1月11日2008/01/11 23:10

 本日のネタは本来「年度代表馬」の予定だったけど、後日に回す。顔ぶれに大きな不満がないから。それでもあえてツッコみたい部分はあるんだけど、ソコを採り上げるのにはまとまりが悪いので。ま、近日中に何とかします。
 
 というわけで、本日のお題は「自費出版」。これは本来ものすご~く「深い」ネタであり、気軽に扱えるようなモノじゃない。ただ、煮詰まるのを待っていたら永遠に使えそうもないので、とりあえず「軽く世間に放り投げ」してみる。よってこのネタ、またポツポツと採り上げると思います。
 
 ネタになったキッカケは、自費出版大手の新風社倒産。新聞などで褒められていた会社ではあったけど、「サギだ!」という評判が高まり、行き詰まったんだとか。話を聞く限りでは、確かにこの会社のビジネスモデルは相当「オカシイ」ものだったからなあ。
 
 ドコがオカシイのかって?この会社の自費出版ってのは、厳密には自費出版ではない。自費出版ってのは、おおむね「経費自分持ち、営業その他も原則は自分で、その代わり利益も自分」って仕組みである。出版社の役割は、限りなく「印刷会社」に近い。これはあくまで原則だけど、まあこの図式が基本だと考えてもイイでしょ。
 
 新風社の仕組みは、コレとは少し違うってのが「ウリ」だった。営業は原則出版社。全国の書店に置かれるよう努力はします。その代わり利益は…ってモノらしい。詳しい仕組みは私にはよくわからん。当たり前だけど、利用したことはないので。
 
 この仕組みのドコが問題なのか?より簡単に言ってしまうと、「著者からカネ集めるのが目的で、最初から売るつもりが無かった」からとなる。確かにそう言われても仕方ない部分はあるね。なにせ著者からもらう「出版協力費」が、本の書店単価×初版部数より高いってんだから。極端なこと言えば、1冊も売れなくても利益が出ちゃうんだもの。
 
 とはいえ、実のところココが「サギっぽい」部分ではない。本当にサギっぽいのは、「価格設定の関係上、増刷しにくい」コトにある。最初から赤字確定で、なおかつ増刷しにくい…では、著者の利益はゼロ。これのドコがまともなビジネスなんだ?ってことになる。そのくせ、出版社は最初から利益確保できてる(それだけカネ取ってる)んだから。
 
 何で増刷しにくいか?そりゃもう、最初の定価が同人誌も真っ青の「お買い得価格」だから。印刷ってのは案外「固定費」が大きく、刷る数増やしてもコストがさほど上昇しない。つまり、少部数しか刷らないと「相当割高」になる。にもかかわらず「たくさん刷った」時と変わらない価格を付けていたら…ま、かといって印刷部数から算出された「適正価格」だと誰も買わないだろうし、まともな値段になるほど刷ったら、不良在庫の山だけどね。
 
 同人誌に脚を突っ込んでいる(洗った覚えはない。最近活動してないけど)私に言わせれば、新風社の要求する「出版協力費」はアホらしいレベルだ。あえて増刷を無視して考えた場合、「赤字幅」は同人誌の方が遙かに小さくできる。もちろん、同人誌と書店流通書物を一緒には出来ない。「出した本を書店に置いてもらう」のは、すごーく大変だからねえ。ただ、期待売り上げ数が「同人誌と同レベル」ならば、あえてこんなシステムを使って本を出す理由って何?って感じてしまうね。
 
 幸か不幸かはともかく、私はこんなシステムを使って本を出す必要はない。それぐらいだったら同人誌即売会で売るから。私が扱うネタってのは、基本的に「同人誌即売会で売られていて違和感がないモノ」だからね。そこで売り上げに手応えを(私なりに)感じたら、「マトモな」手段での書店流通(出版社への持ち込みとか、賞に応募するとか)を考える。全国の書店で流通してる本を出すのは「最終的な夢」かもしれないけど、ソコに至るまでの「中間目標」として同人誌ってのがあるわけだ。現状、そのレベルですらないわけだけど。
 
 もっとも、私がこんなモノを中間目標に出来るのは、「東京近郊在住だから」ってのはある。こと同人誌即売会での活動に限定すれば、東京近郊の有利さはベラボーだからね。歴史的経緯その他を考えれば「コミケが東京近郊から離れることはあり得ない」以上、世界レベルで「最も恵まれた環境」でしょ。コミケで売る売らないは別にしたとしても、他の同人誌即売会もコミケの影響を受けてるからねえ。
 
 同人誌活動をさておくとしても、ブログだの何だのがある昨今、あえて「書店流通を目指す」意味はドコに?って考えもある。そりゃあ確かに「書店流通」は素晴らしい。私も憧れる。けど、それは「まともな形での」書店流通であり、形式は書店流通だけど実質は…って制度を使ってまでこだわる必要はないような。「騙された」と騒いでいる人間は、ここへのこだわりを利用されたって側面はあるんだろうね。
 
 新風社のビジネスモデルが詐欺なのか、これはこれでマトモだったのかを判断する能力は、私にはない。「同人誌で売った方がマシ」と思うのは確かだけど、そりゃあ私なら…ってレベルの話だ。強いて言うなら、ココの読者はある意味「私と似たような立場」の人間が中心であり、なおかつ曲がりなりにも私の影響を受ける以上、「売れなくても、あえて本って形で世に出したい」と考えたのなら、同人誌即売会を選ぶ傾向があると思うけど。もちろん、マトモな手段で商用ルートの書籍に本を出せる人は除いて。ゲーム系の人は(業界の広さを考えたら)下手に同人誌出すより、コマンドマガジン・ゲームジャーナル・プランサンセットを利用した方が早いでしょ。
 
 私は本が好きであり、本屋が好きだ。それゆえ、今の「書物流通システム」に大きな不満はない。それはいいんだけど、「そこから漏れてしまう何か」があり、そこに商売のタネが転がっている気がするのも確か。自費出版ブーム(あったらしい)がその一環であることは間違いないんだろうね。その正体が「詐欺臭いビジネス」だったとしてもだ。少子化にもかかわらず何故か拡大傾向が止まらない同人誌即売会とか、日本語ブログが英語ブログより多いらしい(人口比考えたら異常だ)ってのも、実はこの一環として分析し直す必要があるのかもね。
 
 ということはだ。ココに「納得できる」モノを提示できれば、大儲けも夢ではない…のか?おそらくはそうだろう。新風社はそれなりに「当たった」会社である。最終的に倒産に至ったとはいえ。大赤字確定でも本を出したい…って需要はあるんでしょ。ただ、私にはそこをどーすりゃ儲かるのか、さっぱりわかんないんだけど。
 
 コレは推定だけど、この分野、つまり「売れなくてもイイから本出したい!」って欲求(それが自己満足なのか、「売れる本を出すための修行」なのかはさておき)を狙ったビジネスは今後も現れるのでは。もちろん、玉石混淆で。大半はサギ同然って気がするけど、ひょっとするとホンモノの「うまい話」が転がっているかも知れない。そーゆーことは覚えておいて損しないんじゃないかなあ。
 
 なお、私は現状「ブログで文章書きまくり、自信が出たら同人誌を出し、そこで飽き足らなくなったら出版社と交渉してみる」って道を歩むつもりである。この路線に特に不満はないからね。別に本気で作家目指しているワケじゃないので、この路線で駄目ならそれまでよ…って割り切りは出来てる。それゆえ、この手の「抜け道」を利用することはなさそうだ。でも、もし何かいい手を思いついたら教えてください。儲かりそうだから私も一枚加えて(笑)。そんでもって儲けた金で同人誌作って…