12月3日 ― 2007/12/04 01:24
やはりお払いが必要だ…ブツブツ…ってのはさておき。さておかせて下さいよ~!私だって突かれると困ることはある。
本日の話題は、「世間に着想を丸投げしてみよう」ってことで、シミュレイションゲームのルールブック改善計画について。かなり前からある構想があったんだけど、まとまりが悪いので世間に放り投げてみようかと。
シミュレイションゲームのルールはヤヤコシイ。そりゃもう、滅茶苦茶。一番の問題点は、ルールそのものと同じくらいルールブックがややこしいことにある。
何でそうなるのか?ややこしいモノを解説しようとなると、そうなりやすいものだから。ゲームそのものに慣れてくると、ルールの理解よりルールブックの読解に手間がかかることさえある。ルールブック読解できないのにルール理解できるのか?できるんだなこれが。他人から教えてもらえばいい。ただ問題は、細部を自分で確認したくてもそれができない(ドコに書いてあるのかよくわからん)ってことかな。
このようにややこしいルールブックだけど、実はまだ「ややこしさ」が足らない。かなりの分量があるにもかかわらず、一般に説明過剰ではなく説明不足だ。その証拠に、明らかに「揉め事の種となる」怪しい説明が満ちていることが多い。多少読みにくくても説明がしてあればいいんだけど、そうじゃない例が山ほどあるんだな。
このようなルールブックを、いかに読みやすくするか…という工夫は、他人に任せる。私が興味を持っているのは、「どーやったら怪しい記述を減らせるのか」だ。読みにくいルールブックも大問題だけど、「読みこなした人同士で論争が起きちゃう」コトに比べれば、まだ問題は小さいと思うので。
何でこんなコトが起きるのか?私が思うに、主要な元凶は3つ。まず1つが「使っている用語の定義不足」である。日常的に使っている単語ってのは、ほぼ自動的にいくつもの意味を持っている。これはこれで便利なんだけど、時に混同が生じて争いが生じるんだな。
ゲームで例を出すと、「マップ」というのは多義的である。代表的なものだけで1)物理的な「マップと呼ばれている大きな紙」、2)ゲームで使用する領域、チェスや将棋における盤とほぼ同義」…の2つの意味がある。このことを理解しておかないと、「マップ上に自由配置」としてあるユニットを、マップ上に印刷してあるターントラックやCRT上に置いても良いのか?という質問にどう答えていいかわからなくなる。
そんな間違いをする奴はいない?その通り。普通は直感的にわかる。しかしだ。これが「陸戦ゲームにおける全面海上ヘクス」「海戦ゲームにおける全面陸上ヘクス」だったら?実のところ、このような場所にユニット・マーカーを配置して良いのかどうか、明確に記載してあるゲームは少ない。確かに大抵の場合問題にならない。そんなコトしても意味がないから。けど、モノによっては意味があり、モメることがある。
これに対する解決方法は単純。「省略するな。全部書け」である。ただ、これをやると分厚いことで有名なルールブックが、さらに分厚くなる。理屈としては解決可能だけど、実際問題として無茶があるのでは。
もう1つが「無矛盾の不徹底」。これは…単純に言ってデザイナーサイドが悪い。プレイヤーが自発的に負けるような行動を取ろうとも、その行動はルールの枠内に収める必要がある。それゆえ、明白な矛盾(ルールに従いようがない状態)は決して作ってはならない。もし発見されたなら、それはデザイナーサイドの責任だ。これは簡単にわかることだけど、現実問題として徹底するのが難しい。ルール体系が複雑なので、矛盾を潰すのは簡単じゃないからねえ。
最後の1つは、「意味の薄い複雑化」。これは…本当はプレイヤーサイドが悪い。ルールブックに厳密に従えば問題は生じないのに、勝手に他のルールと「混同」してしまうだけだから。ただ、ものすごーく似たようなコト(たとえば移動と機械化移動)なのに、同じ地形へ同じ部隊が移動しても移動力消費が異なる…なんて「違い」は、プレイヤーを混乱させるだけって言われても(ある程度は)仕方ないような。
こういう話題を出すと、良く言われるのは「そんなことは常識に従えばいい」である。言いたいことはわかるし、実は私もそう思う。しかし、ゲーマーが考える「常識」には、結構差がある。おおむね一致してはいるんだけど、細かい点は相当差があると考えてイイ。さらにだ。もし初心者勧誘などというコトを考えた場合、どーやってこの「常識」を叩き込むのか…私が思うに、「常識」というモノはいざ「説明しろ」と言われたときに始末に負えないような。
そこで私は考えた。どこかで「常識」の厳密な定義を行うべきではないかと。そうすれば、ルールブック上では「常識」に従ったものとして記述を省略できる。何かしら論争が起こって、常識って何なのかを調べたくなったとき、該当箇所だけ参照するのだ。
たとえばだ。「移動力を消費して塹壕を掘る」という行動をしたユニットは、移動したユニットなのだろうか?これに対し、「常識」は何かしら解答を記しておく。ここでは仮に「移動力を消費することによって行われるもの全ては、移動と見なす」だとしておこう。
いや、そりゃ移動じゃないでしょ!そう言いたくなるデザイナーもいるかも知れない。その気持ちもわかる。だったら、ルールブックにデカデカとわかりやすく「移動力消費して塹壕掘っても、そりゃあ移動じゃない」と書くべきだ。この「常識」は、ルールブックにいちいち書いていたらきりがないことを、特に何も書いてない場合どう判断すべきかという「指針」に過ぎない。個別のルールブックに具体的記述がある場合、そちらを優先する。
移動力消費しての塹壕掘りが「移動の一種」かどうか。これは本質的には「どっちでもいい」のである。しかし、どちらかでなければならない。ここで言う「どちらかでなければならない」というのは、たとえば「移動妨害マーカーとの関係では移動と見なさないけど、補給消費では移動と見なす」などというルールと矛盾するモノではない。マズいのは「Aさんとの対戦では移動だけど、Bさんとの対戦だと移動じゃない」ってな場合だ。
ここまで書けば、私が「挫折した」理由はわかりますね?まとめるのが大変なのだ。実を言うと試しに一部だけ作ってみようとして、「コンポーネントの説明」のトコロで堂々巡り。常識を定義するのは大変だろうなと思ったけど、これほどとは…
さらに、これを世に問うた後、「どーやって世間の支持を取り付けるか」って問題もある。定義しようとしているのが「常識」である以上、世間一般、少なくともある程度権威を持った存在から「お墨付き」をもらわないと意味がない。
そんなわけで挫折している企画なんだけど、言いたいことはわかってもらえるんじゃないかなあ。ただ…常識を定義するのは本当に大変でねえ。数学者が「1+1=2」を再定義する時も相当苦労したみたいだし。とりあえずユークリッド幾何学だけ相手にしていれば良さそう(丸い地球のかなりの部分を使う太平洋戦争キャンペーン物であってもだ)なので、数学の再定義に比べれば楽なはずなんだけど…
最後は一般人でもわかる言葉で〆ましょう。常識を疑うのは大切なことなんだけど、実行するのは大変です。だから、「アナタも常識を疑いましょう」とは言いません。ただ、常識を疑うのは大切だけど大変だ…ってコトぐらいは意識して欲しいかな。「常識外れの男」である私は色々大変なんだよ(苦笑)。
コメント
_ Mark ― 2007/12/04 20:28
_ takoba39714 ― 2007/12/04 22:32
実際にルールブックなるものを書く羽目になった私としては、実に共感できる内容です。実際、かなり自問自答しつつ、穴を潰したつもりが、他人の目を介すと穴ばかりでした。思うに、違う視点からのチェックがとりあえずの解決手段と思われます。
_ F男 ― 2007/12/04 23:47
Markさんへ
実を言えば、論争になりようがないコト(移動の定義とか、ユニットの定義とか…)を中心に扱い、論争になりそうな部分は「ルールブックの書き方に注意」って文言で逃げるつもりなので、ド派手な論争は回避できるのではないかと思っているんですが…やっぱり甘いですかね。
takoba39714さんへ
違う視点からのチェックは必要不可欠だと思うのですが、そのためにはせめて「骨組み」だけでも完成させておかないといけないわけで…
ルールの穴は、探しても探しても見つかるものだと思います。とにかく根気が大切だと思うので、焦らずじっくり取り組んでみてください。応援してます。
実を言えば、論争になりようがないコト(移動の定義とか、ユニットの定義とか…)を中心に扱い、論争になりそうな部分は「ルールブックの書き方に注意」って文言で逃げるつもりなので、ド派手な論争は回避できるのではないかと思っているんですが…やっぱり甘いですかね。
takoba39714さんへ
違う視点からのチェックは必要不可欠だと思うのですが、そのためにはせめて「骨組み」だけでも完成させておかないといけないわけで…
ルールの穴は、探しても探しても見つかるものだと思います。とにかく根気が大切だと思うので、焦らずじっくり取り組んでみてください。応援してます。
_ takoba39714 ― 2007/12/06 01:30
>違う視点からのチェックは必要不可欠だと思うのですが、そのためにはせめて「骨組み」だけでも完成させておかないといけないわけで…
そのとおりです。移動力は他のユニットに譲れないとか、そんなこと言わずもがななんですが、生まれて初めてSLGのルールブックに触れたつもりの物の見方が大事ですよね。
そのとおりです。移動力は他のユニットに譲れないとか、そんなこと言わずもがななんですが、生まれて初めてSLGのルールブックに触れたつもりの物の見方が大事ですよね。
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常に論争になってそうな気もしますが。
>常識を疑うのは大切だけど大変だ
まあ誰もがデカルトになれる訳じゃありませんよね。