9月9日2008/09/10 01:19

 ううむ…日曜のことをココで書くべきか、大いに悩んだ。その結果、一応書いちゃおうと判断した。ただ、まだ迷いはあります。相当微妙なネタなので、表現には注意するつもりですけど…
 
 こうまで悩んだネタとは?日曜に行ったMiddle-Earth東京支部での話。いやね、私がプレイしたゲームのことはネタにして問題はない。ドイツ戦車軍団の「スモレンスク」プレイしてダイス目で勝ち、「日露戦争」プレイして作戦で負けただけ。そうじゃなくて、この時の別のことを書くかどうか、悩んだのだ。
 
 つーことは庭猟師殿と西新宿鮫殿の「パットン第三軍」…も、問題はないでしょ。米軍担当の庭猟師殿はヒーヒー言いながらプレイしていたけど、私の記憶が正しければ「あれは元々そーゆーゲーム」だ。米軍の敵は、独軍ではなくて泥と河と陣地だもの。
 
 するってえと…そう、金吾殿と志乃殿の「モスクワ攻防戦」(Six Angles)だ。ここで思わず首をかしげちゃうようなコトが発見されちゃったんですよ。この問題、私が普段から言ってることと一応関係があるコトだったりするので、あえて書いちゃいます。
 
 まずは言い訳から。コトはゲームの本質とは全く関係ありません。完璧に枝葉です。また、金吾殿や志乃殿も「悪く」はないと思います。悪い奴がいるとするならば、こんなところでネタにした私だけです。関係各位の方々、その点はよーく承知の上、この先をお読み下さい。
 
 更に言うなら、私はこのゲームをまだ買ってない。私が買わなくても誰か買いそうなゲームなので、それを見てから買おうと思って。それゆえ、これから先の記述はルールブックを参照せずに書いています。本当ならば「実際ゲームを買って、ルールを参照しながら」書かなくてはイケナイんですけど、それだと「肝心の部分を忘れちゃう」怖れがあるので、あえて本日ネタにしました。私の誤解・曲解が大量に入り込んでいる可能性は極めて高いです。この点もご了承下さい。
 
 ここまで書けば、勘のいい人は「なんか批判めいたことを書く気だな」「おそらくルールに関する部分で…」とわかるのでは。そのとおりです。これは推定だけど、私が普段主張している「ルールブックは冗長なぐらい書け、省略するな」って主張と反するのでは…って部分が発見されちゃいました。
 
 まずは、事実関係の説明から。金吾殿と志乃殿がこのゲームをプレイすることになりました。私も興味はあったので、横で見てました。発売されたばかりなので、お互いルール確認しながらのプレイ。私に至っては、ルール確認の合間を縫ってルールをざっとナナメ読みしただけ。正直、何らかの誤解が生じている可能性は極めて高いです。
 
 問題その1は、戦闘(正確にはオーバーラン)を解決途中に発見された。このゲームの戦闘結果は、数字と強制損害を組み合わせたもの。数字の戦闘結果が出た場合、ステップロスと退却を組み合わせて処理する…という、よくあるルールだ。ところが、金吾殿が、「このゲームの退却は、ユニットごとに割り当てるのでは?」と発言したのだ。
 
 私の知る限り、古典的名作「PGG」や、同じデザイナーの作品である「パウルス第6軍」では、数字の戦闘結果は「参加した全ユニットの中から数字のステップだけ損害を受ける」か、「参加した全ユニットを数字の数だけ退却させる」ものであり、退却までユニットごとに割り当てってルールではない。まさかそんな、どう考えても違うでしょう…と思ってルールブックを眺めてみたんだけど、確かに退却させる対象は「ユニット」になっている…え、ええ~!そんな馬鹿な…正直に告白しよう。私はその後、「絶対そんなはずはない!」と思ってルールをある程度細かく読んでみたんだけど、反論材料が発見できなかった。
 
 言葉だけでは、「いったい何が問題になっているのか」わかりにくいかもしれないので、例を出そう。ここで仮に2ユニットがスタックしているヘクスに攻撃して、「-/3」という戦闘結果が得られたとしよう。攻撃側の損害・退却なし、防御側の損害・退却3って結果だ。全部ステップロスで消化するなら、攻撃を受けたスタックが3ステップの損害を受ける。この点は問題ない。問題は、退却を選んだ場合だ。PGGなどでは、スタック全体を3ヘクス後退させる。ところがだ。「モスクワ攻防戦」では、1ユニットを3ヘクス退却させるか、あるいはスタックのうち片方を1ヘクス、もう片方を2ヘクス退却させるのでは…ってことだ。
 
 ヘンなルール解釈じゃないかって?その通り。言い出しっぺの金吾殿でさえ、「本当にこれでいいのかなあ?」と言っていた。ただ、一度そう主張されると、「ドコに反論材料があるのか」、私・金吾殿・志乃殿の三者がそれなりにルールを細かく眺め、発見できなかったのは事実である。
 
 この作業の最中、私は無性に「英文ルール」が欲しくなっていた。何故英文?英語なら複数形があるからだ。問題となっている言葉は「ユニット」。これが英文ルールで「unit」または「a unit」となっているのなら、金吾殿の言うとおりのルール解釈となる。でも、英文ルールで「units」と複数形なら、「結果の対象となったユニット全体」を意味するんじゃない?と主張できたはず。けど、日本語に複数形はない…それっぽく表現することは可能だけど、はっきり言って一般的ではない。とりあえずこのゲームのルールにそんな表現は発見できなかった。
 
 私がゲームの当事者だったなら、もっと色々理屈を付けて「いーや、退却させるのは攻撃/防御に参加したユニット全てだ!」と主張した気がする。ただ、単なる観戦者がソコまでしないでしょ。ルールにハッキリした根拠を発見したのならともかく。私が発見したのは、「この『ユニット』って単語は英語だと『units』じゃないの?」ってだけ。一応はリプレイさえも探してみたんだけどねえ。
 
 この問題に関しては、「動揺しながらルール探していたから、目的の記述を発見できなかっただけ」ではないかと思っているし、正直そうあって欲しい。ただ…現在の私には、1)元からそーゆールールである。PGGと一緒にしてはイケナイ、2)デザイナーとしてはそんなつもりはなかったけど、ルールの書き方が甘くてそう受け取られかねないモノにしてしまった、のどちらかである可能性を否定できない。ホントのところはどうなんだろ。すごく気になってます。
 
 問題その2にいこう。これはものすごく悩ましい問題であり、なおかつ類似の問題はドコにでもあるような気がする。しかも、私には解決方法が見つからなかった。実はささやかなものに過ぎず、正直「騒ぐ価値はない」とさえ思う。ただ、私はかなり気になった。
 
 このゲームには天候のルールがある。41年のモスクワ攻防がテーマのゲームで、この手のルールがあるのは当然でしょ。それはいい。そのルールを確認している時に、「雪が降っても独軍はオーバーランできるのか?」が問題になったのだ。
 
 これに対する「答え」は簡単である。それはルールで禁じられている。これは比較的簡単に発見できた。よって、プレイの障害になったワケではない。ただ、「何故そんな疑問が出てきたのか」が問題である。その理由は、戦闘結果表の修正一覧に「(独軍が)雪の時に戦闘またはオーバーランを行う場合は、左(不利な方)に2シフト…」といった趣旨のことが書いてあったからだ。
 
 この時は「できもしないオーバーランの場合が書いてあるのは、余計だなあ」って笑い話で終わったんだけど、後で考えてみたら、話はそう単純じゃない気がしてきた。もしここで「オーバーランなんてできないんだから、その説明は不要だ」と削ってしまったら、「オーバーランだと不利な修正受けないんだ、ふーん」ってな調子で、オーバーランしまくる奴が出るような気がしてきたのだ。赤軍プレイヤーが「いや、確か独軍は雪だとオーバーランできないはず…」と主張しても、「不利な修正受けないくらいだから、それはない」で押し切られ、後でルール確認して気まずいことになるような…
 
 原理原則論で言えば、ルールを完璧に理解してからプレイすべきである。それは間違いない。ただ、実際問題としてそうも言ってられないのが現状だろう。そのため、誤解を招くような記述は、可能な限り減らした方がいいに決まっている。「戦国大名」の場合、私はそういう「誤解の元となりそうな記述」を片っ端から潰すよう主張した。中には杞憂レベルのモノもあったけど。「武将は、登用によってのみ登場する」なんて大嘘(大名の跡取りっていう例外がある)は削除すべし!ってのが代表例かな。
 
 その観点に立った場合、この「独軍が雪の時にオーバーランを行う場合の修正」はどうすべきなんだろう。あってもなくても誤解を招きかねない気がする…一番親切なのは、「オーバーランは不可、戦闘は2シフト不利」と書くことだけど、そうまでする意味あるのか?私の普段の主張に従えば「そうしなければならない」となるんだけど、実際問題としてどうなのかを考えると、ねえ…とりあえず私としては、「こういうトコロに誤解のタネが」と指摘するに留め、業界全体としてちょっとした注意を払ってもらうきっかけにしてもらいたい、としておこう。
 
 問題その3。これは心底どーでもいい話。この日の対戦は「あと少し」ってところで途中で時間切れになった。そのため、とりあえず現状でどれぐらい勝利条件を満たしているのか、確認しようとなった。良くある話だ。お互いサドンデス条件は満たしてないし、大勝利の条件もまあ満たせそうにない。そんでもって…と手順を追ってゆくうちに、ヘンな謎が残った。
 
 ヘンな謎とは?このゲーム、赤軍は「ドコまで頑張るのか」、事前にランダムに決められる。極端な話、モスクワが陥落しなくても「ああ、もう駄目だ」と降伏するかもしれないし、モスクワが落ちても「まだまだ!」と戦うかもしれない…ってものだ。この数字は独軍がある条件を満たした場合にのみ、確認できる。「あとどれぐらいで勝てるのか」確認できるわけだ。ここまではいい。
 
 最後の勝利条件確認の時、この数字がいくつだったのか、お互いに確認するよう指示がある。いかにも重要な手順であるかのように、独立した項目になっているくらいだ。だから、この数字は「最後の勝利条件確認の際にも、何かしら影響があるんだろうな」と思っていた。ところが、そんなルールは発見できなかった。どうも、この数字は「サドンデスが達成できたかどうか」を確認するためだけのモノで、最後の判定には全く関係がないらしいのだ。もちろん、例によって我々が誤解している可能性はあるわけだけど。
 
 ヘンな謎とは、これである。最後の勝利判定と無関係なら、いつめくって確認したって良さそうなものだ。極端な話、全く確認しなくたってかまわない。なのに、いかにも重要なことのように「確認する手順」がある。何故?正直言って、「きっと何か見落としてる!」と、無駄に混乱させられたくらいだ。
 
 何でこんなルールがあるのかは、様々な推理が成り立つ。たとえば、「元々は勝利条件と関係があったんだけど、調整してゆくうちに無関係になった。そのため本当はめくる手順は不要になったんだけど、削り忘れた」とか。単純に「どーでもいいルールなんだけど、あえて入れてみただけ」かもしれない。そうだとしたら、遊び心のあるルールだとして評価しても良いかな。
 
 ただ…もし遊び心半分で入れたのなら、チャンとフォローが欲しかったかな。どこかに「この数字は、サドンデス以外の勝利条件判定には全く使用しない」と明記して欲しかった。一応それっぽいコトが書いてあるけど、「まるで無関係ではないかも…」って誤解を受けやすい気がする。「冗談がスベったスベらない」ってレベルの話ではあるんだけど、それだけに、私はあえて「ちょっとスベってません?」と提唱しておこう(苦笑)。
 
 「ルールブックをどう書くか」は、まだ研究が必要な分野だと思う。これはゲームの本質と直接関係はないんだけど、デザイナー側としては大いに悩まされる部分だ。プレイヤーは「完璧であって当たり前」と考えがちだけど、実際問題としてそんなのは不可能だってのが私の意見。ま、これは私が「ルールチェッカー」としては未熟もいいところだから感じるのかもしれないけれど。「モスクワ攻防戦」のデザイナーである山崎氏はデザイン経験豊富で、ルールブックの記述も相当手慣れているはず。にもかかわらず、「万人がルールを誤解しない」なんて領域には達していない…そういうことじゃないかと思う。
 
 つーわけで、ここで再び強く主張しておこう。デザイナーの山崎氏は、ちっとも悪くないです。仮に「ルールブックの書き方に問題がある」ってのがコトの真相だとしても、言ってみれば「弘法も筆の誤り」レベルの話だと思います。また、プレイしていた金吾殿も志乃殿も悪くないです。強いて言うなら「ルールうろ覚えのプレイは…」だけど、発売したばかりのゲームなんだし、それぐらいは悪いコトじゃありません。強いて悪人を捜すなら、こんなコトをデカデカと書いた私です。それは認めます。ただ…色々気になって、このままじゃ安眠できそうもないんです。その鬱屈を晴らすためってコトで、カンベンしていただければと…