6月5日2009/06/06 04:16

 POGの馬選びが忙しい…毎年の作業ではあるけれど、今年は特に「やり方を大きく変えた」関係上、色々とあってだねえ…
 
 本日の話題は、模擬空戦でF-22ラプターが撃墜された件について。何がスゴいって、撃墜したのは何とT-38タロン。航空機マニアなら誰もがシビれる話でしょ。やるなあ。真面目に震えるほど感動しました。
 
 ラプターについては、以前に何度も触れているので簡潔に。米空軍の、最新鋭最強ステルス戦闘機である。空自が欲しがっているので有名だけど、とりあえず現状では売ってもらえないことになっている。一応「一部機能省略した輸出用を生産しようか」って話も出ているようだけど…
 
 このラプター、最大の利点は「ステルス性」だと思う。見つかりにくいので、ほぼ常に先制攻撃できるわけで。ただ、だからといって「見つかったらアウト」ではない。模擬有視界戦闘(操縦席からお互い見える距離で戦うこと)でも優秀な成績を収めている。
 
 そんなラプターを「撃墜」したT-38タロン。これは今も現役ではあるけど、正直古臭い機体である。区分としては高等練習機。高等練習機ってのは、何とか飛ばすことを覚えた段階のパイロット候補に、「より実戦で使う機体に近い」機体で訓練を積むための機体だ。戦闘機ってのは戦って勝つための機体なので、結構操縦しにくいからね。「飛ばし方は覚えました」って連中をそのまま乗せるワケにはいかないのだ。
 
 この機体の原型は、F-5フリーダムファイター。冷戦時代華やかな頃、カネのない国に「安くてソコソコの機体をプレゼント」することにより、西側陣営に組み込む狙いで生産された機体だ。登場した時代から言えば、「ファントム買いたいけど、カネがない」って国向けの機体だな。ちなみに、カネはあった空自は当然ファントムを買った。
 
 この機体は結構好評で、後に「レーダー積んで、ちょっと高級にしてみました」ってバージョン(F-5EタイガーⅡ)だの、練習機バージョンだのが作られた。練習機バージョンがT-38タロン。確か今でも練習機として使用されているはず。この一族は「古臭い」機体としてF-16やらF-18やらに置き換わりつつあるけど、一時代を築いた「傑作機」であることは間違いない。
 
 なお、T-38は「性能が東側のMiG-21に似ている」ってんで仮想敵部隊(アグレッサー部隊)に採用されたこともあるけど、今現在米空軍は仮想敵としては使用してない(米海軍は今でも使っているらしい)はずなので、何でタロンがラプターと戦ったのかは不明。
 
 単純に機体性能だけで考えたら、T-38はF-22の敵じゃない。真面目に一般兵用のザクとガンダムぐらい性能が違うと考えていいんじゃないかな。また、ラプターの配備機数(当たり前なんだけど、さほど多くない)などを考えれば、パイロットが「ド素人のヘボ」ってことは考えにくい。それなりの水準ではあったはずだ。この条件でタロンがラプターを撃墜って…どういう条件で戦ったのかは知らないけど、それでもスゴいと思うなあ。
 
 実際の話はともかく、私は「空戦ってのは、やっぱりパイロットの技量だろ」ってイメージが強い…と言うより、「レッドバロン」だの「アフリカの星」だの(高名なエースの通称)といった名前を聞くと血が騒ぐモノとしては、そうあって欲しい。強力なレーダー(自機がステルスってのもこの一種)で先に相手を見つけ、ミサイル撃てば勝利…ってのは、やっぱり何かが違うと思うんだな。それだけに、いくら有視界戦闘とはいえ、機体性能が格段に劣るT-38でF-22を「撃墜」したなんて話を聞くと、「世の中まだまだ捨てたモノじゃない」と思いますね。
 
 私はボード空戦ゲームというシロモノをプレイしたことがあるので、「性能が劣る機体を使って、優秀な機体を墜とす」のがどれだけ難しいのか、ある程度知っている。その昔のタクテクスに「エアスペ(ゲーム名)の公開試合で、ファントムでホーネット墜として会場をどよめかせた」って話が掲載されていて、私も感激したって記憶がよみがえってきた。ファントム対ホーネットでコレだからして、タロン(タイガーⅡで代用か?)でラプター(当然データはないけど、作るのは不可能じゃないと思う)墜としたら気持ちいいだろうなあ。真顔で「大空のサムライ」(日本の高名なエースパイロット、坂井三郎の通称)と呼んでくれるかも。
 
 ちなみにこの空戦のガンカメラ映像とおぼしきものが、You Tubeにアップされている(こちら)。私ごときシロートが見ても何が何だかサッパリわからないけどね(苦笑)。おそらくかなり省略されているし。でも、なんかカンドーします。好きな人は是非見て下さい。でもって、できれば日本語で解説なんぞしていただけると…
 
 人間、ガキの頃は「とにかく強いモノ」に憧れる。アニメの主人公メカが良い例だ。でも、多少ヒネた年齢になってくると、「弱い兵器で強い奴を倒す」ことにカタルシスを感じるようになってくる。そんなことは滅多に起こらないとわかっていても、いや、だからこそザクでガンダムに勝ってみたくなるんだな。そんな人間にとって、今回のニュースは快挙以外の何者でもない。やはり「タロンは良い機体ですよ」(ニナ・パープルトンの台詞のパロだったと思ったけど、違ったかな?)ってことだね。