12月16日2008/12/17 00:06

 このところ、寝ても覚めても「ヒトラー電撃戦」のことばかり考えていた関係上、ゲーム系の記事が手薄になってしまった。これは今もまだ続いていて、胃が痛い思いをしているのだけど。しかし、遅ればせながら入手した、今月発売のGame Journal誌(以下GJ)に面白い話題が出ていたので、私なりに意見を述べておこうかなと。
 
 興味を惹いたのは、「正しいディベロップとは如何なものかと。」という対談記事である。ネタとして興味があるモノだし、この対談で浮き彫りにされた「この件に関する問題点」も面白い。よって、ネタにしてみました。なお、言うまでもなくこれから述べるのは私の「私見」です。ご注意を。
 
 ディベロッパーとは何か?実は、これは難しい問題である。そもそも、この対談記事を読む限りでは、「ディベロッパーの仕事って何?」って定義に、微妙な食い違いが見受けられる。本来、こういう定義が食い違ったままの議論は意味が薄いんだけど、この対談で集まったメンバーに「そういう食い違いがある」ことを発見しただけでも、この対談記事の意味はあったと思うな。
 
 ディベロッパーとは、直訳すれば「発展させる人」となるかな。要はゲームデザイナーが持ち込んできたゲームを、改良・発展させて発売できる状態に持ってゆく人だ。この点まではさすがに大きなブレがない。しかし、もう少し具体的に「どんな仕事がメインになるのか」「どんな権限を持っているのか」といった部分に踏み込んで考えると、とたんに話が難しくなる。
 
 デザイナーが「こんなゲーム作ってみました」って段階にまでゲームを仕上げ、ある程度のテストプレイが可能になった段階まで来たとしよう。ディベロッパーの仕事は、おおむねこの辺から始まると思われる。もしゲームデザイナーがこの時点で「完璧な」仕事をしていれば、ディベロッパーの仕事は何もない…かもしれない。けど、普通はどう考えてもそうならない。
 
 デザイナーにしてみれば、自分なりに完成度は高めたつもりだろう。それは大いに認める。しかし、デザイナーには「これでうまくいくはずだ」って固定観念がある。それゆえ、どーしても穴を見つけにくい。極端な状況だと矛盾が生じたり、想定しない結果が生じたりするものだ。それを指摘するのがディベロッパーの仕事…とは限らない。これらは、テストプレイヤーやルールライターが指摘する問題と言えるからだ。
 
 仮に矛盾や極端すぎる事態が生じなかったとしても、「なんかイマイチ…」って評価になってしまう場合もある。結論がミエミエで作戦立案の余地が少ないとか、題材となった戦いの雰囲気が感じられないとか。逆にデザイナーが「作戦立案の大切さを強調しよう」「戦いの雰囲気を出そう」として加えたルールが、余計な手間を増やすだけに終わっている場合もあるだろう。そうした点を修正するのが…これまた、テストプレイヤーが指摘して、デザイナーが直接直して何が悪い?
 
 ゲームをデザインする段階では、物理的制約(マップの広さやユニットの数など)は、あまり大きな問題にはならない。プレイしている段階でも、これは問題になるとは限らない。まあ、極端なモノを出してくれば話は別だけど。ただ、実際ゲームを出版して売る側にしてみれば、この手の制約は死活問題だ。そのため、ゲームの善し悪しとはまた別に、いかにしてコンポーネントの制約に収めるのか、キチンと考える必要がある。これは…本質的にはコンポーネントデザイナーの問題じゃないのか?コンポーネントデザイナーって立場だと、エリアの数や(マーカー類を除く)ユニットの数にまで、注文はできないかもしれないけど…
 
 こうして見てゆくと、「ディベロッパーの仕事」なるモノは、案外不明確である。まあ、私が指摘しきれなかった要素もあるんだろうけど。でも、実際問題としてディベロッパーの仕事とは?テストプレイヤーやルールライター(ルールチェッカー)とドコが違うの?
 
 あくまで私が思うにだけど、現在ディベロッパーって呼ばれているモノは、「デザイナーが作ったモノを、プレイヤーに届ける間に行う作業全てを担当する集団」全体を指している気がする。つまり、テストプレイヤー・ルールチェッカー・コンポーネントデザイナー・果ては印刷関連業務担当者(印刷所とか校正担当とか)などをゴチャマゼにした総体こそが「ディベロッパー」なる用語の正体であって、より細かく「どんな権限を持っているのか、持たせるべきなのか」「デザイナーの意図とプレイヤーの要求をどう両立させるのか、対立する場合ドッチを優先するのか」ってな部分を語ろうとすると、定義が曖昧な分、話の食い違いが出てくるんじゃないかなあ。
 
 私はドチラかといえば、現在ディベロッパーの作業だと思われている、「ルールチェック」という分野に関心が深い。デザイナーだかディベロッパーだか知らないけど、とにかく誰かが「こういうルールのゲームにしよう」と決めたモノと、ルールブックを読んだゲーマーが「こういうルールなんだ」と理解するモノの間に差異があるのは、正直よろしくない。そのために必要な技術・技法というのは、本質的なゲームデザイン論とは全く別の話だろう。にもかかわらず、この部分のおかげで評判を落としたゲームは山ほどある。だから、ルールチェックをデザイン・ディベロップから切り離して論じようではないか…ってのが、私の主張だ。もっとも、現状ゲームメーカー各社は、専用のルールチェッカーを抱えるなんて贅沢が許されていない。そのため、フツーはディベロッパーと呼ばれている人間か、あるいはルールライター(ルールの清書担当)などがこれを兼ねる。
 
 GJの対談を読むと、この「ルールチェッカー」の存在がディベロッパーに含まれているのかどうかは、発言者ごとに微妙に異なるような。ルールチェッカーって、当然のことながら「ルールを付け足したり、削ったり」するよう要求してくる。「混乱時に強行軍できるんですか?」「最初から移動不能のユニットは塹壕掘れないけど、それでいいんですね?」「戦闘比修正とダイス目修正、結局効果は同じだから統一していいですか?」といったコトをチェックするのが仕事だし。デザイナーだかディベロッパーだかが作ったルール原案に目を通すだけじゃなく、テストプレイ段階で「あれ?」って点が出たかどうか、報告を受ける必要もあるだろう。その意味ではディベロップ作業の一貫ではあるんだろうけど、ゲームの内容面には何ら責任を負っていない。それを考えるのはルールチェッカーの仕事じゃないからだ。
 
 この「ルールチェッカー」は、理想論を言えば「いなくてもやっていける」はずだけど、現実問題としては必要だろう。日本語は「わかっていることを前提とした省略」が多めで、デザイナーは「わかっている」はずだから、どうしても「ルール読んだだけじゃわかりません」って事態が多くなる。そこを是正するためには、デザイナーとは異なる立場でルールを見る人間が欲しいからね。ただ、このルールチェッカーの仕事は、言ってみれば「ゲームルール専門の校正担当者」だ。よって、印刷関連(印刷社とか)の業務と同様、「より狭い意味でのディベロッパー」には含まれないと考えることもできる。
 
 もっと混乱が大きいのは、テストプレイヤーとディベロッパーの違いだ。一口にテストプレイヤーと言っても、様々な立場が考えられる。まだゲームがキチンとした形になっていない段階から「頭で考えたシステムが機能するか」テストに付き合うとか、ほとんど完成した段階で、細部(マーカーの数量が適切かどうかなど)をチェックするために参加するとか。当然、テストしてもらえば色々雑多な意見が出る。それらを取りまとめ、「こういう意見が多いので、こうしてはどうか」という提案をする人というのは、テストプレイヤーなのかディベロッパーなのか?この位置づけが曖昧だ。
 
 そりゃあね、日本ゲーム界の現状を考えれば、この「テストプレイヤー総括」でさえ、デザイナーが担当するコトが多いかもしれない。この立場を独立させることに成功すれば、最低でもデザイナーの負荷がかなり低減するはずだ。さらに、テストプレイヤーの仕事の1つに「今テストしているゲームに駄目出しをする」って作業がある(肯定しかしないんだったら、テストしている意味が薄い)関係上、その総括にはより冷徹な目でゲームを眺められる人間の方がふさわしいでしょ。それを認めるとして、この「テストプレイヤー総括」とディベロッパーって、ドコがどう違うんでしょーか?
 
 この2つに違いを見つけるとしたら、こうなるだろう。テストプレイヤーってのは、原則として「問題点を発見したら、それを報告する」のが仕事である。解決案を提示することもこれに含めていいかもしれない。しかし、逆に言えば「問題点が明確に見えない限り、あまり役に立たない」存在だとも言える。「どうもパッとしない」「なんか、別の時代の戦いみたい」といった曖昧な意見が寄せられるかもしれないが、「何故どうしてそうなってしまったのか、ドコを直せばいいのか」を報告するのは、ごく簡単なテストだけじゃ難しい。たまたまそうなっただけかもしれないし、本質的な問題なのかもつかみにくい。
 
 テストプレイヤー総括というのは、「自身だけでなく他のプレイヤーにテストを依頼し、その意見を吸い上げてまとめ、改善提案を添える」ことが仕事となる。よって、「明確な問題点があるならばそれを指摘し、その改善提案を述べる」までは義務だとしても、より曖昧な意見については、報告以上の義務があるのかどうか疑問である。ソコを何とかしようと思ったら、より上の立場、つまりディベロッパーやデザイナーに判断を仰ぐか、あるいはテストプレイヤー総括にディベロッパーとしての権限を与えるしかない、と思う。
 
 つまりだ。ものすごーく狭い意味においてディベロッパーとは、「デザイナーではないけれど、そのゲームの根幹部分に対し、ある程度変更する権限を持っている人」となる。ただ問題は、そういう人物がデザイナーやテストプレイヤー総括から独立して存在する意味はあるのか、無いのか、ルールの根幹部分に変更を加える場合、その判断根拠を何に求めるか…を論じていこうと思ったら、話がややこしくなる。そもそも、共同デザイナーでもテストプレイヤー総括でもない純ディベロッパーとは、より具体的には何する人なの?って部分からしてよくわかってない(そもそも、日本ゲーム界に存在したことあるのか?)気がする。
 
 GJの対談記事を読んで一番「勉強になった」のは、この点かな。確かに、今現在の日本ゲーム界において、ゲームデザイナーとプレイヤーの間に入る存在(広い意味でのディベロッパー)が弱い気はする。それを嘆き、強化の必要性を訴える。これも間違ってはいない。しかし、それは必ずしも「純ディベロッパー」(狭い意味でのディベロッパー)だけの問題とは限らない。テストプレイヤー総括やルールチェッカーの問題も含まれるはずだ。それらを混同するのは、良くないと思う。でも、現状では「それらが具体的にどう違うのか」すらよくわかってなさそうだ。まさに「無知の知」だね。それを明白にしたという意味で、今回の対談記事は意義が大きい(皮肉でも何でもなく)気がする。
 
 ゲーム界の現状を考えれば、ディベロッパー論なんて「無い物ねだり」「現実とかけ離れた理想論」になってしまうのかもしれない。でも、それを承知で論じていかない限り、いつまで経っても「いいデザイナーはいても、いいディベロッパーはいないんだよな」って状態が続くような気はするね。これをお読みの皆様も、「ディベロッパーって、具体的にどんな作業をする人なの?」という、そもそも論を考察してみてはいかが。