10月18日2007/10/19 01:26

 本日は、ある人物に「まいった」を言わせたくて考えたネタ。ま、言わせたい当人はおそらくここを見ていないので、意味はないんだけど。
 
 その対象は、将棋界の先崎学八段。棋力も大したもの(今期はB級2組だけど…)だけど、エッセイストとしても有名。木曜発売の週刊文春に「先ちゃんの浮いたり沈んだり」ってコラムを連載している。私は気が向くとこれを読んでいる。まあ、それだけの話だ。
 
 本日気が向いたのでこのエッセイを読んだところ、将棋の駒を並べる話をしていた。自分が今まで「生涯に駒を並べる時間をどれだけ使ったのか」を計算し(イチイチ計算するところが棋士である)、それがかなーりの時間になることを発見した。それで「全自動で並べてくれる将棋盤って開発されないかな?」などと締めている。ま、麻雀好きでも有名なこの人らしい。
 
 私は諸般の事情からこの発言に少し感じ入るところがあったので、お返し?に「全自動将棋盤」ってものを真剣に考えてみることにした。どういう仕組みなら可能で、どんな特徴を持ち、どんな難点があり、結局モノになりそうなのかどうか、マジに考察した。以下それを長々と記す。
 
 全自動将棋盤の具体的な機能は?まあ、盤の上に駒をぶちまけ、スイッチを入れると自動的に並べてくれるってことでしょ。麻雀の全自動卓と似たようなモノだ。たかがその程度…と思われるのは間違いない(先崎八段も自分でそう言っている)けど、欲しいって言うんだから仕方ない。色々と考えてみました。なお、「駒並べるのが面倒ならパソコン使え」と言ってはイケナイ。
 
 この場合、参考になるのはやはり麻雀の全自動卓だ。他に類似品がない以上、どう考えてもそうなる。とりあえず私のアタマでは、これを参考にしたモノしか思いつかなかった。フルオリジナルを考えつくのは大変でしょ。その点、先例がないのに麻雀の全自動卓を完成させたメーカーは偉いとしか言いようがない。「やはり麻雀は牌がないと!」と思う奴(実は私もそう)は感謝すべきだな。
 
 まず考えられるのは、初期の半自動卓と似たようなモノ。若い奴(ここの読者にそんなのいるのか)は知らないかもしれないけど、その昔は「麻雀牌を自動的に全部伏せ、洗牌してくれるだけ」って卓があったんだよ。これを応用すれば、「将棋盤の上に駒をぶちまけると、自動的に正しく並べてくれる」って機能を実現できるのでは?
 
 そう思って色々考えてみたんだけど…正直難しい。麻雀牌は「ただ牌を伏せ、かき混ぜる」だけで一定の用をなす。しかし、将棋の場合は「キチンと並べる」必要が…しかもだ。歩は歩の位置に、玉は玉の位置に並べないとイケナイ。さらに向きまで揃える必要まである。駒にマイクロチップ仕込むといった複雑怪奇な仕組みを採用するならともかく、自動卓程度のメカニズムでは実現が難しいのでは。
 
 これが駄目なら…仕方ない、今の全自動卓と似た仕組みを使おう。スイッチを押すとどっかに穴が開くのでそこに駒を投入し、もう一度スイッチを押すと駒が「並んだまませり上がってくる」ようにするのだ。この方式なら何とかなるのでは?
 
 なんで「穴に駒を落とす」だけで可能性が広がるのか?そりゃもう、盤の上と違って怪しげなメカニズムを仕込む余地があるから。磁石・ベルトコンベアーなどといったメカニズムを仕込めば、将棋の駒を並べるくらい何とかなりそうな気がするね。
 
 将棋盤にそんなスペースあるのかって?そりゃまあ、素人が使っている薄っぺらい将棋盤なら無理だ。けど、「使いたい」とヌカしたのは幸いプロ。プロは分厚い将棋盤使うのに慣れているはず。多少サイズがでかくなったり、今より更に分厚くなるのも見逃してもらおうじゃないか。
 
 「F男式全自動将棋盤」は、こんな感じになる。スイッチを押すと、お互いの3段目(駒が並ぶ位置)が盤の中に「収納」され、穴が開く。そこに(どちら側からでも良いので)駒をテキトーにぶち込む。そうやって投入された駒はまず1カ所に集められ、ふるいと磁石を利用して駒の種類を識別される。後はベルトコンベアーなどを使ってその駒を収納された配置スペースに配置し、最後にせり上げる。基本構想部分だけ考えれば、決して実現不能じゃなさそうな気がしてこないか?
 
 もちろん、色々と難点はある。技術面も大変そうだけど、他の部分にも色々と難点が出そうなのだ。まず問題になるのが、「駒の識別」。これは基本的にふるいに頼ることになりそうだ。幸い将棋の駒は種類ごとに微妙に大きさが異なるので、これで何とかなりそう…と言いたいところだけど、いくつかネックはある。現状では飛車と角はほとんど(全く?)同じ大きさだ。金と銀も違いが小さい。これらを変更してもらわないといけない。大きさの違いだけでは区別を付けにくいので、厚さを変更する必要があるかもしれない。
 
 「盤上にできる細かい段差」も問題かな。私の提唱する方式によると、盤のどこかに「並べ終えた駒がせり上がってくる部分」が必要だ。そうなると、その周辺に必ず小さい段差ができる。麻雀の場合は投入穴周辺及び牌がせり上がってくる部分は「あまり使わない部分」だけど、将棋の場合はそう言っていられない。そうなると「駒が引っかかる」だの「余計な力がかかって故障しやすい」だのといった問題が出そうだ。
 
 駒音も気になるんじゃないかなあ。今の将棋盤は「ドコに駒を動かしても、駒音は似たり寄ったり」だが、全自動将棋盤は下に空白があり、「色々詰まっている場所」と「スカスカの場所」ができる。にもかかわらず「5五と9九が同じ音」ってのは無理でしょ。いっそのこと音が出にくいようにして、電子音でも鳴らすか。
 
 本当のことを言えば、こんなものより巨大極まりない問題が1つある。「時間」だ。四風子連打や天和・地和・人和などで「あっさり」流局するとわかるけど、全自動卓が牌を並べるのは結構時間がかかる。単純に時間だけ考えたら、手積みの方が早そうなくらいだ。全自動卓が手積みよりサクサク進むのは、人が打っている間に必要な作業を平行してやってくれるからに過ぎない。
 
 将棋の場合はどうか?駒を2セット使えば、確かに「スイッチ押すだけで並べ終わる」ように見せかけることが可能だ。しかし、「F男式」はあえてそれを採用していない。そのため、スイッチ入れてボケーっとただ待つ時間が存在する。しかも、えらく長く。気の短い奴ならキレて自分で並べ出したくなるほど。なにせ確実に自動卓より時間がかかるからなあ。
 
 何で駒を2セット使わなかったのか?「それが将棋の作法」だからだ。将棋はあらかじめ駒を並べない。対局者が席に着いてから初めて駒を並べる。この作法を崩すのはかなりよろしくないと思うんだな。「伝統」が大事なモノなんだし。
 
 そんな作法はやめちまえ?…それを言ったらお終いよぉ!この作法をやめていいのなら、全自動将棋盤を開発するよりもっと手っ取り早く、楽な手段がある。秒読みしてる連中(正体は「プロ予備軍」の奨励会員)に並べさせればいいのだ!どうせ連中は将棋盤をセットし、秒読み用の時計や棋譜の記録用紙を用意しなくてはならない。ついでに駒を並べさせて何が悪い?素人同士の対戦じゃないんだから。プロ野球選手が、草野球よろしく試合前のグランド整備やってるか?それと同じである。振り駒はどうするのかって?振り駒専用の駒(一目でわかるようにする)を用意すればいいだけの話だ。
 
 この結論は、心底身も蓋もない。そうじゃなくてだねえ…って声が聞こえてきそうだ。ただ、「並べるのがただ面倒だ」ってことを深く深く追求してゆくと、ごく簡単に出る結論の筈。「全自動将棋盤」がネタとして面白いことは認めても、結局「深く追究していくと究極の結論が出てしまい、途端に白ける」性質のネタであることは間違いない。それでもまだ「全自動将棋盤」欲しいんですか先崎八段?ん~?
 
 普段の私なら、こういう「身も蓋もない結論」発見してもココでこんなアタックかけたりしない。「アホだなあ」とクスリと笑ってそれまでだ。にもかかわらずこのネタは何でここまで?そりゃもう、この色のネタに詳しい人ならわかるでしょ。ボードシミュレイションゲームのセットアップは将棋より遙かに大変だ。私がゲームした回数は先崎八段が将棋指した回数より滅茶苦茶少ないはずだけど、「セットアップに費やした時間」はさほど劣ってないんじゃないか?将棋の駒セットアップするぐらいで「面倒だ」なんて言うな!ガタガタぬかすと「Operation Typhoon」のセットアップ(すげー大変)1人でやらせるぞ!