6月6日 ― 2008/06/07 06:45
諸般の事情により、本日は簡素なモノに。重要だけど、書くべきことは結構少ないので。
「ヒトラー電撃戦」のルールが二度にわたり「改訂」された。新ルールブックがPDFで公開されているので、「81号も買わないとプレイできない!」ってことはなさそう。場合によっては「F男版ルール.PDF」を発表する予定だったけど、その必要はないようだ。
このゲームを何度かプレイし、コマンドマガジン編集部に山のように質問・意見・文句を送りつけ、トドメに英文ルールも熟読した(語学力の関係から理解度は低いけど)ものとして、この改訂版ルールについて「解説・意見」を書いておこう。大原則として、現状私はこのルールに賛同しているけど、そこに至る経緯はある程度説明しておいた方がいいと思うので。なお、当たり前だけど私が「重要だ」と思った事項についてのみ語ります。
まず、「補給ptを使い果たしても、補給切れになるとは限らない」となった。これは英文版準拠。おかげで序盤は多少楽になった。第1ターンの独軍は「ギリギリまで補給使わないと、ポーランド戦に不安が残る」状態だったからなあ。後々取り返しが付く他の戦いと異なり、「1ターンで踏み潰す」ことが前提だけに。なお、陣営を問わず「補給pt使い切りは、あまり良い手ではない」(非常時に備えるため)ので、序盤以外に巨大な影響がある改訂ではない。ただ、対仏戦・ノルウェイ戦にささやかな影響が出るのは確実。「独軍第1ターンベストムーブ」を再研究しないと。
ある意味謎の改訂が、「フィンランド・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリーが枢軸に攻撃されたら、赤軍として参戦」ってルール。これは日本版オリジナル。これは、「枢軸がルーマニアをあえて攻撃することにより、赤軍の侵攻を防ぐ」というアホな手を封じる目的で導入された。従来のルールだと、これらの国が枢軸から攻撃された場合、「西側連合国として」参戦する。枢軸にとっては西側だろうが赤軍だろうが「敵は敵」かもしれないけど、赤軍にとっては大問題。なにせ西側連合国領は「占領できないくせに、通過するため余計な補給を使う」土地なので。
もし枢軸がポーランドを攻めず、さらにルーマニアをあえて攻撃した場合、赤軍は西側連合国を通過しない限り、東プロシア以外の枢軸領に攻め込むためには西側連合国領を通過する必要がある。これをやられると、赤軍は前線に補給ptを輸送してやる必要が出てくる。この時点で「補給の無駄」が生じるわけだ。オマケに、もし間違って運び込んだ補給を破壊されたら、前線の赤軍はデクノボー(防御は出来るけど)。枢軸がバルバロッサ放棄して西側イジメに徹する場合、これは「有効な作戦かも?」って提唱があったんだな。アホな裏技ではあるけど。
これは正直「ヒドい」作戦だ。まあ最初から参戦していて、なおかつ「どう考えても赤軍は敵」であるポーランドは仕方ない。けど、「かなりマイナスが生じるにもかかわらず、枢軸はルーマニア的に回した方がお得」ってのは、どうなのよ。そこでこの改訂が導入されたわけだ。これにより、枢軸がルーマニアを敵に回す利点がゼロになり、ついでにポーランドを温存する意味が多少薄れたはず。良かった良かった。これに関しては、最初から「マズい」と気がつかなかった原版スタッフが悪い。
増援関係では、赤軍の3戦力歩兵及び独軍エリートの扱いが明確化された。要は「補給源ゾーン以外では、両替で登場させてはイケナイ」ってことだ。赤軍3戦力歩兵ってのは要は打撃軍もしくは親衛赤軍だから、「両替を使った神出鬼没の部隊展開」はマズいよね。これは英文ルールが「いったい何を言ってるのか、サッパリわからん」って表記だった関係で混乱があったようだけど、スッキリした解釈が示された。なお、独軍エリートは「アフリカでは両替で登場させていい」となっている。これはロンメル効果だろうな。
あと、「カレリア占領しないと使えない」とされていた赤軍の混成軍(白い戦車ユニット)だけど、このくびきから解放された。これは誤訳。おかげで赤軍のカレリア占領は重要課題ではなくなった。とはいえ、ここがレニングラード防衛に重大な意味を持つことに代わりはないので、私が開発した「ソ・フィン戦争ベストプラン」が無意味ってことにはならない。
海戦のルールについては、ちょっとした説明が必要かな。これは英文版と日本語改訂版でルールが異なっている。ただし、英文ルールが「なんかヘンだ」ってのも事実。英文ルールを私なりに意訳するとこうなる。「攻撃側はダイス振って戦闘解決する。もしそのサイの目が防御側の総戦力以下だったら、再度攻撃を実行してもいい」。おそらく「小戦力の艦隊は、なかなか発見されない」ってことを再現したいルールなんだろうけど、攻撃側の戦力があまり考慮されてない(大艦隊で捜索しても見つけにくいのかよ)点については疑問符が付く。英文版ルールでのプレイを否定するつもりはないけど、現時点では「日本語改訂版ルールでプレイして良いのでは」としておこう。なお、海戦の検証については現在も色々考察中なので、また何か書くかも知れない。
攻撃&強襲上陸については、「カラ攻撃」が禁止されるという明確化があった。ただし、強襲上陸は例外。これは英文ルールブックに従っているとは言い難いけど、英文ルール自体が意味不明なことヌカしていやがるので、制作スタッフの意向に反しているかどうかはよくわからない。これについての私の考察は、先日長々と書いた。
この明確化について、私は反対しない。「英文ルールブックの解釈論に徹するなら、アリだろう」って意見を変える気はないけど、この態度が正しいとは限らないので。これはその昔、私が「戦国大名」(EP/SS)の再版作業に参加した際、痛いほど思い知らされた教訓だ。EP版のルールブックを徹底検証した結果私が導き出した「重税と不穏」のルールはスゴかったからなあ…
そこでまあ、「このルールブックが言わんとしていること」ではなくて、「デザイナーサイドはこのゲームをどうしたかったのか」を推理する方向でルールブックを読んでいくと…これまたよくわからん。強襲上陸のルールに特例がないのは「カラ攻撃はありだから、特例なんていらないよね」って意図の可能性があるんだけど、戦力ゼロのゾーンに対する戦闘結果処理が欠落しているのは「カラ攻撃なんて無いんだから、説明する必要なし」って意図とも読み取れるし。何かしら混乱があったことは間違いない。そもそも何も考えてなかったんじゃねえかって疑惑まである。ただまあ、「何も考えてなかった」なる失礼な前提に立って考えてゆくと、「カラ攻撃は原則禁止」が正しくなるんでないかな。そもそも、カラ攻撃ってテクニック自体について何も考えていないわけだから。
もう1つ重要な改訂は、「電撃戦フェイズに戦闘して2歩戦闘後前進したユニットも、通常戦闘フェイズに戦闘できるようになった」ことだろう。ただし、戦闘後前進できないけど。これは結構重要な改訂なので、注意が必要だね。英文では元々禁じられていなかった。これとカラ攻撃禁止の組み合わせにより、防御側は「うかつなユニット配置は命取り」って要素が強くなった。ユニットがいて戦闘されてしまうことから生じる不利益がデッカくなったから。戦術色が強くなったと言えるだろう。この点には注意が必要じゃないかな。私が考察中の「バルバロッサ防衛プラン」だの「ノルマンジー対策」だのに影響が出ないか、ちゃんと検証しないとなあ。
とまあ、考察が必要な改訂は以上だ。どちらかといえばプレイする人向けと言うより、ゲームデザインに興味を持つ人向けの説明が多かった気がするけど。ただまあ、「完成度が低いバージョンのルール」を知っている人間が多い以上、こういう説明も無駄ではないと思う。ルールの穴を埋めるのは大変なんだよ。この業界に首を突っ込んでいる奴の大半は「ベテラン」なんだから、このことは理解した上でケチをつけるようにしてもらいたいものですね。私も偉そうなこと言えないけどさあ。
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