律、ちと問題がある。「業務用」限定なのだ。想定としては、銀行のオンラインシステムなどに対する「不正操作」「攻撃」が対象ってことだね。
 
 仕事に使われてるPCなんて山ほどあるから、問題なく「業務用」も含むのでは?う~ん…正直、この問題に詳しい法律家に聞いてみないと、何とも。なにせコトは「刑事罰」、つまり刑法の話だからねえ。案外知られてないようだけど、刑法ってのは、「とにかくひたすら融通が利かない法律」なのだ。私ごときの法律知識では、この法律でPCウイルス作者を取り締まれるのかどうか、答えられない。
 
 何で刑法は融通が利かないのか?利いたら大変だから。刑法ってのは、「こーゆーことをした奴は、悪人だから逮捕して罰与えてOK」って法律だ。こいつを弾力的に運用された日には、それこそ「マトモな」市民だって簡単に逮捕できるようになりかねない。法律ってのは融通が利きにくい(当たり前だ!)ものだけど、その中でも特に融通が利かないモノ。それが刑法(と刑事訴訟法)だろう。
 
 もっとチャンとウイルス作者を逮捕できる法律はないのか?一応ある。まだ成立してないので、今回の件とは無関係(後で決まった法律で罪が決まったりしないって原則がある)だけど。はっきり言って、法案成立は遅れている。何故かと言えば、悪名高き共謀罪とセットだからだ。共謀罪に賛成か反対かはさておき、この法律に「反対する奴がいる」のはわかる。成立させるのは結構大変だろう。そんなものとセットにされたので、ついでに成立が遅れている。この辺、自民党及び法務省の「法案を通すための戦術」に問題があるような気もするけど、まあネット上のPCウイルスってものに実感が湧かない連中だらけなので、こんなものでしょ。
 
 そもそもだ。警察及び検察に「この法律でイケる」と確信があったのなら、ウイルス作者を著作権法違反なんぞで逮捕する必要がない。スバリ「電子計算機~」容疑で逮捕すればいい。それをしなかったってコトは、何かしら自信がなかったってコトだろう。この先取り調べが進めば、改めて罪状に追加されるかもしれないけど。ま、「殺人に使ったかどうかわからないけど、拳銃持ってるのは確実なので銃刀法違反で逮捕しました。殺人に使われたモノかどうかは、逮捕して押収してから調べればいい」ってのと同じではないかと思うけど。
 
 問題は、「電子計算機~」に該当しそうもない、って判断された場合だ。一応その可能性はある。少なくとも弁護士が「その線で突っ張る」価値はあるだろう。弁護士が無理筋で突っ張ると心証を悪くして罰が重くなるかもしれないので、必ずそうしてくるとは言い難いんだけど…なお、これは考えようによっては「必要なこと」だ。「何だか怪しげなプログラムだから」で法律を適用された場合、バグ含んだプログラムを配布しただけで逮捕される、って事態になりかねないからなあ。
 
 もし該当しないとなると…仕方ない、著作権法違反で裁くことになる。それで逮捕したワケだし。容疑者もこの点は認めているようなので、この容疑で起訴して有罪に持ち込むのは難しくないはず。それはいい。でも、これって重い罪に問えるのか?そこが問題になる。
 
 あえてPCウイルスのことを無視して考えよう。今回の容疑者は、あからさまに著作権法に違反してる。TV映像から抽出した静止画を、権利者に無断で「バラまいた」からねえ。でも、よ~く考えてみれば「たかがそれだけ」だ。番組まるまる1本動画でバラまく「剛の者」がウヨウヨしてることを考えると、「罪は罪だけど、程度は軽い」と判断せざるを得ない。
 
 そうは言っても、PCウイルス添付させたんだから…と考えるのは、実はかなりの「危険思想」だ。著作権法に違反してるって「穴」が見つかった場合、問答無用で逮捕して重い罪かぶせちゃう…って「手法」の入り口になりかねない。そりゃあ今回はPCウイルスが問題となっており、社会的通念とやらで考えて「悪」扱いしてもいいかもしれない。だからって警察にこのやり方を無制限に適用されたら…正直言おう。私は塀の中に落ちるね(苦笑)。
 
 まあ、警察・検察の言い分もわかる。こうでもしなけりゃ逮捕できないんだから。ただ、もし「電子計算機~」での立件が難しいとなったら、やはりこのウイルス作者を重い罪には問えない、と考えるのが正しいんじゃないかと。そこはキチンと切り分けてくれないと、実に危なっかしい。
 
 私に言わせると、今回の件は「著作権法違反が別件逮捕の口実として使われた」ってだけで、既に「ヤバいかも」って危惧がある。だって…とりあえず著作権法違反で逮捕して、逮捕状使って脱税の証拠を捜されたら、どーすんの(苦笑)。このコンボを見境無しに使われた場合、コミケは…あえて詳細な予想は避けよう。都知事が「歌舞伎町浄化の次は…」などと言い出さないことを祈るしかない。
 
 別に私はPCウイルス作者を擁護するつもりはない。あんな連中は滅んで欲しい。でも、だからって「どんな手を使ってもイイから滅ぼしてくれ」ってのはちょっと…私としては、共謀罪とセットで通せば何とかなる…と法整備を甘く考えていた、法務省または自民党がむしろアホだ、と言いたいところだけどね。今回の件は、単に「逮捕された、めでたい」で片付けず、起訴状の中身とか判決文なんかも注目する価値があるんでないかな。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://fohpl.asablo.jp/blog/2008/02/01/2593179/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。