12月22日2008/12/23 00:34

 昨日はMiddle-Earth東京支部例会。ここで田村殿を相手に「モスクワ'41」をプレイしてきたので、その報告を。今回はあえて作戦研究風にお届けします。
 
 私の元にコマンド84号が届いたのが、20日昼。本誌リプレイとルールをざっと読み、マップとユニットを軽く眺めただけで忘年会に出かけ、二日酔い…というより胃の不調に悩まされつつ例会に参加した状態。当然、このゲームに関しては右も左もわからない状態だ。
 
 とりあえず独軍担当となったので、作戦を考える。普通なら、「まずは感覚を試すために」と無難な作戦を選ぶ。でも、今の私にはその「無難な作戦」がよくわからない。そこで、とりあえず「自分はどーしたいのか」優先で物事を考えることにした。
 
 最初のプレイなんだから、目標は勝利得点での勝利より、モスクワ占領だろう。けど、モスクワに真っ直ぐ突っ込むのは、どう考えても良くない。これは地形を見ただけでわかる。モスクワ正面(西側)には鬱蒼と森が茂っているのだ。ここに装甲部隊を突っ込ませるのは、どう考えても良くない。
 
 このゲームの森は、戦闘比1シフトという「森って地形にしては、戦闘に与える効果が弱い」もの。でも、そんなの関係ない。装甲部隊の移動コストが大きいのだ。ここに装甲部隊を突入させたら、必然的に正面からの殴り合いになる。それでは「赤軍の手」にハマっている。それで仮に勝ったとしても、「面白く」ない。もっと独軍らしく戦わないと。
 
 森が薄いのは、モスクワの南方だ。よって、ここに主攻勢を持ってゆけばいい。何度かプレイした「Operation Typhoon」でも、快進撃できるのは南方って例が多かった(ただし、赤軍の反攻でボロボロにされることもある)ことだし。でも、そんなコトは赤軍だってわかるはず。最初からココに突っ込んでも、いいコトはなさそうな気がした。なんか、もっといい作戦はないのか?
 
 少し思考が煮詰まりかけたので、考え方を変えてみた。この際だから、グデリアンの真似をしてみようと。といっても、史実通りに軍を動かすワケじゃない。もしグデリアンがこの戦いの総指揮を執ったなら、どんな作戦にするだろう?って考えてみたのだ。ま、あくまで「私なりに」だけど。
 
 グデリアンの特徴と言えば、ド派手な突破と無理目の目標に果敢に突っ込む勇気だろう。それを真似するとすれば…と考えた結果、すごーく強引かつ強欲な計画を立ててみた。名付けて、「冬コミ1日目作戦」。コミケと有馬記念を掛け持ちする私のごとく、ヴォロネジとモスクワを「掛け持ち」するって作戦だ。なお、名前がヘンなのは、このブログを書いている今の時点、つまり「まだ冬コミの予定が立てられねえ!」ってな理由でカリカリしている時に命名したからである。
 
 具体的作戦はこうなる。まず、独軍装甲部隊を南部に厚く配置する。そして最前線の部隊を蹴散らした後は、そのまま真っ直ぐヴォロネジに向かって部隊を突っ込ませる。この方面は平地だらけだし、都市・町(赤軍の増援が出てくる)も点在していて連携が取りにくいので、中間で邪魔される可能性は低い。典型的な「電撃戦向きの土地」であり、ヴォロネジ前面にとりつくまでは、大きな障害はないはずだ。
 
 問題は、ヴォロネジである。ここは赤軍増援が登場するマップエッジに近いし、勝利得点価値も高い。よって、赤軍が必死に守ってくる可能性は高い。それはそれでかまわない…どころか、それが狙いだ。ここに多数の守備隊が割かれたら、それを無視して置き去りにし、北上してモスクワを南から攻撃するのが狙いなのだから。
 
 ヴォロネジ正面の守備が弱ければ、もちろん占領しちゃう。これは「ゲーム終了まで保持して勝利得点を得るため」ではない。赤軍の奪回部隊を惹き付けるためである。一般的に考えたら、都市死守より都市奪回の方が、より多くの部隊を必要とするはずなので。ここまでやっても、まだ赤軍がモスクワの守りを最優先させたら?その場合は仕方ない、はなはだ不本意ながら、勝利得点での勝利を狙う。引き返した装甲部隊と追いついてきた歩兵を利用して、ヴォロネジを守り抜くか再奪取してしまえば、後はなんとかなるでしょ。
 
 どう考えてもモーレツにムシのいい作戦だけど、「装甲部隊の機動力を活かして無理目の目標にあえて突っ込み、相手戦力の分断を強要する」ってのは、いかにもグデリアン好みの作戦ではないかと。最大の問題は、私ごときがグデリアン閣下の真似をしたところで、文字通り「鵜の真似するカラス」に終わる可能性が高いことだけど、「それもまた一興」で片付けることにした。こーゆー「奇抜で博打的な、ヤクザな作戦に挑戦して散る」のが、私の芸風だからして。
 
 赤軍の配置は、中央付近に戦車部隊を多めに配置したモノ。馬鹿正直に南方ばかり強くすると他が苦しすぎるので、中央付近にもこちらの装甲部隊をある程度配置した。機動力を活かした戦いをしたいので、足の速い敵の戦車部隊は邪魔である。優先して抹殺するためだ。
 
 プレイを開始してすぐ感じたことは、「赤軍の歩兵が強い」である。あんな連中、大したことない…と思っていたんだけど、結構苦戦する。ただまあ、序盤の攻撃でつまづくホドではない。「思ったよりは後退で逃げられた」程度だ。もっとも、将来のモスクワ攻防戦を考えると、背筋が寒くなった。とはいえ、このゲームの赤軍歩兵は移動力がない。そのため、一度戦場に投入されたら、そこを死守するしかない。まさに「機動力で振り回して下さい」って存在。こちらの作戦はソレが狙いなんだから、何とかなるさと自分に言い聞かせる。
 
 最前線を突破した後は、南部の装甲部隊を戦略移動で突っ走らせる。抵抗するモノなど無い。もっとも、撃破する相手もいないけど。ヴォロネジさえ、ロクに抵抗を受けず占領できた。奪回戦闘に全てを託すつもりだろう。こちらもこれは織り込み済み。守備隊を少し残して、残りは北上を開始する。南方の装甲部隊は、トップギアに入れっぱなし。これは爽快だ。
 
 反面、モスクワ正面~北方にかけては苦戦気味。主力装甲部隊は南にいるんだから、当たり前だ。でも、赤軍反撃ターンが遅かった(独軍有利になる)関係上、2番目に大事な攻撃と位置づけていた、カルーガ南方への突破が成功する。ただ、北方は…最初から狙ってなかった東方突破はともかく、カリーニンの占領すら怪しい。これで本当に勝てるのか?
 
 最後は、やや拍子抜けの勝利となった。「こんなトコロから増援出てきたら、迷惑だ」って理由でセレプコフを占領したんだけど、その部隊がモスクワ突入できるにもかかわらず、モスクワはガラ空きだった…その直前にヴォロネジ奪回(戦闘比1:2)を含む猛反撃で戦果上げていたのに。私もチャンと移動力計算していなかったので、「天候次第じゃ届くかも」ぐらいに思っていたんだけどね。ただ、モスクワ南方には他にもこちらの装甲部隊が密集していたので、あの状態からでは、多少部隊を送った程度では止められなかったと思う。
 
 赤軍の敗因は、少し部隊を前に出しすぎたコトにあると思う。そのおかげでこちらも痛い目に遭ったけど、こちらにしてみれば「ココで痛い目に遭うってコトは、肝心の場所に部隊がいない証拠」だと思っていたので、余裕はあった。それと、モスクワ南方という「最重要拠点」の守備が薄かったのも、痛かった。独軍側にしてみれば、モスクワに行くなら南から…ってのが、1つのセオリーだと思う。本来ならば、何があってもある程度守るべきじゃないかな。田村殿も初プレイだったから、感覚が掴めてなかったんだろう。私は何度か「Operation Typhoon」で痛い目に遭っていた分、モスクワの急所を理解していたってコトじゃないかと。
 
 この「冬コミ1日目作戦」、先ほど語ったように、無茶のある作戦である。お互い初プレイだったからこそ通用した作戦で、よりこのゲームに手慣れているプレイヤー、たとえば誌上リプレイに参加した大久保殿や西新宿鮫殿に通用するかどうかは、かなり怪しい。いちいちヴォロネジに寄り道してからモスクワを目指すので、どうしてもモスクワ攻撃開始が遅くなるからねえ。また、マップエッジ付近を北上するので、側面から反撃を受ける危険が高い。実際今回も反撃されて少し肝を冷やした。あれがモスクワ南方の防衛線に突き当たった後の話だったら、作戦計画が根本から瓦解しかねなかった。
 
 それでもね、この作戦、面白いと思う。無茶ではあるけど、夢はあるんじゃないかな。無理目の目標2つに対してどちらも手を出すことによって、「相手の兵力を強引に分断し、機動力を使って片方の敵を置き去りにする」ってのは、まさに「電撃戦」のイメージだ。マップエッジって側面が気になる?「側面なんてモノは、敵に気にさせとけばいい」でしょ(笑)。周囲どころか、自分の頭の中からさえ「そりゃ無茶だ」って声がするのも、考えようによっては「貴官の作戦は、常に一本の絹糸にかかっている」と言われているようなモノ。ウォーゲーマーたるもの、その醍醐味はわかるでしょ。
 
 そーゆーわけで、今回は私にしては珍しく「会心の勝利」だった。強者揃いのMiddle-Earth東京支部内でさえ「それは難しいのでは?」って意見が中心の作戦案を成功させたんだから。まだ色々改善の余地があるので、とりあえず他のプレイヤー相手にも試してみたいな。もっとも、「誰もいないところを突っ走ったあげく、何も得られずに終わる」だけって気もするんだけどね。
 
 最後に追伸。この作戦名、あまりにもと言えばあまりにも…なので、もしこの作戦をより洗練されたモノに仕上げた方は、もっとセンスのいい名前を付けて下さいな。私にとっては、切実な話なんだけどね。冬コミ1日目の「コミケ~有馬記念」って作戦は、今回の作戦並みにムシがいいし、その分大変なんですよ(苦笑)。