4月14日2007/04/15 01:05

 昨日に続いてちと堅い話題。著作権違反ってものについて述べる。私はこの問題に詳しいってワケじゃないんだけど、それでも語っておきたくなった。よって、内容は薄くなります。悪しからず。
 
 何でこんなコトを書く気になったのか。昨日のネタに対するツッコミが原因である。言いたいことはわかるけど、実は直接関係がない。しかし、この手のカン違いはむしろ当然のことではないかと。ブログやら何やらで間違ったこと述べてる奴は多いからなあ。私も多いに勘違いしてるハズだから、偉そうなことは言えないんだけどね。
 
 まずは昨日のネタのフォローから。ダウンロードできる楽曲がコピーフリーかどうかは、著作権と直接関係ありません。著作権はやかましい法律ではあるけど、問題にしてるのは「コピーされたモノの使い道」であって、「コピーそのもの」は禁止していないのだから。
 
 よーく考えて欲しい。コピーそのものが駄目なら、「小説などをノートに書き写す」とか、「雑誌をコピーして整理しておく」ってコトも法律違反になる。著作権は大原則として、「私的複製」は禁じてない。ここからして勘違いしてる人は多いんじゃないかなあ。
 
 じゃあ、法律違反になるのはどんな時?私的ではない複製、つまり商用利用した時だ。「コピーしたモノを売る」ってのが典型例だね。もちろん、タダで配ればいいってワケではない。何にせよタダで配る以上は別の何かで利益になってるわけであり、その時点で私的複製とはみなされないと考えていい。
 
 とまあ、ココまでは私にも言える。しかし、「もっと詳しく、具体的に教えてくれ」と言われると困ってしまう。複製物の利用方法なんて山ほどあり、どれがセーフでどれがアウトかきちんと断言するなんて無理だ。少なくとも私に答えられる問題じゃないね。
 
 じゃあ、誰なら答えられる?知的財産(著作権や商標権など)の法律の専門家。以上終わり。他は誰に聞いても無駄な可能性が高い。作家だの編集者だのといった「著作権で食ってる人々」は、まあ一般人と比べれば多少はこの問題に詳しいはず。けど、程度問題で言えば「だからどーした」レベルではないかな。なお、知的財産関連以外を専門としてる法律家も似たり寄ったり。
 
 良い例がある。某ブログで多少著作権に詳しそうな人間(おそらくそーゆー職業なんだろ)が、「小学校で配布してるプリントなんて、著作権違反のかたまりだ」などと発言していた。これ、おそらく大間違いである。教育機関が教育目的に配布するのなら、原則として著作権違反にはならない。他の目的で配ったらヤバいものでも、堂々と配れる。それだけに、「ドコまでが教育目的か」ってのが問題になるんだけど。
 
 著作権法違反の難しいところは、実はこの点である。セーフとアウトの境界が曖昧で、一般常識では判断しがたいのだ。明確にしようと思ったら、極論である「コピーOK、どう使っても良し」か、「とにかくコピー不可」しかない。どちらも有害で間違っていることなんだけど。
 
 音楽の場合で考えよう。ごく普通のCDを買いました。これをMDに落として通勤途中に聞いてます。これは著作権違反でも何でもない。認められている「私的複製」の一環である。ところが、ダウンロードした音楽の場合は?Appleの場合を例に挙げよう。iTunesで音楽ダウンロードしました。iPodで通勤途中に聞いてます。これはOK。だけど、このダウンロードした音楽を、iPod以外のMP3プレイヤー(MSのZuneなど)では聞けません。そもそも落とせないようにしてあります。これが「コピーガード」である。
 
 私的複製ってのは、「やって良い」となっている。けど、「禁じちゃイケナイ」とは一言も言ってない。諸般の事情により禁じてるモノもある。けど、「原則としてやって良いことだろ」って言われることも多い。Appleの場合、「何でiPodはOKで他は駄目なんだ」ってツッコミが入った。こりゃあ独占禁止法に引っかかるんじゃねえかと。
 
 そこでAppleのトップであるジョブズが言ったのは、こうだ。iPod以外で再生できるようにするのは簡単だ。けど、コピーガードを「他のプレイヤーでも利用できるように」するのは問題ではないかと。そうなると秘密が緩くなるので外そうとする馬鹿が山のように現れ、そのうち安全じゃなくなる。そうなったら別のコピーガードが造られ…ってイタチゴッコになり、そのうち使い勝手に影響が出る。
 
 そこで提案したのが「コピーガードなんてやめちまえ」である。そもそも、コピーガード付けたのはウチの都合じゃねえと。iTunesでダウンロードした音楽を他のプレイヤーで聴きたい?ああどうぞ、御勝手に。ウチは気にしないぞと。それを受けてレコード会社(EMI)が「じゃあ、コピーフリーの楽曲売ります」となったわけだ。
 
 この件そのものの感想は、「さすが」である。「iTunesから曲買うのなら、iPodじゃなきゃ駄目」って地位を惜しげもなく放棄してるわけで。発言当初は「すぐできる対策じゃなくて、無茶な理想掲げて誤魔化してるだけ」なんて意見もあったけど、思いっきり本気だったんだなあ。この辺、「Appleのハード&ソフトは世界一」と確信してる会社だけのことはある。
 
 複製の違法使用は大問題だ。そりゃあ認める。しかし、だからって複製そのものを禁じるべきかどうかは別問題。この辺を混同してる人は少なくないでしょ。特に日本人はこの辺の意識が甘いというか何というか…ドコまでが自分の権利で、ドコからが違法行為なのか曖昧なまま、「ホントは駄目なんだけど、みんなやってるから」で片付ける国民だからなあ。法律の専門家になれとは言わないけど、「私的複製や教育目的の複製はOK」ぐらい覚えておいて損はないと思う。そこから先?とりあえず私に聞くな。いくら私の仕事の1つに「○○先生(知的財産の専門家)、こーゆーことやって大丈夫ですか?」って確認することがあってもだ。