8月10日2010/08/10 23:48

 「萌えが付属したミリタリー関連」だの「イケメンの石田三成」だのはカンベンして欲しい、それを許容しろと言うのは子供に「ピーマン食え!」と強要するようなモノだ…って話(詳細はコチラ)を見て最初に思ったのは、「逆でしょ」の一言。面白いし長くなりそうなので、ここで長々と理由を述べてみます。
 
 何が逆なのかって?何か「気に入らないモノ」を押しつけられそうになった時、自分を「ピーマン食えない子供」にたとえたくなる気持ちはわかる。わかるけど、この場合は適切では無さそうだ。私が思うに、この話題の「ピーマン」は「燃えミリ」や「短足胴長武将」の方で、子供は萌えやイケメンを喜ぶ連中だ。つまり、「萌えミリはカンベンしてくれ」という意見は、ピーマン普通に食えるし大好物って大人が、子供用の舌にアレンジされたピーマン料理食わされ、「マトモなピーマン食わせてくれ」と嘆いている…って図式だと思うんだな。
 
 何故コッチになるのか?これは、「仕掛け人側の意図」を考えればわかる。萌えやイケメンを好む連中にモノ売ることを考えた場合、別に「ミリタリー」や「戦国武将」がセットになっている必然性はあまりない。差別化しやすくて便利って程度だ。にもかかわらず、何でミリタリーなの?と考えてゆくと、「作り手はミリタリーの方が好きなんだろうな」ってのが透けて見える。でなけりゃ、あんなモノ作れないよ。「ミリタリー方面」ではそれなりのレベルにあるはずの私でさえ、たまに感心させられるってレベルなんだから。
 
 ミリタリーはいい。武将は燃える。そんなコトは当たり前であり、説明の必要は感じない…というのは、ごく一部の人種の話だ。私も一応この人種に分類されることが多いので、その言い分はよくわかる。わかるけど、残念なことにそれを理解できない「可哀想な連中」がいるのも、事実なんだよね。嘆かわしいことに、そういう連中の方が数が多いと来ている。こういう連中に「正しい道」を教える手段として生まれたのが、萌えミリだ。開発目的だけを考えれば、むしろ「燃え系」人間のために生まれたのである。
 
 しかし…しょせん萌えミリは「お子様向け」である。「ピーマン使っている」のは確かだけど、味付けは露骨にお子様向け。「大人の舌」の鑑賞に耐えるとはとても…というシロモノだ。ただ、これは結局「ピーマンを喜んで食う習慣を付ける」手段に過ぎない。とりあえず食わず嫌いを解消してしまえば、「お子様向けピーマン料理」を卒業して「苦いピーマン料理」を食べるようになる奴が出るかも知れないって期待が持てる。ピーマンってのは苦いんだよ。苦いから良いんだよ。それが「オトナ」の正常な意見であり、「甘ったるいピーマン料理食えと言われると、涙が出てくる」理由なんて考える必要は無いと思うな。
 
 そりゃあね、私も「初めてピーマン食った時から、オレの求めているモノはコレだと直感した」人間に近い。そんな人間から見れば、「萌えミリ」は邪道以外の何者でもない。理解したくないんだけど…って気持ちはわかる。わかるけど、「ピーマン食える人間が絶滅危惧状態に陥り、ピーマンの生産量がゼロに近くなる」って状態になって困るのは「ピーマン食える側の人間」である以上、せめて存在意義ぐらいは認めてあげないと。
 
 そもそも、「萌えミリ」の起源はすごく古い。コレを否定しちゃうと、新谷かおるの漫画を否定することになりかねないんですが。あれも「色気あるネーチャンの絵」+「ミリタリー」って部分では共通するわけで。「(萌えミリから入った奴と)ゲームの嗜好が合うかどうか、同じ卓を囲めるかどうかはまた別の話。」などと言うのなら、新谷かおる描くところのネーチャンから「エリア88」経由してミリタリーエアを語れるようになった奴(私だ私)と空戦ゲームは出来ないって話になると思うな(笑)。陸モノはゲームが先なんだけど、空は萌えが先なんですよ私は。
 
 流行している「何か」を取り入れた結果、その「何か」の方がメインになってしまい、業界全体がズタズタになる…というのは、良くある話だったりする。実際、ウォーゲーム業界はテーブルトークRPG業界(その昔は関連性が高いとされていた)のおかげでダメになったと言われている。その意味では、「萌えミリ」を意識したウォーゲームなんてモノが下手に主流になったら、この業界はヤバいかもしれない。ただ…正直言って元々からしてヤバい業界なのだ。「ブームと称してどっと人が増え、ブームが去ったからと言って人が消え去る」ってことをやらかせば、なんかスゴく困ったコトが起きたような気になるけど、「ブームが去った後-ブーム前」って算術がプラスならば、ブーム前もブーム後もこの業界にしがみついているに決まっている人間の目からすれば、「良かった」となるわけだ。この算術は、マスコミ言うところの「名馬」が登場するたび浮き沈みする競馬業界を見ていればわかる。キッカケが何であれ、「そこに馬がいる」ってだけで競馬場に突撃する馬鹿が増えれば、それでいいんだよ。
 
 この辺、私は「コアなゲーマー」を信頼していると言える。萌えを取り入れたからって、それに押し流されて駄目になるような連中じゃないだろうと。そりゃまあ、一部のコアゲーマーが「そーゆーゲーム」も(あくまで「も」)プレイするようになり、コアなモノしかプレイしない人間が寂しい思いをする…ってことはあるかもしれない。けど、その程度で業界全体がどうにかなっちゃうとは思えないんですが。「『萌え』なんぞで道を踏み外すようなゲーマーは惰弱な奴だ。そんな奴は、平民落ち(「独身貴族」でなくなること)した瞬間にゲーマー止めるに決まっている」(元ネタは競馬の戸山哲学「調教で壊れるような馬は弱い馬だ。そんな馬は競馬に出しても勝てないに決まっている」)と考えて良いんじゃないかと(笑)。
 
 ウォーゲームに萌えを取り入れる手法ってのは、要はコンポーネントに「萌えイラスト」を採用するかどうかって問題になると思う。ゲームの本質はルールにあるとするならば、「ユニットが萌え萌えだったからって関係ないね」で済ませられる理屈だ。けど、実際は…私は相当「コンポーネント軽視派」に属する(ゆえにハリガネ弁当箱を尊ぶ)気がするけど、それでも「同人ゲームのコンポーネント向上に並々ならぬ関心がある」ように、無関心じゃいられない。「萌え耐性」が強い私でも、好みはやはり燃え系コンポーネントだ。ただ、「コンポーネントは大事だよね」って意見を展開してゆくと、「萌えイラストで騙して引きずり込むのは有効なんじゃ」って話にも繋がるんだよね…とりあえず、「自分が好きな傑作ゲームが、萌え絵ユニットで再版されちゃった」場合、「中身は傑作だから許す」のか、「それでも許せない」のかは、意見が割れるとは思う。
 
 ついでに言えばだ。「萌え」の侵出は各方面に及んでいるけど、私個人の感想としては、何故か「ミリタリーエア」はそれが著しい気がする。「ストパン」こと「ストライクウィッチーズ」とかね。ということは、「中身はまんまAir Force(AH)やAir War(SPI/HJ)」なんだけど、「ユニット及びデータカード付属イラストが萌え萌え」ってシロモノが登場する可能性は、あると言えばあるような…新作出ない・再版もされないという「空戦シミュレーションゲーム」の世界において、「萌え導入を認めるなら、再版してやる」などという「悪魔の選択」突きつけられたらどーするのか?コレって実はシャレになってないような…
 
 とりあえずの結論。子供にフツーのピーマンを食うよう強要するのは、拷問である。でも、大人に「ピーマン使ってはいるけどピーマンの味はしなくて、ただただ甘ったるいシロモノ」を食えと強要するのも、拷問である。かといってお母さんに「ドッチが食べても美味いと言う料理作って」と強要するのも、拷問である。「栄養があるので」ピーマン料理を出さなきゃイケナイ場合、誰が拷問を受け入れるのかは…私は「貴族」だからして、この辺で悩む必要は無いんだよな。良かった良かった(おい)。

コメント

_ takoba39714 ― 2010/08/12 23:01

どーもです。
>子供は萌えやイケメンを喜ぶ連中・・・
いやはや、一刀両断ですね。私的には、他人さまのことを子供よばわりするのはちょっと躊躇われました(笑)。

>新谷かおる描くところのネーチャンから「エリア88」経由して・・・
あれれ?でも私の知る限り、あの話に出る女性パイロットはサラさんだけですよ。あれって萌えミリの起源なんだ。松本零士の戦場マンガシリーズも含め、あれぐらいなら私も許容範囲かな。

>・・・別の話。」などと言うのなら・・・
ああ、これは私の表現が悪いっす。
別の話っていうのは、「できない。」ってことではなく、「できるのか、できないのかは不明。」程度の意味でした。すいません。

>「空戦シミュレーションゲーム」の世界において、「萌え導入を認めるなら、再版してやる」
こ、これは確かにウ○コ味のカレーか、カレー味の○ンコかっていうくらい究極の選択ですね。

_ F男 ― 2010/08/13 19:49

>他人さまのことを子供よばわり
これはあくまで「例えの都合上」そうなっただけですから(笑)。ただまあ、イケメンはともかく、萌えなんぞを尊ぶのは…という話はありそうですね。

>あの話に出る女性パイロットはサラさんだけ
はい。「エリア88」自体は「燃え」系だと思います。けどまあ、他の作品から新谷かおる作品に入った身としては…(以下略)

>別の話
話として面白いのでわざと揚げ足取っただけなので、お気になさらず。

>こ、これは確かに
確かに「究極の選択」だと思うんですけれど、実行するかどうかはともかく、「萌えパワーを借りて空戦ゲームを出す」って案が検討されても不思議はないと思うんですよ。それくらい、「空戦+萌え」モノが出てたりするので。まあ、色々悩ましいとは思うのですが。

_ HA ― 2010/08/16 10:52

起源というか、萌えミリ側がエクスキューズとして挙げるのが『ティーガーフィーベル』ですね。
あと萌えというよりはエロですが、ノーズアートの文化も関連あるかもしれません。

_ F男 ― 2010/08/16 22:43

「兵器を女性にたとえる」ことを起源だと考えるのならば、その歴史はすご~く遡る気がしますね。古代ギリシアの頃からフネ(当然軍艦含む)は女性だった(これは理由が少し違いますが)わけですし。兵器=男の相棒=女性、という連想はむしろ自然と言えるかも知れません。ただ、この考えを突き詰めてゆくと、「萌えミリは間違いだ。エロミリこそが正しい」となりそうな…

_ はねだ ― 2010/08/17 16:40

まず、今日までこの記事に気付かなかったことを詫びておきます。
【正直すまんかった。】
 
 えー、下手をするとシミュレーションゲーマー値×萌えミリ値が一番高い可能性が否定できないわけですが、そのことは気にせずに。
 
 ぶっちゃけ、萌えを入れると売れます。
 一番いい例が『もしドラ』。100万部なんてありえんでしょ。
 このまえの坊ちゃんとかの文学シリーズも売れました。

 現在は萌えをどう取り入れるかで思案しているところが多いですよ。

_ F男 ― 2010/08/17 21:00

萌えがウケてるのは、わかります。ただまあ、あそこまでウケるのはむしろイジョーだと思うんですけどね。ヲタクだけがどうこうってだけじゃ、ああはなりそうもないわけで。

正直、「何で萌えがアソコまでウケるのか」とか、「SLG業界も萌えに走るべきなのか」なんてのは、興味はあるけれど仮説すら出せない状態ですね。ちょっと口惜しいんですが。

_ はねだ ― 2010/08/18 17:27

>「何で萌えがアソコまでウケるのか」とか

 サブカル論になるので簡単には書けないんですが、とりあえず。
 
『他人が面白いといったから』
 
 これがほぼすべてです。
 とにかく情報が多すぎて、自分で判断出来てない。
 そして現在の考えとして『萌え』が参入したものは当たる確率が高いと、消費者も判断しているからです。
 
 昔はテレビだったんだけすけどね。

_ F男 ― 2010/08/18 22:34

なるほど。「横並び思想」って奴ですね。

そう考えると、我が強くて横並び思想が弱く、その割にソコソコ同調者を見いだせる「ヲタク」受けするもの(昔からある程度の需要がある)が目立つ(=売れる=「流行っている」として横並び思想の連中を引きつける)って図式があるのかも知れませんね。なんだかなあ。

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