11月3日2007/11/04 03:24

 本日も「怪しげな」ネタ。今度は宇宙人について。今現在、「日本で宇宙人が見つかった場合、どこに通報するか」を話し合っている最中なので。
 
 宇宙人なんて見つかるわけない?まあ、普通に考えれば。確かに、いきなりUFOが着陸してきて…ってのはありそうもない。しかし、宇宙人が「外部に向けて発信した電波」を受信しようって試みはその昔からある。「それらしいもの」を発見した場合の手続きは一応国際的に定められているんだけど、最初の窓口である「(日本国内の」関係機関」が具体的にどの役所なのかが決まってなかったので、決めようとしてるわけだ。発表の仕方間違えたら大変だってコトを考えれば、とりあえず決めておいて損はないでしょ。
 
 宇宙人なんているのか?これ自体は何とも言えない。今現在のトコロ、検証可能な形で宇宙人の存在が確認されたことはない。UFO研究家が何を言おうとも。ただし、だからって存在が否定されたわけではない。当たり前だ。「いる」って証明は簡単だけど、「いない」って証明は難しいからねえ。
 
 ただ、結構誤解されているようなんだけど、宇宙人ってのは「本当にいるのか」ではなく、むしろ「何故見つからないのか」の方に説明責任がある。言ってみれば、いると解釈する方がよほど自然だってコトになる。もちろん、これはUFOが飛来して…ってコトを意味するワケじゃないんだけど。
 
 何でそうなるのかって?そりゃもう、人類がココにいるからである。人類がいるってコトは、低い確率ではあるんだろうけど「知的生命体」が存在する確率はゼロじゃない。宇宙全体は広いので、低い確率ながらもゼロじゃなければ、他に知的生命体が誕生した星があっても何の不思議もない。やや多めに見積もると、銀河系だけで数百の「知的生命体」がいるって計算があるくらいだ。
 
 「宇宙人が見つからないのはオカシイ、何故だ」ってことを最初に提唱したのは、物理学者のエンリコ・フェルミだそうな。この人は原子核分裂のような「詳細不明だけど、とりあえず滅多に起こらないこと」を観測する手法として「フェルミ推定」ってものを編み出したことでも知られている。マイクロソフトの入社試験で使われたって伝説がある「シカゴにピアノ調律師は何人いるのか」を求めるやり方ってのは、このフェルミ推定を使うのが「正解」だそうな。
 
 少し脱線して、フェルミ推定について説明してみよう。コツは「とにかく桁を合わせる」ことにある。仮にココでは「東京にピアノ調律師が何人いるか」を考察してみよう。東京の人口は約1千万。世帯数にすると…東京は核家族化がかなり進んでいる(一人暮らしとか多そう)はずなので、3百万世帯ぐらいか。このうち、ピアノを持っている家は…100軒に1つぐらいか?いや、もっと多いな。職場や学校と言った「公共空間」にあるピアノのことを考えたら、100軒に3軒は「ピアノがある」と考えていいのでは。すると、東京には推定で10万台ぐらいピアノがある。これを調律するのに必要な調律師は…ピアノの調律なんて毎日やるものじゃない。平均すると1年に1回ぐらいでしょ。すると、年間10万件の「調律の依頼」があるわけだ。これをこなすのに必要な調律師の数は…ピアノの調律にかかる手間や移動の手間を考えれば、1日に2件平均ぐらい調律するのが精一杯か。勤労日数を250日として、年にのべ500台ぐらい調律可能。10万件の依頼を1人が500件処理できるから…2千人ぐらいかぁ?よってこれが答え…ではない。どーせこの推定には間違いが入っているので、幅を取って「数千人、おそらく1~5千人」ってのが答えになる。本当か?うーん、もう少し少ないかも。
 
 こんな大雑把な推定が役に立つのか?場合によっては。少なくとも「全くわかりません」って状態よりはマシだし、とりあえず桁数だけ合っていれば対応可能なことが多いし。元々が「滅多に起こらないはずのモノを観測するために、どーゆー規模の実験を行えばいいのか」を求めるための推定だから、こんなものでいいのだ。
 
 このフェルミ推定を応用したものが「宇宙人存在確率」である。式自体は単純。銀河の星の数を「地球みたいな惑星が存在する確率」「そこに水がある確率」「そこに生物が存在する確率」…を掛けてゆく。具体的値はわからない(大雑把な確率すらよくわかってないから)けど、まあこんなものかな…って数値は求められるわけだ。
 
 フェルミはさらに、こうも考えたそうな。宇宙人が存在していて、我々同様「同類」を探している。しかし、「光より速い」移動・通信手段を持たない…と仮定した場合、果たして人類を発見できるだろうか?フェルミの出した答えは、「できるんじゃないか。出来ない方がオカシイ」である。理屈はこうだ。光と同じくらいの速さで移動し、資源のある星を見つけたら自分の複製を作る機能を持った観測機を作る。こいつを宇宙にばらまけば、そのうち銀河全体にモーレツな勢いで広まってゆくので、イメージよりかなり短期間の内に全銀河系を観察できるだろう…というのだ。
 
 し・か・し、今現在宇宙人がいるという「直接的証拠」はない。何故だ?これには様々な説明がある。一番有力なのは「いたらとっくに見つかっているはず。なのに見つかってないってことは、宇宙人なんていない」だけど、各種「たまたま」論もかなり有力だ。そもそも、人類が宇宙を「肉眼よりも詳細な方法で」観測し始めたのは、ごく最近の話。「宇宙人がいるのなら、絶対見つかっているはず」と言い切るのは、ちょっと問題かも…ってなレベルだ。
 
 宇宙人存在確率については様々な「推定値」があり、中には「人類が唯一無二の存在」ではないかってものもある。そこまでいかなくても、「いたけど滅亡した」とか、「これから増えるかも知れないけど、現時点では人類だけ」って説もある。ただし、これらが有力な推定ってワケではない。わからないことが多すぎて、何が有力なのかすらよくわからないからね。宇宙人がいるかいないかについては、「証拠が少なすぎて何とも言えない」ってのが現時点での解答になるのでは。
 
 だから、宇宙人を探すことは無駄なことではない。そーゆーことを積み重ねて宇宙全体に関する知識を深めていかない限り、答えが出せない問題だからだ。そうである以上、「もし見つかったらどうするか」を考えるのも、無駄じゃないでしょ。この話を馬鹿馬鹿しいと思うのは、ロマンがない…のではなく、「滅多に起きそうもない事象に対する対応能力」が低いだけではないかと。
 
 とはいえ、本気で心配して大量の予算つぎ込んで…って価値があるわけでもない。その辺のバランスは難しいところだね。推定では「地球に巨大隕石がぶつかる」方がよほどありそうなことだし、宝くじが的中する可能性の方がずーっと高い。ただまあ、単に「見つかった時の連絡先はドコにするか」決めるだけなら、別に良いのでは。現実問題として誤報が寄せられる可能性は高い(報告者に悪意や過失が無くても)のだから、それを含めて「対処能力があるトコロ」が通報を受ける必要があるわけで。夢やロマンだけの問題じゃないからねえ。
 
 宇宙人がいるかどうかはわからない。わからないけど、昨今の観測能力の向上からすると、「いるとしたら見つかるはず」などと断言できる日が来るかも知れない。それでも宇宙人が見つかるかどうかは…うーん、私は実はかなり渋めに見積もっているんだけどなあ。実際どうなんだろうね。個人的見解としては、魔神襲来期に私の馬券が当たるよりは可能性が高いんじゃないかと(苦笑)。