12月3日2008/12/04 03:19

 うーむ…結局分量調整に失敗したようだ…いやね、ここ数日取りかかっていた「ヒト電」の原稿についてなんだけど、ド派手に予定分量をやらかしたようだ。ちょっと青ざめています。
 
 どうも当初計画に無理があったようだ。なにしろバルバロッサ(独ソ開戦当初)から連合軍大陸侵攻まで、一発で解説したからなあ。一応そうするだけの必然性を持たせたつもりなんだけど、ちょっと無理があったか。まあ、自分だけで考えていると煮詰まりかねなかったので、とりあえずは編集部に送って意見を伺っているところだけど…
 
 本日の話題は、知人のサイトに触発されて、科学技術論。と言っても小難しいものではなく、「昔の21世紀予測が当たってないのは何故か」を考察してみようかと。まあ、私なりのやり方で。
 
 今から30年ほど前の「21世紀はこうなる!」って未来図は、あんまり当たりそうもない。リニアモーターカーはそのうち実現するらしいけど、他はどうも駄目っぽい。個別に見てゆくと、エアカーはまず実現しそうもないし、超音速旅客機も全く普及してない。服装だって大きくは変化してないね。宇宙開発も遅々として進まない。超高層ビルについても、あの頃の予測ほど乱立はしてない。ま、こんな感じかな。あの頃から今現在にタイムトラベルしてきた奴は「本当に21世紀かぁ?」と思うんじゃないかと。
 
 とはいえ、これはやはり「過去の予測が甘かった」ことが原因であり、技術の進歩が止まったワケじゃないとは思う。情報・通信分野の発達はあまり読めてなかったワケだし。今の携帯電話は、あの頃想定されていた「携帯型通信装置」より更に優秀でしょ。
 
 とはいえ、やはりオイルショックの影響はあるんじゃないかと。あの頃の未来予想って、結局「高度成長期がいつまでも続く」って幻想を下地にしていたフシはある。その意味では「地に足ついた」予測じゃなかったような。ま、未来予測なんてそんなものだから、あまり深く考えても仕方ないとは思うけど。
 
 技術的な面で考えると、あの当時は「スピードを出す」ことがどれぐらい面倒なことなのか、よくわかってなかったような気がする。確かに「何でもスピードアップ」って時代だったから、その流れとして「超音速旅客機」だの「エアカー」だのが想定されたんじゃないかな。
 
 超音速旅客機は、とりあえず実現はした。けど、問題抱えまくりで結局流行しなかった。全席ファーストクラスじゃないと採算がとれないほど燃費が悪く、輸送力がない。おまけに乗り心地は悪く、空港周辺の騒音もデカく、「ソニックブームの心配が…」ってんで地上はフツーの航空機と同じ速さでしか飛べない…ときてるからねえ。西側のコンコルドも東側のTu-144も、「こりゃあ駄目だ」ってなり、後継機開発の話すらロクに聞かない。ボーイングの「普通よりちょっと速い航空機」って構想すらポシャった。ツポレフは「注文があったら作ってもいい」と称しているらしいけど、どこまで本気なのやら。
 
 その代わりと言っては何だけど、多分航空需要はあの頃の想定より上だと思われる。料金はずいぶんと安くなったからねえ。特に海外旅行は安くなった。スピードアップより安く大量に人員運んで料金安くした方が儲かるし、世のため人のためになる…ってコトですね。あの当時、こういう発想はあんまりなかったような気がする。
 
 ただ、スピードアップに関する取り組みは放棄されたワケじゃないので、今世紀末には超音速旅客機が登場するかも。ただ、結局「音の壁をどうする」って課題は解決できない(物理法則上の問題なので、解決は難しい)関係上、「無理に音速出すより、音速出せる技術で今のまま飛ぶことを考えた方がいい」ってなるかもしれないけど。無理に音速超える飛行機を考えるよりは、一度宇宙に出た方が早いかもね。
 
 宇宙開発は…とりあえず、人類は月まで行った。けど、そこで行き止まり。一応有人火星探査計画はあるけれど、宇宙開発競争時代から考えれば、かなり停滞してるような気がする。あの勢いを持続できれば、火星なんて楽勝だと思っていたんだけどねえ。
 
 これは予算の問題だとか、派手ではあるけど実利が少ないコトに米ソが気がついちゃったとかもあるけど、実はスペースシャトル構想に問題があったのが理由ではないかと。アレは失敗作呼ばわりされても文句言えないからなあ。なにせ打ち上げペースは当初計画からほど遠く、あげく製造中止するはずだったロケット再生産してる(最初の構想では衛星打ち上げもシャトルにやらせるつもりだったので)くらいだからなあ。
 
 スペースシャトルが何故マズかったのか?これはもう、「使い捨てにするより使い回した方がコスト安いだろうから、いっぱい打ち上げできる」という発想自体が大誤算だったとしか言いようがない。点検・整備だけで安いロケット打ち上げよりカネかかるってんだから。米国のライバルだったソ連も諸般の事情から宇宙開発が停滞し、あげくソユーズ宇宙船が現役ときてる。確かに宇宙開発史上に残る傑作機ではあるんだろうけど、だからって今でも現役とは。いくら細部が改良され続けているとはいえ、この調子だと50年間(初飛行は1967年)現役に居座り続けるコトに…当時の開発者に、「ソユーズは50年後も現役です」って言ったら、どんな顔するだろ。ちなみに、第一段部分はスプートニク1号を打ち上げたモノと本質的には同じなので、去年めでたく現役50周年を迎えている。
 
 ただまあ、人工衛星についてはバカスカ打ち上げられ、色々と利用されている。無人探査もそれなりにやっているし。けど、この分野については、やはり「期待ほどは発展しなかった」と言わざるを得ないかなあ。ドコの誰でもいいから、「ソユーズなんて目じゃないぜ!」って言えるような、画期的ロケットを開発して欲しいモノだ。ついに「シャトルの後」を発表した米国はともかく、欧州がアリアンロケット有人化をとりあえず放棄した(代わりにソユーズを買ってきて打ち上げる…)現状では、「そんな日が来るのか?」って心配になるけど…まさか、軌道エレベーター建設現場には、ソユーズを使って人間を送り込むのか?
 
 ソユーズが古くさいというのなら、自動車だって古くさいままだと言えるかもしれない。なにしろ相変わらずタイヤがついていて、内燃機関で動いている。エアカーはどーした!と思う人もいるだろう。しかしだ。あくまで私が思うに…だけど、エアカーは印象ほど便利な乗り物じゃなさそうだ。
 
 SFなどでは何の理屈・説明もなく浮いているけど、今現在の物理学でコレをやろうと思ったら、空気やガスを下に吹き付けるか、あるいは磁力などで浮かすしかない。後者だと専用道以外は通れないと思われるので、リニアモーターカー(鉄道の一種だと理解されている)になる。ここでは、一応空気やガスを吹き出す方式で浮いているとしよう。「ミノフスキー物理学(「機動戦士ガンダム」で採用された架空理論)が…」などと言わないように。
 
 今現在、「エアカー」は実用化されてない…というのは、間違いだ。立派に実用化されているし、日本国内で使用されてさえいる。ただし、エアカーとは呼ばれていない。ホバークラフトと呼ばれている。ホバークラフトは主に水上で使用されることが多いけど、陸の上でも走ることができる。それがホバークラフトの利点だからね。エアカーってのは、「乗用車サイズまで小型軽量化し、主に陸上で使用するホバークラフト」だと考えて問題はない。
 
 問題は、じゃあなんで「パーソナルホバークラフト」が普及しないのか、である。まず気になるのは燃費。ホバークラフトって、かなり燃費が悪いんだそうな。まあ比較対象が一般船舶か高速船だと思うので、相手が悪いとは思うけど。でもまあ、自動車よりも燃費悪そうなのは確かだ。電気的な力で空気を動かして…って理屈もある(イオンクラフト・イオノクラフトはこれを指してることが多い)けど、これはエネルギー効率がプロペラ以下。つまり、燃費が輪をかけて悪い。騒音も問題だね。空気またはガスをものすごい勢いで吹き出しているんだから、この時点でどー考えても五月蠅い。エンジン音がどうこうって問題だけじゃないからね。
 
 問題がこの2つだけなら、まだ解決の道があるかもしれない。ある意味致命的なのが、「安定性が悪い」だ。ちょっとした凸凹で、直進安定性がかなり落ちるんだそうな。だだっ広い海上中心に運用するんならまだしも、陸上でコレはマズいでしょ。もちろん、強風にも弱い。結果として、操縦がすごく難しい。「教習所に真面目に通えば、大抵何とかなる」ってなレベルじゃないと思われるのだ。
 
 そもそも、そんなに急いでドコへ行く?エアカーの利点としてよく説明されるのが「速い」ってコトだけど、やみくもにスピード出しても意味はない。現状の道路はそんな高速運転を前提としてないからだ。はっきり言って、法定速度+α程度で走るのなら、現状の自動車で何の問題もないし、おそらくエアカーより燃費もいい。エアカーに期待しているような速度で現状の道路を走ろうと思ったら、F1ドライバー並みの体力と反射神経が必要だ。専用道を造ると言っても、むやみやたらと造るワケにいかない以上、「だったら高速鉄道とか、飛行機使った方がいい」となるのでは。
 
 色々考えてみると、「自動車の後に来る交通機関」がエアカーなのかどうか、ちょっと疑問である。確かに、地面効果というヤツのおかげで、フツーに空飛ぶより多少燃費はいい。けど、コレに依存している限り、「地面の凹凸にかなり弱い」って弱点が残る。だったらフツーに飛んじゃった方がいいかもしれない。エアカーではなく、パーソナルヘリの時代が来るかもしれないのだ。もっとも、コッチは「事故起こしたらどーする」のかが課題になるけどね。「物理学上、重力制御は不可能だ」って結論(現状、本命視はされてないようだけど)が出れば、22世紀・23世紀になってもまだ「タイヤのついたクルマ」が主要交通機関であったとしても、さほど不思議はない。ただまあ、おそらくは化石燃料を燃やして走らないけど。
 
 ちょっと夢のない話ではあるけど、その代わり自動車の性能は当時より相当向上している。あの当時想定されていたエアカーと今の自動車を(経費考えずに)作ったとして、「さて、毎日使いたいのはドッチ?」とやれば、今の自動車を選ぶ奴が多いんじゃないかなあ。だいたい、エアカーよりも「自分で考えるクルマ」の方が便利だし、かなりの部分が実現しているような。そう考えると、我々はやっと「ナイトライダー」のナイト2000に追いつこうとしてるわけだ。そのナイト2000の人工知能K.I.T.Tに言わせると、「重力に逆らった移動手段なんて、不合理です」だそうな。エアカーが普及しなかった理由は、この一言に尽きるのかもね。
 
 未来予想なんて、当たらなくて当然である。でも、それがわかっていても、無価値ってワケじゃない。何が当たって何が外れて…って分析をすることは、結構楽しいからね。昨今何かと暗い世相ではあるけど、そーゆー楽しさは忘れちゃいけないと思うな。でも、たのむから、軌道エレベーター建設現場にソユーズ使うのはやめてくれ…「どーせ無人作業が基本なんだから、作業人員なんてソユーズ使って送ればいい」って意見に説得力があるのは認めるんだけどさあ…