11月4日2009/11/04 23:57

 昨日は「ウォーゲームではないボードゲーム」をプレイした。「アグリコラ」と「ドミニオン」って奴だ。どちらも面白かった。けど、一番印象に残ったのは、ボックスに描かれた「ホビージャパン」のロゴ。80年代にウォーゲームを覚えた身としては、なんか懐かしかった…しみじみ。
 
 なんか、ここ最近のネタが「他人様のブログ等」で引用されている。有り難いやら恥ずかしいやら。中でも、gameape殿の「ウォーゲームだもの」(リンクあり)に引用されたのは、我ながら驚いた。あちらはコッチと異なり、「格調高いウォーゲーム専用ブログ」だからなあ。コレを記念して?元ネタである「カニ後退」について、もう少し深く掘り下げてみようと思う。例によって「わからん人は置き去り」なので注意して下さい。
 
 元記事で私が「ルールなどに明確な規定がない場合、カニ後退は禁止すべきだ」と提唱した「直接の」理由は、「何度確認しても駄目と言われるから」である。これと「カニ後退は明文で禁止すべきか、明文で許可すべきか」はイコールではない。密接に関係しているけど。
 
 実を言えば、私もちょっと前までは「明文で禁止されていなければ、出来ると解釈するべき」だと思っていた。ただし、私は「そもそも論で言えば明確に書くべきである」と思っていたので、そーゆールールブックを発見した場合は「できるのか」と質問しまくってきた。私の主要なる興味は「オカシなルールブックを無くそう」であり、「オカシなルールを無くそう」ではない。私のカニ後退禁止論は、一応前者にウエイトがかかっている。
 
 もっとも、ややこしいことに「そもそも論」で言えば、私はカニ後退禁止論者である。だからこそ「この書き方だとカニ後退できるって解釈になるけど、それはオカシくないか?」ってニュアンスを込めて、明確化を求めて騒いでいたのだ。
 
 コレに対し、gameape殿は「カニ後退ありでもよさそうなゲーム」があると論じておられる。詳細はあちらの記事に譲るけど、私も「なるほど」と唸らされた。そこでまあ、私ももう少し「そもそも論」、つまり「カニ後退はアリとすべきか、ナシとすべきか?」をもう少し掘り下げてみたい。
 
 実のところ、ウォーゲームの「後退」は、ヤヤコしい現象である。まずもって、これに関するルールが「実際の戦場における、どのような現象を表現しているのか」でさえ曖昧だし。ここでは、とりあえず「理由の如何は問わず、敵の攻撃に対応する形で、ある部隊が最前線からそうでない地点へと、その存在座標を変更する行為」だとしよう。普通に「移動する」と言わなかったのは、ウォーゲームでは「より意味の狭い移動」って概念があり、混同するとタイヘンだからである。「退却と移動は違う」って説明は、ゲーマーなら何を言っているのかわかるはず。
 
 退却がヤヤコシイ理由は、この退却って行為が「何かに対応する行為」であり、いわば「自主性の低い行動」だから。そのため、通常は「かなり縛りの多いルールの下、退却先のヘクスを決定する」必要が出てくる。この縛りが「オカシイ」と、「いったい何を表現しているのやら」って話になってくるからね。「敵ZOCへの退却不可」とか、カニ後退を禁止する規定は、この「縛り」の1つに該当する。
 
 このうち、「かなりキツい縛り」に該当するのが、「退却先を対戦相手が決定する」である。この場合でも「故意にZOCへ退却させる」なんてコトをできなくして、一応は退却側の主体性みたいなものが、カケラ程度考慮されている(そうでなきゃゲームにならん)ワケではあるけれど。このようなキツい縛りが前提となっているゲームにおいて、カニ後退を許可しても良いのでは…という意見には一理ある。デザイナーが表現したいモノが「後退という行為の無秩序性」であるのだとしたら、「後退距離が多くて助かった」などという現象は、本末転倒の結果として生じたモノと見なすことが出来るだろう。
 
 ただ、私はあえて「それでも、カニ後退は禁止すべきでは?」と提唱したい。なぜなら、ここで述べられている「攻撃側にとって都合の良い場所への退却」を表現する手法として、別にカニ後退を許可しなくても良いと思われるからだ。どーするのかって?「nヘクス退却させろ」って戦闘結果を、「1以上n以下ヘクス退却させろ」と読み替えさせればいい。こうすれば、カニ退却に頼らなくても「後退距離が大きすぎて不都合だ」って話を消すことが出来る。
 
 「カニ退却を許可する」も、「必要な後退ヘクス数を減らす」も、最終的な「退却したユニットが配置されるヘクス」は変わらない。違いがあるのは「後退経路」だ。これは、実は「大抵のゲームで重要になる局面があるし、ゲームによっては局面によらず重要」だからなあ。コトの善し悪しはともかく。以下どんな違いがあるのかを説明していこう。
 
 「大抵のゲームで重要になる局面」とは、ゆるやかに包囲されている部隊が後退する場合だ。このような場合、敵味方のユニット配置によっては、「2ヘクス先までは問題なく退却できるけど、3ヘクス先には退却できない」ケースがあり得る。このような状態で「3ヘクス退却」って結果が出た場合を考えてみよう。「カニ後退アリ」の場合、攻撃側は「カニ後退させて、その部隊の退却を成功させる」義務が生じる。いくら対戦相手が退却させる場合でも、「選択可能な後退経路」が存在する以上、それに反する退却先を選べたりはしないのが「基本原則」でしょ。よってこの場合、対戦相手は「カニ退却を強いられる」ことになる。これに対し、「カニ退却不可。退却ヘクス数減少アリ」とすれば、この局面で退却ヘクス数を減少させて相手ユニットを救う意義は薄いので、このユニットはおそらく壊滅する。
 
 ゲームによって重要な場合とは、戦闘後前進を後退経路に沿って行う必要があるゲームのことを指す。ドッチにとって都合が良いか悪いかはともかく、戦闘後前進の結果が異なるのは理解できるだろう。これについては、「カニ退却に従った戦闘後前進でも、オカシイとは感じない」と思う人もいるとは思う。「10ヘクス、行きつ戻りつヘンなカニ退却させた場合」なんて極端な例を除き。ただ、この場合でも「だったら戦闘後前進のルールを後退路以外にもできるよう変更すれば良いだけでは?」という疑問が生じると思うけどね。
 
 これはあくまで私個人の意見なんだけど、退却に関するもろもろの「ルール上の問題点」を解決しようと考えた場合、「カニ退却アリ」を前提にして、それを認めたコトによる「ヘンな現象」に縛りをかけてゆくより、最初から「カニ退却はナシ」を前提とし、それを前提に「それでも生じるヘンな現象」に縛りをかけてゆく方が、手っ取り早いと思う。カニ後退を認めたことにより生じる「シミュレーションゲームとしてどうなのよ」って現象は、結構始末に負えないと思うんだな。
 
 もちろん、私がココで提唱した「後退ヘクス数を減らしても良い」も、カニ退却並みに「始末に負えない」問題を引き起こす可能性はある。その辺の検証を完璧に行ったなどと主張するつもりはない。ただ、最終的な結果が、カニ退却を認めた場合と似たような結果に終わるルールがあるというのなら、「カニ退却を禁止して、別のルールを採用する」のも1つの考え方だと思う。どちらを採用するのかは、「カニ退却を認めた場合にのみ生じる現象」「退却ヘクス数現象を認めた場合にのみ生じる現象」を徹底比較して出すべきじゃないかな。
 
 私がこれほど「カニ退却」を嫌うのは、やはり「武田騎馬軍団」の影響が…このゲームの退却ルールを理解しようとして、別のゲームのマップとユニット(地形やユニットの数値は無視)を使って「検証」した結果がどーしても納得できなかったんだよね。前にも書いたけど、あのゲームは「ルールブックに従うと、元いたヘクスに退却しなければならない場面があり得る」からなあ。その意味では、私は「無意味なほどカニ退却に詳しい」のかもしれない。いや、詳しいと言うよりは、単に「カニ退却アレルギー」を起こしているだけなのかも知れないけれど。
 
 私はエビカニのたぐいが大好物なので、カニアレルギーの人間に、面と向かって真顔で「それは、アソコが勃たないのと同じくらい不幸」と言って怒らせたことがある。私がカニ退却アレルギーになったのは、そんな昔の悪行が祟った結果かも知れない(苦笑)。そんな冗談はともかく、「カニ退却アリとは、どんなことを認めることなのか」を本格的に検証してみるのは、カニ退却アレルギーを引き起こす可能性があるので、使用上の注意をよく読み、それに従って下さい。