7月22日2006/07/23 04:03

 本日の話題は、ちょっとドキドキものである。ただし、私だけ。見る人が見ちゃった時限定で「ヤバい」ネタを採り上げるので。まあ大丈夫だと思うけど、どうかねえ。
 
 ミステリ愛読者でSFもたまに読む関係上、ハヤカワ文庫の新刊はこまめにチェックしている。面白そうなモノが出てたら買おうってワケだ。でも、今回引っかかったのはミステリでもSFでもない。ノンフィクションシリーズの「訴えてやる!大賞」というものだ。
 
 結構有名な話だけど、米国じゃ「馬鹿げた」訴訟がまかり通る。いや本当に。この本は、そんな訴訟を紹介した本である。フツーの日本人にとってみれば、「ふ~ん」で終わり、って本だと思う。
 
 この本を採り上げた日本語のレビューがいくつあるか知らないけど、まあフツーは「こゆー訴訟があったんだってさ」ってことを紹介すると思われる。へそ曲がりな私はそうしない。どーゆー訴訟が載っているのかは、各自本を買うなりして調べてください。
 
 じゃあ何でこの本を紹介するのか?そりゃもう、私は一応「日本がこんな社会になる」かもしれない手伝いをしてるから。法科大学院なんてトコロに勤務してるからねえ。裁判には興味があるけど、今の仕事してなきゃこの本を買わなかった気がする。
 
 世間の人間がどれだけ理解してるか不安だけど、日本は今「司法改革」とやらの真っ最中である。法科大学院なるものが誕生し、今年はその卒業生を対象にした「新司法試験」が行われた。近い将来には、かなり前に採り上げた「裁判員制度」の導入も迫ってきている。その結果として、「米国並みに」訴訟頻発社会が到来するかもしれないのだ。
 
 いやね、日本の法曹関係者は誰もそんなこと望んでないと思う。司法改革と言ったって、「弁護士天国」が誕生するようなコトにはならないよう、色々と努力しているはずだし。それに、日本と米国は法律の性質がかなり異なる。細かい理屈は省略するけど、日本の法律の方が「すっきりと整理されてる」のだ。おかげで、馬鹿げた訴訟は日本の方が起こしにくい…と思う。
 
 ただ、これらの改革が「米国を参考にしている」のは否定できない事実。あの国の法律制度にいいトコロがあるのは事実だから、それ自体を否定する気にはなれない。ただ、1つ間違うと日本も「こんな風に」なっちゃう危険性を秘めているのは間違いない。どーしてそんな話になったのかは、それこそ本が1冊書けちゃう話なので省略。
 
 今までの日本の司法は確かに問題があった。それは認める。だから改革しよう。それも認める。ただ、改革したら別方向に悪くなった…って可能性は常にある。そうならないためには、改革した結果悪くなる部分をはっきりと意識し、全体として悪くならないよう努力すべきでしょ。小泉首相には、こういう視点が欠けてると思うのは気のせいか。
 
 こーゆー意識は、もちろん一般市民も持つべきだ。でも、より責任が重いのは法曹関係者であり、「これから法曹関係者になろうとしてる」連中でしょ。この「訴えてやる!大賞」でも、一部の「ヒドい」弁護士を強く非難しているし。さらに言えば、そーゆー弁護士を作らないよう、指導する立場になるべき法科大学院の責任は重大だと思うね。
 
 法科大学院側もそれはわかっているので、ちゃんと「法曹倫理」って授業を設けている。ただ…「法曹関係者が守るべき倫理」ってのは山ほどあるので、「訴訟乱発社会」についてどれだけ教える時間があるのか、また生徒がどれだけ理解してるのかは…コトが倫理って問題だけに、色々と限界がある。誤解しないように言っておくけど、私が働いてる某法科大学院で法曹倫理教えてる先生は、そりゃもう熱心でいい先生だと思うけどね。
 
 私は法科大学院で仕事してるとはいえ、単なる事務員。出来ることは何もない。けどね、「生徒がこの問題をどう考えているか」察する機会はあるんだな。某法科大学院の法曹倫理レポートは学内配布用に製本までするので、ほぼ確実に私がページレイアウト編集をやらされる。当然、全員分をナナメ読みするわけだ。どーせホンネで書きゃしねーけど、内面を隠しきれるほどの文章力なんて持ってないでしょ。ポツポツと本音が出てくるのは確実だね。私に読解できるかどうかはともかく。
 
 まあ職務上の守秘義務ってモノがある関係上、仮に私が「何かを」察したところで、それを大っぴらに語るわけにはいかない。基本的には私が墓場まで持って行く性質の知識だ。だったら社会的に役に立たないって?その通り。そーゆー点で役に立つのは、私の仕事じゃねえ。ただ単に私が生徒のレポートを楽しくナナメ読みできるってだけの話だ。レポートの編集作業が鼻歌交じりに出来る仕事だとでも?それを考えれば、これぐらいの余得は許されるでしょ。

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