6月24日2013/06/25 01:26

 フェノーメノについてはさておく。さておかせてくれ…本日は、ハードなウォーゲーマー向けの軽い話題。「ヒト電におけるスターリングラードとコーカサスの意義」について。
 
 今月初めに出たGJ47号。付録ゲームのテーマが青作戦ってことで、いくつかのゲームにおけるスターリングラードとコーカサスの意義について語っている。ちょっと面白かったので、ここで触れてなかった「ヒトラー電撃戦」(CMJ80号)について私から語っておこうかと。
 
 実を言えば、ルールとマップを見る限りでは、スターリングラードとコーカサスの意義は低い。スターリングラードは「更地」だし、コーカサスは一般戦略ポイントが1点あるだけ。そんなに重要な土地じゃないように見える。事実、私もそう思っていた時期がありました。
 
 私がコマンド誌に書いた研究記事では、「流石にそれぐらい自分で考えろ」と、42年の独軍の指針にはあまり触れていない。一応「東部戦線に深入りしすぎて、米軍の突撃喰らってベルリン占領されないように注意せよ」とした程度。正直言うと、流石に細部までは研究が追いついていなかった。
 
 42年に独軍はどうすべきか?とりあえず、攻勢は出来る。西側の守りも気になるけれど、とりあえず無難にアフリカに行ってくれるのなら、時間に余裕はある。油断していると42年中に伊が降伏させられるので、シチリアに守備隊を送っておきたい所ではあるけれど。とりあえず守備に転じるとか、西側へ兵力を移送するとか、果ては大撤退するなんて選択肢もあるんだけど、この辺を語っているとキリが無いので省略。東部戦線での攻勢目標に話を絞って語っておこう。
 
 まず目標になりそうなのが、レニングラード。価値が高いし、赤軍の増援登場ゾーンからやや遠いので、比較的占領も楽だ。狙いとしては悪くない。ただ、難点は「部隊の配置転換がヤヤコシイ」ところ。私が推奨した「41年に南方資源占領を狙う」を採用した場合、独軍主力は南方にいる。コイツを単純に北に持ってゆくと、南の守りが手薄になる。よって中央の歩兵を南方に、北方の歩兵を中央に…ってな移動をやりたくなるが、こんなことをするとベラボーな量の燃料が消費されてしまう。北の歩兵を戦略移動?同じだ同じ。むしろ増援の装甲部隊を北方に持ってゆき、新しく打撃部隊を作った方が早いかもしれない。ヘルシンキに3戦力混成軍を海輸して、北からレニングラード直撃なんて手も面白い。ソフィン戦争でフィンランド軍がボコボコにされていなければの話だけど。余談だけど、私はこの不安が消え去るって理由も含め、フィンランドは滅ぼしておくことにしている。
 
 やっぱ漢はモスクワ狙いでしょ!まあ一理ある。ただ、モスクワはかな~り守りやすい土地で、シャレにならない反撃も予想される。ソ連を降伏させて華麗に勝ちたい!そうじゃなきゃ勝利とは言えない!ってな野望があるんならともかく、単純に勝ち負けだけ考えた場合、強くオススメはしにくい。
 
 じゃあ、史実通り青作戦?確かにコーカサスは進撃しやすい土地だろう。けれど、それだけが目標じゃ、なんかセコい…と思っていた時期があったんだよ私にも。バクーまで占領できれば、中東なんてすぐそこだ、って事実に気づくまで。普通、英軍はまさか中東に敵の大軍が降ってくるなんて予想してない。よって、カラッポで当たり前。バスラとバクダッドを占領したあげく、なんか間違った方向からエジプトを目指すことさえ夢じゃないのだ。実際、私はソコまでやったことがある。
 
 でも、それって気がつかれたら終わり…ってワケでもない。青作戦発動を見て用心した英軍が、中東守備隊を派遣したとしよう。半端な部隊だとアッサリ蹂躙されて終わるので、それなりの部隊を送り込む必要がある。それはいい。問題はその後だ。「中東どころか、バクーまでもたどり着けなかったよ、残念だ」と言って独軍が撤退した後、コイツらはどうなる?部隊を送る時はいい。中東は実は英軍の生産拠点でもあるので、生産でココに部隊を作ればいい。けど、転送は?前線ってドコだよ。そこに輸送するために必要なコストは、正直バカにならない。けど、それを抽出しないと思いっきり遊兵だ。そう、青作戦は「英国の貴重な陸上兵力を中東へ誘引することにより、シャレじゃ済まない燃料の無駄を強要できる」って効果が期待できるのだ。正直、最初の印象より「成立する」作戦だと思う。
 
 とはいえ、何も考えずただコーカサスを南下してゆくのは危険である。脆弱な側面を攻撃され、ロストフ陥落でA軍集団丸ごと補給切れ!となるかもしれない。そこで、この辺に集結した赤軍を叩いて損害を強要し、反撃の余裕を奪えば…と考えて何が悪い?燃料配分が難しそうだけど、赤軍の動きを見てA軍集団とB軍集団のどちらを動かすのか決めるようにすれば、うまくいくかもしれない。B軍集団の目標は別にスターリングラードとは限らないけれど、その周辺で激戦が生じる可能性は高い。
 
 ただ、スターリングラードはモスクワ同様に守りやすい土地である。赤軍の増援登場位置からの距離がそうなっているのだから仕方ない。ただ、モスクワは「占領すべき目標」なのに対し、スターリングラードはあくまで「ソコに集結している赤軍を叩けばよい」土地である。無理に占領する必要は無いので、「突っ込み過ぎて猛反撃喰らいました」とはならないはず。もちろん、アツくなりすぎて「スターリンの名の付いた土地で負けられるか!」とか言い出さなければ、の話ではあるが(笑)。
 
 つまりだ。結論を言えば、ヒト電においては、青作戦は結構成立する作戦なのである。コーカサスは額面以上に重要だし、スターリングラードは激しい叩き合いが生じやすいのだ。少なくとも「有力な選択肢」だと思うな。もちろん、深入りしすぎると馬鹿を見るコトになりかねないので、慎重な運用が必要とされるけど。史実という後知恵を知ってる我々にしてみれば、限界を見極めてより慎重に行動することは難しくない…んじゃないかな。
 
 受ける赤軍にしてみると、青作戦への対処は楽じゃない。増援を送り込むのに戦略移動を必要とするコーカサス方面で相手の攻撃を受け止めることを優先すべきか、それとも増援を送り込みやすいスターリングラード方面での反撃を優先すべきか、判断が悩ましいのだ。バクーを抜かれた時のことを考えると、英軍をどれだけ中東方面に送るのかも考えなくちゃイケナイし。他の作戦は「何をするべきか」が比較的ハッキリしているのに対し、そこがボヤけやすい分、間違いやすい。まあそれは独軍側にも言えるコトなので、うまくいけば史実同様の反撃が華麗に決まるかもしれないけれど。
 
 何がどうしてどーなった結果なのかはよくわからないけれど、ヒト電は研究すればするほど「ヒトラーの作戦」に近づいてゆく…少なくとも私の研究ではそうなっている。まあ違う部分も大いにあり、「とにかく史実に近づく」とまではいかない。けれど、ソレっぽい誘導ルールがほとんどない(気がつきにくいだけで、チャンとあるんだけれど)にもかかわらず、なんかソレっぽい展開になるのはお見事だと思う。似たようなテーマのゲームはいくつもあるけれど、私のお気に入りはやはりコレだなあ。
 
 ただまあ、コレはあくまで私の感想。より戦略眼の高い人間から見たらどうなのかは知らない。つか、「バクーを抜けば中東まで行ける」→「でも、ココだけで押し切ろうとすると、反撃でロストフ獲られたら危ない」→「じゃあ、この方面にも有力な部隊を送って反撃用戦力をすり減らせば…」ってな思考を経て思いついた作戦案が、批判されることの多い…どころか批判だらけの「青作戦ヒトラー案」と同じと気がついた時の気分は…だからぁ、ヒトラーと同じじゃ負けちゃうんだってばさ!