6月28日2014/06/29 05:19

 先日の続き。前回は「私の見解」と「コマンド誌掲載記事」が一致している…と書いたわけだけど、相違点も大いにある。ソコについて書いておきたい。
 
 まず、最初に言っておこう。大事なのは「目指す方向が一致している事」であり、前回述べたように、そこは一致している。だから、今から書く事は基本的に枝葉。その点は理解してもらいたい。ただ、「最前線で戦う存在」としては、戦術的な話も重要なんだよ。特に私の場合、「理屈こねくり回しているヒマがあったら、前線に出て戦え!」と叱咤激励しなきゃイケナイ立場だからして。
 
 相違点はどこにあるのか。「当たり前のことを当たり前にやる」ことが大事だと、記事にはある。これだけ取り出して見れば、問題は無さそうに思える。ただ、「当たり前」という言葉をどう捉えるかが問題なのだ。ハッキリ言おう。ここで言う「当たり前」が、従来やって来た事の延長をしっかりやり続ければ良い…ってニュアンスだとしたら、ダメダメである。状況は動いているのだ。それに対応できる手法を開発するぐらいの気持ちがないと、「当たり前のことを当たり前にやる」って段階にすら達しない。私はそう思う。
 
 2月に艦これ即売会でデモプレイを行う際、わかっちゃいたけれど、どーしよーもなかったコトがある。ウォーゲームのデモプレイは、正直言ってあまり派手ではない。何もわかってない人間がちょっと眺めただけでは、人目を惹き付けられない。じゃあどーする…と考えたけれど、代案は何もなかった。つまりだ。ウォーゲーム業界は、まだ興味を持っていない人間に対し、「こういうモノがある」とアピールする手段を持ってない。少なくとも、そのための手法はほとんど知られてない。
 
 今にして思えば、他のアプローチがことごとく不発に終わる中、ゲームマーケットでのアピールが多少上手くいったのも、ここに要点があるような気がする。ゲームマーケットに来る人間は、ほぼ自動的に「アナログゲームには興味がある」のだ。この時点で、デモプレイを見たりお試しプレイしてみたり…という段階に至るハードルが相当低い。その点が他のアプローチ、代表例として挙げられる事が多い「歴史好きへのアプローチ」とは異なる存在なのだろう。
 
 ここで「ゲームに興味がない奴がウォーゲームをプレイするようになるなんて、あり得ない」と結論づける事も可能ではある。けれど、実際はそうでもない。強力な宣伝効果を投入できれば、売り上げにダイレクトな影響が出ると証明されたのだ。後はアピール方法の問題である。ぶっちゃけ、「カネ払って人目を惹き付けるような広告を打つ事が出来るのなら、この業界は発展しうる。けれど、そのためのカネがない」だけ。
 
 カネがないならどうする?知恵を絞るしかない。けれど、「従来の方法を繰り返しているだけ」では、知恵を絞っているうちに入らない。2月に結局フツーのデモプレイしかできなかった私も含め、知恵が足らないし努力も足らない。コマンド誌の記事は、そーゆー部分に対する危機感が足らない。私も従来はその程度の認識しかなかったのだから、偉そうなコトは言えないのだけど。
 
 萌えミリ層を取り込むためには、「存在を知ってもらい、遊んでもらう」必要がある。これは当たり前。そのために必要な事をやるのも、当たり前。けど、そういう当たり前の事をやるために、従来の手法を採用するのは、当たり前じゃない。だって、「当たり前のこと」を達成する手段として不適切なんだもの。たとえて言うなら、41年東部戦線にドアノッカーを大量に送り込むようなモノである。「T34を撃破するためには、その装甲を貫ける砲が必要」という当たり前のことを達成する手段として、ドアノッカーは不適切でしょ?大量に送り込んだって、あっさり撃破されて終わり。必要なのは、より威力のある対戦車砲だ。そんなものを開発するのは当たり前のことじゃない…と言われても困る。そんなこと言う奴は、75mm砲搭載のシャーマンでパンターと一騎打ちしてこい。
 
 そーゆー観点から記事を眺めると、保守的というか何と言うか…な記述が結構ある。「安易に『萌え』にすり寄った商品展開(例えばユニットにオリジナルの少女兵器のイラストを入れるなど)は意味がない」とあるけれど、コレは誤解を招きそうな表現だと思う。実のところ、コレは一定の効果があるのだ。でなければ、表紙が思いっきり「萌え」路線の「SLGamer」は大きく間違っているコトになる。アレの表紙が萌え絵なのは、諸般の事情があってだなあ…ってのは私も知っているんだけど、販促効果ゼロとは思えない。メロンブックスに置かれたり、書泉グランデでちょっとした特設コーナー組んでくれたり…ってな「販促効果があるのは明らかなコト」とアノ表紙が無関係だとでも?
 
 確かに私も、単純に箱絵やユニットに萌え絵を入れて終わり…ってな商品は売れないと思う。ただ、それは「萌え絵を好む層はその存在を知らず、存在を知ってる層は萌え絵を好まない」からだ。こういうブツを本気で売ろうと思ったならば、萌え絵を好む層にアピールしなくちゃ意味がない。コマンド誌ではなく、萌え絵を好む層が読みそうな雑誌に広告掲載しなくちゃイケナイ。もちろん、ただ広告載せるだけじゃなく、その内容はきちんと工夫しないと駄目だろうね。そーゆーコトやらなくて「売れない」「駄目だ」はねーだろ。軽機関銃は戦車に撃ち込んでもあんまり効果がない。だから軽機関銃は欠陥兵器だとでも?
 
 この件については、別方向から「萌え絵を入れる事それ自体は必ずしも間違いじゃない」と証明する事が出来る。アークライトって会社が出した、鈴木大佐デザインの「ドミニオン」クローンのカードゲーム「ばるば☆ろっさ」ってシロモノがある。SLGとは言い難いけど、雰囲気は近いモノがあるゲーム。でも箱絵もカードも萌え。比較したいのはコレそのものじゃない。このゲーム、「燃え絵」バージョンもある。売れたかどうかは知らないけれど、少なくとも実際そんな品が出る程度には「ウケるんじゃないか」って予想があったわけだ。箱絵・ユニットが萌えか燃えか…ってのは、要はユーザーの「慣れの問題」である。ユーザーにとって見慣れているモノを提供できれば、それに越した事はない。我々ゲーマーにだって「ハリガネ弁当箱(NATO式兵科記号の事)はいやだ!」ってな主張があったくらいだ。
 
 萌えミリ層に我々をアピールする手法に至っては、何をか言わんや。「戦史を扱う雑誌などへの出稿。web広告の活用」「こまあぷ」「ゲームの紹介動画がyoutubeで公開」…全部「既存のウォーゲーマー、もしくはそれにかなり近い層」向けの宣伝手法じゃあ!我々が今考えなきゃイケナイのは、「『ウォーゲーム』でググった場合何が出てくるか」ではなく、「Googleに『ウォーゲーム』って単語を入力させる手法」だろ?いくら何でも手法が古典的。第一次大戦の戦術戦略で第二次大戦に挑む将軍のように古典的。これらは無駄じゃないけれど、今論じているのはそーゆーコトじゃないだろ?「相手が歩兵師団なら戦えます。けど、装甲師団だと通用しません」とでも言いたいのか。
 
 じゃあどーしろと?知るかそんなの。私は自慢じゃないけど「負け犬」だ。「今までのやり方では、電撃戦とやらに対応できません!」って言いながらダンケルクから戻ってきた兵隊みたいなものである。そりゃあ対抗策考えろって言われたら考えるけれど、すぐ対抗策を提示できるようなら、ダンケルクから逃げ帰ってくる必要なんてねーだろ。「代案がない?じゃあ今まで通り戦うしかないな」なんて言われても困る。まさかそのまま北アフリカに行けとか言わないよな。
 
 同人誌に思いっきり書いたから、あえてココでも言ってしまおう。こーゆートコロがあるから、私はコマンド誌を信用できなかったのだ。もっと「売り込もうとしている対象」のことをきちんと分析して欲しい。それがヘタクソだったからこそ、「少女兵器大戦」は売れなかったんじゃねーのか。アレは「絵だけ考えたら艦これに負けてはいない」と本気で思うぞ。
 
 とりあえずの提言。箱絵・ユニットが萌えバージョンの「日本機動部隊」を出した…と仮定して、色々シミュレートしてみな。既存のウォーゲーマーは燃えバージョンを既に持っているので、アテにはできない。そーゆーモノを好みそうな人間にアピールする必要があるわけだけど、そのための手法はどのようなモノが考えられ、経費はどれぐらいになりそうか、効果はどれぐらい見込めるのか。私の手には負えないけれど、コマンド編集部なら可能でしょ。それぐらいやれ。「知恵を絞る」ってのは、要はそーゆーことだと思うぞ。なお、「本当に出せ」とは言ってない。分析を行った結果を取り込んで色々手直しするって言うのなら話は別だけど。
 
 とりあえずの提言その2。角川関連の会社から「箱絵その他が艦これのウォーゲーム」出せないかどうか検討する。艦これ関連のアナログゲームは、TRPGが出ている。ここから考えると、角川は「艦これ」関連のアナログゲームにある程度興味を持っていると推測される。艦これの世界観とTRPGは必ずしも相性が良くない(悪くもない。それがTRPGってゲームの特色)ことも考えれば、話を聞いて検討ぐらいはしてくれそう。そのゲームを入り口に我々の業界に…って部分に必要な手法は、ゲームマーケットである程度研鑽積んでいるはず。本当はこの段階から国際通信社が手がけたいんだろうけど、必要な広告宣伝費を出せない以上、仕方がないと割り切る。
 
 私はいずれにせよ最前線で戦う必要がある以上、「コマンド誌の支援がなけりゃ戦えない」なんて言うつもりはない。戦略方針が一致しているだけ、かな~りマシだ。ただ、連中の言っている戦術はかなり駄目。初心者獲得の実務に携わるつもりがある人間は、そこは理解しておいた方が無難だと思う。結果を出したければ、あんまりアテにしない方がよろしいかと。とりあえずは自分で考えてみて下さい。他に手段がないので。私?現時点では「経験を積んでいる分、多少マシ」程度。非力もいいトコロだ。
 
 艦これユーザーをSLG業界に取り込もう、と考えるのは、間違ってない。けれど、そのためには「ドアノッカーでT34に立ち向かう」ような経験を積み、そこから何が足らないのか、それを補うために何が出来るのか、真剣に考える必要があると思う。まるで通用しないってワケじゃないのだ。希望はある。けれど、希望があるだけに自らの非力が身にしみるのではないかと。話はそこからじゃないかな。ハッキリ言って、経験したいコトじゃない。けど、「戦う」ってのはそーゆーモノでしょ。先人はロクにいない、後方はアテにならない、だからって撤退するわけにいかない…だったら負けを承知の上で経験を積み、それを後の戦に活かすしか無いじゃないか。他に手段があるなら、教えて欲し…くない。即座に実践してくれ。それが前戦で戦わされた人間の、正直な感想だ。とにかく、文句があろうと無かろうと知るか。1人でも多く実戦に参加してくれ。今回はオチなし。

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