9月12日2005/09/12 23:07

 さすがに選挙結果について触れよう。正直言うとこのサイトの趣旨と反するので、あまり政治関連の話題はやりたくない。けど、それでもあえて語らなくちゃマズいだろ。
 
 私が大騒ぎしているのは、自民党が勝ったからではない。勝ちすぎたからだ。公明党と併せた与党議席は、何と絶対安定多数。こりゃあいくら何でも、少しマズいだろ。与党には悪いけど、正直言ってちょっと不安である。
 
 絶対安定多数のドコが悪いのか?悪いに決まっている。言ってみれば「非常用停止スイッチ」を壊したようなものだから。そりゃあ自民党は実績ある政党で、普通に考えれば暴走はしないと思う。けど、だからって非常用停止スイッチ壊れるのはどうなのよ。万が一暴走したときの影響考えたら、原発の非常用停止機能が停止したようなものだ。普段通り運転できていれば何の心配もないとしても、フツーは「重大きわまりない故障」だと思うでしょ。
 
 繰り返すようだけど、コレは何も「自民党がどうこう」って話じゃない。自民だろうが民主だろうが共産だろうが、私の怪しげな政治信条と全く同じ主張を掲げる架空の党(当然私は支持する)だろうが、衆院の絶対安定多数ってのは望ましくない。そう言ってるのだ。私は「郵政民営化は急いで回答を出すべき問題じゃない」って信条があるけど、それとこれとは無関係だ。
 
 絶対安定多数ってのはどういうことか。直接的な影響として、次の衆院選までに限定すれば、参議院が機能不全に陥る。法案レベルならば、参議院がどんな議決に終わろうともひっくり返せるからね。郵政民営化に関しては「いいことじゃないか」と思う?何もかもこうってのはちょっとマズくないか?
 
 もっとマズいのは、死票が出やすい小選挙区制で絶対安定多数を確保したってところだ。一応は比例代表制と併用することによって死票を減らしてることになっているけど、「地域を代表する顔」が小選挙区制で選ばれる影響は大きいでしょ。このため、今後の選挙は「与党の絶対安定多数が崩れるかどうか」だけが焦点になるかもしれない。これはかつての自民党VS社会党時代と何ら代わらない。自民党に事実上白紙委任状を与え、結果として政治不信を引き起こしたアノ時代にだ。
 
 自民党が腐敗したら、また政治改革騒動を起こせばいい?正論ではある。けど、自民党の腐敗が大問題と化したのは田中角栄内閣時代。それから政治改革騒動が起きるまで、どれだけの時が経過したとでも?政治ってのは、民衆が「ヤバいんじゃ」と思ったからって即座に方向性が変えられるモノじゃない。それよりは普段からこまめにチェック入れた方が、ずっと話が早いでしょ。絶対安定多数ってのは、このチェック機能が上手く働かなくなることを意味するのだ。
 
 ついでに言うと、コトは今回の選挙だけに留まらない。野党勢力がこれだけ負けると、「自民党にあらずんば政権担当政党にあらず」といった風潮が出てくる可能性がある。野党はもとより、与党であるはずの公明党でさえ発言力が低下しかねない。次回の選挙では自民単独でも絶対安定多数になりかねないし、参院選でも躍進が予想される。参院でも絶対安定多数確保すると、憲法改正が視野に入ります。9条改正どころか、それ以上の暴走も可能だ。
 
 こうなったのは、何も自民党のせいじゃない。自民党にしてみれば「一議席でも多く」確保するため努力するのが当然だし、「勝ちすぎはマズいよな」などと傲慢なこと考えられても困る。まず責めるべきはだらしなかった民主党でしょ。これじゃあ一昔前の社会党と同等、いやそれ以下かも知れない。
 
 悪いのは民主党だけじゃないかもしれない。普通なら、勝ちすぎにはある程度の歯止めがかかる。「暴走されても困るよな」って意見が重みを持つからね。けど、今回こんな声は影響力を持たなかった。そんな声自体が無くなったからか、選挙制度上反映しにくかったのかは不明。この答えは次の参院選まで出ないんじゃないかな。
 
 もしこれが選挙制度上のモノだとすると、ある意味極めてマズい状況に突入しちゃったかも知れない。小選挙区制ってのは政権交代が起こりやすい。コレは事実だ。けど、一度ある政党が圧勝すると、野党全てが「弱小勢力」扱いされ、支配的状況が固定される危険があるのだ。小選挙区制ってのは、「弱小政党に票が流れなくてキビシイ選挙制度だから、政権交代が起こりやすい」って仕組みだからね。
 
 何事も行き過ぎってのは害が多い。自民党が日本の政党で一番マトモだと仮定してさえ、今回の圧勝は正直不安である。まあ、日本国民の上から下に至るまで「マトモな野党とは」って問題に向き合ってなかった代償なのかもね。その結果に苦しむのもまた日本国民なんだから、仕方ないと諦めろってことかねえ。
 
 戦前とは色々状況が異なるのは事実だけど、ある組織(戦前は軍部、今は自民党)に対し、暴走しても文句が言いにくい状況を与えたのは間違いない。これは直ちに自民党が暴走することを意味しない(そこまでバカじゃないと信じたいし、そう信じる根拠もある)けど、将来はどうなるかわからない。今回の結果はこれでいいとしても、ずっとこのままでいいのかは全くの別問題だ。
 
 今回の自民圧勝は、長い目で見たら「イヤな方向」へ少しだけ踏み出しちゃったというのが私の意見だ。だからって日本が悪くなるとは限らないけど、じゃあどこでどうやって踏みとどまるのか、少し考えた方がイイと思う。こういう「少しだけ悪い」ことの積み重ねを甘く見ない方がいいのでは。これは野党支持者だけじゃなく、自民支持者にも言えることだと思うぞ。「それはそれ、これはこれ」と言えなくなってからじゃ、遅いんだから。

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