1月25日2007/01/26 01:32

 とりあえず一言だけ。こんなモノが存在してるとは…世界は広く、自分はちっぽけである。何の話かは、色で察してください。
 
 本日の話題は、久々に生物学。k戦略とr戦略について。いやね、私が知ってるものと異なる「定義」を堂々と掲げているトコロを見かけたので。ひょっとすると正しいのかも知れないけど、多分間違った定義。そんなものが世に広まるのは仕方ないとしても、まあ私の知ってる定義も世に紹介しておいた方がいいかなと。私の精神衛生上。
 
 k戦略とr戦略とは?簡単に言えば、「子孫をより多く残すため、どんな方向に進化するか」の道筋である。進化ってのは突き詰めて言えば「子孫を多く残すための方法」なんだけど、そのやり方は大きく2つに分けることが可能だってコトだね。
 
 まずはわかりやすいk戦略から。これはズバリ、「個体の生存確率を高める」方向の進化である。ある生物が百個の卵を産み、そのうち2匹ぐらいが「大人に」なるとする。このままだと増えも減りもしないので、3匹ぐらいに引き上げようとするモノ。
 
 世の大半の人間が考える進化ってのは、おおむねこの方向の進化である。つかまって食べられないように逃げ足が速くなるとか、獲物を捕まえやすくするため目立ちにくい模様になるってのがその例になる。とりあえずわかりやすいので、説明はこの程度で端折らせてもらおう。
 
 もう1つのr戦略とは?これもズバリ言える。「卵の数を増やす」だ。先の例で言えば、卵の数を百個から二百個に増やす。そうすりゃ生存確率が同じでも、子孫の数は倍に増えることが期待される。単純ですね。
 
 k戦略とr戦略について心底大事な部分は、以上で終わり。実に単純。いちいち「なんとか戦略」なんて名前を付けるほどじゃないように思える。ただ、この単純な理屈も「突き詰めて」ゆくとなかなかスゴいことになる。
 
 r戦略を徹底してゆくとどうなるのか?実は「卵をたくさん産む」って方向に走るだけじゃ、効率が悪いことがわかる。卵をたくさん産むには「デッカイ母親がチッコイ卵を産む」のがいいってことになるけど、これだと「小さく産んで大きく育てる」ことになる。そうすると、卵から母親になるまで時間がかかることになる。成長速度には限界があるからね。
 
 そこで追求されるのが、「大人になって卵産むまでの期間を短縮する」ことだ。子孫ってのは指数関数で増えてゆくから、世代のサイクルが速く回転すると爆発的な勢いで増える。「ねずみ算式に増えてゆく」って言葉に代表されるように。
 
 生物の世界じゃ、ネズミなんて増加速度が遅い生物に分類される。r戦略を徹底してる昆虫はそりゃもうスサマジイ勢いで増える。もし食料が充分にあるのなら、1年程度で地球より重くなるレベルらしい。
 
 子孫が増えるのはいいことかもしれないけど、ある程度以上の大きさを持つ生物がこの戦略を徹底するのは「破滅的」である。増えすぎれば食料をあっさり食い尽くし、生存確率がセロになってしまう。ゼロは何億個集まってもゼロ。待っているのは絶滅だ。
 
 r戦略を追求してる生き物(主に昆虫など)は、「滅多に見つからないけど、ある所には比較的豊富にある。けど、いずれ食い尽くすのがわかっている」モノを食べてるコトが多い。たとえばある種のキノコとか、動物の糞とか。こういうモノを食べている場合、いつの日か新天地を見つけるべく旅立つ必要がある。ただ、その大半は目的地にたどり着けない。モノが貴重なので、多少探しやすい方向に進化しても無駄に終わる。
 
 ではどうするか?短期間に爆発的に繁殖して、新天地発見に旅立つ子孫の数をとにかく増やす。目の前にある「豊富だけど限界が見えてる食料」を使って、個体の数を精一杯増やすのだ。そうすりゃ、そのうちの1匹が「新天地」を見つける可能性が高まる。そしてまた個体を増やし…ってのを繰り返すのだ。
 
 k戦略とr戦略は全く両立不能というワケではないけど、ある程度はトレードオフ関係にある。生存確率を高めようと思ったら、何かとフクザツな生き物にならざるを得ない。こういう生き物は、あまり量産には向かない。逆に量産性を高めると、どうしても多少の不具合には目をつぶらざるを得ない。そこを手直しするヒマがあるんなら、さらに数を増やした方がいいからね。
 
 k戦略とr戦略自体には、特に優劣はない。間違っていれば滅び去るのが自然界だから、そういう生き物がいるってこと自体がその正しさを証明している。生物界ってのは「埋めよ増やせよ地に満ちよ」って絶対命題があるだけで、それに対する「正解」は山のようにあるのだ。もっとも「失敗」も山のようにあり、いずれ絶滅って形でそれを突きつけられるのが普通なんだけど。
 
 ただまあ、やはり自分と違った生き様ってのは理解しにくい。「k戦略とr戦略」って言葉は、あまりにも人間の生き方と異なる生き物が「何でうまくやっていけているのか」を説明するためのもの。それ以上でもそれ以下でもない。
 
 私が見たサイトでは、r戦略を「多様性を増やす進化」、k戦略を「学習能力を高める進化」といったニュアンスで紹介していた。私の知ってるモノと、一致してるようなそうでないような…まあ、「色んな種類の製品を作り、売れないものは即生産中止」ってのがr戦略で、「1つの商品をひたすら良くしてゆく」のがk戦略って言いたいのかなって気はするけど。
 
 とりあえず、「k戦略とr戦略」って概念が興味深いことは間違いない。何の役に立つのかはともかく。あんまり広まりすぎて、都合良く曲解されるに至る(「納豆でダイエット」は良い例だ)のはどうかと思うけど、ネタがネタだけにそこまでは至らないでしょ。つーわけで、ただつらつらと紹介してみました。こうやって仕入れた無駄な雑学が、いつか何かの役に立つかも。これがr戦略的なものの考え方じゃあないかな。うん。