11月11日2005/11/12 00:23

 唐突な献辞。酔狸さんへ。こんなワケわからんネタに興味を示してくれて、有り難うございます。これからも、色々とワケわからんネタを紹介していこうかと(笑)。
 
 反響があったので、行動心理学の話題をもう1ついこう。前回同様、本屋で発見した「心は実験できるか」(ローレン・スレイター著/紀伊國屋書店)より、「精神科医にデタラメ伝えるとどーなるか」を紹介しよう。なお、この本では「行動心理学」なる言葉は使ってないけど、これは私がそう「教えられた」からである。ご注意を。
 
 世の中には詐病ってものがある。「私は病気です」ってウソだね。小はサボりの口実から、大は病的強迫観念まで様々なモノがある。これを見抜くのも医者の大事な仕事だ。そこで、「精神科医はどこまで詐病を見抜けるか?」って実験をやった奴がいた。
 
 モノが精神に関するコトなので、迫真の演技は見抜けなくても仕方ない。そこで、ハードルはかなり低めにした。「耳元で人間の声で『ドスン』って言ってる声が聞こえる」という、意味不明で過去に報告のない、それでいてなんかもっともらしい症状を訴えることにしたのだ。
 
 実験結果は…大半がいきなり入院決定。かなり昔の話なので、精神病=即入院だったからね。外部から「この人は正気です。嘘ついてました。ゴメンナサイ」って言われるまで、全く見抜けず。むしろ同じ入院患者の方が「アンタ正常でしょ」と見抜く有様。結果として猛烈に気まずい実験となってしまった。
 
 これは昔の話であって、今じゃこんなコトは有り得ない…のか?この本の作者はわざと自分で実験してみたんだそうな。その結果、まあいきなり入院ってことはなかったけど、「あなたは鬱病ですね」と診断され、ちゃんとクスリ出されたんだそうな…いや、そりゃあ入院とは天と地の差があるけどさあ。
 
 心ってのは複雑怪奇であり、調子がおかしくなったときの症状も千差万別。それは大いに認める。認めるけど、精神科医が「ワケのわからん症例」に遭遇した場合、まずは「無難な」というか「流行の」手段により解決を図ろうとする…ってのは事実のようだ。ズバリ言ってしまうと、精神科医ってのは「わかりません」と認める勇気がない。
 
 ただ、精神科医の立場も何となくわかる。そこに「苦しんでる」患者がいる以上、どうしても「わかりません」とは言いにくい。不信感抱かれて病院代えるだけでしょ。これは医者にとっても患者にとっても不幸だ。なんかもっともらしいコト言って、毒にも薬にもならない薬を出す…ってのが一番いいような気がする。けど、今はネットなどで「どんな薬出されたか」簡単に調べが付いちゃう時代だ。単なる小麦粉なんて出したら、訴訟沙汰になりかねない。
 
 とはいえ、本当にコレでいいのか?って疑問は残るね。今の抗うつ剤ってのは、かなり効いて副作用も弱いらしい。けど、アタマに作用する(と思われる)薬だよ?健常者に与えた場合、無害とは言い切れないのでは。悪名高きロボトミー手術でさえ、「害の方が大きい」とわかったのはかなり後の話。気楽に出していい薬とは思えないんですけど。
 
 誤解して欲しくないんだけど、精神医学そのものがクズだとか、精神科医がいいかげんってワケではない。色々頑張ってはいるけれど、それでも「心の問題」ってのは解決の難しい問題だってコトである。「医者に行きました、治りました」なんて単純なものじゃない。そんなことを期待する方が間違っている。
 
 鬱病ってのは、甘く見てはイケナイ。れっきとした「死に至る病」である。もしこう診断されたら、真剣に治療に取り組む必要がある。けど、それを承知の上で言わせてもらうんだけど、鬱病ってのは(相対的に)気軽に診断されがちになる。それが「今の精神医学界の流行」だから。そのことは頭の片隅に覚えておく価値があるかも知れない。
 
 とはいえ、「鬱病です」と診断されちゃったら、それがれっきとした詐病じゃない限り、医者に従うしかなさそうなのも事実。その診断を疑っても仕方ないような気がする。ただ、医者に相談する前に、ごく身近で親しく、なおかつそれなりの観察眼のある人に相談してみた方がいいかもしれない。詐病の実験の時、同じ入院患者は正常者を見抜いていた。あくまで仮説だけど、身近にいる人には「わかる」ものなのかも。家族・友人ってのはそーゆーものじゃないかなあ。逆に言うと、そーゆーことに気がつかないようでは、「その程度のつきあい」ってことなのか?うーむ…これはこれで難しい問題だなあ。
 
 なお、鬱病は「他人事」だと考えない方がいい。案外どころじゃなく身近にある話だと思うぞ。ま、あえて深くは触れないけどさ。

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