9月4日2012/09/05 00:58

 コマンド誌の記事に関する仕事は、ほぼ終了。後は校正っぽい作業(現在も継続中)があるだけ。我ながら仕事早いね。
 
 考えてみれば、私はこれで「第二次欧州大戦」と「太平洋戦争」をテーマとした戦略級ゲームの記事を書いたことになる。作戦級・戦術級のゲームも悪くないけれど、「自らの手で天下国家を動かす」という漢のロマンを叶えてくれる戦略級は、独特の良さがある。その二大テーマと言える両者をゲーム専門誌で論じさせてもらったんだから、素直に嬉しいよね。「F男の語る天下国家論には、一定の価値がある」と認めてもらえたんだから。ま、しょーもない価値しかないわけだけど。
 
 やり甲斐はあるかも知れないけれど、戦略級ゲームはやっぱり色々難しい。「戦争全体」という複雑なモノを模倣しようとしているので、何をすれば良いのかわかりにくいのだ。勝利条件から逆算して「何をすべきか」割り出すというのは、ウォーゲームではポピュラーな手法であり、それは戦略級ゲームでも当てはまるんだけど、中間目標の設定は複雑で直感的に把握しにくい場合が多い。勝利条件が「独本土の保全」だから、モスクワ目指して突っ走る必要がある…ってのが当たり前だからなあ。
 
 それを補うために「史実」ってテキストがあるのは確かだけど、これがまたタイヘンでねえ…ある程度大きい作戦全てについて「何故史実ではその作戦が行われたのか」「その目標はどの程度達成されたのか」「それが戦争全体に与えた影響はどうなのか」をある程度把握し、「それがこのゲームではどう評価され、どんな意味を持つのか」イチイチ自力で考えてゆかなくてはならない。単純に「プレイして楽しむ」だけなら、なんとな~く史実を真似するだけでいいかもしれないけれど、曲がりなりにも研究記事だ。説得力を持たせるために、キチンと研究しておく必要がある。
 
 こんな作業をイチからなんて、とてもじゃないけれどやってられない。私の場合、「過去に発表された、別のゲームの戦略」をパク…もとい、参考にするって手法を使った。「赤軍引き籠もり防御案」は過去に例があるし、それに対抗するため編み出された「ルーマニアを通過する形で直接南方資源を狙う」プランも、AH時代のロシキャンを知ってる方ならおなじみだ。幸い、私はゲーム雑誌を「雑誌として」読んできたため、こういう「怪しげな作戦案」の引き出しはいっぱいある。そいつをうまく当てはめてゆけば、戦略級ゲームの記事が出来上がるというわけだ。
 
 PCの世界にはストラテジーゲームってジャンルがあり、その中には第二次大戦をモチーフにしたモノも存在する。それゆえ、「戦略級ゲームをプレイしてみたいと考えるウォーゲーム初心者」はそれなりにいるんじゃないかと思われる。一応戦略級愛好家としては、そんな方々にも戦略級ゲームをプレイしてもらいたい、という希望はある。あるんだけど、「どう指南したモノか」って問題があるんだよな。「シェリーフェンプラン?何ソレ美味いの?」程度の知識しか持ってない人間に「独が仏と露を同時に敵に回す場合、何故仏から攻めるのがセオリーなのか」を説明するのはタイヘンだ。ましてや、ゲームごとにイチイチ異なる「独ソ戦のセオリー」を理解してもらおうと思ったら、「とりあえず色んなゲームをプレイして、東部戦線ってモノを学習してきてくれ」って話になる。それじゃ駄目でしょ。
 
 そんなワケで挫折している「初心者を戦略級に引きずり込む」って構想だけど、完全に諦めたわけではない。何かしらブレイクスルーはないものかね…と常々考えてはいるのだ。別に〆切のある話じゃないんだし、いつか何か思いつくかも知れない。自分自身ほとんど期待してないけれど。ただ、今回「太平洋空母決戦」の記事を書いたおかげで、より戦略級ゲーム全般に対する理解が深まった気がするのは事実。難しいのは承知の上で諦めないだけの価値はあるかな。
 
 ただなあ…良くできた戦略級ゲームって、「苦しい」んだよ。どうしても1手1手が重くなりがちで。まして、研究中の苦悩に至っては何をか言わんや。初心者をあんな地獄に引きずり込んでいいのでしょうか?まあ、1手が重いドイツゲームもかなり苦しいんだし、良しとしちゃおう。何が悲しくて私だけが「戦略級の記事執筆」などという地獄を味わわねばならんのだ。いつの日か後継者育成して、全部ソイツに押しつけてやる…