1月4日2013/01/05 05:16

 旧年中の宿題が残っているので、そいつを片付けておこう。本日のネタは、昨年末に発売されたコマンドマガジンの「魁!コマンド士官学校」について。私の立ち位置ってモノがあるので、流石に一言言っておこうかと。
 
 コマンドマガジンは「雑誌付きゲーム」だと思っている方が多く、雑誌記事がどれだけ読まれているのかは未知数。そこで、簡単に内容説明をしておこう。中級程度の実力を持つ読者を対象に、「作戦の立て方」を紹介するものだ。一応「研究のコツ」を紹介するものであり、個別具体的な作戦研究ではない…んだけど、「具体例」として簡単な作戦研究も触れている。つか、「透けて見える裏側」の話をすると、まず最初に作戦研究のネタがあり、そこから一般法則っぽいモノを引き出しているんだと思う。連載なんだから妥当な手法かな。私だったらもっと抽象的な話に終止すると思うけれど、それだとどう頑張っても読み切りか、かなり頑張っても短期集中連載にしかならないので。
 
 作者のDASREICH殿は思いっきり知り合いであり、ツッコミたければ遠慮無く当人にツッコめば良い。そんな事情もあり、いちいち私がブログでどうこう…って必要は無いと思っていた。108号掲載の記事を見るまでは。この号の副題は「デザイナーを倒す」とある。そんでもって、ものすごく乱暴に要約すると、デザイナーズノートを読み、そこに書いてあるデザイナーの意図の裏をかく、すなわちデザイナーの想定しない展開の中に良い作戦が眠っていることがある…と説いている。
 
 正直、言わんとすることはよくわかる。たとえばだ。デザイナーが「機動が重要なゲーム」と発言していたとする。ならば、機動力を最大限活かすようなプレイを…と考えるのも重要だけど、敵の機動力を押さえ込むことも重要だ。その結果、お互い睨め合ったまま全く動かない展開になることもある。実例を出すと、私が研究した「太平洋空母決戦」がモロに該当する。出た当初は「どう使えばよいかわからない」と言われた、空母のエリア移動。研究してみたらやっぱり重要だった。ただ、現時点での最終結論は「敵空母の足止めを行うため、睨み合え」であり、やっぱりエリア移動なんかしない。「しない」だけであって、重要なコトは間違いないんだけどね。
 
 けれどだ。私個人の意見としては、「デザイナーが想定してない展開」を「推奨」するような趣旨の記事は、どうかと思う。何故か?その考え方は「良い作戦」だけではなく、もっとヤバいモノを見つける手段でもあるからだ。それは、「必勝法」である。
 
 作戦研究って必勝法を見つけるためにやるんじゃないの?まあ確かに。けれど、ここで私が言う「必勝法」は、そーゆーモノじゃない。どちらかの陣営がそれを行うと「必ず」勝ち、相手はわかっていても「全く」阻止できない…そーゆー、真の意味での必勝法である。そりゃあね、ゲームによっては「○○側が勝つ。引き分けすら考えにくい。」なんてモノもあるのは確か。けれど、過程は色々あるのでまあ楽しむことは出来る。必勝法はこの過程すら固定する。ゲームという枠内での話なら、通常は「あってはならないモノ」として認識されているはずだ。対人対戦の経験が極端に少ないか、あるいはかな~りねじくれた精神構造の持ち主でもない限り、この意見には同意してもらえると思う。「必勝法」を何度も喰らってくれるのは、PC・コンシューマーぐらいだ。
 
 必勝法の具体例ねえ。雑誌に掲載された中で最も強烈なのは、「太平洋艦隊」のパルミラ攻略作戦かな。第1ターンに狙う作戦は多少「無茶している」感があって、必勝法と言うよりは作戦研究の範囲かも…って気もするけれど、第2ターンに行うモノは「どーしよーもないです」ってな雰囲気で、必勝法色が強い。確か勝利条件の改定とセットで紹介されたし、再版されたものは対策となるルール改定を採用したはず。ただ、専門的すぎて細かい内容は覚えてない。
 
 細部まで覚えているモノとなると、新シミュレイター1号掲載の「第三帝国必勝法」かな。ある種のハメ手で、独・伊に加え仏・ソが「手を組む」ことにより、英米プレイヤー以外の全てが「勝利」を達成する…ってもの。単純に勝利を達成することが目的ならば、こうするべき。そうしないのは、第三帝国が「実はロールプレイングゲームだから」とかいう苦しい?結論を出していた記憶がある。これなんかまさに「デザイナーの想定していない展開」だな。
 
 私は「ルールブック原理主義」を採用していて、「とにかくルールブックに従え」と考えている。それじゃマズいコトが発生するのなら、ルールブックを訂正する必要があるのだと。でまあ、実際色々あるので文句つけまくっているんだけど。そんな私にとって、必勝法ってのは「見たくないけど探しているモノ」筆頭である。もしそんなモノが見つかれば、速攻でルールブックを訂正させるべく文句を言う。だから、「必勝法探し」は熱心にやっている。使うためではない。潰すためだ。こういう方向で努力する馬鹿が誰かしらいないと、「必勝法を使って勝って喜ぶ」という残念な奴を誕生させることになりかねない。それは、個人的にはイヤなので。だから、「必勝法を発見したら、ルール改定の必要を大声でがなり立てる」って覚悟というか習慣というか…を持ってない人間(普通の奴は持ってない)に対し、「必勝法を発見するための手法」を勧めることに繋がりかねない内容はどうよ…と思うんだな。
 
 なお、必勝法うんぬんは私個人の事情というか嗜好というか…に基づいた文句だとしてもだ。「デザイナーが想定してない展開を作戦と呼ぶべきか」は、正直微妙な問題ではないかと思う。デザイナーが想定してない展開とは、デザイナーが責任を取れない展開であるとも言える。そんな展開がボロボロ出てくるようでは困るのは確かだけど、それは「作戦」うんぬんではなく、「ゲーム批評」の範疇に属する問題じゃないかと。作戦研究も批評の1形態、という説もあるけれど、批評は批判糾弾に繋がりかねないだけに、多少慎重な扱いを必要とする…ってのが一般的な意見じゃないかな。
 
 あくまで私個人の見解としては、ルール改定の必要があると判断されるようなモノは「作戦研究」ではない。それ以前の問題である。結果的にそうなることもあるだろうけど、その場合は「作戦研究の結論はナシ。その範囲を超えちゃう結論が出たから」とする。まあ私の場合、「ルール改定」に対する興味の方が大きいので、それはそれで「大事な研究成果」なんだけど。実は今回の記事、最終的にルール改定に踏み込んでいるので、私に言わせると作戦研究じゃない。ルール改定に熱心な人間としてみれば、「それを作戦研究と呼んでくれるな」と感じる次第です。
 
 そんな違いは大したことがない?言いたいコトはわかる。遙か昔は私もそう考えていたから。何故今の考えに至ったのかは、色々あって語りきれない。そこでたとえ話をしてお茶を濁そう。私は作戦研究というモノを「舗装された道路を通るようなモノ」だと考えている。クルマというものは舗装された道路しか通れないモノではないし、道路の全てが舗装されているわけではない。舗装されてるけど道路じゃない、道路だけど舗装されてない、道路じゃなくて舗装もされてないけれど、車の通行は可能…そんな場合はいくらでも考えられる。けど、ナビゲーターが舗装されてない道路を「通れ」と指示してきたらどうなる?まあ大抵は大丈夫と言いたいトコロだけれど、「遠回りでも、舗装された道だけ紹介してくれよ」と思う人間もいっぱいいるのでは。ルール改定に繋がるような作戦研究は、私に言わせると「最低でも舗装されてない道路。下手するとクルマ通れるけれど道じゃない。」ようなモノ。対応可能ならともかく、私なら一般論として通行は推奨しない。記事を書いたDASREICH殿が通行可能なのはわかっているからいい。けど、この記事の対象は「その辺が怪しい」読者じゃないの?
 
 しかもだ。道路ならば、被害を被るのはその道に突っ込んできた当人だ。ゲームの場合、迷惑するのは大抵周囲の人間である。「ホンモノの必勝法」を「作戦研究上の必勝法」と固く信じ込み、ドヤ顔しながら使ってきた場合どーしろと。指摘しないのは論外だけど、指摘したらしたで問題は山積み。気まずいのは間違いないし、やり方を間違うと「クレーマー」扱いされかねないし、笑って受け入れてくれたとしても、その後その対戦相手がキチンとプレイできる見込みはない(精神的動揺で崩れるから)し…
 
 つーわけで、私の最終結論。作戦研究は基本的に「デザイナーの想定の範囲内」で行いましょう。たまにそれを外れた所に「掘り出し物」があるけれど、それを狙うのは「良く似た別の何か」を見抜くことができ、なおかつ対処方法がわかっている場合に限りましょう。もっと具体的に言うと、ソロプレイメインで対戦なんて年数回…って人は注意しましょう。ソロ専門ならともかく、貴重な対戦相手に逃げられかねません。そーゆー方が「どうしても研究が独りよがりになりがちなんだよな。キチンとした作戦研究のやり方ってどうするの?」ってな理由から読みそうな記事だけに、なおさらです。

コメント

_ manicure ― 2017/05/04 07:52

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