11月19日2008/11/19 23:32

 明日を考えると本日は「更新しない方が無難」なんだけど、こんな面白いネタを見つけてしまっては、黙って眠れそうもないですね。つーわけで、「コマンド誌の同人ゲーム募集」について、思うところを語ってみようかと。
 
 この企画、採用されればその同人ゲームを紹介してくれるんだそうな。しかもレビュー付き。仮にボロクソに貶されても(やらないとは思うけど)宣伝になることは間違いない。悪くないアイデアだと評価していいだろう。
 
 ただまあ、これを実行に移すとなると、「勇気あるというか、無謀というか…」って評価になる気が(苦笑)。そこでまあ、私なりに多少ツッコミを入れてみようかと。私は間違いなくオンターゲット(コマンド誌を読んでいて、なおかつコミケに出入りしてる奴だから)なので、一応その権利があるんじゃないかなあ。
 
 引っかかるのは、募集しているゲームの対象が狭いこと。「シミュレーションゲーム」「歴史的なテーマ」が対象らしいんだけど、これじゃ「これは対象になるの?」ってゲームが山ほど出てくるし、明らかに対象とならないものに「むしろ採り上げてほしかった」って作品が続出する可能性があると思うんだな。
 
 たとえばだ。HJの「タンクハンター」「タンクバスター」は、シミュレーションゲームだと断言しにくい。作り手が「コレはシミュレーションゲームだ!」と主張する(当時のHJはそーゆー会社だった)のならともかく、「別にシミュレーションゲームじゃないから…」と思われてしまったら、応募してこない。そもそもシミュレーションゲーム業界は、より手軽なゲーム業界と比べて市場が小さく、そこにアピールする意味なんてほとんどないんだから。この手の「ミリタリーものを扱った、ライトなゲーム」を排除するような募集要項は、むしろコマンド誌側の損失になるんじゃなかろーか。
 
 「歴史的なテーマ」ってのも、ある意味余計かもしれない。昔ツクダが出していた、「ガンダム」系も「銀河英雄伝説」系も全滅ですよ。SFモノも駄目ってことになる。仮想戦(たとえば第三次世界大戦モノとか)は歴史物の一環だとしても、まさか「インペリウム」(GDW/HJ/国際通信社)を歴史的テーマと言い切る奴はいないでしょ。ファンタジー系も駄目ですね。「War of the Ring」(FFG)脱落だ。ついでに言えば、スポーツシミュレーションゲームも対象外。「APBA」(HJ)「パワーベースボール」(エポック)みたいなゲームは、応募してくるなってコトになる。
 
 かといって、明らかに「ソレを採り上げるのはどうかと…」ってモノも山ほど考えられる。代表例は「クイーンズブレイド」(HJ)かなあ。あれを「個人戦闘をシミュレートした作品」(昔はそーゆーゲームだったんだよ!そもそも原型は第一次大戦時の空中戦ゲームなんだから)と主張されてもだなあ…って気がするのは確かだ。
 
 これはあくまで個人的私見だけど、今あえて同人ゲームを採り上げる以上、「典型的シミュレーションゲーム」に限定するのはマイナスだと思う。確かに、こういうものを採り上げ、読者に良質な同人ゲームを紹介し、あわよくばデザイナーなりライターなり…といった形で誌面に協力してもらうってだけで、一定の効果はあると思う。だけど、この狭い業界の話だ。典型的シミュレーションゲームのデザイナーなんて、同人といえど「この世界じゃ名前の通っている」人間の割合が多いのは間違いない。だから、新規デザイナー開拓効果はさほど期待できないのでは。
 
 ならば、むしろ「コマンド誌に掲載するかどうか、ちょっと悩む」モノこそ、あえてコマンド誌で採り上げる価値があるのでは?シミュレーションゲームとは呼べないけど、ミリタリー・歴史関連を扱っているゲームだの、シミュレーションゲームの手法を使ったSF・アニメ等をテーマとした作品だの(代表的なモノは上で紹介した)も排除せずに採り上げる。そこまでやってこそ、色々先の展望が開けるのでは。
 
 そもそもだ。コミケの「真価」の1つは、「商業誌じゃドコも扱ってくれない」品を扱えるトコロにある。ジャンル分けに苦悩するようなゲームなんてのは、その典型だ。それを取り扱わないなんて姿勢では、オリジナルゲーム投稿募集とあんまり変わらない効果しか得られない気がする。どうせ同人ゲームを扱うのなら、こういう「同人ならでは」ってモノから目を背けて欲しくないね。
 
 そんなこと言ったって、どっかで線を引く必要はあるのは確かだ。でも、それを「実際に作品を見る前に」判断できるか?私は「それはコマンド誌にとって損失の大きい考え方」だと思う。確かに、一番応募して欲しいのは「典型的なモノ」、つまり歴史的テーマを扱った、コマンド読者の大半がシミュレーションゲームだと認めるようなゲームかもしれない。けど、だからって「境界に位置するようなゲーム群」を最初から排除すると、良い作品を見落とす可能性が高まる。コミケという市場の性質を考えれば、むしろこういったモノから「採り上げる価値のある」作品を見つけようとする姿勢の方が重要じゃないかなあ。
 
 そもそもだ。コマンド編集部が「掲載すべきか悩む」って段階のゲームは、正直全部紹介してもいいくらいだと思う。理由は単純、コマンド誌の全読者が「こんなもの載せるなあ!」と叫ぶような品ならば、「掲載しようかどうか悩む」ワケないから。一部読者からの反発を承知の上で、「でも、いいゲームだと思うし、一部の読者には喜んでもらえそう…」と感じる何かがあるからこそ、掲載すべきか悩ましいワケだ。何もそんなゲームばかり紹介しろと言ってるワケじゃない。典型的シミュレーションゲーム5個紹介するのと同時に、1個ぐらいそーゆーゲームを紹介してもいいんじゃない?って話なんだから。
 
 もしコマンド編集部が、「それは誤解だ!そういう作品も積極的に採り上げる準備がある!」と主張したいのなら、即刻募集要項を改訂するべきでしょ。コマンドって雑誌の方向性と、あの投稿規定を見て「SFゲームもアリなんだ」と思う奴はいないと思う。少なくとも私はそう感じなかった。あの雑誌の読者には、少なからず「SFゲームを採り上げるのは、反対だなあ」と感じている人間がいることを考えれば、「そんなつもりはない」と解釈するのが普通であり、ある意味マトモな返事だろう。正直言おう。今回の私は、マトモなコトを主張しているつもりはない。ヘンな奴がヘンな主張をしているだけだ。
 
 私なりに難点を挙げるとするならば、レビュアーが裸足で逃げ出す危険性があることか。誰がレビューするのか知らないけれど、典型的シミュレーションゲームと典型的ギャルゲーを同時にレビューしろって言われて、対応可能な人物がそうそういるとは思えない(私は対応不可としておいてください)。とはいえ、この業界には「ウルトラマン」(バンダイ)を傑作だと言ってるゲームデザイナーもいることだし、コマンド編集部の努力次第では、対応可能だと思われる。「レビューの内容どころか、掲載すべきかどうかでレビュアーがガンガンやり合う」って状態を許容しさえすればいい(苦笑)。
 
 そこで提言。応募規定は思い切って、「コミケで売ってる、ゲームと称するモノは全部送ってこい!」にする。ただし、採用されるかどうかは内容次第。そもそもコマンド誌なんてマイナーな雑誌(世間的にはそうなる)がこう吼えたからって、実際にゲーム送る奴はあまりいないはず。よって、ドコをどう考えても採用される可能性がないモノ(コミケには山ほどある)が送られて困る…って可能性は絶無に近い。ここまでやって初めて「重要な欠落をほんの少し防げる」のでは?それにだ。もし「面白いけど、コマンド誌で採用するのは問題あり」って作品が本当に送られてきちゃったら、「コマンドいちねんせい」ブログで紹介するってワザも使えるじゃないか(苦笑)。
 
 本当を言えば、「コミケに来て、そこで足使って作品探して、面と向かって作者に採用許可求めろ」と言いたいくらいなんだけど、コマンド編集部にコミケでコレをやれと言うのは酷でしょ。コミケってのは「生き地獄」だからねえ。とはいえ、そこをヒイヒイ言いながら徘徊している私としては、「コミケで売られている典型的シミュレーションゲームをレビュー付きで紹介するって言えば、それなりの応募が見込める」などという考え方には、少しだけカチンとくるものがあるけどね。同人ってのは、カタログチェック(すごく大変)と足で探すモノだと信じているから。
 
 しかしだなあ、こうやって商業誌に同人ゲームの宣伝が掲載されると、また売り切れが早くなるような…なにせゲームは大量生産にあまり向かないので、ジャンルはマイナーだから…と油断していると、周囲にいる同ジャンルの売り子が買いまくった結果、「一般で入場したり、他を回ってから買いに行こうと考えたら買えなかった」ってコトもある。それを考えたら、この企画はポシャった方が私の利益になるような(苦笑)。私はコミケではゲームのことだけ考えていればいいワケじゃない(配置にもよるけど、「毎日西と東を飛び回る」のがデフォルトと覚悟している)からなあ…
 
 とまあ、色々文句を付けてきたわけだけど、基本的には「いいトコロに目を付けた」と褒めるべきでしょう。同人ゲームは「対戦相手を見つけるのがやや難しい」って欠陥があるので、それが多少解消されそうなのは大きい。ただ…手放しで褒めるほど、私は素直にできてはいません。つーわけで、色々吼えさせてもらいました。ま、「こんな意見もあるんだ」ぐらいに思っていただければ。私の推測では「同人ゲームなんて…」「典型的シミュレーションならともかく…」って意見の方が主流だろうからねえ。

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