5月18日2007/05/19 05:16

 お待たせしました。POG本分析がある程度まとまりましたので、お届けします。本当はもう少し分析を続けたいんだけど、それだといつまで経っても発表できないからね。多少強引に書いてみようかと。なお、競馬ネタには珍しく?今回は「知らない人完全置き去り」で。説明書いてるヒマがねえ。
 
 まずは前回のおさらい。「POG本は似てる気がする」ってのが〆だった。これは本当か?そうだねえ…「解釈にもよるけど、おおむね似てる」と評していいのでは。なにせ、取材対象に大きな違いを発見できなかった。
 
 発売時期が似通ったのも、これが原因なんでしょ。「牧場行って有力馬の話を聞く」「産地馬体検査を取材する」「外国産馬のセール情報がある」ってなネタを網羅しようと思ったら、発売日に独自性が出せるわけがない。
 
 似てるのは取材対象だけじゃない。ライターの顔ぶれも結構似ている。Gallop別冊(以下「G別」と表記)付録のDVD解説担当は、青本メインライターと同一。新黒と赤本は3人同じライターを使っていた。G別・赤の外国産馬情報は同じ合田直弘氏。競馬ライターなるものの層の薄さが忍ばれるような…
 
 とはいえ、違う点はちゃんとあるのも事実。その辺の説明も含め、各本の路線を解説してみよう。まずG別。DVD付録が目玉か。動画があるのは確かに良い。ただ、文章量は少なく、言ってることもかなり一般的。馬体写真も結構「ヌケ」ありと評価した。重要な特徴として、いわゆる「クラブ馬」情報とTM情報が充実している。
 
 今年から発売の、新黒本。旧黒本はやはりなくなったようだね。馬体写真を少な目にして、「関係者のコメント」充実させたのが特徴。ある意味、一番独自色を出そうとしているかも。マンガや下らないコラム(ジャンケン解説って何だよ)といった「脱力系」ネタが目を惹いたかな。
 
 青本は、「戦術解説」が特徴かなあ。他が「良い馬を見つければ、それで良し」ってな論調なのに対し、「それをどう獲得してゆくか」というドラフト戦術に踏み込んだ解説が充実している。これを「有り難い」と思うか、「余計なお世話」と思うか…
 
 一番の古株になった赤本。良く言えば手堅い、悪く言えば「突っ走ったところのない」作り。ま、今更この本にそんなもの求める奴はいないでしょ。諸般の事情により、今年私の「一番手」だ。その辺の解説は後で。
 
 出版元も重要な情報である。G別は週刊「Gallop」増刊で、産経新聞社発売。Gallopの巻号がついてるので、完全にGallopの「一部」である。それに対し、残る3つはムック。雑誌コードとISBN(単行本識別コード)を同時に持ってる、ある意味司書の敵(笑)。新黒は「競馬王」、青は「競馬最強の法則」、赤は「FLASH」の派生商品って位置づけになるのかな?
 
 ちょっと辛口に解説してみよう。まずG別。一言で言えば「あざとい」。POG本と言うより、「GallopのスタッフがPOGについて語ってみました」的な色合いがすごく濃いのだ。内容がどうこうより、「Gallop買ってる奴は買ってくれる」みたいな奢りがあるような。写真が大きいとかDVD付録とかいう利点があり、存在意義は決して小さくない。けど、Gallopと切り離した単体として考えた場合、やや薄っぺらい気がするかな。
 
 新黒。独自性をそこに求めちゃったか…ってのが正直なところ。この世界、関係者コメントってのは「多ければ多いほど良い」のかどうか、ビミョーな気がするんだよね。この時期の関係者なんて、「自分の馬が一番!」って確信を持っているに決まっている。曲がりなりにも勝負の世界なんだから、それが当たり前でしょ。それだけに、悪い情報なんていくらつついてもなかなか出てこない。「結局どうなんだ」って部分のみに着目するなら、少し内容が薄くなると思うんだよね。その気になれば「裏を読める」のは事実だけど、そんな「ディプロマシー」ばりのテクニックを要求するのはどうなのよ。私はこの路線嫌いじゃないけど、世間は受け入れるかねえ…
 
 青本。ドラフト戦術解説を除けば、あきれるほど「堅い」作りである。去年創刊されたとき、「赤本をもう1つ作ってどうする」って思ったぐらいだ。G別に次いで「雑誌販売促進アイテム」感が漂う。ただ、実はライターの独自性は結構高い。シロウトの露出もある。これは私の中では「新鮮でよろしい」となるけど、世間ではどうなのか。
 
 赤本。雑誌との独立性は一番高い…って、本誌は一般紙(写真週刊誌)だからねえ。商売事情考えたら、「何でこんなものが」って本である。歴史は古く、ある意味作りも保守的。ただ、その分文章は一番「まとまって」いると思う。この点をどう評価するのかが重要だと思うな。
 
 とまあ色々解説してきたわけだけど、肝心なのはこれから。このネタの主題は「ネット情報時代に紙媒体ができることは何なのか、POG本から推理してみよう」であり、そこを語らないと意味がないからね。
 
 まずは仮説を紹介しよう。私が立てたのは、「読者は紙媒体に特ダネを求めない」である。理屈はこうだ。特ダネってのは、即応性が高くて狭い範囲で流通してる場合に大きな意味を持つ。つまり、「オレは知ってるけど他人は知らない」って状態に価値がある。こういうものは、現状だとネットの方が大きく勝る。即応性は言うに及ばず、「流通」なるものを考えなくて良いので「情報源が乱立してる」って状態になりやすい。おそらくだけど、特ダネがどうこうって部分で勝負するのであれば、紙媒体は圧倒的に不利だと思う。
 
 そうなると紙媒体の仕事は何か?「常識の提供」と「権威付け」だろう。情報のギャップは価値のあることだけど、同時に問題点もある。「共通の話がしにくくなる」のだ。特に日本人は「横並び体質が強い」から、常識ってモノに対するこだわりは強い。そして、何が「常識」なのかを決めるのは、結局のトコロ権威だ。特ダネは「常識じゃない」ことに価値があるので、特ダネが得意なネットは「常識の形成」って部分は弱いのではないか?ということは、権威付けの点でも弱くなりそうだ。ここを補完するのが、紙媒体の仕事…私はそう仮定してみた。
 
 この仮定から導かれる推論として、「紙媒体は扱うモノが似てくる」ってのがある。主な仕事が「常識の提供」なんだから、基本部分は外せなくなる。他と同じネタを扱っていることは、マイナスよりプラスが多いはず。また権威付けも重要だから、「良いか悪いかの境界にある」ものを「良い」「悪い」と分別するより、「良いに決まっているモノを良いと言い、悪いに決まっているモノを悪いという」ことが重視される。それがある種の基準になるんだから。その結果、どうしたって全体に似てくるのは当然でしょ。
 
 この仮説を検証すべくPOG本を比較してみたんだけど、結論から言えば「半ば当たり、半ば外れる」ってなことになったと思う。まずは当たっている部分から。取材対象がとにかく似てるのは、予想される需要が「他にない」って証拠のように思える。しかも、やってるのは結局有力馬紹介。「良いとわかっているものを良いと言い、悪いとわかってるものを悪いという(正確には、無視する)」ための取材でしょ。
 
 私が当初考えたより「ノウハウ提供系」の記事が多かった(普段無視してるので気がつかなかった)のも、当たってる部分に含めて良いかな。私は「ノウハウは自分で創るモノ」って意識が強めなので「余計なお世話」と思うけど、最近は老いも若きもノウハウ大好きだからねえ。ノウハウ情報ってのは「伝える」というよりは「教える」って性質が強い情報であり、「教える」ためには常識と権威が不可欠…ってことを考えれば、私の言いたいことはわかってもらえるかと。
 
 外れてる部分は、主に「関係者コメント」についてである。方向性は全部「良い、オレの馬が一番」であり、取材側もオベンチャラばかり言ってる気がするんだけど、それでも結構本ごとに引き出してるモノが異なっている。「方向性一緒なら、結局意味がない」って考え方もアリだと思うけど、当初の私の予想は「共通記者会見並みに共通性が見られるのでは」ってレベルだったことを考えれば、独自性はちゃんとあるんじゃないかなあ。
 
 この辺の独自性は、おそらく「ライターの基本ができてる」からじゃないかな。おそらく「単なるブロガー」には難しいことと予想されるだけに。これを「さすが」と呼ぶべきか、「プロなんだから当然のこと」と考えるかはビミョーではあるけど。さらに言うなら「実は共通記者会見レベルの共通性を持たせるべきなんじゃ」とか、「せめてここが変わらなければ、本当に区別不能になるだけ」といった見解も出ると思うけどね。ただ、私は一応プラスだととらえたい。もっとも、「こんなところがプラスでどーする」って思うのも事実なんだけど。
 
 今回は「この研究結果を受け、一般論に拡張する」のは避けたい。これをやろうと思ったら、今回ほとんど考慮しなくて良かった「TV・ラジオ」を語る必要があるんでね。これが抜け落ちた「メディアとネットの関係論」なんて意味ないでしょ。その意味では、今回の結論が「使えない」のは事実。けど、オレが書くネタなんてそんなもの。多くを期待されても困る。でも、無価値ではないと思う。それでいいじゃん。
 
 最後は、今年の1位指名予定馬を公開しちゃおう。POG本についてこれだけ書いておいて、POGそのものについて黙ってるのはどうかと思うし。事前に指名馬公言して「他人を威嚇する」のが私のセオリーだから、思い切ってバラしましょう。今年の1位は、ダンパの05(橋口厩舎)にしようかと。
 
 理由?赤本によると、橋口調教師は新たに「ダービー勝って、キングジョージ挑戦」なる野望を持ったそうな…センセ、ついに壊れましたね(笑)。いや気持ちはわかる。オレもアスコット競馬場に「リベンジしちゃる!アイシャルリターンじゃ!」って言いながら中指突き立てたんだし。でもこれは、「日本馬のキングジョージ初制覇を見届けなきゃ気が済まない」と公言してる私に対する挑発です。「ハーツクライのご褒美にもらった」などと(各所で)言ってる、ダンパの05でそれを達成してもらおうじゃありませんか。もちろん、私もついていきますよ。つーか、アスコットまで応援に行かないような奴には簡単に渡せないな。せめて私とのジャンケンに勝ってくれ(笑)。