3月8日2011/03/09 00:42

 日曜はMiddle-Earth東京支部例会。コマンド誌最新作「コルスン」を。面白いゲームではあるけれど、ユニットさばきがどうこうってゲームなので、キチンとした研究抜きにココで語るのはちょっと難しい。よってこの話題はパス。また後日取り上げたい。
 
 本日の話題は、昨日の「更新失敗」の派生ネタ。昨日のネタは諸般の事情により完全放棄されたのだけど、この部分だけは活かせるかなと思って。題して、「アナログゲームはデジタルゲームのドコを学ぶべきか?」。
 
 コマンド誌96号「PC SIMULATION GAMERS」内に「デジタルゲームの開発者たちは、アナログゲームを研究することで自分たちのゲームをもっと面白くできると感じていて、それを実践している。では、アナログゲームはどうだろう?」という記述がある。アナログゲームもデジタルゲームから学ぶべき、ということだね。これはこれで鋭い指摘だとは思う。
 
 しかしだ。元から抽象化されているモノ(ドイツゲーム含む)ならともかく、かなり具象寄りのSLGの場合、デジタルゲームから学べと言われてもなあ…って話があるのは事実。これはボードゲームが優れているから…ではない。単純に「具象化すれば良いんでしょ」って思想でデザインした場合、ボードではPC(コンシューマー含む)に勝てるワケがない。「搭載できるパラメーター」の量が違うからだ。
 
 そりゃあね、空戦ゲームや戦車戦ゲームなんかで「データカードを別に付け、精一杯パラメーター詰め込んでみました」ってゲームがあることは認める。けれど、そうやってパラメーターを詰め込むと、処理速度が滅茶苦茶落ちる。コレに対し、PCではその辺はほとんど苦にしない。PCの得意分野である「単純計算の処理」が重要な要素で、人力が勝てるワケがない。「空戦ゲームはフライトシムに勝てない」と言われちゃう(あくまで「言われちゃう」なので注意)理由の大半は、この辺にある。
 
 他方、人間が得意な分野においては、PCゲームは「クソ」である。いわゆる思考ルーチンについては多少発達しているはずなんだけど、「だからどーした」レベル。チェスや将棋の思考ルーチンは発達しているけれど、「他のゲームに応用」できるとは…結果、いわゆるPC系の「SLGっぽいもの」、たとえばタクティカル系の戦闘システムを持つRPGなんかは、「PCが卑怯なだけ」って方法でバランス調整するしかない。
 
 その結果として、PCのSLGとボードのSLGは「似てはいるけれど、内実は完全な別物」になっている…ってのが、私の意見だ。PCのSLG(フライトシムやタクティカル系RPG含む)にはボードSLGにある魅力がスッパリ欠けていて、代わりに別の魅力が詰め込まれている。比較は一応出来るけれど、楽な作業ではないと思う。
 
 じゃあ、何故デジタルゲームはアナログゲームを学ぶのか?そりゃあね、「抽象化」が進んでいるのはアナログゲームだから。実のところ、「ひたすら具象を追求してゆく」って作業は、どこかで不毛になってゆくんだな。そのため、「実は抽象的処理なんだけど、具象的な雰囲気を感じさせる」処理を選択する方が正解となることが多い。そういう分野に関しては、「圧倒的な計算処理速度に頼ることが出来ない」世界の方が発達している。だからデジタルゲームはボードゲームに学ぶ余地がある。
 
 それに対し、PC系ゲームの得意分野は、ボードゲームに応用は出来ない。計算処理速度が桁違いだし、グラフィック上の制約も比較にならんので応用は難しい。せいぜいが「ハリガネ弁当箱じゃなくて線画を使う」くらいだけど、それすら「ユニットが多数出てくると、ハリガネ弁当箱の方が目に優しくていいんじゃあ!」って意見が出るレベルだ。
 
 私は別に「アナログゲームは出来たるゲームに学ぶ必要は無い」と言いたいワケじゃない。学ぶべき点は色々あると思う。けれど、それは「専門家」(デザイナーとか批評家とか)レベルの話であって、その領域に達してない大多数の人間(私も含まれる)にとっては、まだ実感しにくいのでは。そう思うな。
 
 余談だけど、「本質的にはアナログでもデジタルでも当てはまる」問題をアナログゲームがデジタルゲームから学ぶ…ってコトはあると思う。市場規模の関係上、デジタルゲームは色んな作品が出るからね。ちなみに、デジタルの名作ゲームの要素をアナログが組み込むのは色々難しいかも知れないけれど、デジタルのクソゲーが何故クソなのかは、アナログゲームにもかなりの部分当てはまると思う。だから、デジタルのクソゲーウォッチングは止められない…
 
 しかしだ。私が思うに、1つだけ「デジタルゲームのこういう部分は、アナログゲームも取り込めるのでは?そうした方が良いのでは?」って部分があるような気がする。それは、チュートリアルというか、ゲームの動かし方を理解させる方法だ。要は、そのゲームの初心者(そのゲーム初プレイであれば、ベテランゲーマーも当てはまる)に、ルールやら定石やらを教える「方法論」である。
 
 ボードSLGのルールは難しい、それがこの趣味の欠陥だ…というのは、昔々から言い尽くされている議論である。それを何とかするために、ルールを簡単にしてみましょう…って意見はたまに出てくるけれど、「複雑だったら教え方を何とかした方がいいんじゃね?」って意見はあまり聞かない。ごく希にそういう意見が出ても、「良い方法がない」で終わっちゃうような気はする。
 
 でも、よく考えてみると、コンシューマーRPGの戦闘に関する「ルール」だって、実はかなり複雑である。昔懐かし「ウィザードリィ」レベルでさえ、結構細かい。アレをボードSLGよろしく「紙に書かれたルールブック」で表現しようとするとどうなるのかは、とりあえずD&D初版の「戦闘に関するルールの分量」が参考になる。より詳しいモノを知りたければ、テーブルトーク版ウィザードリィってものが昔あったので、それを探して引っ張り出すといい。
 
 単純比較できないにしても、デジタルの世界では「わからないけれどとにかくやってみて、そのうち学習してゆく」って手法が当たり前であり、うまく機能している。コレに対し、アナログの世界は「ルール読んできて当たり前、全部理解できて当たり前、定石を聞くなんて論外」って「突き放した」環境でルール習得するのが常識だ、と主張する人間が少なくない。この差はかなり大きいと思うな。
 
 そりゃあね、ベテラン・古参は「そうやって」ルールを覚えてきたし、今でも「結局はそれしか方法がない」とは思う。でも、古参同士ならともかく、「古参が初心者を相手にする」場合もソレでいいのか?もっと別の方法があるのでは?って気はするかな。でも、具体的にどうすればよいのかは、ほとんど研究されていない。
 
 それを考えると、せめて「研究するための場」が欲しいんだけど、今のところそれすらロクに…この手法は「面白いゲームを世に広め、対戦相手を増やす方法」として応用可能じゃないかと思われるのだから、「そんな場はいらない」って主張は、流石に視野が狭いと思うんだけどなあ…やっぱりこの業界、マンパワーが足らないよ。色々と。
 
 まあ、かく言う私自身、そんな場を作ることなんてできるワケがない。けれど、「こういうモノが無いのは残念だ、だったら自分で作っちゃえ」なんてコトは、なかなかできないよ。例外は即売会レポートぐらい(苦笑)。これだって最初は「こういう条件が必要だ。そんな条件はF男個人で用意できるワケが…」と考えたんだけど、よく考えたら「無理ってレベルじゃないじゃん」と気がついちゃったのでこうなっただけの話。例外と考えて下さい。
 
 自分で出来ない以上、私に出来るのは、せいぜい「世に提唱してみて、同志が得られるなど条件が変わるようなら、そこで色々考える」くらい。だから、今まで長々と語ってきたわけだ。私がどうこうじゃなく、なんか心に引っかかるモノがあったならば、ささやかでいいから行動に移してくれると助かるかな。私は楽できるので(苦笑)。
 
 最後に1つ。ベテラン同士の場合、「突き放した」環境でもルール理解できるのが「当たり前」だって意見はむしろ当然であり、それを可能にするための「親切なルールブック」なるものの追求は、今後も続けるべきです。ダメダメなルールブックを救済するためにこんな提唱しているワケじゃありません。むしろ私の関心はソッチの方に…何でも、「DUEL of the GIANT」のルールブックがヒドいんだって?それは一度じっくり向かい合う必要がありそうだなあ…ブツブツ…