4月23日2009/04/24 00:53

 本日の話題は、「北朝鮮が飛ばしたアレ」について。とりあえず日本政府は「ミサイルだ」と断定したようだけど、ここでは話の都合上「アレ」としておく。
 
 報道などで知っている人も多いと思うけど、ミサイルと衛星打ち上げロケットの間に、技術的な違いってのはあまりない。要は「先端に何を詰め込むか」って問題である。だから、技術面だけ考えた場合、アレがミサイルかロケットか…って議論に意味はない。それは軍事・政治の問題だ。
 
 ただまあ、一般にはミサイルよりロケットの方が高度な技術を必要とする。宇宙は「遠い」からねえ。北朝鮮から米本土まで届くミサイルを製造するより、人工衛星打ち上げの方がタイヘンだ。これが話をややこしくする。技術的に考えたら、ミサイル開発の方がよっぽど楽だし、そもそも「ミサイル技術が未発達の国にロケットなんて打ち上げられるワケがない」のだ。
 
 しかしまあ、世の中には「周りの国」ってものがありまして、「ミサイル発射実験やらかした」なんてコトになれば、大騒ぎになる。そーゆー非難を回避するため、「いや、コレは人工衛星ですから」って理由で「発射実験」やらかすわけだ。まあ、良くある話だよね。
 
 それを考えると、北朝鮮が打ち上げたアレは、実際は「人工衛星」のつもりだった可能性は高い。本音ベースで考えれば、ミサイルだろうがロケットだろうが「米国にとっては脅威」だからして、いちいちミサイルなんぞで威嚇する理由は少ない。中国やらロシアやらといった、「状況次第では味方になってくれる国」の意見ってモノを考えれば、衛星を打ち上げられるのならそれに越したことはないのだから。
 
 とはいえ、アレがロケットだとしたら、結果はどう考えても「大失敗」である。にもかかわらず、アノ国は「成功だ!」などと主張しているからなあ。「失敗しました、すいません」とでも言っておけば、もっと話はややこしくなったハズなのに。まあ、言ってみれば「そーゆー国」なんだから仕方ないとは思うけど。
 
 ちなみに、「いずれロケットを打ち上げるためにミサイルを実験する」という、技術的にはマトモ?なコトをやった国ってのは、あんまりない。ナチス時代のドイツはコレに近い気がする(フォン・ブラウン博士はそのつもりだったと思われる)けど、言うまでもなくロケット打ち上げにまでこぎ着けなかったからなあ。
 
 ソ連・ロシアは?この国は、実はロケット打ち上げに関してあんまり積極的じゃなかったらしい。ロケット開発の中心人物コロリョフ博士は、「そんなもの打ち上げる必要があるのか」っていう軍人の圧力をかわすのに必死だったらしいし。この国が宇宙開発に必死になったのは、実際スプートニク1号を打ち上げて世界中(特に米国)が大騒ぎしてからだって話が残っている。
 
 これに対し米国は、実はミサイルに関して関心が低かった。この国は当時(今もだけど)圧倒的な空軍力を持っていたので、「原爆落としたければB29飛ばせばいい」と思っていたようだ。ICBM開発絡みですったもんだやらかしたあげく、スプートニク打ち上げられてやっと本腰入れたらしい。
 
 世界で3番目に人工衛星を打ち上げたのは、フランス。この国はまあ、「ミサイルの技術をロケットに転用した」国かな。5番目の中国・6番目の英国もこれに該当するだろう。英国の打ち上げが案外遅いのは、本土の緯度が高い(少し打ち上げに不利になる)ことと無関係ではないと思う。なお、今現在英仏は「欧州連合」としてロケット打ち上げている。「マトモな」開発パターンの国って、ある意味この3国ぐらいなのでは。
 
 4番目に人工衛星打ち上げた国は、日本。この国は「純粋に」ロケットのためにロケットを開発させられた国と言える。敵国にブチ込む戦略弾道ミサイルを(少なくとも表立って)開発するワケにはいかない事情があったわけで。そのため、「ペンシルロケット」(本当に鉛筆大)なるモノを使って実験していたくらいだ。ある意味アホらしい努力ではあるけれど、おかげで日本の宇宙開発に表だってケチをつける国は存在しない。これはスゴいコトだと思う。
 
 こっから後の国になると、ある種の「きな臭さ」が漂う。ミサイル開発したいけど、それだと文句言われそうだから「ロケット開発しました」って事情では…って話があるからねえ。なにせインドにイスラエルにイランだもの。正直、「本当はドコにブチ込みたかったのか」がわかるような国で…ついでに言えば、その時先端に「何を」詰めたがっているのかも、わかっちゃうような。
 
 実を言えば、弾道ミサイルってのは「あんまり命中精度が良くない」兵器である。フツーの爆薬詰め込んで発射したのでは、目標を破壊できるかどうか怪しいのだ。そのため、イヤガラセ目的でかなりアバウトにブチ込む(恐怖爆撃って戦術)か、あるいは破壊力のデカい弾頭(ABC兵器って奴ですな)を使って広範囲に吹っ飛ばすか…って使い方をするしかない。ぶっちゃけた話、「核を持たない国が開発するのは、かなり贅沢」なのだ。
 
 そう考えると、「核を持つ気もないのにロケット開発しました」って国は、結局日本しかないような…逆に言えば、日本が「これはロケットだ!」ってモノを開発したからこそ、核を持ちたがっている国が「ロケット開発って名目なら、ミサイル開発していいんだ」って考えるようになったのかもしれない。うーむ…日本が悪いってワケじゃないんだろうけど、ちょっとフクザツな気分になる話かな。
 
 なお、今年中に韓国が(全部独自技術っってワケじゃないようだけど)ロケットを打ち上げる予定で、そうなると「核を持つ気もないのにロケット打ち上げた国」の仲間入りをすることになる…んだよね?韓国が「実は核兵器持っている」「実は本気で開発に取り組んでいる」って話は聞かないからなあ…とりあえず日本としては、こういう国が増えることは歓迎すべきではないかな。もっとも、ビジネス面では「商売敵が増えた」ような気もするんだけど。
 
 北朝鮮のアレがロケットかミサイルかって議論は、実は私はあんまり興味ない。ロケットだからって脅威には変わりないから。ただまあ、アレを「成功だ!」と主張する気持ちは正直理解できない。冷戦時代のソ連でさえ、あそこまでミエミエの大嘘はついてなかったような…そんな根性じゃあ、ミサイルだろうがロケットだろうが上手くいかなくて当然じゃないかね。失敗は失敗と認めようよ。アレを成功呼ばわりするようじゃ、「ロケットだ」って主張する意味ないじゃん。
 
 つーわけで本日の教訓は、「失敗は素直に認めよう」でしたとさ。ロケットやらミサイルやらの話題のくせに、教訓がコレってのはどーゆーことかね?まあ、そーゆーコトのわかってない国のやったことだからして、仕方ないのかも知れないけど…

4月24日2009/04/25 01:01

 D&Dの作者の1人である、デイビッド・ランス・アーンソンがお亡くなりだそうな。しみじみ。ゲイリー・ガイギャックスも昨年亡くなられたそうだし。疑いようもなくアナログゲーム界の大傑作を作ったコンビが世を去ってしまったのは、哀しいねえ…つーわけで、追悼として、あくまで私の知る範囲で「D&D」ってゲームを語ってみようかと。
 
 D&Dってのは、略称である。正式名称は「Dungeons&Dragons」。直訳すると「迷宮と竜」かな。テーブルトークRPGの元祖と言われている…んだけど、これはある意味正しくない。
 
 いやね、「最初のテーブルトークRPGって何か?」と聞かれたら、やはりこの作品の名を出すのが普通だし、それは間違っていないような。ただこのゲーム、最初っからRPGだったとは言い難い。最初は「冒険者集団を操るプレイヤーVS迷宮の怪物を操るプレイヤー」って図式の、ボードゲームの変形だったのだ。昔懐かしの「赤箱」ルールブックを丹念に読んだ経験がある人なら、これは納得してもらえると思う。
 
 ちなみにこの話題で赤箱と言えば、TSR(この色の話題に詳しい人にもおなじみ)から出た、基本セットのことを指す。新和って会社から日本語版が出た時、箱絵その他は英語版を完全に踏襲してたからねえ。私のような年代の人間にとっては、おなじみの呼び名だ。ただ、より若い層は富士見文庫版しか知らないし、「最近の若い者」になるとホビージャパン版しか知らないはずだ。しみじみ…
 
 D&Dが「真の意味でRPGになった」のは、青箱(エクスパンション)の頃からだろう。私の記憶が正しければ、この頃からやっと「テーブルトークRPGっぽい」ルールが増えてきたような。冒険の舞台も迷宮だけじゃなく、野外を含む「世界全体」に拡張されたわけだし。その後コンパニオン(緑箱)で領地経営の概念が、マスター(黒箱)でウエポンマスタリー(武器習熟)のルールが入って…最後のイモータルで「不死者への道」が説明されているんだったっけ?流石に記憶あやふやだなあ。
 
 今現在、このゲームの日本語版はホビージャパンから出ている。これまたしみじみしちゃう話だ。その昔、この会社が「D&D日本語版」を扱えなくて悔しがっていた時代を知っているからねえ。この会社、今現在なんかワケわからん方向に走っているけど、D&Dに関しては思ったより真面目に取り組んでいるような。やっぱり、「昔取り扱えなかった」恨み?は忘れてないのかな。
 
 今から思い返せば、D&Dってゲームは案外複雑なルールだった。魔法のルールなんてほとんど覚えていないんですけど(苦笑)。元々が「個人戦闘シミュレーションゲーム」に近いトコロから生じているからねえ。昨今のテーブルトークRPG事情はよくわからんけど、どうやらもっとシンプルなルールのものが好まれているような。まあ、それが「時代」なのかなと。他に娯楽が少ないからとはいえ、当時良くあれだけのルールを理解できたよな…って、より複雑なルールで有名なシミュレーションゲームを今でもやり続けているわけだけど。
 
 少し、私が「愛用した」キャラの話をしよう。私の愛用キャラは戦士だった。ルールあんまり覚えなくていいから…ってのもあるけど、むしろ「パーティー人数が少なくても何とかなるから」って事情が大きかった。コンシュ-マーRPGしか知らない人間でもわかると思うけど、魔法使いだの盗賊だのは、あまりに打たれ弱いので、「生きた壁」(戦士などのこと)抜きだと使いにくいからねえ。その点戦士ならば、「ザコ相手に大騒ぎ」って事態に陥ることは少ないので、話を進めやすかったのだ。
 
 ただまあ、いわゆる「ボスキャラ」相手にそれでいいのかと問われると…真っ向勝負じゃ厳しいので、色々小賢しい知恵を振り絞って何とかした(苦笑)。ボスキャラクラスなら「話をする」余地はあるのがフツーだし、必要ならば奇襲・不意打ち・待ち伏せといった「卑怯技」を使うまで。「いかに格好良く勝つか」なんて概念は皆無に等しく、「いかに楽して勝つか」を追求しまくったもの。この辺、「根がウォーゲーマー」ってことなのかもね(違う)。ただまあ、当時の私が「テーブルトークRPGってのは、戦闘を中心とした個人生活のシミュレーション」だと公言してたのは事実かな。
 
 今現在私はこのゲームをプレイしてない。個人的には「完全に足を洗った」つもりはないんだけど、とりあえず積極的にプレイ相手を探す気になれないし、誘ってくる人間もいない。その理由?やっぱり「人間関係がウザい」からかなあ。ウォーゲームの場合、多少プレイスタイルが違っていても、とりあえず「勝利条件を満たそうと努力する」って部分は共通しているのが普通(「そうじゃない」プレイをする場合、相手の同意を得るのが礼儀だと思う)なので、技量にかなりの格差がない限りは「人間性に問題がなければプレイ相手として問題はない」となる。けど、テーブルトークRPGの場合は「人間性に問題がない、あるいは少ない奴でも、プレイスタイルが合わないと一緒にプレイしていて辛い」場合があるからねえ。正直、見ず知らずの人間相手に飛び込んで…ってコトがやりにくいんだな。あくまで私に限った話かも知れないけれど。
 
 D&Dってゲームについては、このゲームそのものよりも、「後の世に残した影響」が語られることが多い。まあ、要はコンシューマーRPGってのはD&Dに影響を受けて生まれたようなものだからね。一般人に理解可能なトコロに話をまとめようとすると、そう語った方が話が早い。でもまあ、ココはそーゆー場所じゃないので、D&Dそのものについて語ってみたわけだ。昔は良くプレイしたし、今も機会があったらプレイしたいとは思う。けど、相手を見つけるのはウォーゲーム以上にタイヘンな気がするんだよね。それは正直ちょっとだけ寂しいかな。ある意味「忘れていた寂しさ」ではあるんだけど、哀しいニュースのおかげでちょっぴり思い出してしまいました。しみじみ…

4月25日2009/04/26 01:56

 佐藤秀峰という漫画家がいる。代表作は「ブラックジャックによろしく」(新含む)「海猿」。ちょっと前に連載をモーニングからビッグコミックスピリッツ(以下スピリッツ)に移したことで騒がれた。この人が、今度実験的に「自分のHPで自分のマンガを有料配信」しようとしているんだそうな(サイトはこちら)。そこでまあ、とりあえず私なりに「この試みは成功するのか?」を検証してみたい。
 
 何故こんな実験を?詳しい話はサイトに載っているのでそちらを参照してもらうとして、私なりに要約すると「漫画界の将来を憂い、出版社の手を借りずに漫画家がやっていけるかどうかを試す」ためらしい。雑誌移るくらいだから、出版社ってモノに対して根強い不信感があるのかな。
 
 まずは技術面から検証してみよう。と言っても、私はソコまで技術面には詳しくないので、参考にもならない程度しか語れないけど。とりあえず構想としては、「旧作は1話10円、新作は1話30円」って金額らしい。これで目標金額としては、以前「原稿料が月額70万円では苦しい」って話が流れていたので、とりあえずは「マンガ制作経費を別にして、月70万円以上の収入を得る」ことを仮の目標とする。実際の「当面の目標」は、もう少し低いとは思うけどね。これはあくまで「技術面検証のための目標」だと思ってもらいたい。
 
 ものすごーく乱暴な試算として「70万円売り上げるために必要なアクセス回数」を求めてみよう。まあ週刊雑誌同様月4回程度出るとして、週5,600~16,800回ぐらいアクセスがあれば目標に達する。旧作の需要は少なめと見積もると、まあだいたい週6,000回ほどのアクセスがあればいいわけだ。
 
 週6,000アクセスって…とりあえず、中堅エロゲーメーカーへのアクセス数(他にいいサンプルが発見できなかった…)より、1ケタ大きいような気がする。中途半端なサーバーだとパンクしそうな気が…私はシステムのことは詳しくないけれど、「週だいたい6,000アクセスに耐えられるWEBサーバー」の構築費用って、それなりに高額になるんじゃないかな。
 
 しかもだ。「読者が購入した」作品は、「読みたい時に再度アクセスすれば読める」ようにして、購入後1年間ほど読めるようにするとか。そうなるとアクセス数は更に増えることになりそうだ。それやこれやを考えると、システムの構築費はかなりなものだし、運用経費も馬鹿にならないような。これら「出版社に原稿料もらうって形なら発生しなかった経費」は含めて考えるとなると、ハードルは高そうな気がする。少なくとも、気軽に構築できる環境じゃない。
 
 次に、「これだけのアクセスを得られるか」を検証してみよう。あくまで私の見解では、「不可能ではないかも知れないけれど、相当難しい」となる。その最大の理由は、「値段設定がビミョーだから」かな。確かに、週刊誌や単行本の価値から1話あたりの金額を算出すると、こんな感じに落ち着く気はする。にもかかわらず…というより、「だからこそ」難しい気がするんだよね。
 
 大方の人間はほとんど意識しないと思うけれど、実は「金を払う手間・集金する手間」というのは、1円でも1万円でもあんまり変わらない。考えてみれば当たり前だけどね。よって、「安くて価値の低い商品」というのは、カネを払う手間を惜しまれちゃう危険性があるのだ。これを実感したければ、制作費・販売費共に50円ぐらいの同人誌作って売ってみるといい。「ある程度値段取れる内容・分量・体裁にすべし」ってのは、同人誌の鉄則なんだよね。
 
 対面販売現金商売なら、金を支払う手間は大きな問題にならない。自販機も何とかなるでしょ。でも、クレジットカードを使うのは「アホらしい」領域になる。にもかかわらず、Webで課金しようと思ったらこの手を使うしかない。Web上で「薄利多売」が成立しにくいのは、これが原因の1つだと考える。AmazonやAppleは薄利多売で成功しているけれど、あれは「豊富な品揃え」「質の高い販売・集金システム」を統合させているからであって、「ある漫画家の新作・旧作だけしか買えません」ってモノとは性質が大いに異なる。
 
 毎回カネ支払うのが面倒だというのなら、まとめてカネ払っちゃえば…って考えはある。でも、そうすると「週刊誌との競合」ではなく、「コミックスとの競合」になる。サイトを読む限りにおいては、これは作者の意図に反する競合のような気もするけどね。要は「週刊連載の原稿料が安い」のが不満の主要因であって、「コミックスの売り上げが悪くて」不満を述べているとは思えないので。
 
 そもそもだ。冷酷なことを言ってしまえば、雑誌の原稿料が「コミックスにならないと儲からない」程度に安いのは、仕方ない…どころか、当然だとさえ思う。だって、雑誌に掲載されてない作品の単行本なんて買うか?雑誌掲載というのは「単行本を売るための宣伝経費」と考えれば、何とか食える程度の金が出ているだけマシだと思うべきなのでは。色々事情が異なるとはいえ、「広告掲載してもらうために、カネ払う」のがフツーなのだから。
 
 そりゃあね、世の中には奇特な人間がいて、「面白い作品」探すために雑誌を丹念に買いまくり、その上更にコミックス売り場も丹念にチェックする…ってなアホウ(私のことだ)もいる。でも、これはどう考えても少数派でしょ。でなけりゃ、Amazonがあれほどもてはやされる理由がない。Amazonってのは、「巨大本屋で新刊本をチェックする必要を感じない、幸せな人」もしくは「巨大本屋で新刊本をチェックしたくてもできない、不幸な人」のどちらかが利用するモノだからして。「自分が知ってる雑誌に掲載されない限り、コミックスなんて買わない」のがフツーじゃないか?私のように「そうじゃない作品のコミックスを買うことがある」人間の方が希だと思う。
 
 そもそも雑誌ってのは、「雑多な作品に触れることが出来る」ところに価値がある。どんないい作品でも、読者の目に触れてもらわなければ無価値だ。無名の作家にしてみれば、「同じ雑誌に掲載されてる、有名作品のついででいいから見てくれ。そのうちの何人かが面白いって言ってくれればオレの勝ち」となる。「オレの作品は素晴らしいんだぁ!」なんてコトは、クズ作家にも言えることだ。その熱意だけで手にとって買ってもらえるなんて考えるのは、大いに甘い。同人誌でさえ「販売戦略」は重要なんだから。
 
 それゆえ、「有名作家」が各自で作品を売り始めた場合、無名作家は「どうやってオレの作品を読んでもらえばいいのか」って問題に直面する。手がないとは言わないけど、より深刻な問題となってくるのは間違いないような。私でさえ「膨大なクズの中から良い作品を見つけるのはタイヘンだ。その点雑誌はあらかじめ選別してあるので、有り難い」と思っているのに、私ほど「良い作品探し」に熱意を持たない人間にどうしたら作品を読んでもらえるというのか?「ブラックジャックによろしく」は私もいい作品だと思うけど、「コミックスがあれだけ売れた」理由として、「モーニングって雑誌に掲載されたから」は外せないでしょ。
 
 ただまあ、雑誌売り上げが低迷する現状において、「今のシステム」を維持してゆくだけでは将来が怪しいのは事実。それを憂い、色々試してみる価値はあるだろう。でも…「作家個人が作品をネット上で有料販売する」ってシステムは、正直駄目だと思う。これなら、まだ現状のシステムの方がいいような。とはいえ、私に「じゃあどうすれば」と聞かれても困っちゃうけど。
 
 佐藤秀峰氏には少し手厳しい意見になってしまったけど、現実ってのは「厳しく出た時にはとことん厳しい」ものだからして、私ごときの意見でどうこう言っているようじゃ、立ち向かうのは難しいでしょ。たとえ失敗しても色々教訓にはなりそうだし、単行本は売れてるはずだから経済的に余裕はある(新しいことをする際、「失敗しても後がある」のは大事なことだ)と思われるので、あえて「やめた方が良い」とは言わない。ただまあ、成功へのハードルは結構高いと思うな。それは覚悟していると思うけど。
 
 漫画文化がどうなるのかは、正直よくわからん。今までとは色々変わってきそうな気はするけど、「どんな方向に」変わるのかは、まだよくわからない。それゆえ、色々試してみるのはいいことだと思う。ただまあ、その大半が「失敗」「うまくいかない」って覚悟は必要じゃないかと。ある意味大変な時代だと思うけど、そんな時代を生きているんだから仕方ない。とりあえず私としてみれば、多少なりとも私にとって都合が良い方向に変わってくれれば有り難い。おそらくそれは「大多数の人間には有り難くない変化」じゃないかって気もするけどね(苦笑)。

4月27日2009/04/28 01:57

 先日、「世界の『最悪』航空機」&「世界の『最悪』兵器」って本を読んだ。要は出来の良くなかった航空機&兵器について語っているんだけど…個人的にすご~く言いたいコトがあるので、ここで吼えさせてもらおうかと。
 
 これらの本で採り上げている航空機&兵器は、大半が「まあそう言われても仕方ないかな」ってシロモノである。しかし、中には「おいおい」ってモノがあるのも事実。特に「何でまた」と思ったのは、「兵器」の方に出てくるAK47だな。確かに欠陥があるのは、私も銃器関連雑誌読んで知っている。でも、世界には「この世の軍用ライフルは、『AKシリーズ』と『その他の使えないクズ』に分類される」と思っている人間が山ほどいるシロモノだからねえ…欠陥直してからやっと普及したモノ(米軍のM16がこれに該当するかな。ちなみに、M16初期型も「最悪」扱いされていた)とは、ワケが違う。
 
 でもまあ、AK47については「アホか」と笑って済ませられる。この本が何と言おうと、「傑作」であることは揺るぎないシロモノなので、「わかってないな」で片付ければいい話だ。でもねえ。「最悪呼ばわりは流石にかわいそうだ」ってモノがいくつか…そのうちの1つ、TBDデバステーターを「擁護」しようかと。
 
 デバステーターってのは、太平洋戦争で使われた米軍の艦攻である。要は空母から飛び立ち、敵艦に魚雷ブチ込むための飛行機だ。ただ、やや影は薄い。かなり早い段階で後継機のTBF/TBMアヴェンジャーに交替したからね。「最悪」認定されたのは、「ミッドウェー海戦の際、ロクに戦果を挙げず大損害を被った」からだとされている。
 
 確かにまあ、この航空機はロクな戦果を挙げられていない。第一線で使われたのは珊瑚海海戦の時とミッドウェーの時ぐらいだけど、どちらでも「大事な」働きはしてない。珊瑚海海戦では翔鶴・瑞鶴といった正規空母には命中ゼロ、ミッドウェーでは戦果ゼロで大損害を被った。それを考えれば、「傑作」と呼ばれないのは仕方ないかなとも思う。
 
 ただ、それは機体のせいなのかと言われると…大戦初期の米軍の魚雷は、艦載・航空機搭載含めて「クソ」って話があり、別に機体だけが悪かったワケではないような。それも含めて「最悪と認定した」のかも知れないけれどね。
 
 とはいえ、「ロクな戦果ナシ」は魚雷のせいに出来ても、「大損害を被った」のは、魚雷のせいじゃないでしょ。防弾装甲や防御用火力の不備なんかは「機体が悪い」わけで。それゆえ、「オンボロの役立たず」と呼ばれても仕方ない気はする。でも、あえて言おう。「最悪」呼ばわりは流石に可愛そうだ。
 
 元々、この機体は開発されたのが古かった。初飛行は…Wikipediaによると1935年。珊瑚海・ミッドウェー両海戦が起きたのは1942年だから、今時の感覚だとそう古くは感じないかも知れない。でも、時は戦争前、軍用航空機は日進月歩の時代。今時のPC並みの勢いでドンドン技術革新が進んでいたことを考えれば、旧式化していても不思議じゃない。
 
 しかもこの機体、登場した当時は「革新的な名機」だった。それは間違いない。「艦攻初の単葉引込脚の機体」だからね。日本はその1年後に複葉の96艦攻を作り、これが「時代遅れだ」ってんで、そのまた1年後に97艦攻(太平洋戦争初期の主力艦攻)を作ったんだから。英国に至っては、見た目はどう考えても時代遅れなソードフィッシュを有り難がっていた(いや、これはこれでいい機体だけど)くらいで、他の国には空母そのものが存在しない。
 
 どんな傑作兵器と言えども、技術の進歩を考えれば、晩年は必ずやって来る。デバステーターの不幸は、その「晩年」に実戦の機会がやってきたことだろう。米軍もこの機体が「そろそろ更新時」だってのはわかっていたので、後継機のアヴェンジャーを用意していた。珊瑚海海戦はともかく、出撃がもう少し遅ければ、ミッドウェー海戦の時、米空母に搭載されていたのはアヴェンジャーだったって話もあるくらいだ。そんな機体の戦果がふるわなかったからって、仕方ないのでは?それこそ、「大戦後半にヘルキャットやムスタングにボコボコにされた」からって理由で、零戦を「最悪」認定するようなものじゃないか。
 
 しかも、米軍はこんなロートルを過酷な任務に送り出した。艦攻ってのは重たい魚雷を抱えて低空を飛ぶ必要があるので、そもそも敵の直掩機(船を護衛する戦闘機)やら対空火力に対して脆弱な存在だ。理想を言えば、「護衛戦闘機が敵の直掩機を引きつけ、艦爆が傷を付けた敵艦に、トドメの一撃として魚雷を叩き込む」って使い方が望ましい。「宇宙戦艦ヤマト」で、ドメル艦隊が艦載機をどんな順番で送り込んだのか思い出して欲しい(苦笑)。にもかかわらず、ミッドウェー当時のデバステーターは、「護衛戦闘機はロクにいない、艦爆隊はまだ到着してない」ってタイミングでの攻撃を強いられたのだ。しかも、直掩戦闘機は「日本機動部隊の最精鋭」一航戦・二航戦の零戦。この条件では、97艦攻やアヴェンジャーでも、似たような結果に終わった可能性がある。
 
 もっとも、だからと言って「司令官がアホ」とはならない。日本空母機動部隊の隙を突けそうだってんで、多少の無茶は承知の上で攻撃に踏み切ったのだから。その結果が最後どうなったのかは、日本人なら覚えるべきですね。これが「歴史に残る英断」だったのは間違いないけど、そのしわ寄せがデバステーター隊に押しつけられちゃったのは事実だ。
 
 その上、デバステーターは頑張った。実はこの機体の欠陥として「航続距離が短い」ってのがあり、ミッドウェー海戦では「日本空母を攻撃できるかどうか、怪しい」距離からの攻撃を強いられた。にもかかわらず、実際日本空母に対して攻撃しているのだ。当時の米軍にとってみれば、「日本空母を発見できず、攻撃すら出来ない」より、「攻撃したけど戦果ナシ」の方がどれだけ有り難かったことか。日本軍がデバステーター隊を攻撃するため生じた隙に、「死の天使」SBDドーントレス艦爆隊が爆弾降らせて勝負が決まっただけに、なおさらだ。
 
 つまり、ミッドウェー海戦におけるデバステーター隊の「大損害」とは、「ロートル兵器に、それを承知の上でキツい任務割り振ったところ、最低限の仕事はしてくれた」代償として生じたモノであり、最終的な結果がどうなったのかも含めて考えれば、「機体含めて誰も悪くない」のではないかと思う。デバステーターが真の意味で「最悪の」機体であったならば、おそらく日本空母にたどり着くことすら出来ず、そのためドーントレスの急降下爆撃に対してもう少し対応しやすくなり、最初に襲われた日本空母3隻(赤城・加賀・蒼龍)のうち1隻ぐらいは難を逃れたかもしれない。これを最悪呼ばわりとは…正直、「なんか大切なモノを見失っていないか?」って気がしちゃいますね。
 
 航空機に限らず、「何かを評価する」ってのは難しい。単純に「勝ったから強い、負けたから弱い」だけじゃ語りきれないからね。そこがまた楽しいんだけど。ウォーゲーマーとしては、単純に表面的な勝ち負けだけじゃなく、もっと深い部分もキチンとわかろうとする努力が必要じゃないかと。デバステーターを含む米機動部隊に「してやられた」日本人としては、特にそう思うわけですよ。ついでに言えば、「誰が見てもド本命」の馬より、「皆が駄目だと思うけど、実は条件次第で走る馬」を探して喜んでいる身としても(苦笑)。

4月28日2009/04/29 02:18

 本日の話題は、あえてDoblog「消滅」について。私は直接的な被害者じゃないので、事件そのものよりは「他人事じゃねえな」って部分に重点を置いて語ってみようかと。
 
 Doblogとは、NTTデータが運用していたブログサービスである。何でも今年の2月8日に大規模な障害が発生し、復旧もうまくいかず、「消えた」過去ログの復旧に苦渋したあげく、今年の5月30日にサービスを終了することになったようだ。現在のトコロ移転周知のためサービスは再開しているようだけど。
 
 しかも、「閉鎖の理由」として述べたモノがスゴい。「Doblog開設時の目的である、ブログシステムを構築するための技術的知見、およびコミュニティサービスを運用・運営するためのノウハウの蓄積については十分に達成できたものと考え、サービスを終了するという判断をいたしました。」(「」部分コピペ。ソースはコチラ)だとさ。言っちゃあ何だけど、どう考えても「真の理由」じゃない。そのくせ、利用してきたユーザーを「実験動物」扱い。個人的感想としては、サイテーの対応として記憶するに足るような気がする。
 
 まあ、私は間接的な被害(Doblogで運用していた知人のブログを読んでいただけ)しか受けてないので、文句はこれぐらいにしておきましょ。ただまあ、この事件のおかげで「事故でブログが吹っ飛ぶ」「急にサービス停止しやがる」ってコトが起きたらどーなる?ってコト(正直、あんまり考えたくなかった)について考えさせられたのは事実だ。
 
 URLやこのブログ唯一の「広告スペース」(目立たないけど)を見てもらえばわかるように、このブログは「アサブロ」上で運用されている。プロバイダの無料サービスって奴だね。採算が取れているのかどうかは知らない。とりあえず私は、接続料として私が支払っている金額の一部は「ブログ維持経費」なんだととらえている。その意味では、おそらくカンタンにサービス停止しないんじゃねえかと思ってはいるんだけど。会社に不信感持ったら、プロバイダごと取り替える奴は多いと思われる(私もそうするつもり)だし。
 
 このブログの「本文部分」だけに関して言えば、実は自前のバックアップを取ってある。別に狙ったワケじゃないんだけどね。「ネタごとの文字色変更」なんてコトやっている関係上、一度自前のPC内にセーブしているのだ。一部自分のミスで消えているなど、完璧なモノじゃないけど、とりあえず私個人としては「大きな問題ではない」ととらえている。
 
 このような「自前のバックアップ」については、ブログを運用している方には一応勧めておきたい。私も本来偉そうなことは言えない(ソコまで考えてバックアップ取ったワケじゃない)けど、ブログ運用している会社を信用しすぎるのは「危険」だからね。「経営判断」などという奴で、何をやらかすかわかったものじゃないんだから。障害・停止はまだいい。以前どこぞのブログで「運用会社が勝手に文章を利用するのでは」って噂が流れたぐらいだ。この時は結構騒がれたので、実際そんなコトやらかす馬鹿な会社は存在しないと思うけど…いずれにせよ、自前でも管理してあると「多少安心できる」と思う。
 
 とはいえ、急な移転を強いられた場合には、ここをお読みの皆様が「ドコへ移転したのかわからない」って問題はある。これは…まあ、一応は「読者は友人知人中心」だと思っているので、「ブログ移転が縁の切れ目」ってな事態は発生しにくいのではと。強いて私に出来る対策を挙げるとするならば、このブログタイトル「F男の誰も付いていけない話」を変更するつもりはないので、これで検索していただければ、移転先に引っかかるのではないかと。
 
 ただまあ、私としてみれば、「いい移転先を発見できるのか」ちょっとした不安はある。ここはヘンなブログなので、「最近の流行」とは相容れない性質が強いから。たとえばソーシャルネットワークサービス(SNS)。何らかの「共通事項」で結び付いた「内輪」中心のサービスだね。諸般の事情により、私もいくつか加入している。ここで私のブログを運用するのは、どう考えても問題があるでしょ。「ゲーム」のSNSで「競馬」の話をしたりするのは、流石にちょっと…
 
 また、最近は「ショートメッセージ」中心のサービスの方が流行しているって話も聞く。詳しくは知らないけど、Twitterとかいうのがそーゆーサービスの代表らしい。これまた長文での運用を基本とする、私のブログとは相性が悪いわけだ。つまり、このブログは「最近の流行」とはかけ離れているので、いざ移転を強いられた場合、すぐさま移転先を見つけられない危険性があるのだ。
 
 とりあえず今のところ、ブログってサービスが消滅する可能性はむしろ低い。でも、将来はどうなるコトやら。ここは「雑多なテーマについて、好き勝手なことをガッツリ書く」ために存在している。しかし、そんなコトやる奴はそう多くない。ガッツリ書きたいのなら「内輪」向けでいいって話はあるし、雑多なことを語りたいのなら「短文」でいいじゃん…ってワケだ。実を言えばその気持ちはわからなくもないけど、残念ながら「私の趣味」じゃないのだ。
 
 まあ、いざとなったら以前の「ホームページ方式」に戻せばいいって話はある。流石にこの手のサービスが消え去る可能性は低いし。そうするといくつかの機能は失われてしまうけど、「肝心の」部分は残せるわけで。流行り廃りで多少提供されるサービスの質が変化したとしても、「私の文章を読んでもらう」ことは可能ではないかと思うし、とりあえずはそのため色々努力するつもりだ。
 
 「個人」ってのはどうしても弱い存在なので、サービス停止された時には色々と不都合を押しつけられやすい。カネ払っていれば多少防ぎやすいけど、それでも「採算が…」などと言われればそれまでだ。流行っているなら「数の論理」で対抗できるかもしれないけど、そもそも流行っているならサービス停止なんて考えない。結局、「どこかで割り切り、割り切れない部分は自己防衛」するしかないような。
 
 今回移転を強いられた方は、本当に大変だったと思う。我々もこれを「貴重な教訓」として、いざ自分のブログが移転その他を強いられた時のことを、しっかり考えておく必要があるんじゃないかな。私の場合、そうしないと困るのは自分自身だからして。読者のこと考えてないとは言わないけど、基本的にココは「私自身のこと」考えて運用されているからね(苦笑)。

4月29日2009/04/30 01:23

 諸般の事情により調べたのと、前回デバステーターの記事に多めのコメントが付いたことを記念して?本日も兵器の評価ネタを。今回は「傑作なのか駄作なのか、心底よくわからん」機体として、MiG-25フォックスバットを採り上げようと思う。
 
 MiG-25フォックスバットは、どう評価すべきなのか悩ましい機体である。開発者にそのつもりがあったかどうかはともかく、世界中が「この機体って、結局のトコロどーなのよ」って話に振り回されたからなあ。一般的には「大したことない」で片付けられることも多い(記憶が正しければ、「最悪」兵器に掲載されていたはず)んだけど、それだけで片付けるのはもったいないようなエピソードも多くて。
 
 この機体が開発された理由は単純。当時米国はB-70ヴァルキリーという「超音速爆撃機」を開発していて、ソ連としてはこれに対抗できる迎撃機が必要になると感じていた。そこで、「速い、とにかく速い」ってな迎撃機としてこの機体が開発された。当時のソ連軍部が、「他の用途に使えるか」を気にしたって話は聞かない。
 
 しかし、諸般の事情によりヴァルキリーは開発中止。「メインターゲット」がいなくなっちゃったわけだ。にもかかわらず開発・配備がストップしなかったのは、単純にフツーの迎撃機として「使えるんじゃないか」って話があったからと思われる。なにせこの機体、今の水準で見てさえ、「最高速度は戦闘機で一番」だからして。
 
 しかしだねえ。色々技術が進んだ今の目で見ても「一番」ってことは、要は「そんなに急いでドコへ行く」って話になる。そんな性能必要なのかと言われれば…おまけにこの機体、最高速度を追求した代償として「扱いにくかった」らしく、大量配備されたワケでもない。当時のソ連軍関係者でも、「この機体は傑作か駄作か」と聞かれたら、「う~ん…」って黙り込んじゃうかもね。一芸に秀でていて、それなりに使い道があったのは確かだけど、そんな性能が必要だったかどうかは疑問だし、あんまり応用が利かなかったワケで。
 
 面白いのは、「当時の西側」の対応だ。この機体の型番を「MiG-23」と間違えたあげく、「最前線に大量配備されてるらしいぞ」と誤認(MiG-23フロッガーって機体があって、コッチはフツーの戦闘機として大量配備された)し、あげく「ものすごく速くて、戦闘機としてもスゴいらしい」と大騒ぎをしたあげく、対抗できる機体を…ってんでF-15イーグルを開発した。何でこんな「誤解」をしたのかは、よくわかってない。一応有力なのは「F-15の開発予算を通すため」わざと過大評価したらしいとされている。まあ、「ありもしない大量破壊兵器」を口実にイラクへ攻め込んだ国のことだからなあ…
 
 この「西側の幻想」が崩れたのは、有名な「MiG-25亡命事件」のせいである。ベレンコ中尉の乗ったMiG-25が、突然日本に亡命してきたのだ。そのおかげで機体の性能が詳しく判明し、西側が抱いていた「夢の高性能機」が大嘘だとバレたわけだ。この機体が「駄作」「最悪」呼ばわりされる理由は、この時の「抱いていたイメージとのギャップの大きさ」ではないかと。勝手に騙されて勝手に持ち上げていたとはいえ、現実見て感じた「ガッカリ感」は大きかったのだろう。
 
 今の目で冷静にこの機体を眺めてみると、「当時の技術の枠内で手堅く作りつつ、最高速度を追求した」機体であり、傑作ではないけど駄作でもないような気はする。昔駄作の証明のように言われていた「レーダーに真空管使っている」(すでにトランジスタの時代は来ていた)も、開発時期や信用度を考えれば「驚くほど旧式ではない」わけで。ちなみにこの機体のレーダーは、真空管パワーなのかどーかは知らないけれど「滅茶苦茶大出力」であり、妨害電波で誤魔化すのはタイヘンだったと言われている。
 
 しかしだ。「MiG-25亡命事件」の影響は、「この機体の性能が明らかになった」だけに留まらない。当時の空自はこの機体が「領空に進入しようとしている」ってんでスクランブルをかけた(当たり前だ)にもかかわらず、見事に迎撃に失敗。「気がついたら函館空港に着陸してました」という、シャレにならない結果に終わったのだ。これが「実戦」だったらどうなったことやら。
 
 もっとも、これは単純に「空自が悪い」では片付けられない。当時の戦闘機は「低空の目標を探す能力(ルックダウン能力)」が低く、ちょっと飛行経路を工夫されると「見つかりません!」となるのがむしろ一般的だったのだ。つまり、空自の防空網がザルなら世界中の防空網がザルというわけで…おかげで、これ以降レーダーの開発がより進むキッカケにはなったようだ。
 
 当時の空自は機体の質・量ともに「それなりのレベル」だと、その道に詳しい人間なら誰もが信じていたと思われる。それをあっさりくぐり抜けたというのは…何と言うか、これはこれで「偉大な実績」って気がする。太平洋戦争中に「空母から中型爆撃機を発進させる」という奇策によって行われた「ドーリットル空襲」に匹敵するような。どう考えても本来の使い道とは異なる上に、MiG-25もルックダウン能力は低い(当時はソレが当たり前)から、「自身の無能を自身の輝かしい実績で証明した」ことに…何だかなあ。
 
 ちなみにこのMiG-25、一応の最高速度は「マッハ2.83」らしいんだけど、これはあくまで「それより速く飛ぶと、危険ですよ」って目安に過ぎないらしい。偵察型(武装がないので、軽いし「武器暴発」の危険がない)はかなりの無茶ができたらしく、中東では「マッハ3.2」「マッハ3.4」という、「レーダーの故障じゃねえか?」ってな速度を出した例があるそうな。歴戦のイスラエル空軍も、イーグル受領するまで「あれを迎撃するのは無理っぽい」と諦めていたようだ。これも立派な「実績」だね。もっとも、「イラン・イラク戦争で、F-14トムキャット(イラン所有)に墜とされたんじゃねえか」って説もある…って、迎撃戦闘機同士で戦っているんじゃねーよ。
 
 もっとも、実績の「極めつけ」は、この機体が「ベトナム戦争終結後、米軍機を撃墜したと公式に認められた唯一の機体」だってことかな。湾岸戦争の時、米海軍所属のF/A-18CホーネットがMiG-25から発射されたミサイルに「食われた」と認められている。流石の米軍といえど「対空砲火やら操縦ミスやら」で失われた機体はあるわけで、その中には「対空砲火と戦闘機の共同撃墜」っぽいのもあるんだろうけど、ハッキリと「空戦で撃墜されました」って例はこれしかないらしい。当時のイラク空軍には一応MiG-29フランカーも持っていた(大半は「待避のため亡命」したようだけど)はずなのに、何でまたこんな機体に撃墜されたのやら。とはいえ、「たまたま」だけで何とかなるような相手じゃないのは確かだ。ちなみに被撃墜例としては、湾岸戦争当時F-15に、戦後「飛行禁止区域を飛んでいた」ってんでF-16に撃墜されているらしい。
 
 ただ、この機体は本来迎撃機。主な敵は「核爆弾抱えた爆撃機」だったはずだ。その用途としての実績はまるでない…って、あってたまるか。実績うんぬん以前に、どんな結果になろうと世界が終わっちゃう。偵察機のSR-71ブラックバードを撃墜できなかったのは確かだけど、アレは相当特殊な機体だからなあ。もっとも、ルックダウン能力に欠けるのは間違いないので、B-1Bランサー爆撃機を迎撃できたかは疑問かも。
 
 この機体の改良版であるMiG-31フォックスハウンドは今でも現役であり、あくまでソコソコではあるけど評価されている(比較対象がSu-27フランカーだからなあ)らしい。それを考えれば、この機体も「欠陥はあるけど、一芸には秀でているし、まあまあ使える」のではなかろーか。ただ、主な仮想敵が開発中止になり、その一方で「超高性能機」だと勝手に誤解され、実態が判明してからは誤解含めて大いにケナされ、どう考えても本来の用途とは違っていそうなコトで不思議と実績があり、逆に本来の用途ではイマイチ使えなかった気もするこの機体を、そんな言葉で片付けて良いのかどうかは…ただまあ、色んな意味で「記憶するに足る」存在だってコトは間違いない。
 
 ちなみに私は、この機体のデザインは好きだ。いかにもゴツゴツしていてハッタリ効いているので。デカいミサイル(確か空戦用ミサイルとしては世界最大)を抱えているのもイカす。この点は間違いなく傑作だと思うんだけど。「戦闘機は見た目じゃねーだろ」とか、「アレを褒めるなんて、センス悪いんじゃ」って話を無視すればだけどね(苦笑)。