8月27日 ― 2009/08/28 01:48
このところ更新失敗が続いた。地味に不調である。やはりコミケ疲れが続いているのか?体はともかく、精神も消耗するからなあ。
諸般の事情により、今回はいつもより「コミケのこと」を語りたい気分。つーわけで、「一般人向けのコミケ報道の例」を肴に語ってみようかと。ヲタクの私にしてみれば、ツッコミどころ満載だし。
とあるサイトからのリンクをたどってたどり着いたのは、内外タイムスの「コミケレポート」(こちら)この新聞についての詳細は以下略。ちなみに、私は読んでない。どーゆー新聞なのか、一応の知識はあるけどね。
正直言って、タイトルからしてツッコミどころ。「ヲタク記者は見た」ってアオリがついているけど…ヲタクの定義論を展開するつもりはないけど、記事を読む限りでは、取材した奴はヲタクとは言い難い。いやね、「読者にわかりやすくするため、ヲタク臭を消して記事を書く」必要があったので…って可能性は高いわけだけど、それでもアレは違うと思う。用語の使い方などを見る限りでは、多分「いわゆるヲタクジャンルについて行ける程度」に過ぎない。その程度の存在をヲタクと呼ぶなら、「それ系」のパチンコを打つ奴は全員ヲタクってことになる。流石に違うでしょ。
そう判断する最大の根拠は、「販売員」という用語。言いたいコトはわかるけど、いわゆる「同人誌売っている奴」をこう呼ぶようじゃ、ヲタクとは言い難い。少なくとも、私は猛烈な違和感を感じる。コミケに何度も出入りしている奴なら、「売り子」を使うのが普通。この言葉が使えない場合でも、「販売員」って言葉を使うのは避ける。あくまで慣習上の話ではあるけど。
先日語ったように、コミケに「客」はいない。「売り手」と「買い手」はいても、それは「客」と「店員」の関係とは異なる。そのため、「販売員」って言葉はものすげー違和感がある。コミケ参加歴の長いヲタクなら、これは感覚的にわかるのでは。それに加えて、コミケでの「売り子」は、かなりの確率で「同人誌作った奴」を兼ねている。そんな存在を販売員と呼ぶのは、失礼とまでは言わないけれど不適切だと感じる。なんつーか…「魚を1頭2頭と数える」とか「女性なのに男言葉」のような感じと言えば、わかってもらえるかなあ。私個人の感覚では「役職の表記間違い」「ミセスとミスの取り違え」並みに失礼なんだけど、これは私が古くからのヲタクだからだろう。
面白いなと感じたのは、おそらく「何故同人誌を売っているのか」って質問(多分、「儲かるのか」「いえ、それほどでも」「ならば…」って流れで出た)に対する回答と思われる、「売り上げよりも、作品を読んでもらうのが目的ですから。読者との交流が楽しみなんです」って回答に対する、「アマチュア色全開」ってコメント。商業作家としてソコソコ成功している存在でさえ、コレが狙いで同人誌作っている人間は多いとされているんだけどなあ。
マンガなどの場合、読者と交流する機会なんてモノはあまりない。アンケートの人気だの単行本売上金額だので「人気あるんだオレ」ってことを実感できることは確かだけど、これはあくまで数字上の話。これは手応えというか何と言うか…に乏しいのは否めない。同人誌即売会ならば、目の前に押し寄せてくる客を見ることによって、「スゴいなオレ」って実感を得やすい。ナマで「これからも頑張って下さい!」ってコメントも聞ける。これはサイン会などでも得られるモノではあるけど、同人誌即売会でやったって悪くはないはず。ミュージシャンがコンサートで「ファンから元気をもらう」のと、別に大きく異なったことをしているワケじゃない。それを「アマチュア色全開」と表現するのは、「ヲタクの発想じゃねーな」と感じるのだな。
となあ、何となく批判めいたコトを述べてきたけれど、別に「だから駄目」って話じゃない。内外タイムズの読者の大半が「ヲタクではない」ことを考えれば、こういう「ヲタク色がカケラもないコミケ紹介」の方が、むしろ適切ではないかと。「ありがちな誤解」と「不適切な表現」があるのは事実だけど、「良く知らない世界」について取材して記事書いた結果として多少そーゆー部分が出たところで、別に記事書いた記者が無能だとは思わない。とはいえ、有能だとも思わないけどね(苦笑)。
私が注目するのは、記事全体のトーン。よ~く読むと、この記事は「同人誌って儲かるんじゃないか」って話に始まり、「漫画家転向など考えても無駄である」って話に終わっている。だからアレは儲けようと思ったら…って話は先日やったけど、実はソコすら重要じゃない。「同人誌・即売会に対する、最初のイメージ」と「取材してわかった、それらの実態」との間にあるギャップが面白い。私はコミケの実態には比較的詳しいので、最初のイメージの方がより興味深いんだけどね。
この記事にある「最初のイメージ」を分析してみると、こうなる。まず、わかりやすいのが「同人誌は儲かる」だ。さらに、サークル側の対応が丁寧で原則取材に応じてくれるって話を多少の驚きと共に書いているので、その逆になる「アングラ臭が強い」ってイメージも持っていたと推定できる。アマチュア色全開ってくだりからは、「金儲けに徹するという意味でのプロ色が強い」というイメージを読み取れるような。つまり…あえて言ってしまおう。「風俗関連の店」とか、「エロ専門の本屋」みたいなモノじゃないか…ってイメージを持っていた可能性が高い。
ただまあ、コレはわかる。内外タイムスがどーゆー新聞かを考えれば、主な読者層に「コミケってどんなトコロだと思いますか?」って聞けば、こんなイメージを抱くのが普通ではないかと。エロが絡んでいるのは間違いないし、他に類似するモノ知らないだろうし。ただまあ、こういうイメージは内外タイムスの読者だけじゃなく、「コミケなんてまるで関係がない」人間にある程度共通するイメージって気もするけれど。
実態としてのコミケは…ものすげー独特の存在なので、たとえが難しいなあ。一番雰囲気が近いのは、実は「中学・高校の文化祭」かもしれない。大学の学祭だとむしろズレる。あーゆーノリのイベントをいい年齢になってもずっと続け、売っているモノは年齢相応にエロ系が多いって感じかなあ。「客に当事者意識が強い」(高校の文化祭なんて、客の大半は運動部・帰宅部系の生徒だ)とか、「売れる努力をするべきかどうか」(「ウケる」内容にすべきか「真面目な活動報告」にすべきか、ケンカしたことありませんか?)なんて話は、まさに文化祭っぽいわけで。
実態をよく知らない人間が、色々的外れなイメージを抱くのは当然だ。そのイメージが「失礼な」方向に的外れってコトも多いだろう。私が思うに、それにイチイチ文句を言っても意味がない。ただまあ、実態を知る機会があったらヘンな誤解は解消して欲しいってだけ。その意味では、この記事はそこそこ上手くまとめてあるんじゃないかな。正直、勉強になりました。プロの記者の文章なんだから、当然なのかも知れないけれど。
もっとも、コレは記者の手腕だけの問題じゃないと思う。コミケって、主催者側から「取材を受ける時は、一般人にヘンな誤解されないようにしろ!」って注意が飛んでいるからね。いわゆる「客」に該当する層に対してこんなコト言っているイベントってのは、そう多くないと思うな。特に古株のヲタクは「迂闊にマスコミ連中の予断通りのコメント出すと、どーなるのか」を覚えている奴が多いので、みんなそれに従っているわけです。
総合的に言ったら、私はこの記事に高い評価は付けない。まず、ちょっとした誤解を解消できてない。ただ、これは「そーゆー誤解も仕方ないよね」ってレベル。あと、「コミケの魅力」があまり書けていない。あの記事だけ読んで「何故あんな大人数が押し寄せるのか」が理解できるとは…その辺についてもう少し説明があっても良かったと思う。読者が共感できるかどうかはともかく、「人気の理由」を説明してもらった方が、読者にとって親切でしょ。ただ、まとまりはいいし、「読者が抱きそうなイメージ」と「実態」の違いをさらっと説明できてはいる。そこは評価するべきでは。
コミケに対する報道は、もう少し大々的にした方がいいと思う。別に宣伝して欲しいからではない。あの時期フジテレビ本社に遊びに行くことが何を意味するのか、よくわかってねえ奴がいっぱいいるから。我々ヲタクが「ビッグサイト付近で行われる花火大会」(コミケとかち合うと大混雑する)の日程を気にする程度には、気を遣ってもらいたいんだよ。その方がお互いのためだと思うし。まあこれは半分冗談としても、「コミケってこんなトコロ」ってイメージは豊富に持っておいて悪いコトじゃないと思う。そうなれば、コミケ初心者のマナー(毎度問題にされる)が多少なりとも向上するんじゃないかなあ…
ちなみに、この記者が取材したのは2日目の「東方」系。うわ、あんな地獄に足踏み入れたのか…このジャンルはどうも「想定以上にコミケ初心者が押し寄せた」らしく、ものすげー混乱していた。その近くにある同人音楽CDを物色しようと考えていたので、私も間違って足踏み入れちゃったんだよね。迷惑をとっくに通り越し、身の危険を感じるレベルでした。ここで「無意味な足止め」喰らったのが私の買い物(ここだけこの色。理由はわかるでしょ)に色々と…ブツブツ。
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