12月9日2009/12/10 02:37

 なんかLunascape6.0が、こまめにバージョンアップしている…つい先日RC2が来たかと思ったら、今度はRC3だって。一気に正式版に行かないのは、何か問題でもあるのか?
 
 本日の話題は、ちょっと前から調べていた「GXロケット」について。事業仕分けとやらで削られそうな国産ロケットだ。これがどんなものかロクに報道されないまま騒いでる輩が結構多いので、私なりに「どんなロケットなのか」「何が狙いなのか」を書いてみようかと。
 
 GXロケットってのは、実は我々が考えるような「ロケット」とは少し異なる。いやまあ、ロケットはロケットなんだけど、2段目部分でしかない。1段目は別のロケットを買ってきて取り付ける。同じ国産ロケットのH-2Aが「ロケット全体でH-2A」だってのと比べると、ちと意味合いが違う。これは重要だ。
 
 主な特徴は、何と言っても燃料。LNG(液化天然ガスだな)を使用するのだ。世界初の試みらしい。この時点で、狙いの1つに「燃料費が安上がり」ってのがあるんだなとわかる。もしLNGが「打ち上げ燃料として効率の良い燃料」だってんなら、米ソが試作ぐらいしたはずだ。なにせ原子力エンジンやフッ素エンジンまで検討してた連中だからして。
 
 しかし…GXロケットは開発がうまくいかなかった。そのおかげで開発費がかさみ、経済性をウリにするはずなのに、カネがかかる」ってな有様に。そのため色々迷走したあげく、実は官僚(経産省と文科省)から「本当に必要かぁ?」ってなツッコミが入っていたのだ。にもかかわらず予算が付いたのは…自民党政権時代の「政治的判断」という奴らしい。つまり、GXロケットは「元々政治的判断とやらでかろうじて生き残っていた計画を、政権交代に伴う政治的判断で潰しただけ」って話は出来る。
 
 そもそも、何故LNG?ってのは、ちょっとわかりにくい。確かに、LNGなりケロシンなり…を使った液体燃料ロケットって、様々な理由から「これからの主力エンジン」になるんじゃないかとされている。それはいいんだけど、なんでまたケロシンではなくLNGを選んだのかは…「技術大国日本」なる思い込みから無茶した可能性も否定は出来ない。ただまあ、「米・ロと同じコトやってたんじゃ、永遠に追いつけない」ってのも大事だとは思うけど。
 
 ついでに言えば、政治的判断とやらが介入するようになった理由は、開発先の民間企業にあるらしい。GXロケットは石川島播磨重工(IHI)の産物で、H-2Aは三菱重工の製品。「あまり三菱重工にデカい顔されても…」とかいう思惑があったんでないかと言われている。これを「競争させるのは良いことだ」と考えるのか、「談合みたいなモノじゃねえか!」と考えるのかは、まあその人次第としておこう。
 
 とまあ否定的なこと中心に述べてきたワケだけど、官僚からも疑問符が付けられたシロモノだけに、ある程度は仕方ない。ここまではキチンと調べればすぐわかる。問題はここからだ。さらに突っ込んで調べてみると、色々面白い。
 
 GXロケットは2段目用のロケットだ。じゃあ1段目は?面白いことに、最初の計画ではロシアから買ってくる予定だったようだ。その昔ソ連が月着陸ロケット用に開発したエンジンが、ソ連崩壊に伴って安く大量に売り出される…って話があったので、コレを買ってくるつもりだったらしい。でも、これは米国の企業に先を越されて実現しなかった。そこで選ばれたのは、やはり米国製…なんだけど、ソ連/ロシアのエンジンを「なりふり構わず」買ってきてライセンス生産した(正確には「する予定」だけど)、RD-180ってモノ。
 
 結局ロシアの技術じゃん…ってのは、ある意味当たり前である。なにせ米国はスペースシャトルにイレ込みすぎたのか、「ケロシン使ったロケットエンジン」の開発に失敗し続けてきたのだ。その結果、米国の技術者に「アメリカのエンジン技術がロシアより上回っているどころか、同等ですらないことを認めるのは苦しかった」とまで言わしめたほど。欧州や米国でさえ「どーゆー形でロシアの技術を学ぶのか」に躍起になっている以上、日本もまた「この技術を学ぶ機会」を模索するのは決して悪いコトではないはずだ。
 
 逆に言えば、GXロケットってのは、ロシアの技術を学びもしないうちから、炭化水素(ケロシンもLNGもコレの1つだ)エンジンを作ろうとしたわけだ…「LNG使っているから、燃料費安いよ!」ってなアピールでもしない限り、イマイチなシロモノに終わっても不思議じゃないな。言っておくけど、アポロ宇宙船を打ち上げたサターンロケットの1段目も、ケロシン使っているんだよ?そういう実績のある米国が「勝てない」とヌカして輸入・ライセンス生産をしているんだよ?
 
 つまりだ。GXロケットは、これ自体がクソであったとしても、とりあえず「ロシアの技術を学ぶ良い機会」だってことは否定できない。液体水素燃料などという、「今現在高級品専用で、この先1段目としては先細りが予想される」エンジン使っているH-2Aに全てを託すのは不安だし、かといって、炭化水素使ったロケットエンジンで、日本がロシアに追いつくなんて夢物語(米国でさえ諦めたことなのに)としか思えない以上、どんな形でも良いから「ロシアの技術を導入する機会」は必要じゃないかなあ。
 
 別にGXロケットなんて使わなくても、ロシアの技術を学ぶことは可能だろう。理論上は。けど、ロシアのロケットエンジン技術について壮絶な誤解がまかり通っている上、一応は国内の技術者の顔も立ててやらなきゃイケナイ…ってな「日本社会」において、他にどーすりゃそういう機会が得られるんでしょうか?
 
 しかしだねえ。事業仕分け人とやらに面と向かって、「ロシアの技術を、日本国内の技術者のメンツが立つように導入するには、コレしかないんです。」なんて言えるワケがない。政治的判断とやらで予算を認めた自民党のお偉いさんだって、そこまで理解してなかったのは間違いなさそうだし。米国が「仮想敵国ロシアから、軍事衛星打ち上げ用に使うロケットエンジン買い、頭を下げてライセンス生産させてもらう」などという屈辱的…どころか「国防上それはどーなの?」ってコトやらかしてまで導入しようとしている技術を会得するためだもの、GXロケットがクソみたいな産物であっても、それぐらい安いモノじゃないかって気がして仕方ない。
 
 私はGXロケットそれ自体は「イマイチ」な産物であり、これが廃止されても「日本のロケット技術の大幅後退」だとは思わない。別の計画に切り替えた方が良いのではって気がする。しかし、おかげで「ロシアの技術に触れる機会」が遠のくことになりかねないのは事実。むしろソッチの方が「日本のロケット技術にとって深刻な問題」かも(苦笑)。見直すにしろ廃止するにせよ、いずれにしても「どーやったらロシアの技術を導入できるのか」は考えた方が良いと思うぞ。マジに。

コメント

_ manicure ― 2017/05/04 05:22

Excellent way of explaining, and nice post
to take data on the topic of my presentation topic, which i am going to convey in college.

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://fohpl.asablo.jp/blog/2009/12/10/4748978/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。