11月11日2009/11/11 22:55

 ちょっとしたコトにハマってしまい、更新をすっ飛ばす羽目に陥ってしまった。申し訳ない。実は、今年の「クソゲーオブザイヤー」の選考(2chのスレ)を読んでいました。そこでまあ、罪滅ぼしを兼ねて?ここで紹介されていたスゴいクソゲーの話をしようかと。
 
 私はボードシミュレーションゲーム限定で「単なるユーザー」の域を少しだけ踏み外している。商業誌に記事書いたり、いくつかのゲームに私の名前が掲載されたりしているからなあ。だからって偉いワケじゃないけど。ただまあ、そーゆー立場なので、「駄目な作品・失敗作」に対する興味は、なるべく持つように努力している。
 
 プレイして楽しむだけであるならば、駄目な作品は単に駄目なだけだ。そんなものにつき合うのは時間の無駄でしょ。でも、「ゲームの善し悪しを批評する」とか、「ゲームデザイン作業に関わる」なんて立場から見ると、実は駄目な作品から学べることは多い。「このゲームはドコが駄目なのか、何故そうなったのか」なんてコトを考えることにより、色々活かせるので。良作~佳作だけ触れていたからって批評・デザインなどは出来ると思うけど、「あえて駄作のネタを仕入れる」ことが無駄ってワケじゃない。人それぞれだ。
 
 クソゲーオブザイヤーの存在自体は、前々から知っていた。実際に「何が受賞したのか」確認するようになったのは、去年からかな。去年は「大物がたくさん出た」って話を聞いていたので。今年は、とあるゲームが「F男基準で」許せない領域に到達していたので、つい現時点での選考が気になって…「クソゲーオブザイヤーwiki」(リンクあります)に2chの過去ログがあったので、丹念に読んでしまいました。
 
 許せないゲームとは何かって?思い切って名前出しちゃおう。「人生ゲーム Wiiware版」(タカラトミー)である…なんつーか、駄目とかいいとかいう話を通り越して、許せないレベルの怪作だと思う。怒ったと言うより、すごく空しくなった。多少ジャンルが違うとはいえ、普段から「面白いゲーム」を求めている自分の人生を否定されたような…
 
 一部の人は、「クソゲー=バグがあってゲームにならないモノ」と思うかもしれない。この認識は、大きく間違っているワケじゃないけど正しくない。この世には、バグの有無とは無関係に「ゲームとしてダメダメ」なものがあるんだよ。バグってのは「プレイしていて苦痛を感じる要素」の1つだから、ある程度は重要だ。でも、それだけでどうこうって話じゃない。実際、「人生Wiiware」にバグはない。
 
 じゃ、ドコが駄目なのかって?まず、ボード・コンシューマー&PCを問わず、ゲームとして最低クラス。要はすごろくゲームの一種なんだけど、すごろくゲームとしてかなり出来が悪い。だって、「ゴールが無い周回マップ、マス目は選択式の分岐により変化するけど、短い方で19、長い方でも21」ってマップに何を言えと?ルーレットは人生ゲーム伝統の1~10までだから、最速2回で1周できちゃう。これを15回繰り返してゲーム終了。「○周したら」「誰かが持ち金○円に達したから」なんて終了条件は選べない。おまけに、マスに止まった時のイベントは大半が「カネの増減」だけ。一応カードもらえるマスがあるけど、もらえるのは「○マス進む」系のカードだけなので、「だからどーした」ってなもの。小学生に授業で「すごろく作ってみましょう」ってコトをやらせたとしても、このレベル程度のものは期待できると思われる。最後の逆転要素?あっても無くても心底どーでもいいレベルのもの(大抵の場合、逆転には至らない)がある。だからどーした。
 
 コンシューマーゲーム特有の、演出面はどうかって?ボードのすごろくなんて普通ソロプレイしないから、ソロプレイ率が高いコンシューマーゲームでは重要度が高い。これは、私に言わせれば最低どころか不合格レベル。駒にあたるキャラは8種類固定。名前変更すら出来ない。各マス目に止まった時のメッセージは、一枚絵すら出ない。単にテキストメッセージが出て、プラスマイナスに応じた演出(大したことはない)が出るだけ。3D調のマップを3D調のキャラが進んでいく様は「さすがWii、ファミコンやスーファミとは違うなあ」と思わせてくれるけど、それってすごろく系ゲームで重要なことか?音楽は単調で全く変化無し。更に、演出皆無に近い順位表彰が終わった後は、詳細なログやハイスコア表示なども無くリセット。勝っても爽快感はなく、負けてもちっとも悔しくない。勝因・敗因分析?何それ。
 
 このゲーム、一応「体験版」って位置づけらしい。Wiiパッケージ版の人生ゲームが出ているし。とはいえ、無料の体験版として考えてもダメダメなこいつが、1000円って値段付けて売られているのだ。この価格にもかかわらず、「ボッタクリ」レベル。しかも、1000円というお手軽価格&「人生ゲーム」というネームバリューのおかげで、かなり売れているらしい。ある推定によると、被害者数は10万近くになりそうだとか。ちなみに、ダウンロード専門のWiiwareの場合、1000円ってのは「高い部類に属する」そうです。
 
 私はWiiは持っていないのでタダで動画を見ただけだけど、それだけでもすご~く辛かった。正直、1000円もらってもやりたくない。だって、動画を見ている間ずっと「ゲームに千円しか出さないなんて、どれだけ貧乏人なんだよ?そんなお前には、こんな程度で十分だ」って、罵倒されてる気分になるから。グラフィック面ではお世辞にも優れているとは言い難いボードゲームに高い金払っている私の場合、よりその感覚が強くなる。
 
 そりゃあね、ボードだろうがコンシューマーだろうが、ゲームってのはメーカーにとっては「金儲けの1手段」だ。それは否定しない。それでも、ここまで「売れればいいんだ。中身なんて関係ない」って姿勢を見せられたゲームは…予算が厳しいのはわかるとしても、だからって「すごろくで大切な要素は何か?」をここまで無視した作品が登場するのはどうかと。なお、似たような値段で「比較にならないほどマシ」なすごろく系ゲームが出てるって話も聞いている。「人生ゲーム」という歴史と伝統のあるジャンルで、1000円で売ることを前提に…という厳しい予算制約があったとしても、もっとましなゲームを作ることは可能だったと思うのだけど。
 
 しかもこのゲーム、いわゆる「やっつけ感」はない。やっつけ仕事ってのは、どこかで「形だけ整え、後は知らない」と言っていそうな雰囲気がするモノだけど、このゲームは「最初からこの完成形が予想され、その完成形のために力を入れた」雰囲気がする。もちろん、その努力の方向性は「ゲームを面白くする」という方向にはまるで向けられず、ただひたすらに「予算を守る」ために費やされたのだろうけど。どうも売れたらしいって話を考えれば、制作責任者は満足していそうな気がして仕方ない。
 
 人生に勝ち負けがあるのだとしたら、私はゲームなんぞに少なからぬカネと情熱を傾けている時点で、「負け組」に属するのだろう。それは承知していたつもりだ。ただ、何が哀しくてゲーム動画を見てそれを実感しなくちゃいけないのか。自分の半生をかけて大切にしてきた「ゲーム」ってものから、突然裏切られたようなものだ。自分の生き様を根底から否定されるのは辛い。ましてゲームを使ってそれをやられるのは、すごく辛い。
 
 こんなモノに遭遇してしまったおかげでひたすらブルーになり、私と似たような意見を持つコメントを読んで自分を慰めていたいた結果、ちょっと更新が滞ったんですよ。正直、まだ少し落ち込んでいます。まさか、ギャグでもシャレでもビョーキでもないのに「人生ゲームにオレの人生否定された」なんて理由で落ち込む日が来るとは…