6月22日2009/06/23 00:01

 昨日はMiddle-Earth東京支部例会。私はただひたすら「武田騎馬軍団」やってました。お付き合いいただいたmiyomin殿、有り難うございました。
 
 前にも書いたと思うけど、私はこのゲームをよく知らない。遙か昔にちょろっとプレイしただけである。そのため、今回のプレイは「まずは私がどんなゲームなのか確認する」のが、最大の目的である。「ルールブックの穴を埋める」ってのは、ゲームそのものに詳しくなくても不可能じゃない(詳しい方が良いことは良いけど)けど、もはやそーゆー段階ではない。
 
 ルールの確認は時間をかけました。そもそもこのゲーム、「どんなルールでプレイされていたのか」がバラバラだって疑惑が…その昔私が再販作業に関わった「戦国大名」も「ローカルルール」の塊だった気がするけど、あれは言ってみれば「枝葉の部分」がそうなっているってだけ。「武田騎馬軍団」は、どうもゲームの根幹部分でローカルルールだらけではないかと。誰が正しいとか正しくないとかではなく、「とにかくどーゆールールでプレイしていたのか」を確認する必要があるんだよね。
 
 とりあえず今回はこんな感じのルールで…ってのをある程度確認した後、ゲームをプレイ。私は一応前回の例会で「少しだけプレイした」こともあり、戦い方は工夫してみました。つーか、工夫しないとゲームになりません。このゲーム、ものすご~く「独特の戦い方が必要」なので。
 
 独特の戦い方とは?このゲーム、移動の際に「追撃」と称してユニットが敵に「ついていって」しまう。コレを利用されてユニットをつり出されると、まさに各個撃破される。コレをある程度計算に入れてプレイしないと、お話にならないのだ。
 
 具体的にどうするかというと、まあ「予備は常に用意しておけ」となるかな。ユニットを単に一列に並べただけじゃ、うまく戦えないから。ただ、予備がいればいいってワケでもないので、あの「感覚」を掴むのは結構大変かも。私も「こんな感じなら戦えるかな?」って程度の理解に過ぎないので、偉そうなことは言えないんだけど。正直、発売当時「ワケわからん」と投げ出した奴は多かったかも知れない。今思えば、私もそうしちゃったような…
 
 まず第1戦はシナリオ1「瀬沢の合戦」を反武田方でプレイ。一応私が勝利した。でも、それは当然じゃないかと。なにせこのシナリオ、反武田方の方がユニット数が圧倒的に多い。ユニットの戦力は「ユニット引いてきて初めてわかる」システムなのでバラつきはあるんだろうけど、別に「圧倒的に武田有利」ってワケじゃない。武田方にしてみれば、「これでどーしろと!」ってレベルだと思う。
 
 そこでまあ、第2戦は陣営を入れ替え、戦い方を工夫してみた。武田方の私は思いきってユニットを集中してみたのだ。こうやって相手の戦列を食い破り…って構想はあったんだけど、コレはあっさり破綻。なにせ「主導権」が取れない。このゲーム、「主導権」って概念があり、コレがドチラにあるかで大きく話が変わってくる。主導権抜きでも戦えるけど、「受け身になっちゃう覚悟はしろ」って話だ。コレを失い続けたんじゃ、いくら何でも…仕方ないので逃げ回っていたところ、最後に「業を煮やして迂闊に近寄ってきた敵兵をちょろっと討ち取った」結果、勝利条件上は私の勝利となった。コレはかなり極端な例だと思うけど、どうも戦い方によっては武田が勝つこともあるらしい。
 
 「瀬沢の合戦」はバランスが悪い。じゃあ、もう少し遊べるシナリオを…ってんで、今度はシナリオ2「上田原の戦い」をプレイ。私は武田方。このシナリオ、ユニット数は武田方が少し多いけど、主導権を取りやすいのは反武田方。だって、相手は名将村上義清だからして。
 
 この勝負は一番「アツかった」と思う。武田方は相手の陣取る地形が悪い(そーゆーマップである)のを利用して相手を分断、優位に立つけど、敵の武将がやたら強いこともあり、アッチコッチで退却されまくり、戦意はむしろ武田方の方が下がりまくってピンチ。そのまま反武田方が逃げ切るのか、それとも武田方が数を利用して逆転するのか…って勝負となり、最後は武田方が逆転した。
 
 更にこのシナリオも陣営を変えてやってみたところ、私の「試しにやってみた博打的配置」が裏目に出て狭いところに押し込められ、うまく戦えないうちに総大将(村上義清)の首がすっ飛んで負けてしまった。ありゃまあ。まあ、こーゆーこともあるってことで。
 
 とまあ、とりあえず「武田騎馬軍団」ってゲームを楽しむことには成功した。確かにクセの強いゲームではあるけど、戦い方を工夫すればキチンと遊べるとわかった。コレは収穫だろう。でも…何と言うか、「コレで本当にいいのかよ」と思うような現象が多発した気がするのも、事実なんだよね。
 
 まず、miyomin殿と「ルール確認」した段階で、予想通り「重要な部分でのルール解釈違い」が発見された。これはつまり、このゲームは「似ている部分が多いけど、実際はハッキリ言って別ゲーム」がプレイ経験のある奴÷2(対戦型だから2で割る)くらいあるんじゃね?って状態だってコトだ。わかっちゃいたけどさあ。
 
 他にも「ゲームとして考えた場合、割り切ることは出来る。でも、シミュレーションゲームとして考えた場合、コレはどうなの?」と言いたくなるような事象がいくつか確認できたんだよね。コレを修正すべきかそのままにするべきなのか?決めるのは容易じゃないと思う。
 
 最初にこのゲームが出てから、相当な月日が経つ。よって、今更「デザイナーに聞く」なんてワザは使えない。ついでに言えば、過去にデザイナーが自ら出したQ&Aに対し、私とmiyomin殿が揃って「コレはオカシーのではないか。キチンとテストした結論なのか、正直疑問を感じてしまう。」と文句を付けたってモノもある。
 
 つまりこのゲーム、「ローカルルール」がプレイ経験のある奴÷2ぐらい存在しているにもかかわらず、「どういうルールに統合するべきなのか」決めるだけの根拠というか権威というか…が存在していないって状態に陥っているようだ。そのため、今現在の私は「このゲームが抱える問題点」について詳しい人間の1人だと思うけど、「じゃあどーしろと?」と聞かれたら沈黙するしかない。どーゆー方針に基づいてどう直していけば良いのか、確固たる方針がないからだ。
 
 そんなことは、再販を予定しているサンセットゲームズの責任者こかど殿のブログに「その方向性をしっかり見極めなくてはならないわけです。」と書いてあった時点でわかってはいた。わかってはいたけど、今回テストプレイしてみて、改めて途方に暮れたのは事実。正直言って、今の時点では先が全く見えない。
 
 これが「イチからデザインされたゲーム」だったら、話は早い。デザイナーなりデベロッパーなりに責任を背負ってもらえばいいのだから。それがわかっているからこそ、テストプレイヤーは好き勝手なことを言える。最終的な決定権を持つ奴がハッキリしているのならば、別に改善提案がいくらあっても悪いコトじゃないわけで。けど、「武田騎馬軍団」はそうじゃない。現時点で「誰が、どんな理屈に基づいて、このゲームのルールをまとめるのか」がボヤけている。普通なら頼りになる、「過去のプレイ経験から導き出された一般的なプレイ」なるものは、このゲームでは正直信用しにくい。この状況では、テストプレイヤーが改善提案をしたとしても、下手すれば混乱を拡大するだけだ。
 
 正直言って、私はこのゲームのルールがどんな形でまとまろうと、知ったコトではない。何だかよくわからんうちに巻き込まれた以上、「とにかくルールをまとめる」ことには責任感を感じるけど、そのための方針を決めるのは私の仕事とは思えないし、その義務も責任も権限もないはずだ。けど、誰かに方針を決めてもらわなければ、作業は進めにくい。
 
 そりゃあ、最終決定権はこかど殿にあるんだと思う。けど、だからって「こかど殿に丸投げ」できるとは限らない。最終的な決済が社長印だったからって、「わからなけりゃ社長に聞け」とはならないでしょ。社長は別に現場責任者じゃないんだから。中小企業では兼ねてる例もあると思うけど、この件についてこかど殿が「現場責任者を兼ねている」必要はまるでない。そして、今の私が聞きたいのは「現場責任者は誰なの?」って部分だ。
 
 普通の再販作業なら、「旧版のルールブック」がある程度責任を引き受けてくれる。「戦国大名」でさえそうだった。でも、「武田騎馬軍団」のルールブックは…正直言って、何でこんなモノの再販作業にクビ突っ込んでいるのか、アタマ抱えたくなったんですけど。
 
 ただまあ、だからって私に出来ることを放置してイイって話にはならないと思うし、とりあえず出来ることはやるつもりだ。けど、どーしたらいいのか、途方に暮れているのも事実でして。このゲームの再販を楽しみにしている方には申し訳ないけど、確かに作業は難航しそうです。どーしたらいいものやら。
 
 なお、最後にこれだけは言っておこう。「F男ごときが偉そうなコト言っているから、いつまで経っても再販されないんだ!」と思う方がいたのなら、遠慮無く作業お任せします。そりゃもう喜んで。つーか、そーゆー「強者」はいないのかよ…オレは別に戦国時代に詳しいワケでも、特別この時代のゲームが好きってワケでもないハズなんだけどなあ…

6月23日2009/06/23 23:56

 負けた…当然のように負けた。別に勝ち負けを争うような話じゃないし、相手を考えれば「負けて当然」ではあるんだけど、負けは負け。負けたことそのものは悔しくないけど、己の修行不足はちと悔しいかな。やはり私はまだまだだ…
 
 何の話かと言えば、先日添削をした「ウォーゲームの歴史」を語る文章のことである。これ自体の出来についてはさておき、先日似たようなテーマで「偉い人」が語っているってニュースを見て、その抜粋と比較したところ、「これは私の負け」だと悟らされちゃいました。
 
 もっとも、負けるのは当然である。だって「偉い人」って、鈴木銀一郎大佐だもの。シミュレーションゲーム業界…というより、日本のアナログゲーム業界の最高権威が相手じゃなあ。抜粋の内容などはこちらを参照して下さい。
 
 この色の話題について行ける方には、何で大佐が尊敬されているのかは説明不要でしょ。そうじゃない方向けの説明を簡単にすると、大佐は日本のウォーゲーム業界の基礎を作った1人であり、今もってプレイされている「傑作」ゲームのデザイナーであり、その姿勢・思想は今もなおこの業界に大きな影響を与えている…って方だ。この業界における「生き神」だね。
 
 私も当然大佐の影響は受けている。正直、「人間として」勝てるとは思えないほど大きな存在だ。そんな私が大佐と「似たようなテーマ」で物事語って、勝てるモノを語れるワケがない。真剣にそう思う。しかし、しかしである。戦う前に「勝てるワケないじゃないですか」と認めるのと、実際戦った後に負けを認めるのは少し違う。大佐に対する畏敬の念にはまるで変化はないけど、自分の至らなさを思い知らされるワケだからねえ。
 
 本当のところを言えば、私が簡単に負けを認めてしまうと、元となる文章を作ったこかど殿に対して申し訳が立たない。間接的には元の文章を非難していることになりかねないのだから。それはわかっているんだけど、でもでも、「文章のデベロップ」を担当した身として、「負けた…」という呻き声を出さざるを得ない。立場上簡単に負けを認めるわけにはいかないんだけど、それでも負けは負けだ。私が添削したモノは「最終的な発表版」とイコールとは限らない(そもそも文責が私にない)以上、実際発表されたモノが勝ったか負けたかはわからない。でも、私の手を離れた時点で比較すれば、立派に私の負けだ。
 
 私があの文章を添削した経緯、及び大佐が似たようなコトを語った状況を考えれば、本来勝ち負けは関係ない。要は大佐も私も「ゲーム界のため」に役立てばと思い、より経験の浅い人間に対して必要なことを語っているのであって、多少拙くても「語る言葉」は多い方が良いのだから。それでも、一応本気で「少しでも良い物を!」と気合い入れて作業した以上、及ばぬモノを作ってしまった自責の念と無関係ではいられませんねえ。
 
 一応の自己弁護をさせてもらうと、私の添削した文章が、大佐の言葉に「大きく負けている」とは思わない。元となる文章を作ったこかど殿も私も「この業界は長い」人間であり、最低限必要な大筋はある程度理解できているはずなので。でも、やはり細かく負けている。そして、その「細かい部分」こそが大事なのだ。細部の修正は私が担当した以上、個人的には「私の負け。こかど殿は悪くない」って気持ちが…
 
 それでも、私は幸せなんだと思う。理由については小一時間ほど愚痴る余地があるとはいえ、私は大佐と「真っ向勝負」できたんだから。そんなコトしたいかしたくないかはさておき、これが貴重な体験であることは言うまでもない。気分は「良き敵」求めて出撃したあげく、「考え得る限り最良の相手」と遭遇して討ち死にした騎士みたいなものだ。他の誰が何と言おうと、私は「結果はともかく、こういう勝負が出来て嬉しい」って気持ちはある。
 
 鈴木大佐は、ゲーム界の重鎮である。神様である。でも、だからって後に続く者が「乗り越えようと努力しなくてはならない」ことも確かだ。それこそが、大佐に対する最高の恩返しになるだろう。私は少なくとも、その機会を与えられた。それに対し、私は一応の全力を尽くした。でも、結果は敗北。これは独特の悔しさがあるねえ。「流石は大佐」と心底感心する面と、「だからって負けちゃ駄目だろ!せめて引き分けなきゃ」と自分を叱咤する面が入り混じって。
 
 しかしだねえ…タイミングが悪かったのは事実って気がするね。私がこの仕事を引き受けたのは、今月10日。〆切は「数日中に」とあったので、翌日夜に完成させて送付した。大佐の講演が行われたのは今月20日、その記事が発表されたのが22日、私がそれを見たのが本日。仮にコレが逆で、私が大佐の講演の抜粋を読んでから添削を行っていれば、もうちょっと改善できたのでは…って気がする。これはまあ「許される範囲ではあるけど、要はパクリ」であり、大佐とのガチンコ勝負にはなっていないけど、「良い物を作る」という観点からはその方が良かったような…「どーゆー陰謀だよ!」と言いたくなるほど、絶妙のスケジュールだったのは確かだ。
 
 そんなわけで、私に仕事頼んだこかど殿、及びその文章を実際読む方(具体的にドコにどう発表されるのかは聞いていないけど)には大変申し訳ない気がするんだけど、私は鈴木銀一郎大佐に負けました。単純に「どちらがタメになるか」だけ考えたら、私が添削した文章の方が価値が低いです。でも、あの文章を読むことにより、私の「負けっぷり」が具体的にわかるのは事実であり、そこを追求してゆくことはゲームデザインの参考になるはずです。そういう意味では、「無価値なモノ」を書いたとは思ってません。
 
 相手が誰であろうとも、急に降って湧いたような話の末だろうとも、私が「簡単に負けちゃイケナイ勝負」に負けたのは事実。ただ負けたワケではなく、一応は「明日に繋がる」負けって気はするんだけど、それでも歯ぎしりしたくなるほど「己の至らなさ」を痛感させられた。とはいえ、この悔しさは本来「大佐の後に続く」全ウォーゲーマーが共有するべき感情だと思う。「大佐に勝てるワケないじゃないですか」だけで片付けていたら、哀しむのは大佐だと思うから。なので、私の今の悔しさを思う存分吐露させてもらいました。
 
 とまあ、理屈ではわかるんだけど…だからぁ~!何でオレがこんなことせにゃいかんのだ。ある程度自業自得であるのはわかっていても、吼えたくなるんですが。