8月4日 ― 2008/08/05 04:32
本日は趣向を変えて、「小説っぽいリプレイ」をお届けしよう。昨日プレイした「Red Dragon Rising」(S&T誌付録)が「すげー」展開だったので。なお、真面目な小説風にすると長くなりそうなので、多少ギャグ調でお届けするつもり。フィクションのお約束として人名などは架空の存在ですから、誰かに似ててもそれは偶然ってコトで。
20XX年、米国は突如台湾海峡に空母機動部隊を派遣した。これに過剰反応を示した中共政府は、密かに米国と一戦する決意を固めた…ことが、一応この事件の始まりとされている。(セットアップで米軍が空母を配置しただけ)
しかし、目に見える「第一報」をもたらしたのは、実は中共でも米国でもない。シンガポールである。米中激突近しと見たこの政府は、これを「ドサクサ紛れに南沙諸島を占領するチャンス」とみなし、関連諸国、とりわけ中共に対し強硬な態度を表明した。これに対し中共は怒り狂い、他の全てを放置して最新鋭の原潜を差し向けたらしい。緊迫した情勢だというのに。ただ、これにビビったシンガポール政府が南沙諸島占領に軍を差し向けることを控えたため、真相は不明である。(この時派遣された潜水艦は、「南沙諸島防衛」のため最後まで何もせず。)
シンガポールの強気は、米軍の動き以外にも根拠があった。英国軍である。宗主国気分が抜けきらぬこの国は、「米軍支援」と称して軽空母を含む有力な艦隊を太平洋に送り込んだ。シンガポールの行動を支援することによって、後の油田開発でオイシイ思いをするつもりだったらしい。フィリップス提督率いる東洋艦隊は、あえてパナマ経由で太平洋を進み、「米軍との連携」をアピールしつつ、フィリピン海にその姿を現した。
「中国艦隊は出てくるかな?」フィリップス提督は、余裕を持った声でつぶやいた。衰えたりとはいえ大英帝国艦隊が、中国の、しかも最弱とされる南方艦隊ごときに遅れは取らない…その自信が言わせた台詞だろう。だがしかし。中国人だって歴史に学ぶ。彼らが東洋艦隊に差し向けたのは、九六陸攻と一式陸攻…ならぬ、爆撃機のバジャーとバックファイア、それに潜水艦隊であった。
英国東洋艦隊がどうなったのか、説明は不要だろう。フィリップス提督最期の言葉は、「艦隊決戦してくれないなんて、これだから東洋の猿は…」だったとされる。
英国艦隊壊滅とほぼ時を同じくして、中共は大規模な軍を北朝鮮に駐留させ始めた。これを「半島統一の好機」と見た北朝鮮は、当然の権利とばかりに南進を開始した。第二次朝鮮戦争の勃発である。しかし…
「同志将軍、何故動かないニダ!」北朝鮮主席は声を荒げた。なにせ中共軍ときたら、平壌付近で塹壕を掘るばかりでちっとも前進しようとしないのだ。これで戦争に勝てるわけがない。
「そうは言ってもですね、同志。これはうちの軍師…じゃなかった、総司令部から厳命されているんですよ。第一、突っ込んで勝てる保障はドコにもない。そうでしょう?」中共の張将軍はざっくばらんに応えた。台湾海峡とは別に黄海沖にも米空母機動部隊が派遣され韓国軍を支援している現状において、釜山最終防衛線に万歳突撃をかけても突破できるとは限らない。だったら上陸阻止部隊を並べて足止めすればいい…という作戦は、日本のウォーゲーム雑誌「日没計画」でも紹介されている。
「大丈夫ですって同志主席。うちの軍師の話によると、東の風が2回吹けば勝てるんだそうな。1回目は東北の風。2回目の東南の風が吹く時に勝機が来るから、それまで塹壕掘って酒でも飲んでろ…ってことらしいですぜ。なあに、いざとなったら俺1人で米軍全てを足止めしてやりますよ」張将軍はそう言って豪快に笑った。
後にわかったことだが、確かに張将軍にはこのような指令が出ていた。東の風が2回吹けば勝てるというものも含めて。ただ、より正確には、東南の風が吹いた時に「まだ進撃できるようなら、進撃しろ」という指示であって、釜山最終防衛線に突っ込めるとは一言も言っていない。この辺の区別が付きそうにない将軍の人選も軍師の策であったかどうかは、誰も知らない…
フィリップス提督があれほど決戦を望んだ中国南方艦隊の水上艦艇は、米軍の攻撃によりあっさり壊滅した。南シナ海の制海権を握るべく出撃したところを台湾海峡から分派されてきた米軍艦隊に襲われ、あっさり壊滅したのだ。それが実力とはいえ、これにより中共は苦境に陥った。南方経由で台湾に上陸するにせよ、南沙諸島を目指すにせよ、輸送船団を護衛する戦力を失ったのだ。未だ台湾海峡をにらむ東方艦隊が健在とはいえ、米空母機動部隊に勝負を挑むには心許ない。それでも、米軍の戦力が分散したこのタイミングで動くのでは…そう予想した専門家は少なくない。
動いたのは、中共ではなかった。チベット・イラン・果てはキューバといった連中が米中対決のドサクサに紛れて怪しげな動きを見せる中、ついにロシアまでが極東艦隊を動かしたのだ。狙いは黄海沖の米機動部隊。衰えたりとはいえ冷戦時代の遺産を数多く抱えるロシア海軍は、黄海沖の米軍機動部隊を壊滅に追い込む。ただ、その勝利も空しかった。勝ち誇るロシア海軍がウラジオストックへ帰還すべく対馬海峡にさしかかった時、これを待ち受けていたのが海上自衛隊の護衛艦隊であった。米機動部隊相手の戦闘で傷ついていたロシア艦隊には、もはや力は残されていなかった。ロシア艦隊、壊滅。対馬海峡は、やはり「天気晴朗ナレド波高シ」だったとか。なお、ロシアが極東においてこのような無謀な行動を採るに至った理由として、中国の諜報員、コードネーム「明石(ミンセキ)大佐」なる人物が密接に関わっていたという証拠がある。(ロシアは貴重な中共の戦力だけど、あまり使うと「核戦争が起きたので、発生させた中共側の負け」となる。よってあえて強大な米軍にぶつけて相打ちを狙った。)
「何故動かないニダ!」これを発したのは、北朝鮮主席ではない。韓国大統領である。B2爆撃機の空爆により北朝鮮軍と中共の派遣軍が大打撃を受けているというのに、米軍は前進しようともしない。このままダラダラと戦争を続けられたら、韓国軍の損害は増えるばかりである。
「マッカーサー提督みたいな戦争のやり方は、もう流行らないんですよ。」米軍の指揮官は、冷静に言い放った。確かに、北朝鮮にいる敵軍は大打撃を受けている。ここでひと押しすれば、この戦争に勝てるかもしれない。しかし、確実ではない。
「21世紀の我が軍は、確実に勝てる戦しかやらないんですよ。第一、このまま空爆を続けていれば、いずれ勝つのは我々だ。そうでしょう?こうすれば我が軍の損害は最小限で済むじゃないですか。ここで損害を増やしたりしたら、ウチの大統領が次の選挙で勝てなくなっちゃうじゃないですか。」
韓国大統領は黙り込んだ。なにせ野党に勝たれたら逮捕されかねない国の大統領、選挙のことを言われたら、そうするしかなかった。(両軍とも結局「朝鮮戦争の解決」チェックを1度も振らず。)
中共には打つ手が無くなったように思われた。艦艇の損害こそ少ないが、打てる手も少ない。黄海は米軍に代わって海自が居座り、台湾海峡には相変わらず機動部隊が居座っている。北朝鮮に派遣した軍は空爆で痛めつけられ、瀕死の状態。後は座して死すか、華々しく討ち死にするか選ぶだけ…世界中の専門家がそう考えた瞬間だった。
風は東から吹いた。ロシア極東艦隊を壊滅させた日本は、北方領土の完全返還と中露の竹島領有承認をエサに、なんと日米安保条約を破棄、専守防衛と称してこの戦いから離脱したのだ…何故日本がこのような決断をしたのかは謎に包まれている。強いてヒントを挙げるなら、経団連会長の「サブプライム問題がまだ続いてる米国より、賃金の安い中国の方が大事だよね。」という言葉がある…(イベント発生でこうなった。)
これと時を同じくして、台湾海峡にいた米空母の1隻が謎の大爆沈。数少ない生存者からは、「ショーリンジとニンジャが襲ってきた」という意味不明な証言が残るのみである。一部の「専門家と自称する連中」は、この事件の前後に某香港アクションスターの動向が不明だったこととこの証言に関連性を見出しているようだが、真相はおそらく原子炉の事故であろう。(イベント「中国特殊工作員の活躍」の結果。)
この事故により、台湾海峡に浮いている米空母は1隻。中共軍は全軍を挙げてこの空母に襲いかかった。不沈を謳われた米空母だが、先に受けたロシア海軍所属のバックファイアによる体当たり攻撃の傷が癒えない中、中共海軍の総力攻撃を喰らってはどうしようもなかった。米機動部隊、ツイニ帰還セズ…これにより、台湾海峡は中共海軍のものとなった。
「米空母、壊滅か。何でこうなるかなあ…」中華民国、つまり台湾総統はつぶやいた。そもそも、この戦いに台湾はあまり関与していなかった。米空母が台湾海峡に派遣されたのは、台湾からの要請ではない。米国の国内事情とやらで反中共の機運が盛り上がり、いわば勝手に派遣してきたのだ。そのあげく全滅ときては…だが、文句ばかりも言っていられない。こうなっては、中共が軍を台湾に上陸させてくることが確実。この戦いは、勝っても負けても被害は甚大だろう。おまけに最近の米軍は、「損害出したくないから」と空爆に頼ってばかり。そんな戦いをここ台湾でやられたらどうなるのかは、ダラダラと戦争を続けた…というより続けさせられた半島の連中を見ていれば察しが付く。
米空母壊滅から数日後、台湾政府は「香港・マカオ同様の一国二制度」を条件に、中華人民共和国への帰属を認めたいとの意志を発表した。中共内部では「あくまでも完全併合」を主張する意見もあったものの、結果的にこれを受け入れた。台湾側としては「名より実を」、中共としては「実より名を」とった形となる。空母壊滅という大恥をかいた米国は、これを渋々認めざるを得なかった。(米空母壊滅により中共サドンデス勝利。)
なお、第二次朝鮮戦争はまだ続いていた…米中が「勝手にやってろ」と見放したこの戦いが最後どうなったのか、北方領土と引き替えに日米安保条約を破棄してしまった日本がどうなったのか、南沙諸島は結局どうなったのか…それらを記すのは本書の役割ではない。
ちなみにこのゲーム、ルールは簡単で「手軽にプレイできる」ものです。サイの目次第でキョーレツなイベントが発生するので、勝ち負けがどうだの作戦研究がこうだの…ってタイプのゲームじゃないけど、雰囲気は楽しめます。今回勝ったから言うワケじゃないけどさ。ウヒヒ…って、世界をグチャグチャにしたのはオレのせいかい!
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